欧州関連

ドイツ空軍でミステリアスな事故? 戦闘機「トーネード」に装着された増槽2個が同時に落下

ドイツ空軍は9月、新人パイロットを養成するための訓練飛行中だった戦闘機「トーネード」から、2つの増槽が同時に落下するという「ミステリアスな事故」が発生したが、なぜ「同時」に落下したのか原因が判明した。

参考:Kampfjet verliert Tanks: Fluglehrer verantwortlich

戦闘機「トーネード」の左右主翼下に装着された増槽が同時に落下?

2019年9月19日、シュレースヴィヒ基地から新人パイロットを養成するための訓練飛行中に戦闘機「トーネード」は飛び立った。

このトーネードはバルト海で2時間ほどの訓練飛行後、シュレースヴィヒ基地へ帰投する途中、突然、左右の主翼下に装着されていた増槽が、左右同時に落下するというミステリアスな事故を起こした。

トーネードに装着された増槽は「使い捨て」ではなく、主翼下にあるパイロンに2本のボルト(分離ボルト)で固定されているため、通常これが「同時に落下」することは考えづらく、緊急時に増槽を投棄するための機械的な装置が誤作動を起こした可能性が疑われた。

出典:VanderWolf Images / stock.adobe.com

通常、増槽を何らかの理由で投棄する場合、固定するために使用されているボルトに仕込まれた火薬に点火し爆破することで、機体から増槽を切り離す仕組みになっている。

経験の浅いパイトットが機体の操縦を行う前部座席に、教官役の経験豊富なパイロットが兵装システムを操作する後部座席に搭乗したが、このトーネードは訓練用の機体だったので、両方の座席から機体の制御(操縦)が出来るようになっており、当然「増槽投棄スイッチ」も両方の座席に備えられている。

しかし、前部座席にある増槽投棄用のスイッチは、誤操作を防ぐため跳ね上げ式の板で保護されていたが、後部座席のスイッチはむき出しのままだった。

結局、この事故は機械の誤作動などによるものではなく、後部座席に搭乗した教官役の経験豊富なパイロットが増槽投棄用のスイッチを誤操作してしまったのが原因で、人為的ミスと設計上のミスが誘発した事故であるという結論に至った。

ただ、ドイツ空軍は数年前から事故やミスに悩まされており、今年に発生した重大事故はトーネードの事故を入れると4件目になる。

4月には、空軍に管理と運用が任されているボンバルディア製のドイツ政府専用機は離陸直後、機体制御に関する深刻なトラブルに直面し緊急着陸を試みたが、機体は左右に揺られ機体と主翼が地上と接触し滑走路から大きく外れて停止したが、もっと大きな事故に発展してもおかしくない状況だった。

この事故原因は、主翼フラップの不適切な調整が原因だと言われている。

出典:Krasimir Grozev / CC BY-SA 3.0

7月には、訓練中のタイフーン2機が空中で衝突しパイロットが1名死亡するという事故が起き、その1週間後には訓練中の軍用ヘリ「EC 135」が墜落し、またもパイロットが死亡する重大事故が発生、そして9月に増槽落下事故が起きてしまった。

幸い、今回の事故で人的被害は発生しなかったが、落下した増槽は住宅の近くに落下しているため、もし住宅を125kgの増槽が直撃していたら恐ろしい結果になっていただろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:VanderWolf Images / stock.adobe.com

F-35Bは60機あれば十分? 英国、空母を建造したのにF-35B調達数削減の可能性前のページ

イスラエル、投棄後にF-35のステルス性能が回復する「機外燃料タンク」を開発か?次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    フィンランド国防軍、戦場認識力を改善するためドローンを最大2,000機調達

    フィンランド国防軍は11日、陸軍の戦場認識力を大幅に改善するため兵士が…

  2. 欧州関連

    スウェーデンが過去最大のウクライナ支援を発表、アーチャーとCV90などを提供

    スウェーデンのクリステション首相は過去最大となる43億スウェーデン・ク…

  3. 欧州関連

    日本も導入する巡航ミサイル「JSM」、ステルス性能向上のためBAEシステムズが協力

    日本がF-35Aに搭載するため導入を決定している巡航ミサイル「Join…

  4. 欧州関連

    ウクライナ空軍、冬までにF-16は届かないため防空システムの強化が必要

    ウクライナ空軍のイグナト報道官は16日「F-16はウクライナの空を守る…

  5. 欧州関連

    ポーランドとドイツが戦車を巡って喧嘩、戦車争奪戦の正直者はどっち?

    ウクライナに戦車を提供するという目的で一致するポーランドとドイツは「ギ…

  6. 欧州関連

    エストニア軍大佐、ロシア軍がドネツク州とルハンシク州で主導権を握った

    エストニア軍のマート・ヴェンドラ大佐は10日「ロシア軍はウクライナ軍を…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 10月 21日

    さすが急降下爆撃の本場
    ドロップタンクすら落ちようとする

    • 匿名
    • 2019年 10月 21日

    A-4がMig-17を投棄したタンクで撃墜したって話は本当なのかな

    1
    • しゅしゅ
    • 2019年 10月 21日

    ドイツは国防費低いからなぁ…

    その上メルケルさんだから上がる見込みもなさげ

    • 匿名
    • 2019年 10月 21日

    ドイツ軍ボロボロだな

    • 匿名
    • 2019年 10月 22日

    軍事費削減した国の末路

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP