英国の産業界や労働組合は政府に「F-35を購入して再び米国を偉大にしたいのか」「それともタイフーンを購入して自国産業を支援するのか」と訴えていたが、Financial Timesは6日「英国のタイフーン最終組立てラインは生産停止に追い込まれた」と報じた。
参考:British-made Typhoon production grinds to a halt raising fears about UK defence skills
ヒーリー国防相は「Tranche1更新問題」や「Tranche4発注」についてコメントを拒否している
英国政府が実施した国防戦略の見直し結果は「NATOの核抑止任務への参加強化を検討しなければならない」「参加強化による潜在的な利益と実現可能性について米国やNATOと協議を開始すべきだ」「今後10年間でF-35の追加取得が必要になる」「軍事的な要件をより高い費用対効果で実現するためにはA型とB型の両方を導入する必要があるかもしれない」と勧告し、NATO首脳会談で「F-35Aを12機取得してNATOの核任務に参加する」と発表した。

出典:Lockheed Martin
今のところF-35の総調達数=138機に変更がないため「F-35Aの調達はF-35の総調数増加を意味しない」「F-35B調達の一部をF-35Aに変更する」となり、国内で敏感な問題に発展しているタイフーンTranche1の後継問題は未解決のままで、Financial Timesは6日「英国でのタイフーン最終組立てラインは新規受注の不足で停止に追い込まれ、重要な航空宇宙産業の技術喪失への懸念が高まっている」と報じている。
タイフーンはBAE、Airbus、Leonardoによるコンソーシアムによって開発国4ヶ国=英国、ドイツ、イタリア、スペインの産業界に生産が割り振られ、英国のサムルズベリー工場(前部胴体の製造担当)はドイツ、イタリア、スペインが発注(127機)した恩恵に預かれるものの、英国のウォートン、ドイツのマンヒング、イタリアのカゼッレ、スペインのアルバセテに設置された最終組立てラインは「自国発注分」と「コンソーシアムに参加している自国企業主導による輸出獲得分」にしか関与できない。

出典:Eurofighter Typhoon
ドイツ、イタリア、スペインはTranche1更新や戦力増強のためTranche4を発注しているものの、英国のタイフーン調達は2009年のTranche3発注が最後で、2024年末時点でウォートンの最終組立てラインに残された仕事はカタール空軍向けの2機分しかなく、国内の産業界、労働組合、議員らは「GCAP推進は歓迎すべき決定だが、最終組立てラインに必要な技能を維持するためには『英国製を買うこと』が重要で、これは主権の行使における自由への投資だ」と訴え、政府にも「F-35を購入して再び米国を偉大にしたいのか、それともタイフーンを購入して自国産業を支援するのか」と疑問を投げかけていた。
英国=BAEが輸出を主導するカタールは昨年「タイフーンを12機追加調達する」と表明し、サウジアラビアやトルコとタイフーン調達に関する協議も進んでいるが、これが実現したとしてウォートンの最終組立てラインに仕事が回ってくるまで時間がかかり、Financial Timesの取材に応じた労働組合の関係者も「ウォートンに残された仕事は1機分」「最後の1機も主要な組み立て作業は完了済み」「欠けている部品の到着を待っている状況」「もうウォートンの最終組立てラインは雇用を維持している状況ではない」と証言。

出典:Edgewing
英国とアイルランドの労働組合=Unite the Unionのグラハム事務総長も「政府は国防費を英産業界の成長、雇用、技能、革新に結びつけると約束したが、それをどのように実現するのか問うことになるだろう」「我々は戦闘機の組み立て止めれば雇用、技能、安全保障面でどれだけのリスクがあるか何度も訴えてきた」と、ランカシャー州選出のスノーデン議員も「政府が直ぐにTranche4を発注しなければ世界レベルの軍用機を独自に設計し、組み立てて納入する重要な国家能力を失うかもしれない」と警告。
Aerospace magazineの編集長も「英国における戦闘機組み立ての中断はタイフーンの追加発注とGCAP生産開始までの一時的な措置に過ぎないことを願う」「それでもギャップが長ければ長いほど次世代戦闘機に必要なスキルと経験が失われるリスクが高まる」と指摘したが、BAEは「専門技術を維持するための経験を持っている」「既存の潜在的顧客による強い関心、関与、投資は英国でのタイフーン生産が今後10年間は継続すると確信させてくれる」と述べた。

出典:Eurofighter Typhoon
因みにヒーリー国防相は「Tranche1更新問題」や「Tranche4発注」についてコメントを拒否しており「国防戦略の見直しでタイフーンの重要性とアップグレードへの取り組みが確認された」とのみ発言し、恐らくウォートンは受注の枯渇で最終組立てラインの操業を停止する可能性が高く、一方のドイツ、イタリア、スペインは空前の需要で「3年以内に年間生産数を20機、海外から新規発注が入れば年30機まで増やすつもりだ」「英国の追加発注には期待していない」と発言。
この違いは英国と欧州大陸の国々では脅威のピークがいつ来るのか、それまでに何を実現出来るのか、限られた資金を何処に配分するのかに違いがあるからだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis





















イギリスは、日本よりも財政に余裕がないく、(資金支援などによる)販路拡大も難しいのでしょうね。
トラス首相が大幅な減税を発表したとき、ポンド安・株安・英国債安により、『40日くらいで辞任』に追い込まれました。
リーブス財務相の辞任観測で、最近も3重安になっており、結果的には留任で戻りましたが足下がぐらついているんでうしょね。
(2025年7月3日 英国資産がトリプル安、財政懸念高まる-リーブス財務相には辞任観測 bloombert)
インドで修理できなくて立ち往生してるF-35B問題が炎上したりして
まあタイフーンの保守性がF-35よりマシとは限らないか
こんな国と組んでF3は飛ぶのでしょうか?
GCAPは飛ばないのにFー3だけIOCとかの事態はありえる。
当面の間はF-35で事足りるし、将来はGCAP配備すればいいから微妙な性能のタイフーンを作りたく無いだけだよ
海外受注分の組み立てはどうすんのかw
日本もF2を閉じちゃいましたが、平時の生産体制と技術の維持は本当に難しい問題ですね。
高くとも、性能が1級でなくとも、国内製造能力を維持優先としたいところですが、日本は数も技術も半端ない中国が仮想敵国なので国内産業保護に全力できないところが辛いです。
どうしてもアメリカから買わないといけなくなる圧力が高くより高くなる…
✕高くより高くなる
◯他国より高くなる
msjである程度はまかなう算段だったみたいですしな
あとF-35のノックダウンである程度はまかなえてますが。
日本にとっては不安
英空軍、ほんとにGCAP配備までは予算節約モードで耐えしのぐ算段なのでしょうか
ただ、日本も同じですが、GCAP配備後、タイフーンやF-2やF-15Jの退役が進んでいくと、GCAPとF-35だけの編成になってしまうわけで、準ステルス(非ステルス)の高性能機orコスト効率機をまた配備したくなってくるのではないでしょうか
そのときはどうするんでしょうね
予算節約したところで、プール出来る訳でもないので、使うべき時が来たとして節約した分の予算が組んでもらえる筈も無いですよね。普段からそこそこの予算を要求して使っていないと。