欧州関連

トルコ、早期警戒管制機を使用してアゼルバイジャン空軍の空爆を支援か

アルメニア国防省は9月30日、アゼルバイジャン軍はナゴルノ・カラバフ空域の管制や航空作戦の決定権をトルコに移譲していると明らかにして注目を集めている。

参考:Azerbaijan has ‘handed over’ command of its Air Force ops in Nagorno-Karabakh to Turkey, Armenian defense ministry claims

アルメニア側はナゴルノ・カラバフを巡る戦いにトルコが関与していると力説するも決定打に欠ける

アルメニア国防省の説明によればトルコ軍はアゼルバイジャン軍からナゴルノ・カラバフ空域の管制や航空作戦の決定権を移譲されており、トルコ空軍は早期警戒管制機E-7T(737AEW&C)をトルコとアルメニアの国境に近い都市カルスの上空に飛ばしてアゼルバイジャン空軍機やトルコ空軍機による空爆作戦を指揮していると主張、さらにトルコ空軍のF-16は少なくともナゴルノ・カラバフ地域のガドルトとアルメニア領マルトゥニに対する攻撃に参加して空爆を実施したとも言っており注目を集めている。

さらにアルメニア国防省は自国周辺の航空機運行状況を示すマップを公開、そこにはアルメニアの主張通りトルコ領カルスの上空を旋回し続ける航空機が示されており、これが仮にトルコ空軍のE-7Tなら約300km離れたナゴルノ・カラバフ上空はトルコ軍の監視下だと言う主張は正しいのかもしれないが、本当にカルスの上空を旋回し続ける航空機がE-7Tなのかは状況からの推測に過ぎないためトルコ軍関与の決定的な証拠としては力不足だ。

補足:737AEW&C(トルコ空軍ではE-7Tと呼ばれている)は米空軍のE-3や日本のE-767よりも小さいボーイング737ベースの早期警戒管制機でトルコは同機を4機保有している。737AEW&Cが搭載しているレーダーの捜索範囲は飛行高度によって異なるため固定値ではないが、ロングレンジモードの場合200nm(約370km以上)を超える捜索範囲を提供できると同型機を導入したオーストラリアのメディアが言及したことがある。

さらにアルメニア国防省はナゴルノ・カラバフ地域の空爆に参加したトルコ空軍機によるトルコ語の無線交信記録を持っており、アルメニア空軍の攻撃機Su-25がトルコ空軍のF-16に撃墜されたとも主張しているが、こちらも無線交信記録を公開しておらず墜落したSu-25の残骸からトルコ空軍機が使用した空対空ミサイルの痕跡が見つかった訳でもないので、こちらも推測の域をでない。

以上のことからナゴルノ・カラバフを巡る戦いへのトルコ関与の可能性は非常に高いが決定的な証拠に欠けるため、トルコは知らぬ存ぜぬで押し通す可能性が高い。

 

※アイキャッチ画像の出典:Seattle Aviator / CC BY-SA 3.0 トルコ空軍の737AEW&C

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    朝鮮戦争で、中共軍のMiG-15パイロットに何故か無線で流暢なロシア語を話す奴がいたという話を思い出した(笑)

    14
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      それ、冷戦後になってからのソ連側の情報公開によってソ連空軍パイロットがMiG-15に乗って朝鮮戦争に参戦していた事が判明しましたね
      当時は下手をすると米ソ間の核戦争を引き起こしかねなかったので、朝鮮戦争へのソ連空軍の参戦は秘匿されていました

      4
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        あえてぼかしたのに (´·ω·`)
        まあ今回の真相も公開されるのは数十年後かな?

        4
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    先月28日、FlightRadar24を観ていたら、トルコ‐アルメニア国境のトルコ側で、
    識別コードのない航空機がミズスマシのようにクルクル旋回していた。
    これもAWACSの一つだったんだろう。納得。

    18
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      AWACS警察だ!手を挙げろ!!

      2
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      あとは電波情報だね
      さすがにこれは公開できないので、
      E-737の展開はほぼ確定情報と見ていいと思う

      6
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    国連安保理は、なぜこの戦争の調停を行わないのか?

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      機能してないんです。

      6
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    何でFlightRadar24に映ってるんだ?トランスポンダ切ってないの?

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      エルドアンはハナからアゼル支援を公言しているから、隠す必要性がなかったんじゃないの

      8
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      悠長に飛んでると対早期警戒機用の高速ミサイルに打ち落とされるんじゃないの?
      ロシアは使って見たそうだから。

      1
        • 匿名
        • 2020年 10月 02日

        トルコ領内の機体を打ち落としたら全面戦争や
        アルメニアが更地にされる

        3
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      「トルコ領空しか飛んでませんよ」アピール。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    今時零細小国でもアルメニア程度でも映像など証拠は取れるでしょ
    イランの時みたいに民間からの映像情報が一切無いのが不自然

    やってる~やってる~って喚くだけのアルメニア政府はオオカミ少年みたいでうっとうしい
    仮に真実でもあっても証拠も出せずに喚いて非難の頻度が高すぎて逆に信頼性を損なっている

      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      AWACSを映像に収めるって、そんなこと出来れば制空権をとっくに握ってるでしょ。

      18
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      1
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      トルコ側にも自国の隣でドンパッチやってるので、それを警戒する為という言い訳もあるぞ
      AWACS機の電波を傍受したというなら、音声データを公開出来るかもしれないが、一般的に考えて無線の通話なんて暗号化を掛けてたりするはずだから、何言ってるかわからんと思う(もちろん時間をかければ復元できるが)
      あとアルメニア自身の傍聴技術も公開しかねないので、データ公開は慎重になるはず

      それとトルコのAWACSが飛んでるのはトルコ領空なので、それを撮影するにはトルコ領空に侵犯しなくちゃいけない
      もちろん、アルメニアがトルコ領空に侵入したら、自国の挟み撃ちの口実を与えてしまう
      だから結局、真実であれ嘘であれやったやってない論争になる

      7
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      上がってくる映像がひと昔前のアナログ機器のような画像なので…
      ISILのプロモの方が画質はよかったねえ。

    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    アルメニアはやたらとトルコの介入を発信してるが、介入してたからってなんなんだ?トルコが介入してるからって、今更ロシアが動くとも思えない。
    トルコが周辺国の諍いに首突っ込むのなんて今更すぎて、欧米も「ふーん」くらいにしか思ってないだろ。むしろ久々に発生し大規模軍事衝突で無人機や情報戦がどうなるか見るために、嬉々として観戦してる

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 01日

      トルコが出張ってきてるのなら、トルコと対立するギリシアやフランスが支援を申し出るかもしれん。
      敵の敵は味方の理論でね。
      公式ルートでの表明でなくても裏で支援をしてくれるかもしれんから、この手の宣伝戦はやっておくにこしたことはない。

      11
        • 匿名
        • 2020年 10月 01日

        支援どころがエーゲ海で戦端開くかも。
        二正面戦闘を嫌がるのはトルコも同じ。

    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    こういう米製のハイテク装備って米帝の許可が無いと使えないモノだと漠然と思ってたけど
    全くそんな事ないんだな

      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      他国の同意がないと動かない兵器を誰が買うだろうか?
      肝心な時に動かない起爆しないという悪評がたてば、顧客が買わない
      例えばエグゾセ対艦ミサイルのように(肝心な時に起爆しなくて悪評が立った代表)

      5
        • 匿名
        • 2020年 10月 02日

        AWACSにしてもイージス艦にしても中核技術は全部ブラックボックス
        メンテナンスは米国の軍事企業がやってんだから
        米国がその気になればいつでも使用不能に出来るんやで

        1
          • 匿名
          • 2020年 10月 02日

          ほう、その根拠は?ボタン一つで機能停止に出来るとか言う都市伝説を信じてるのかい?

          4
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    トルコに兵器を売るリスクを目の当たりする事態だな。
    クルド人問題に限らず、欧州からハブられるのには、それなりの理由があったんだな。

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    自国の領空で飛ばしてる訳でしょ?何か問題あるの?

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 01日

    ロシアなら探知して証拠をつかめるはず、それをアルメニアに提供しないってのはどうしたもんか、
    これからか

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    やっぱりMESAだと標的が側面にくるように、指定のコースをくるくるオートパイロットしてんのかな?

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    トルコの最終目的はなんなんだ?
    クルド人追い出して他国から何も言われないってのが目的?
    地中海の海底資源?
    どっちにしても余計な衝突増やすだけで最近の行動は下手打ってる様にしか見えないが……
    周り全部相手にして戦いきれるほどの軍事力は無かろうに

      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      クルド人は普通にトルコ国内に暮らしてるよ。一部がPKKとして暴れてるだけ。
      普通のクルド系トルコ人は白眼視か迷惑に思ってるぽい。インタビュー見た。

      大トルコ主義でしょう。ムスリム連帯をトルコ主役で宣言したいから

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    水掛け論は力があるものがかつ

      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      水掛け論は声の大きい方が勝つ。

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    トルコはちゃんと737AEW&Cを運用できているのに、K国は・・・。

    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    国内で飛行機飛ばして紛争地域の情報収集して何が悪いんだ?ロシアだってアゼル国境で飛行機飛ばしてるし…

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