欧州関連

英国が戦術核兵器の運用能力を取得、F-35A導入とNATOの核任務参加を発表

Timesは先月末「政府がF-35Aと戦術核兵器=B61の取得を検討している」「戦術核兵器と戦略核兵器を保有することは強度の異なるロシアの挑発対応に必要不可欠だ」と報じていたが、英国政府は24日「F-35Aを12機取得してNATOの核任務に参加する」と発表した。

参考:UK to purchase F-35As and join NATO nuclear mission as Government steps up national security and delivers defence dividend

ロシアの戦術核兵器を用いた脅威に対称的な力で対応するため、英国もF-35Aを取得してNATOのB61運搬能力の強化に貢献する

Timesは先月末「政府がまもなく発表する国防戦略の見直しの中でF-35Aと戦術核兵器=B61の取得を検討している」「この措置は英国の核抑止政策において最大の転換点になる」と報じて注目を集めたことがある。

“国防戦略の見直しの中で具体的な「空からの核兵器投射能力」について言及していないものの「NATOの共同核抑止に対する英国の貢献度を拡大すべきだ」と提言しており、ヒーリー国防相は「F-35Aと戦術核兵器の取得協議」についてコメントを避けたが、それでも「英国は新たな脅威の時代に適応しなければならない」と認め「世界が直面しているリスクは確実に拡大している」「確実に核リスクが高まっている」「我々が国家間の紛争に巻き込まれるリスクが高まっている」「ウクライナから得た教訓は『軍隊の能力と強さは国内産業の強さに等しい』ということだ」と述べた”

“英国はヴァンガード級原潜計画を推進してV爆撃機(ヴァリアント、バルカン、ヴィクター)を廃止したため、核兵器を発射できるプラットホームが1つしかなく、ロシアが核兵器によるエスカレーションを繰り返しためNATO加盟国の東欧諸国で戦術核兵器を使用する可能性が高まっている。この行為は確実に第5条発動条件を満たすためNATOと戦争を誘発するが、戦術核兵器による攻撃が全面的な核報復を誘発するかどうかは未知数だ”

出典:Public Domain

“戦術核兵器の攻撃に都市をまるごと壊滅させるようなヴァンガード級のSLBMで対応すれば本格的な核戦争を招く危険があり、軍上層部は「ロシアを効果的に抑止するため英国も戦術核兵器を保有すべきだ」「戦術核兵器と戦略核兵器を保有することは強度の異なるロシアの挑発に必要不可欠だ」と考えている。政府高官らはF-35Bよりも航続距離が長く、B61を統合されているF-35Aの取得を検討しているものの、戦術核兵器を運搬するプラットホームについては他の航空機も検討している可能性が高い”

英国政府は2日に国防戦略の見直し結果を発表し、核抑止分野に対する勧告事項の中で「NATOの核抑止任務への参加強化を検討しなければならない」「参加強化による潜在的な利益と実現可能性について米国やNATOと協議を開始すべきだ」と、空中分野に対する勧告事項の中で「今後10年間でF-35の追加取得が必要になる」「軍事的な要件をより高い費用対効果で実現するためにはA型とB型の両方を導入する必要があるかもしれない」と述べていたが、英国政府は「F-35Aを12機取得してNATOの核任務に参加する」と発表した。

出典:U.S. Air Force photo by Trevor Cokley

英国は24日「明日のNATO首脳会談で核兵器と通常兵器の両方を運搬できるF-35Aの取得を発表する」「F-35Aを12機取得してNATOの核任務に参加する予定だ」「英国はF-35を段階的に計138機調達する予定だが、次回の発注をF-35BからF-35Aに変更することで1機あたり25%の予算を節約できる」と述べ、NATOの核任務とは米国が提供している戦術核兵器=B61の運搬任務のことだ。

要するに「ロシアの戦術核兵器を用いた脅威に対称的な力で対応するため、英国もF-35Aを取得してNATOのB61運搬能力の強化に貢献する」という意味だが、もうひとつ注目すべき点はF-35A取得が退役したタイフーンTranche1の後継機ではなく「F-35B調達の一部をF-35Aに変更する」という言及で、まだTranche1の後継問題は未解決のままだ。

関連記事:英国が国防戦略の見直しを発表、重点をインド太平洋地域から欧州地域に変更
関連記事:英国がF-35Aと戦術核兵器の取得を検討、戦闘艦も14隻から25隻に増強
関連記事:F-35購入で米国を偉大にするのか、タイフーン購入で自国産業を支援するのか

