ギリシャメディアは2日「トルコが防衛産業を活用して欧州諸国との関係強化を図る能力が問題だ」「欧州はトルコの防衛産業を競争力のあるパートナーと見なしているため外交的に孤立させるのが難しい」と指摘し、同分野で競争力があるパートナーとしてみなされないギリシャの苦悩が滲み出ている。
参考:Turkey’s arms boom a headache for Greece
防衛産業分野で競争力があるパートナーとしてみなされないギリシャが孤立気味になっている
西側諸国に分類されるNATO加盟国の中でも国益の対立が多数存在するが、その中でも歴史的経緯、キプロス問題、エーゲ海の領海・領空問題、東地中海の排他的経済水域問題などで対立するギリシャとトルコの仲の悪さは突出しており、2020年には東地中海の海底資源を巡って武力衝突寸前まで緊張が高まったことがある。

出典:Υπουργείο Εθνικής Άμυνας
この事件が契機となってギリシャは金融不安後の緊縮財政で抑制されてきた安全保障への投資を増やし、米国やフランスからの防衛装備品購入(F-16C/Dのアップグレード、ラファール、F-35A、FDI導入など)を通じて安全保障関係を強化してきたが、トルコも防衛産業分野の協力(第5世代機開発、大型空母建造、無人機分野の提携、ジェット練習機の共同開発など)を通じて英国、スペイン、イタリアとの安全保障関係を強化しており、ギリシャメディア=Πρώτο Θέμαは2日「我々にとってトルコ防衛産業の躍進、この能力を活用した欧州諸国との関係強化は頭痛の種だ」と指摘しているのが興味深い。
“ギリシャにとって急速に拡大するトルコの防衛産業は軍事面だけでなく外交面でも大きな課題になっており、我々が長らく放置して衰退した防衛産業の再建に苦戦していることを浮き彫りにしている。トルコの強固な防衛産業は武器輸入に依存してきた祖国を解放し、武力衝突時にNATO加盟国から課されるであろう禁輸措置にも耐えられる体制を実現しつつある。その一方で我々は弾薬の自給自足にすら程遠い状況だが、もっと大きな懸念がある。それはトルコが防衛産業の能力を活用して欧州諸国との関係強化を図る能力だ”

出典:Leonardo
“既にスペインとイタリアはトルコと広範囲な防衛協力関係を構築済みで、他の欧州諸国もこれに追従することが予想されている。特に世界的な安全保障環境の混乱の中でBaykar製無人機を含むトルコ製装備品は存在感を増しており、これは欧州のパートナーにとっても魅力的な選択肢になっているため、我々の外交官はトルコと対立するギリシャへの支持獲得に苦戦している”
“ギリシャ防衛産業は長年の緊縮財政でほぼ衰退してしまい、ここ最近の投資=ハイエンド戦闘機、フリゲート艦、イスラエル製装備品などの取得は抑止力を強化するのに役立っているものの、衰退した防衛産業の再建にはほとんど役に立っていない。それでも国内造船所の再開やスタートアップ企業を巻き込んだイノベーションセンターの設立など前向きな兆候も観測され、装備品調達に投資する資金の25%を国内に投資することを義務付ける法案が成立すれば防衛産業の再建に役立つかもしれない”

出典:Türk Havacılık Uzay Sanayii
“それでもこうした努力に関わらずギリシャはトルコに遅れを取り続けている。今やトルコの防衛産業は軍事面だけでなく外交面での強力なツールとなっており、欧州の防衛産業にとっても競争力のあるパートナーにもなっている。我々の防衛産業再建は安全保障環境の混乱が続く中で喫緊の課題だ”
要するに「ギリシャの立場を強化しトルコを外交的に孤立させたいのに、再軍備が喫緊の課題となっている欧州諸国にとってトルコ防衛産業との協力=特に航空宇宙分野や無人機分野の技術やノウハウは強力な外交ツールとしても機能しているため、逆に防衛産業分野で競争力があるパートナーとしてみなされないギリシャが孤立気味になっている」という意味で、増額された安全保障への投資も「海外調達」ばかりなので国内の防衛産業活性化に寄与しておらず、現在のギリシャにとって「トルコの強み」を正面から相殺するのが困難な状況なのだろう。

出典:Presidency of the Republic of Türkiye
因みにギリシャは米議会へのロビー活動でトルコへの武器輸出=F-35A売却を阻止しようとしているものの、現在のトランプ政権はトルコのエルドアン大統領に対して融和的で「F-35プログラムへのトルコ復帰」が噂されており、ラファール導入で手に入れたエーゲ海上空の優位性=AIM-120よりも優れているミーティアの射程とノーエスケープゾーンもタイフーン導入で帳消しになる可能性が高く、フランスに期待したトルコへのミーティア売却反対も不発に終わっている。
その際もギリシャメディアは「武器生産国はギリシャの防衛ニーズよりも経済的利益を優先するため欧州に防衛の連帯は事実上存在しない」「トルコは2023年に署名したアテネ宣言でギリシャとの関係改善を約束したものの、この小康状態を利用して軍備の近代化を推し進めている」「ギリシャ単独で独自の戦闘機やミサイルシステムを開発・製造するのは不可能なので、欧州の国際共同開発計画に参加して構造的弱点を克服すべきだ」「常に国益が優先される世界で過度な海外供給に依存するのは愚かであり非常に危険だ」と指摘していたことがある。
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※アイキャッチ画像の出典:Baykar





















「常に国益が優先される世界で過度な海外依存は危険だ」
これは日本にも余裕で当てはまるね。
むしろ日本の場合武器だけじゃ無くエネルギーや食料、生きる為に必要な資源の殆どが海外頼みだからギリシャ以上に危険かな?
「過度な海外依存をしなくいい国」って、ほぼ立地ガチャで、日本はどんなに頑張ろうが、そんな国にはなれないので、
過度な海外依存をする前提の下で、どう生き残るのか、知恵を絞る必要がある国だってことです。あれもこれもの、過剰な希望は通らない国です。
某伍長の言った東方生存圏がわーくににも必要だと言うこと?
それと同じ様なのが大東亜共栄圏になりますね。
EUにとって、トルコは色々問題児ではあるが軍事や移民など様々な問題で決しておろそかにできない相手なのに対して、
ギリシャって貢献よりも足引っ張る事の方が多い国だから、トルコより扱いが良くないのは寧ろ当然かなと
仰る通りで、ギリシャ何か勘違いしてると感じる部分がありまして。
『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話』ヤニス・バルファキス元財務大臣が書いた本なんですけど。
ギリシャは自分達で粉飾やっているのに(債務の飛ばし)、ギリシャが被害者っぽい書き方に見える部分がありまして、左翼系エリートでも『自分たちの意志で粉飾をやった』ギリシャ危機を起こした事実に向き合えていないんだなあと。
ギリシャは過去に金融危機の引き金になった事があるので、まさにお荷物ですわな
いまはだいぶ経済的に持ち直してはいますけど
欧州にとってトルコは必須ですけど
ギリシャはどうでしょうか
今のトルコはもうシリア問題もアルメニア問題もアラブ諸国との外交関係も全部纏めて解決したし、もうシリアのロシア軍も負け犬イラン軍も怖くないから、後はイスラエルまたはギリシャとやらかすか、丸くなるかの二択。防空産業に力入れてるのも新興国としては普通だし、このまま丸くなるだけと信じたい。ただイスラエルさんの暴走次第ではアラブ諸国とつるんで西側に牙むいて来そうではある。
まさに仰る通りです。
日本目線では、PKK解散もありましたね。
トルコの政治体制、独裁・長期政権など色々言われていますが、長期間の大規模紛争に引きずり込まれないよう何だかんだ1つずつ上手に片付けてるなあと感じています。
EUがあんまりトルコを贔屓するなら中国を引き入れるって言ってやればいいんじゃない
正教同盟組むとかなら脅しになると思うけど中国はどうかなぁ
仮にも同盟国の攻撃に怯える国というのは一体何なんすかね。
欧州の連中ってバカだなあと思うのはNATOをデカくしすぎた所。
どう見ても敵対しあってる国同士を一緒にしたってまとまって
戦う訳無いのにね。
同盟関係は巨大=強いではなく如何に一体となって行動できるか
だと思う…その点NATOはダメ、巨大すぎて意思統一が出来ない。
そら結成時からの参加じゃなくともトルコが加盟したのは1952年
当時のソヴィエトの南下考えたら黒海の入り口抑えたいのは当然じゃないかな
ギリシャとトルコが紛争の種あったのは昔からだけどより大きな脅威があったらソッチ優先する判断はなにもおかしくないかなぁと
まあ直近の仮想敵国より、準同盟国向けの装備開発に血道を上げるアジアの国もありますしー。
地理的要所としてもトルコの価値の方が上だしなあ
軍事に頼らず外交で解決を!という主張がどんどん空虚なものになっていきますね。
このまま帝国主義の時代に逆戻りして小国は踏み躙られるだけの存在になってしまいそうで、つくづく嫌な時代だと憂鬱な気分になります。
強い産業・強い経済は、安全保障に直結するんですよね。
台湾の半導体産業が、安全保障に直結すると言われているわけですが。
トルコの防衛産業・(ギリシャと比較した相対的な)経済力と人口・中近東への外交力、この辺も安全保障に直結してるのでしょうね。
ギリシャさん
願望だけでなく、漸く現実も見るようになった?
記事の趣旨と関係ないんですけど、ここ十数年で「欧米諸国に出稼ぎ/移住した同胞からの送金(外貨収入)で地域内で比較的高い地位を維持してきた国家」が軒並み苦境に陥っている印象を抱きます。ギリシアはまさにそうですし、紛争によって国土を減らしてしまったアルメニアと、ウクライナもこの類型に含めていいと思います。背景には中間国の経済成長によって先進国の影響力が相対的に低下していることや、先進国で経済格差が広まって海外送金が減ってるとか色々あるんでしょうけど、中小国にとっては厳しい時代かもしれないですね。
対トルコ戦用に今は正面装備よりはミサイルから弾薬まで兵站関係の備蓄だね