欧州関連

開発が進むトルコの第5世代戦闘機TF-X、試作機は米国製「F110」搭載

トルコが建設中だった第5世代戦闘機「TF-X」開発の新拠点、試験施設や工作機器を備えた新しい工場が稼働を始めたと報じられている。

参考:3000 mühendis ile gece gündüz mesai

開発が進むトルコの第5世代戦闘機「TF-X」、プロトタイプ出荷は2023年3月予定

稼働を始めた新工場の広さは6万3,000㎡(東京ドームの1.3倍の広さ)で約3,000人のエンジニアが第5世代戦闘機「TF-X」開発に従事し、大型の風洞試験装置や落雷試験装置、チタン合金を成形可能な3Dプリンター等の最新工作機器が揃っているためTF-Xのプロトタイプ開発が「より安価により効率的に行えるようになる」と説明しており、2023年3月18日に設定されたTF-Xプロトタイプ出荷に向けて開発が加速すると見られれている。

補足:TF-Xのプロトタイプ出荷が3月18日に設定されている理由は、オスマン帝国軍が第一次世界大戦時にダーダネルス海峡を通過しようとした英仏海軍の艦艇に攻撃を仕掛けて勝利(撤退させた)したことを祝う記念日なので、この日に第5世代戦闘機「TF-X」出荷を発表したいという政治的意図のせいだと推測される。

しかし、トルコの第5世代戦闘機開発は搭載エンジンの確保に失敗しているため本当に実用化できるのか疑問視する声も多い。

当初、英国のロールス・ロイスと「EJ200(タイフーンの搭載エンジン)」をベースに共同開発を行う契約を締結したが、トルコが共同開発したエンジンに関する全ての権利が「トルコ側に属する」と言い始めたためロールス・ロイスが共同開発から撤退、代わりを探してはみたものの「全ての権利がトルコ側に属する」という条件を受け入れる海外企業が出てこなかったためトルコ企業が単独でエンジン開発に取り組んでいる。

一応、ロシア側がエンジンを含むTF-X開発全般に協力できると言っていたが続報がないので、恐らくエンジン開発はトルコの単独開発のままだろう。

出典:Turkish Aerospace Industries

トルコが明かしている予定では、2023年に出荷が予定されているTF-Xのプロトタイプに国産エンジンは間に合わないため、国内でライセンス生産を行っているGE製のエンジン「F110」を使用して機体の各種テストを進めて、国産エンジン完成に必要な時間を稼ぐらしい。

そのままGE製「F110」を量産機に使用すればいいという意見もあるだろうが、仮にF110を搭載してTF-Xを開発すれば海外輸出の際に「米国の輸出許可」が必要になるためトルコが考えている「イスラム教の影響下が強い国への輸出」が難しいという問題に直面して投資した開発費回収ができなくなる恐れがある。

この問題は既に現実化しており、ロシア製防空システム「S-400」の影響でトルコは国産攻撃ヘリや多用途ヘリに使用されている米国製エンジンの輸出許可が得られず、パキスタンやフィリピンへの海外輸出が危機に直面しており、このような事情からTF-Xのエンジンは「全権利がトルコ側に属して自由に輸出可能なもの」でなければ意味がないのだろう。

因みにTF-X用エンジンに要求されている予定推力は約27,000ポンド(×2基)なので、F/A-18E/Fが搭載する「F414」とF-15EXが搭載する「F110」の中間あたりの性能だ。

果たしてトルコは、40年前に米国が開発したエンジンと同程度の性能をもつエンジンを単独で開発することが出来るのか注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:Turkish Aerospace Industries

UAV群制御、ステルス機、小型衛星、韓国が公開した興味深い技術や兵器前のページ

緊張感が高まるロシアとベラルーシ、国境沿いにロシアが戦車部隊を移動次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    歩兵戦闘車の開発に乗り出すイタリア陸軍、数ヶ月以内に開発企業を選定

    イタリア陸軍は老朽化したダルドの交換に150億ユーロ(取得コストは52…

  2. 欧州関連

    ポーランド議会、第二次大戦の賠償をドイツに求める決議を圧倒的多数で可決

    ポーランド下院は第二次大戦中にナチス・ドイツが引き起こした損害を賠償す…

  3. 欧州関連

    ウクライナ軍は戦場に段ボール製無人機、ロシア軍は木製無人機を投入

    駐豪ウクライナ大使は今年3月「段ボールと輪ゴムで作られた豪企業製の無人…

  4. 欧州関連

    ゼレンスキー大統領、動員回避のため偽装書類で海外逃亡した者の処罰を約束

    ゼレンスキー大統領は動員回避の温床になっていた軍事医療委員会について総…

  5. 欧州関連

    フィンランドとスウェーデンのNATO加盟、トルコはPKK取り締まりを要求

    トルコのカリン大統領報道官は「フィンランドやスウェーデンのNATO加盟…

  6. 欧州関連

    トルコ、主力戦車「アルタイ」向けに開発中だった国産エンジンの試運転に成功

    トルコ国防省調達部門のイスマイル・デミール氏は今月5日、主力戦車「アル…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    エンジンを自主開発できないと、厳密には国産機だの呼べないよね
    ステルスやらハイテク以前の問題として

      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      自国で機体を設計出来れば国産で良いと思うけどね
      特許関連や国内産業との兼ね合いで国産出来ないパーツとかもあるわけだし

      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      エンブラエルERJ「おっ、そうだな。」
      ボンバルディアCRJ「おっ、そうだな。」
      エアバスA300「おっ、そうだな。」
      ガルフストリームG650「おっ、そうだな。」
      ATR42,72「おっ、そうだな。」

        • 匿名
        • 2020年 8月 07日

        他にも737ファミリーのCFMシリーズも米仏の共同開発だから737も米国産機ではないし、A320ファミリーのエンジンも米国産と共同開発のエンジンばかりだからA320も欧州産ではないし、F35のエンジンもRRが開発に関わってるからF35も米国産ではないな。

        あっ、そうだ。エアバスのワイドボディ機に供給されてるCFRPはほとんど帝人製だから、エアバスのワイドボディは欧州産でないし、ボーイングのワイドボディ機に供給されてるCFRPもほとんど東レ製だから、ボーイングのワイドボディ機も米国産でない可能性が微レ存…?

        あーもう国産機の定義がめちゃくちゃだよ

        2
    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    エンジンの自国開発は高度な冶金技術が必須だから海外メーカーの協力が不可欠、というか海外メーカーのエンジンを購入するかライセンス生産しか方法が無い。

    トルコの要求を受け入れるメーカーが現れるのか、もし寿命が短いロシア製エンジンならスペアエンジン込みで販売しなければいけないけど長期間の保守が出来るのか興味は尽きない。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      出力89kNのユーロファイターのEJ200のエンジン寿命が6000時間。
      出力142kNのSu-35のAL-41F1Sのエンジン寿命が4000時間。
      ロシア製エンジンは基本設計の古さを考えれば出力のみならずエンジン寿命でも優秀だよ。

      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      エンジンは機体寿命比に関わらずスペア確保に多めに製造するのが基本
      肝心のエンジン寿命が不明だがF-22のF119エンジンは試作機含めた機体の総生産機数が197機なのに対して双発であることを考慮しても多めな507基が製造されている。

      ちなみにユーロファイターの機体寿命は3000時間(Su-35は6000時間)だが、ドイツ側の工作上のミスで初期の機体の寿命が1500時間になってしまっている。
      つまり機体の寿命が尽きてもエンジンは寿命の4分の1しか使いきれない。
      さらにドイツではこれからユーロファイターをユーロファイターで置き換える作業が始まる。
      エンジンを退役する機体からスワップするのかは分かっていない。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    プロトタイプと量産機でエンジンが違うというと、ラファールを思い出す
    事情もM88の完成を待っていたら、開発開始が数年延びるからF404を搭載したプロトタイプを先行だったし

    2
    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    試作機が量産型よりも強くなるパターンになるのか…

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    >40年前に米国が開発したエンジンと同程度の性能をもつエンジンを単独で開発することが出来るのか

    輸出すること前提の自主開発なら、先行している米国企業などが有するパテントを回避しようとすると思うけど、
    40年前クラスの性能を持つエンジン開発にも未だ有効なパテントがあったりするんだろうか?

      • 匿名
      • 2020年 8月 06日

      ジェットエンジンの基本形は完成してるからパテントは殆どんー存在しない。
      超行員で引っ張り強度の高い合金の開発や加工ができないのが問題、他国からの技術供与が無ければ自力でコツコツ開発を続けるしかないがこれには冶金技術のすそ野が大きくなくてはならない。
      アメリカに次ぐ性能のロシア製もいまだに寿命では負けているし英仏のエンジンもアメリカより劣っている。
      他国が進歩してもアメリカはさらにその先を行っている。
      だからいまだにアメリカがエンジンの供給で世界中の戦闘機開発を縛ることができている。
      日本はXF9-1でその枷から逃れることができるようになったがそれにはF-3、F-5などと続く長い開発期間が必要で一足飛びに最新型のエンジンは製造できない。

        • 匿名
        • 2020年 8月 06日

        F3、XF5、な。

        • 匿名
        • 2020年 8月 06日

        ジェットエンジンは特許だらけなんだよなぁ……。
        だから日本単独でエンジンの開発は無理と言う理論がまかり通った。

        1
        • 匿名
        • 2020年 8月 06日

        どっちなん?
        特許無し?特許だらけ?

        チョコチョコ技術革新してるだろうから、特許たくさんありそうな気もするが。

          • 匿名
          • 2020年 8月 06日

          だから、『特許の切れた40年前の技術で』、40年前の戦闘機と同等のスペックのものなら作れる。って話であって。
          同等のスペックでも、最新の技術で作りたければ、特許に抵触したり、輸出管理にひっかる。

            • 匿名
            • 2020年 8月 06日

            あ、そういう意味か。
            ごめんよ。

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    イギリスとてエンジン素材系は米国からの輸入ですしなー(その間軽で日本と協力をというのが佐藤議員のブログに書いてあるし)

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    試作や国内向けでも、勝手にF110を流用して大丈夫なのかな?

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    ロシアからのエンジン提供の件は、続報がない、ということですか。

    これ、韓国にも輸出できそう。よかったじゃん。
    TFXとKFXなら一文字違いだし、ちょうどいいんじゃないか?
    デカールだけ貼り直して。
    形も似てるし。

      • 匿名
      • 2020年 8月 06日

      韓国はアメリカから買ってるしそのエンジンはF414だぞ
      トルコの欲するエンジンからすると思いっきり推力不足

        • 匿名
        • 2020年 8月 06日

        韓国がTFXを買ってKFXに偽装しろwって話では?

        • 匿名
        • 2020年 8月 06日

        細かい違いはケンチャナヨ

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    TF-Xの完成予想図を見るとウエポンベイが描かれているので、武装は胴体内に収容するということですね。この点はKF-Xとは違うようですね。
    TF-Xはステルス戦闘機を目指しているようですが、トルコの航空技術力で高度なステルス能力を達成できるのか疑問ですね。

    • 匿名
    • 2020年 8月 06日

    ライセンス国産のF110もあてにしていいものか?
    多分トルコのF-16用のやつだと思うけどライセンス国産品って自分のところで作ったからって好きにして言い訳では無いよな
    トルコ産F-16は米軍以外への売却禁止は明言されてるけどエンジンなら別の機体に流用していいかどうかは怪しいもんだ
    アメリカからの追加の制裁案件ではないかなこれ

      • 匿名
      • 2020年 8月 06日

      つーか使っていいなら日本のF-2の時に苦労してなかったですよね。

    • 名無し
    • 2020年 8月 06日

    ただでさえアメリカとの関係悪化してるのに、エンジンを輸入できるとは思えない。ロシアからだったら出来そうだけどね。

      • 匿名
      • 2020年 8月 06日

      ロシア相手だって、シリア・リビアにアルメニアと全方位敵にまわしてますけどね
      ホント、今のトルコは危険な火遊びが好きすぎて困る。バルカン半島になったみたいだ

    • 匿名
    • 2020年 8月 07日

    F-22そっくりではあるけど、妙に主翼が後ろなのが気になる(主翼が小さい?)
    あと、細長いストレーキっぽいものがあってここだけ後退角が違うけど、これステルス性に影響しないのかな

    • 匿名
    • 2020年 8月 07日

    各国からジェット機の出始めた50から60年代までは、それこそ個性的というか珍奇な機体も沸いてきてたけど、だんだん似かよってきて、スホーイ27からは形だけは西側と見分けがつかない状態に
    技術的に突き詰めた解って数学的な結論だから、どうしても同じ答えが出てくると
    もう所属マークを見ないとどこの機体とも知れない時代になってますよ

      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      カンブリア爆発が終わって種の多様性が収束した感じしてます。

      珍奇なのでは前進翼とかありましたよね。カッコいいんだけどな。
      可変後退翼はもうほぼなくなっちゃいましたね。

      あとは後の時代になるほど、冒険するより成功したやつの改善のほうが安牌、みたいな要素もあるんじゃないかと思います。

    • 匿名
    • 2020年 8月 07日

    インドと手を組むことは無いかな?条件が合うかは知らんけど

      • 匿名
      • 2020年 8月 07日

      ヒンドゥーとイスラムはやたら険悪だから無理と思う
      とくに今のトルコはそういう政権だから

    • 匿名
    • 2020年 9月 01日

    格闘戦苦手そうな見た目やな

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP