トルコはF-16Vの代わりにタイフーン購入を交渉中で、トルコ輸出に否定だったドイツも交渉を許可したため、ギリシャはラファールとミーティアの組み合わせで獲得した優位性を維持するため「トルコへのミーティア売却を認めないでほしい」とフランスに働きかけ始めた。
参考:Greece strongly objects to sale of Meteor missile to Turkey, Dendias tells French ambassador
このままだと「別のリスク」が生じて問題が複雑化する可能性があるため、フランスが軍事バランスを修正する方向に動くかもしれない。
ギリシャとトルコの間にはキプロス問題、エーゲ海の領海・領空問題、東地中海の排他的経済水域問題など多くの対立点が存在し、2020年にトルコが「自国のEEZ圏内」と主張する海域で油田の掘削調査を始めると両国の緊張は武力衝突寸前まで高まり、これが契機となってギリシャはF-16C/Dのアップグレード、ラファール、F-35A、FDI導入を決定、一連の投資によって航空戦力の質と能力はギリシャ優位に大きく傾き、トルコのF-16C/Dアップグレードも米議会へのロビー活動で阻止。

出典:SAC Helen Farrer RAF Mobile News Team / OGL v1.0
トルコはスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を利用して米国から「F-16V新造機×40機売却」と「既存機をV仕様にアップグレードするためキット80機分売却」を引き出したが、米国への依存度を引き下げるため「V仕様へのアップグレード」を中止し「独自技術によるアップグレード」に切り替えることを選択、トルコはF-16のソースコードを取得しているため独自のシステムや武器を統合することが可能で、F-16をライセンス生産したトルコ航空宇宙産業も独自のAESAレーダー、ソフトウェア、電子機器を開発しており、既に35機のBlock30は独自技術でアップグレード済みだ。
さらにF-16V新造機の取得もタイフーンに置き換える交渉(BAE主導)が進められており、トルコ輸出に否定だったドイツも交渉を許可したため、ギリシャはタイフーンの能力を制限する方向で外交努力を開始したらしい。

出典:Πολεμική Αεροπορία
ギリシャメディア=Η Καθημερινήは29日「デンディアス国防相はフランス大使に(トルコへのミーティア売却は)両国の戦略的関係にそぐわないと伝えた。この取引はギリシャとフランスの関係を試すものになるだろう。トルコはタイフーン導入に限りなく近づいているものの、ミーティアを入手するにはフランスの同意が必要だ。トルコメディアは最近『英国はフランスを説得してミーティア売却に関する同意を取り付けた』と主張している。これが事実ならトルコに対する我々の優位性は弱まることになる」と報じており、トルコがタイフーンとミーティアの組み合わせを入手できないようにしたいのだろう。
フランスはラファールやフリゲート艦導入時にギリシャと相互防衛協定(※参戦義務を伴うような質の協定ではない)を締結しているため、この関係を利用してフランスに「ミーティア売却を認めないでほしい」と働きかけているのだが、このままだとギリシャ側が増長したりトルコが非西側諸国との関係を強化するなど「別のリスク」が生じて問題が複雑化する可能性があるため、フランスが軍事バランスを修正する方向に動くかもしれない。
関連記事:ギリシャが19番目のF-35運用国になり、早速トルコを挑発して緊張を高める
関連記事:相次ぐ発注と新規導入、タイフーンの総生産は800機を越える可能性
関連記事:トルコ国防相、英国とスペインがドイツ説得に成功すればタイフーン購入
関連記事:F-16V導入失敗に備えるトルコ、タイフーン購入を交渉中だと公式に認める
※アイキャッチ画像の出典:ILA-boy / Public Domain 空対空ミサイル「ミーティア」
NATO加盟国同士の戦争が勃発して、その両国に武器売ったのもNATO諸国という笑えない事態は果たして起こり得るのだろうか。
ここで苦労してバランス調整したところでどうせどちらかがバランスを崩そうとするし、欧米も大変だな。
日本からミサイルを売るかな。
まあトルコとギリシャは紀元前から戦争してるし多少はね?
紀元前のテュルク系とかモンゴル高原よりもっと奥の方でしょ…
トルコじゃなくペルシャね。
ほんまこの辺は複雑怪奇やな
トルコは周辺地域が荒れてるのに対してギリシャは自国の事情のみ。まあ言うのは勝手だけど大人な対応をした方が良いと思うんだけど。
不穏な国が多いとはいえ、不安定化工作で自分から付け火してる節もあるので…
古今東西、国内の不満を逸らす目的で隣国へ目を向けさせる手法はよくありますね。
規制緩和による大地震の被害増大という問題は、無かったことになるのかな。
ギリシャって軍拡出来るほど金持ってるイメージ無いけど大丈夫?
またIMFとかいう闇金にカチコミされない?
戦争はドローンで変わったと思ってたけど、離れた場所で最小限の衝突ですますなら、航空機は必要なんだなぁ
現在はギリシャ優位のようですが、ギリシャは西側諸国と概ね友好関係にありロビー活動の成功率が高いのが強みでしょう
対してトルコは独自の戦闘機も開発中な上に、いざとなればロシアに接近するのも厭わないようなバランスの取れた(もしくは綱渡りの)選択肢を持っているのが強みでしょうか
中長期的にはトルコがの軍需産業が育つにつれて装備品の輸出管理による均衡の維持は難しくなりそうです
どこかの時点で独仏とトルコによる頭飛ばしの交渉でトルコ優位の裁定がされて、ギリシャは妥協を強いられてしまいそうです
こういう横やりがあると、KAANのミサイルも自作するんだろうか。