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

米国防総省が作成した初期評価が流出、イランの核施設攻撃はほぼ失敗前のページ

スペインの5%拒否に批判殺到、米大統領もNATO首脳会談に対する妨害と発言次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トルコとの対立が悪化するギリシャ、戦争に発展すれば孤立無援になる

    トルコとの対立が悪化するギリシャの世論調査は非常に興味深い傾向を示して…

  2. 欧州関連

    スペイン、イスラエル製多連装ロケットシステムの調達を正式にキャンセル

    スペインは8日「イスラエルに対する武器取引禁止を恒久化する」と発表、ス…

  3. 欧州関連

    Rheinmetallが155mm砲弾の大量受注を発表、契約総額は85億ユーロ

    Rheinmetallは20日「155mm砲弾納入に関する総額85億ユ…

  4. 欧州関連

    ポーランドがウクライナ支援の詳細を公開、支援総額はGDP4.91%相当

    ゼレンスキー大統領は軍事支援に関して「ポーランド批判」とも受け取れる発…

  5. 欧州関連

    トルコ海軍が空母打撃群向けの駆逐艦を発注、搭載品の国産化で主権も確保

    トルコ国防産業庁はイスタンブールで開幕した国際防衛産業見本市で「TF2…

コメント

  • コメント (23)

  • トラックバックは利用できません。

    • 無印
    • 2025年 6月 25日

    >戦術核兵器を運搬するプラットホームについては他の航空機も検討している可能性が高い
    何だろう、搭載力や航続距離を見たらF-15E系かな?

    2
      • 戦車
      • 2025年 6月 25日

      トーネード IDSがB-61の運用能力を取得してるので、タイフーンで運用能力の取得をしようとするので無いでしょうか?

      1
      • 匿名希望係
      • 2025年 6月 25日

      自国のタイフーンでは?

      1
    • あうあうあー
    • 2025年 6月 25日

    トランシェ1の分だけそのまま機数を減らして予算節約しつつ、GCAP配備まで耐え凌ぐつもりなんでしょうか

    4
    • たむごん
    • 2025年 6月 25日

    イギリス財政が厳しい中で、富裕層が流出しており、政治的な余力も限られていますからね。

    ウクライナ平和維持軍も、ほぼ全陸軍部隊をローテーションで送らなければいけないという試算も出ていました。

    戦闘機の新規取得ではなく、F35BからF35Aへの変更により対応するというのは、装備を取捨選択していくということなのでしょうね。

    7
    • 名無し
    • 2025年 6月 25日

    ヴァンガードのトライデントは弾頭は英国製だったけど英国でB61運用する場合は弾頭だけ国産なのかどうなのか
    これまで運用してたならどうしてたんだろ?

    1
      • daishi
      • 2025年 6月 25日

      イギリスはトーネードIDSにWE.177核爆弾を装備して戦術核爆撃を行えるようにしていましたが、1998年にWE.177を退役させています。

      F-35は他の兵器も統合が遅れているため、アメリカと核シェアリングを新たに結んでF-35A+B61-12の組み合わせで任務を行うのだと思いますが、島国で戦術核を保有する意味は何か、も含めて注視が必要そうです

      1
    • 2025年 6月 25日

    価格次第では、いずれはB-21導入とかもあり得るか?
    イギリスは欧米の間でどう立ち回るか微妙だが、爆撃機を独自開発する体力は無いだろうし

    2
    • 匿名
    • 2025年 6月 25日

    仮に英がB61の運用能力を持った所で、独仏とは違って自国(英本土)内へ投下する可能性なんて現実的にはほぼゼロだから…😅
    例の5%問題も出てきた事だし、ある程度安気に宣言出来る立場ではあるやろね

    3
    • 森の鶴
    • 2025年 6月 25日

    このB61って、ドイツのニュークリア・シェアリング(自己決定権なし、自国領内で使用)みたいなのか、フランスのラファールのTN81みたいに自由に使えるのか、いまいちわからない。
    さすがに核保有国のイギリスだから後者だと思うけど、「NATOの共同核抑止」と言われると前者を連想しちゃう。

    5
    • L
    • 2025年 6月 25日

    自前のSLBM持ってるのに空軍戦力で核を持つ意味って何よ

      • kitty
      • 2025年 6月 25日

      純軍事学的にはまだ「欧州共通IRBM(ICBMまで不要)」でも開発・配備した方が理解可能ですね。

      4
        • 妄想ですが
        • 2025年 6月 25日

        ロシアや中国相手には、イギリスの核は少なすぎる。
        つまり、イランや核を持たない国への攻撃のため・・・・
        戦術核兵器でしょうか。

        昔の南アフリカとかは、黒人居住区に使うとか、物騒な話が合ったな・・・

        1
      • 名無し
      • 2025年 6月 25日

      オハイオ級は30年の寿命だったが(結局運転効率化で45年ほど使えるらしいが)
      ドレッドノート就役が2030-2035なので建造が少しでも遅れれば遅れるとヴァンガード級を30年以上運用することになるけど燃料持つの?
      って考えると、とりあえず今用意できそうな方法で予備の核戦力だけは維持しようとするのは別におかしくもないかな…

      2
      • イーロンマスク
      • 2025年 6月 25日

      SLBMは戦略核兵器として扱われているので使いにくいのでしょう
      使った瞬間にバレるし即報復されてロンドンに核攻撃されてもおかしくない
      一方空中投下式の戦術核爆弾ならその心配はない(本当だろうか?)
      使いやすい兵器としての戦術核で、首都などの大都市でなくて辺境の戦場で使う用途だろう

      7
      • SB
      • 2025年 6月 25日

      柔軟反応戦略の検索オススメ

      まあ簡単に言うとSLBMみたいな最終兵器だけ持ってても、相手から「使ったら確実に滅ぶ兵器だしこの程度戦争だと使わんやろw」って舐められちゃうんですよね
      だから通常兵力と最終兵器の中間の兵器を持つことで「お前必要以上にちょっかいかけたらコレ(戦術核)使うからな?」って態度を示すわけです

      15
      • ブルーピーコック
      • 2025年 6月 25日

      保有戦力への対策が個別に必要な場合、敵の負担は増えることになります。
      ————-

      英国の敵「ほな全力で潜水艦狩りするか!潜水艦だけ狩ればこっちが一方的に核を使えるぜ!」

      って場合と

      英国の敵「潜水艦狩りはしなきゃならんし、本土やすっげー遠い外国の基地に核運用能力持ちのステルス機がまだまだ残っとるやんけ!」

      って場合、どちらがイギリスにとって得かという話です。まあ敵味方ともに負担は増えるので、チキンゲームじみてはいますが。

      5
    • p-tra
    • 2025年 6月 25日

    よーするにパキスタンの核戦略みたいなもんか。
    ガチの戦略核の打ち合いをするつもりはないし、相手もしないだろうと
    思っているけど、戦場に小型核を放り込む準備をちらつかせておくっていう。
    戦術核なら即座に戦略核で報復できないよね? というホントにそうか?
    ってなる前提ありきではあるけど。
    イギリス的にはロシアがその小型核を使った戦略を既にやってるという考え
    もあってカウンターとしてもっておきたいと。

    4
      • ras
      • 2025年 6月 25日

      イギリスみたいな一応の列強国で今昔ずっと狂犬な国がパキスタンみたいな小国の核戦略みたいなことをするなんてやめてほしいのですが…
      まあ軍事的にはパキスタンより小国な気もしますね

    • 58式素人
    • 2025年 6月 25日

    やはり、フランスのように独自の戦術角を持つべきでは?。
    B-61をシェアするのなら、米国の同意は不可欠でしょうし。
    トーネードIDS+WE.177の復活を目論んでは?、と思います。
    トーネードIDSが無理ならば、WE.177の復活だけでも。
    航空機も、米国製は避けておいた方が良いのでは?、などと思います。

    1
      • 匿名希望係
      • 2025年 6月 26日

      タイフーンにとりあえずいれるにしても時間かかるからね。

        • 58式素人
        • 2025年 6月 26日

        想像ですが。
        F-035AとB-61を入手するのも
        結構な手間と時間がかかるのでは?。同じくらい?。
        それと、B-61は自国領土内での使用が原則と思います。
        この場合は英国本土と思います。
        集団安保の場合、あまり意味がないような・・。
        相手(ロシア)は自由に使用するでしょうし。

    • L
    • 2025年 6月 26日

    小型戦術核なら柔軟に投射できるって論理まじで言ってる?誰だよそんな事言いだしたの。現実的じゃない

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP