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トルコの第5世代戦闘機KAAN、ステルス無人戦闘機との協調能力を統合

トルコ航空宇宙産業は第5世代戦闘機=KAANと無人戦闘機の協調能力について沈黙を守ってきたが、最近「KAAN開発の重要なステップとしてヒュルジェットから無人戦闘機を制御する実証実験に成功した」「KAAN配備までにステルス無人戦闘機との協調能力を完成させる」と明かした。

参考:Turkish Uncrewed Wingman Concepts Take Flight

有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力を開発する上で重要なのは「統合の自由」と「無人戦闘機の制御や協調能力のコア技術となるミッションシステム」

マーケティング上の第5世代戦闘機に対する定義はさておき、トルコは米国、ロシア、中国に続く4番目の第5世代戦闘機開発国になることが濃厚で、トルコ空軍は米国製エンジン=F110を搭載するKAAN Block10(20機)を、インドネシア空軍もトルコ製エンジン=TF35000を搭載するKAAN Block20(48機)を発注し、前者は米国の国際武器取引規制(ITAR)によって輸出制限があるものの、後者はエンジンを含む米国製技術を排除したITAR Freeバージョンになる予定だ。

KAANが第5世代戦闘機を代表するF-35に匹敵するのかどうかは謎だが、トルコ航空宇宙産業はKAANの位置づけについて「トルコ空軍はF-35であろうとタイフーンであろうと一定レベルの能力と即応性を維持しなければならないが、50年後や100年後まで国の独立を維持するには自前の防衛装備品をもつ必要がある」「国産エンジンを開発することでKAANのITAR規制を出来るだけ除外することが重要だ」「ITAR Freeを達成できればプラットフォーム輸出における自由裁量権を獲得できる」と述べている。

この話をより噛み砕くと「トルコが安全保障に基づく独立した主権を維持するには武器主権が確保された自前の防衛装備品が必要」「代替品が市場で入手できる米国製部品・技術の国産化は後回しでもいいので、代替品が市場で入手できないエンジンを含む米国製部品・技術の国産化を進めてITAR規制をクリアし、武器主権、データ主権、統合の自由、輸出の自由を確保することが重要」となり、トルコは地域大国から大国になることを目指しているため、KAAN開発で最も重要なのはF-35と同等の第5世代戦闘機を作ることではなく「米国の支配を受けない(米国依存を引き下げる)武器システムの実現」だ。

出典:대한민국 청와대

米国と一蓮托生を決め込んで安全保障上の自主国防、武器主権、データ主権、統合の自由、輸出の自由といった概念が浸透しておらず、最先端の第6世代戦闘機(世界トップクラスの性能)でなければ意味がないと考える日本人からすればトルコの行動は中々理解できないかもしれないが、F-35を調達できる韓国が第4.5世代戦闘機のKF-21を開発するのも同じ理由で、自主国防において武器主権、データ主権、統合の自由が確保されたプラットフォームがなければ何も始まらず、あれはダメだ、これはするな、そんなことは許可できないという米国製プラットフォームに不満をもつ国が多く存在するため輸出の自由も重要になってくる。

ある軍事アナリストは「ロイターが米国のフォードと中国の山東のスペックを比較して『まだまだ中国は米国に追いついていない』『フォードと山東が台湾海峡で対峙すれば米国が勝利する』と報じていたが、空母は巨大なキルチェーンを構成する一要素に過ぎず、空母のスペックの優劣だけで戦場の優位性は決まらない」と指摘したことがあり、F-35に性能で劣るかもしれないKAANやマーケティング上の世代が低いKF-21も「役立たずな戦闘機」というわけではない。

韓国のKF-21は統合の自由を活かし、世代の違いに関係なく今後の有人戦闘機にとって必須となる無人戦闘機と協調能力を開発中だが、AviationWeekも8日「トルコ航空宇宙産業はKAAN開発の重要なステップとして、自社製のヒュルジェット(Hürjet)から無人戦闘機を制御する実証実験に成功した」「トルコ航空宇宙産業は自社製の無人戦闘機=Anka-3を使用したテストにより、トルコは有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力を実証できる数少ない国への仲間入りを果たした」「HürjetはKAANの代わりとして実証実験に使用され、地上シミュレーターでもKAANに搭載されるシステムを使用してAnka-3を制御した」と報じた。

トルコ航空宇宙産業はAviationWeekの取材に「KAANを始めとするあらゆる有人プラットフォームは、それがどこに展開していようとも単一または複数の無人プラットフォームを制御できる能力を備えるべきだ。我々はこの取り組みをヒュルジェットから開始したが、これはKAANにも適用され、さらに他の有人プラットフォームにも拡張していく予定だ。KAANの実戦配備までに有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力が完成するよう、現在これらの開発を急ピッチで進めている」と述べている。

出典:Baykar

トルコ航空宇宙産業の取り組みは国産プラットフォームに限定され、トルコ空軍のF-16など既存プラットフォームについて「技術的に不可能というわけではないが、時間と運用ニーズの問題で無人戦闘機の協調能力を統合する予定はない」と言及しており、最終的にはバイカルの無人戦闘機=バイラクタル・クズルエルマもKAANとの協調運用が予定されてるらしい。

トルコ航空宇宙産業は有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力のことを「共同作戦(OKU)構想」と呼んでおり、有人戦闘機が制御する無人戦闘機にはSuper Şimşek(スーパー・シムシェク)と呼ばれるより小型の自律型エフェクターが統合され、要するにSuper Şimşekは特定の能力(囮、敵防空網制圧、電子戦など)を提供する小型無人機で、OKU構想とはKAAN、Anka-3、Super Şimşekとの協調能力になり、最終的にはクズルエルマを含む社外のトルコ製無人機もここに統合するつもりなのだろう。

バイカルと提携したレオナルドのチンゴラーニ最高経営責任者も2026年3月「M-346から制御する2機の無人戦闘機を飛行させる計画で、5月まで最初のデモンストレーションを行い、2026年半ばまでに公開する予定だ」「これは第6世代戦闘機が登場するまで大規模な投資が困難な顧客に『既存の航空機と組み合わせて運用できる補助的なシステムの提供』を目的としている」「この無人戦闘機はバイカルと共同で製造する予定だ」と発表し、M-346と組み合わせる無人戦闘機はバイカルのクズルエルマである可能性が高い。

どちらにしても有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力に言及してこなかったKAANにも「同様の能力統合が予定されている」と初めて判明し、統合の自由が確保されたプラットフォームをもつ国は有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力でどんどん先に進み、例外は統合の自由を確保していないオーストラリアがボーイングと提携してE-7A、F/A-18、MQ-28間の協調能力を開発していることだろう。

出典:Airbus

ボーイングはMQ-28について輸出可能だと説明しているが、ボーイング製プラットフォーム以外へのMQ-28統合については明確になっておらず、ラインメタルはドイツ空軍に提案する無人戦闘機としてMQ-28を、エアバスはXQ-58Aを選択したものの、エアバスはユーロファイターに統合するためエアバス製ミッションシステム=Multiplatform Autonomous Reconfigurable and Secure(MARS)を採用しており、恐らくラインメタルも同様の措置を講じてくる可能性が高く、輸出可能な無人戦闘機を買ってくれば手持ちのどの戦闘機にも統合できるというわけではない。

つまり、有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力を開発する上で重要なのは「統合の自由」と「無人戦闘機の制御や協調能力のコア技術となるミッションシステム」で、この2つが欠けるとあれはダメだ、これはするな、そんなことは許可できないの縛りの中で身動きが取れなくなる。

出典:Anduril

日本はGCAP=次期戦闘機で国産無人戦闘機との協調能力獲得(2035年)を予定しているが、欧米では2028年~2030年に有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力獲得を予定しており、米空軍が開発を進めているCCAと協調予定なのはF-35AではなくF-22Aで、もしF-35AへのCCA統合がBlock4に依存するなら相当先の話になるだろう。

次期戦闘機の2035年配備も怪しくなっているのに、有人戦闘機と無人戦闘機の協調能力獲得がどんどん前倒しされているのに、日本は協調能力の獲得を2035年まで待つつもりなのだろうか?

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※アイキャッチ画像の出典:Türk Havacılık Uzay Sanayii

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コメント

  • コメント (22)

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    • AKI
    • 2026年 5月 16日

    とりあえず、M-346ベースの練習機を三菱重工が生産して、それに無人機を統合しますか。
    それも時間はかかりますが。

    4
    • 無印
    • 2026年 5月 16日

    MQ-28を選んで、ドイツをお手本にしてF-2との統合化じゃアカンの?

    3
      • SB
      • 2026年 5月 16日

      MQ-28の日本への納入予定をドイツと同じ2029年として、F-2への統合は事前に済ませているとしても新型機のIOC獲得には概ね2~5年は掛かります
      つまり最短でも運用開始できるのは2031年、対してF-2の機体寿命が尽き始めるのが2035年

      もちろんF-2の機体寿命は全機一斉に尽きるのではありませんが、それでも毎年10機弱減っていく可能性が高いF-2にMQ-28を統合するだけの価値があるかどうかが判断の基準になりますね

      11
        • ななし
        • 2026年 5月 16日

        寿命絡みでF-2での実運用は無いかもだけど、
        それとは別にF-2での実機検証はアリだと思っています。

        スマート・ボム・ラック(BRU-57A)の様に、2010年代に統合作業終えたけど部隊運用しなかった装備もあるし、
        先進統合センサ・システムや僚機間秘匿データリンクなどの様に、次世代機用先行開発での検証作業でF-2が利用された実例もありますし。

        1
    •  
    • 2026年 5月 16日

    人の命の値段が高い自衛隊、そして人死が出たら他国より確実に厭戦ムードになるのは早いであろう日本にこそ無人機が大事。そもそもこの広い領海を人間で守るには密度も体力も足りないのだから、全力で投資しないと。とはいえ無人機が本当に日本と相性がいいかといえば、生産コストの面でも材料確保の面でも実はよろしくないのが難しいところ。

    16
      • nednir
      • 2026年 5月 16日

      妙な薄情さがあるので、自衛隊員が多少死んだところで無関心でも無人機の事故で民間人に人死にが出たら一気に厭戦ムードになりそう。もちろんどちらも悲惨なことで起きてほしくないには決まってるのですが。

      7
      • せい
      • 2026年 5月 16日

      日本の場合は高性能なCCAより、廉価な弾道、巡航ミサイルの方が必要かもね
      国民意識から攻める事への忌避感がある以上、初手で確実にヤラレル、スクランブル用にCCAは用意はしておきたいけど

      6
    • YF
    • 2026年 5月 16日

    GCAPもITAR Freeの機体です。KF-21やKAANが自国製エンジンを完成させて完全なITAR Freeを獲得した後に実戦配備されるのは、GCAPが実戦配備されるのと時期的にほぼ変わりません。(GCAP・韓国製エンジン・トルコ製エンジンが予定通りに開発された場合)
    ですので日本がITAR Freeの戦闘機(武器主権・データ主権)において特別遅れてるわけではないと思います。

    日本が今、最重要視してるのは接近阻止能力の獲得で同時並行して開発してるスタンドオフミサイルの種類を見ればそれは明らかです。限られた予算の中で何を選択・集中するかにおいてCCAの取得の優先度が低いのかもしれません。

    日本の戦闘機戦力の惨状(F-35はブロック4がいつになるかわからない、F-2は機体寿命の問題と大幅改修無し、F-15JISはいつ配備されるかわからない)を考えたら、CCAどころじゃないのかもしれませんが。
    この辺は武器主権、データ主権の問題が如実に表れてますね…。

    22
      • ドゥ素人
      • 2026年 5月 16日

      人もお金も限られるなかで現実路線で行くと、おっしゃる通りスタンド・オフ・ミサイルの強化(増量、長射程化、ファミリー化)が優先されて、次いでCCAなんでしょうね。
      同じ米軍兵器のオーストラリアとの関係強化を進めて現有機で何とかやりくりするしかないんでしょうが、綱渡りですね

      7
        • YF
        • 2026年 5月 16日

        一応こう考察しましたけど、実際は情報が出てきてないだけかもしれません。
        オーストラリアとは無人機開発において協力することになってますし。
        三菱も川崎もCCAについては開発してますから。

        4
      • kitty
      • 2026年 5月 16日

      ヤード・ポンド法FreeのF-15がとうとう!w>F-15JIS

      2
        • YF
        • 2026年 5月 16日

        すいません。F-15JSIでしたね。
        訂正します。

        1
    • AH-X
    • 2026年 5月 16日

    次期戦闘機は遅れること確定。いや下手したら計画中止もありうるのでF-2heno無人機統合は必須だと思います。
    F-2も延命できないことはないでしょうから。

      • ななし
      • 2026年 5月 16日

      F-2延命だと、主翼の換装とかになるのだろうけど、
      左翼側はLMが製造元担当だったと思うので、そこら辺の権利関係に手を付ける必要があるかも?

      主翼換装まで行わない場合は、
      複合材一体成形翼に関する劣化データが無いというか、F-2自体が実機で検証している様なファーストペンキなので、
      消耗の激しそうな個体を潰して先ずは劣化具合の検証を行ない、その後に最低限の処置を検討かな?

        • ななし
        • 2026年 5月 16日

        変換ミスというか、チェック漏れ

         誤:ファーストペンキ
         正:ファーストペンギン

    • SB
    • 2026年 5月 16日

    んー何かコメント欄見ると勘違いがあるような、単に自分の認識違いかもしれないけど
    F-2を改造しようって意見が多いけど、そもそもドイツ空軍のCCAのユーロファイターへの統合ってCCA側を改造してるパターンじゃね?記事に書かれてる
    ユーロファイター側はLitening5ターゲティングポッドの搭載と小規模なソフトウェアアップデートだけだったはず

    なのでやる価値があるかどうかはともかく、Litenig5ポッドをF-15なりF-2に搭載してボーイングに依頼すれば現状に近い形でMQ-28の統合はできるはず

    F-35AやF-3のCCAの統合は戦闘システムそのものへの統合だから基本別物と考えたほうが良い

    11
      • AKI
      • 2026年 5月 16日

      それで、操作は足に付けたタブレットのみが簡単でしょうね。
      アメリカが許可してくれれば。

      4
      • ななし
      • 2026年 5月 16日

      個人的に希望しているのは、記事の

      >例外は統合の自由を確保していないオーストラリアがボーイングと提携してE-7A、F/A-18、MQ-28間の協調能力を開発していることだろう。

      このボーイングの位置付け(の一部)で、日本もF-2を提供して参加です。
      近々の商材としてではなく、GCAPの先行開発として。
      GCAPのプログラムにオーストラリアが参加した後の話しとなりますが。

      1
    • せい
    • 2026年 5月 16日

    この手の話見てるとホントに日本は軍事への投資が少ないんだなって思う
    折角飛ばした技術実証機もGCAPが決まったらお蔵入りしちゃったし、アレをガンガン改造して、高度な訓練機にするなり新技術のテストベッドにするなりしていけばいいのに
    昔は自衛隊の航空機は魔改造で別物だなんて話をする人もいたけど、今の自衛隊の航空機にはそんな事言えんな

    1
      • ななし
      • 2026年 5月 16日

      X-2の話しなら、技術実証機用途で寿命短いのが前提だったかと。
      実証プログラムを終えた後も飛行させるのは危ないだろうから、退役は当然だと思います。
      その一方で、新設されたRCS測定サイトの検証に逆利用されたので、骨の髄までしゃぶられた様な印象を持っています。

      そしてX-2だと、日本が求める次期戦闘機(数的劣勢を補うために島嶼防衛で長時間現場に貼り付く)としては機体規模が小さ過ぎるので、
      その成果を元に次期戦闘機開発だと、結局GCAPになるのだろうな、とも。

      13
    • daishi
    • 2026年 5月 16日

    KAANの射出座席はマーティン・ベイカー製だそうです。
    射出座席も特許などのライセンスを保有し製造可能な企業・国家が限られていてITAR free 戦闘機には欠かせない要素ですね。
    アルゼンチンへの戦闘機輸出でもフォークランド紛争の件でイギリスが射出座席の輸出を禁止したため、最終的にコリンズの射出座席を使用するF-16に決定するなど有用な規制になっています。

    イギリス:マーティン・ベイカー
    アメリカ:コリンズ・エアロスペース(RTX)
    ロシア:NPP ズヴェズダ
    中国:中国航空工業集団 (Aviation Industry Corporation of China) が一部製造(詳細不明)

    5
    • ノーテイスト
    • 2026年 5月 17日

    特にネット内で嫌われている“サヨク”。でも“サヨク”が悪口として機能し、悪けりゃ“アカ”“主義者”“中露の工作員”扱い、最良の言い方でも“頭お花畑(お花畑は綺麗ですよね!…嫌いな人は少数派)”“時代遅れのロマンチスト(ロマンが無くなりゃ、この世は闇)”の現代、実質的影響力は昭和中期~平成前期からは想像不可能な程低下していると感じます。それらとそっくり入れ替わり益々日本に於ける影響力・存在感を増した米国こそが、あれゆる分野で日本を縛って(と言うより締め上げて)いるのでは?。(抵抗勢力抜きの)オキュパイド・ジャパン”って、こんな雰囲気?と思ってしまう程に…。「米国支配からの離脱」「他所の大国への鞍替え・陣営替え(絶対米国に攻撃又は干渉される)では無く、地味に着実に(可能なら、こっそり)自主性構築」が中小国…そして“チェコスロバキア・アルゼンチン化”しそうな近未来の日本の生きる道の様な気がします。トルコや韓国にそっくり倣うのは、国情や米国との距離感・米軍基地の規模や重要性の違いで無理筋だとは思いますが…。

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