欧州関連

トルコ、2023年初飛行予定の無人戦闘機「バイラクタルKızılelma」を公開

トルコのBaykar社は12日、2023年に初飛行が予定されているジェット無人戦闘機のプロトタイプ(製造途中)を公開、同機の正式名称が「バイラクタルKızılelma/クズルエルマ」であることを明かした。

参考:Baykar

10年以上前に無人機技術への大規模投資に踏み切ったトルコの賭けは大きな成功を収めつつあるように見える

バイラクタルTB2の開発・製造で有名なトルコのBaykar社は「AIを搭載したトルコ初のジェット無人戦闘機(MIUS)を建国100周年にあたる2023年に初飛行させる」と2021年に明かして世界中を驚かせたが、同社は12日に製造中のプロトタイプを公開して同機の正式名称が「バイラクタルKızılelma/クズルエルマ」であることを明かした。

出典:Baykar

バイラクタルKızılelmaは超音速モデルと亜音速モデルがあり、ウェポンベイと主翼下のハードポインに空対空ミサイル、空対地巡航ミサイル、精密誘導兵器等を計1.5トンまで搭載することが可能で、同社のセルチュク・バイラクタル最高技術責任者(CTO)は「米空母で採用されているようなカタパルトの助けなしで強襲揚陸艦アナドルから発艦することができ、着艦はキャッチケーブルとフックの助けを借りる(アレスティング・ワイヤーにような装置と機体側に搭載された着艦フックの使用)」と説明している。

恐らく2021年に開発を開始して2022年にプロトタイプの製造を始めたのではなく、以前から開発を進めていたからこそ「2023年に初飛行を行う」と公言しているのだろうと思われるが、同社はTB2を拡大発展させ艦艇からの運用に対応させたモデル「バイラクタルTB3」の初飛行に今年挑戦する予定で、本格量産に移行したMQ-9に匹敵する新型UCAV「バイラクタルAkinci」にも海外の顧客(恐らくパキスタンかカタール)から発注が舞い込み、ウクライナで評判通りの働きを見せるTB2の受注も絶好調だ。

出典:Baykar

Baykar社でゼネラルマネージャーを務めるハルク・バイラクタル氏はNIKKEI ASIAの取材に対して「日本は一刻も早くUCAV(武装可能な無人機)を手に入れるべきで、いずも型護衛艦にバイラクタルTB3はぴったりだ」と語り、中東・アフリカや欧州で採用が広がるトルコ製UCAVのアジア進出=特に強襲揚陸艦を保有する国(日本、韓国、オーストラリアなど)にTB3を売り込むつもりなのだろう。

新技術や新分野に投資するには勇気が必要だが、10年以上前に無人機技術への大規模投資に踏み切ったトルコの賭けは大きな成功を収めつつあるように見える。

追記:現在製造されているのはプロトタイプ1号機は亜音速モデルと言われている。

関連記事:バイラクタルTB2開発企業、日本は一刻も早くUCAVを手に入れるべき
関連記事:やっぱりトルコのジェット無人戦闘機「MIUS」は超音速飛行に対応、強襲揚陸艦にも着艦可能

 

※アイキャッチ画像の出典:Baykar

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米国、スロバキアにF-16Vの引き渡しが1年遅れて2024年になると通知前のページ

ゼレンスキー大統領、17日間の戦闘でウクライナ軍兵士が約1,300人戦死次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ポーランド製MANPADSに注文が殺到、Grom-Mの生産量を3倍以上に増強

    ポーランド製の携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)に注文が殺到…

  2. 欧州関連

    トルコ、米国製の無人戦闘機MQ-1Cと同クラスのAnka-Sをウクライナと共同製造

    トルコ航空宇宙産業(TAI)が開発した衛星通信対応の無人戦闘機(UCA…

  3. 欧州関連

    トルコとウクライナが軍事協定を締結、バイラクタルTB2とエンジン技術を交換か

    トルコのエルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は16日、トル…

  4. 欧州関連

    ロシア軍がS-300でキーウを攻撃、ウクライナ軍には有効な対抗手段がない

    ロシア軍は14日に計38発の巡航ミサイルで攻撃、ウクライナ軍の防空シー…

  5. 欧州関連

    砲兵戦力に回帰する欧州、エルビットとKNDSがEuroPULS生産で合意

    欧州諸国は「高度な防空システムによる接近拒否」が成立したため砲兵戦力へ…

  6. 欧州関連

    ドイツとトルコがウクライナに兵器製造工場の建設を開始、ロシアが反発

    ドイツのラインメタルは「12週間以内に装甲車輌の生産や修理を行う工場を…

コメント

    • 原点にして頂点
    • 2022年 3月 13日

    日本は次期戦闘機に随伴する無人戦闘機を開発中ですね。

    次期戦闘機の僚機となる無人戦闘機の開発に関連して「戦闘支援無人機コンセプトの検討」が行われます。
    この「戦闘支援無人機コンセプトの検討」の内容は、AIの適用を含めたシミュレーションにより、次期戦闘機等の有人機と連携する戦闘支援無人機の機能・性能、運用の効果に関するコンセプトを導出するものです。

    また、無人戦闘機などの開発にも関連していると思われる「空戦AIチャレンジ」というコンペティションが既に開催されました。

    20
      • 匿名
      • 2022年 3月 13日

      まぁMALEの方もOPVでの飛行制御とかレーダー/センサの試験とかはやってたりするけど

      6
    • バクー油田
    • 2022年 3月 13日

    トルコって破滅的に通貨下落してるのになんかこういうニュースみてると普通よなw
    なんなんよこれ。こんなものを開発してるどころじゃない筈と思うねんけど

    11
      • A
      • 2022年 3月 13日

      通貨安だと輸出が有利になって益々売れるとか。

      10
      • バーナーキング
      • 2022年 3月 13日

      通貨暴落してるから自国開発製品をバンバン売って外貨を稼ぐんじゃないか。
      自国開発製品なら輸入する部品のコストは上がってもそれ以上に売価が上がるんだから。

      13
      • 名無しさん
      • 2022年 3月 13日

      国が傾いて経済がおかしくなって来ると、安定志向よりも投機的なビジネスの方が
      幅を効かせて来て、たまたまその中で無人機がヒットしたってだけの事

      トルコの無人機ビジネスは国が外貨稼ぎの手段として後押しして十分な資金が得られ
      たからこそここまで伸ばせたし、しかもいいタイミングでナゴルノ・カラバフ紛争が
      起きて無人機が名を上げて世界的に無人機ブームになった事で、さらに追い風に乗れた
      って感じだ。

      ただ通貨安で国民が悲鳴を上げている惨状は変わらずで、無人機ビジネスが成功した
      からって、この程度では焼け石に水で、普通どころかトルコの経済危機はなんら改善
      されていないのが実状だ。

      17
    • 原点にして頂点
    • 2022年 3月 13日

    MIUSはTF-Xなどとのエア・チーミングに対応するらしいですが、データリンクなどはどうしてるんですかね?

    Link16では Launch on Remote しかできませんが、空対空戦闘能力などでは妥協するという感じでしょうかね。

    • 黒丸
    • 2022年 3月 13日

    これが空港以外で離発着でき、トラックやトレーラーで移動できるようになるなら
    敵の航空優勢を阻止しやすくなり、台湾や離島防衛の役に立つかも。

    4
    • ビューティー先輩
    • 2022年 3月 13日

    海の上での無人機の戦いはまだ誰もやってないのかな?急いでいずもに乗せてもなぁ。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP