英国とトルコは7月「タイフーン輸出に関する暫定合意」に署名していたが、両国は27日「タイフーン20機を総額80億ポンドで売却する契約に署名した」と発表、この契約で英国はウォートン最終組み立て工場の救済が叶い、トルコはエーゲ海上空の均衡を取り戻すことができる。
参考:20,000 UK jobs secured as Türkiye buys 20 Typhoon jets in biggest fighter jet deal in a generation
タイフーン40機の取得は中古機20機と新造機20機の組み合わせになる可能性も浮上している
英国とトルコは7月にイスタンブールで開催される国際防衛産業見本市でタイフーン輸出に関する暫定合意に署名、スターマー首相も「英国にとってタイフーン生産は経済成長の原動力で何千人もの生活を支えている。トルコと数十億ドル規模の輸出契約を締結することで今後数年間に渡り2万人の雇用を維持することができる。そのため政府はトルコとの契約を確保するため全力を注いでいる。この契約は我が国の防衛産業を強化し、改革計画を事実し、この不確実な時代において英国と同盟国をより安全に保つ役割を果たすだろう」と声明を発表。

出典:BAE Systems
ヒーリー国防相も「本日の合意はトルコがタイフーンを購入する上で大きな一歩になる、これは英国人労働者の利益のため新たな取引を各穂するという政府の決意の現れだ。トルコがタイフーンを取得することでNATOの集団防衛能力が強化され、英国も労働者の雇用を確保することができ両国の産業基盤も強化されるだろう」と、トルコへの輸出交渉を実質的に主導するBAEも「我々は英国政府およびトルコ政府と緊密に協力し、タイフーンと関連機器の調達契約を締結する予定だ」と述べていたが、両国は27日「タイフーン20機を総額80億ポンド=約106.6億ドルで売却する契約に署名した」と発表した。
英国防省も「トルコとの契約は英国にとって8年ぶりの戦闘機取引(ウォートンでの最終組み立てを請け負えるBAE主導のタイフーン輸出という意味)となりウォートンの生産ライン救済となる。さらにエディンバラ、ウォートン、サルムズベリー、ブリストルなどの雇用2万人を維持するのにも役立つだろう。トルコにとっても高度な戦闘能力が強化され、重要な地域におけるNATOの力が強化され、英空軍とトルコ空軍の相互運用性も向上する」と述べたが、契約に何が含まれているのかは明かされていない。
I’ve just agreed a deal with Türkiye to secure 20,000 British jobs across the UK. pic.twitter.com/n9wCYL7rRj
— Keir Starmer (@Keir_Starmer) October 27, 2025
ドイツはタイフーンT5を20機調達するために37.5億ユーロ(取得コストは約1.87億ユーロ)の投資を予定しているが、英国が発表した契約内容を額面通り受け取るとトルコの取得コストは1機あたり4億ユーロとなり、これが事実なら欧州製戦闘機を運用するためのインフラ構築、タイフーンで使用する欧州製兵器、導入に必要な訓練や保守、相当期間をカバーするメンテナンス契約が含まれている可能性が高い、つまり米国製戦闘機のインフラが流用できないタイフーン導入の初期費用が含まれていると解釈するのが妥当だろう。
さらにトルコは40機のタイフーン導入を希望しているため、英国との契約は2段階に分かれているのかもしれないが、トルコはタイフーンを出来るだけ早く導入するため「カタールやオマーンと中古タイフーンの購入を協議している」と噂されており、40機の取得は中古機20機と新造機20機の組み合わせになる可能性も浮上している。

出典:Πολεμική Αεροπορία
どちらにしても今回の契約は英国にとってウォートン最終組み立て工場の救済が叶い、トルコにとってもギリシャ空軍に傾いた優位性(ラファールとミーティアの組み合わせ)を修正するのに役立ち、今後のギリシャはF-35プログラムへのトルコ復帰阻止に総力を注いでくるだろう。
因みにトルコへのタイフーン初号機納入は2030年を予定している。
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※アイキャッチ画像の出典:Keir Starmer





















20~40機の戦闘機って2万人×数年間の労力が必要なんだね。
イギリスの平均年収が4万ポンド(現在のレートで800万円)と言われてますから、2万人x4万ポンドで8億ポンドの計算ですね。
80億ポンドの取引で人件費1割なら製造業としての人件費比率は低いくらいなので、もう少し高いか、もしくは兵器システムとしての提供など雇用以外の金額もいろいろ乗っているのかもしれません。
ラファール+ミーティア 対 タイフーン+ミーティアの対決が見られるかもしれないのね。
ミーティアが敵味方で混乱するかな?
あれ、2030年納入って、KAANと競合しないんだっけ?と思って確認したのですが、KAANの初期ロットは2029年納入開始でした。
2030年にはブロック1の納入がそれなりに進む線表になっているのですが、どうして今、KAANとスペック的に競合しそうなタイフーンを導入するんでしょうね?
経済的合理性を捨ててでも数を揃える理由がなにかと考えると、あまり良い想像にはなりませんが…。
KAANのLRIPが2029年では、「間に合わない」からでは。
EJ-200系列なら整備の練習にもなるでしょうし。
F-16C/D + F-4 → F-35 + KAANの当初案がポシャったのでKAAN + F-16Vにしようとしたけどそれも怪しいのでKAAN + タイフーンにしようという計画
遅延した場合の保険、ギリシャとの対立が激化した場合のトルコの肩を持ってくれる理解者づくり
世界のどこも運用したことがない(=教科書がない)新開発機の初期ロットと納入時期が同じでも戦力化に掛かる時間が全然違うのでは。
あるいは「カタールやオマーンからの中古タイフーンの購入」で数年早めに稼働機が何機か用意できれば少なくとも訓練は始められますからインフラが整い新造機が納入されると同時に戦力化できるでしょう。
英の航空産業が少しでも安定する事は、GCAPにとって朗報ですな。
タイフーンを運用するためのインフラは、将来GCAP運用にアップグレードできるのかな。
1機700億円(4億ユーロ×177円)となれば、かなりの金額だなと感じます。
トルコの通貨安が、日本では注目ばかりされますが、USドル名目GDPも増加して経済力が増したというのを感じますね。
追記です。
スターマー首相のX、別の投稿コメント欄を見ても批判があるのを感じたんですよね。
(政治家だからそんなもんなのかと思っていたのですが)高市首相・スターマー首相を比較すれば、1投稿のいいね数に大きな差があるなと感じまして。
スターマー首相の支持率は、史上最低レベルに低いというデータがあるわけですが、イギリス人が彼をどう感じているのか垣間見られて興味深かったです。
英国はGCAPまでの繋ぎ仕事が出来てホクホク顔してそう
後は英国の追加分とサウジアラビアとの商談を成立できればBAeの生産ラインが長期間維持できるのですが
英国にとっては非常に朗報だし、トルコにとってもいい話で当事国同士はwin-winな気がする。
またいらん横槍をいれるなよ、ドイツ。
タイフーン関連で一番の懸念事項はドイツの横槍だろ。
一部(F-16の時にミーティア)で持ってませんでしたっけ?>トルコ
ラファール・タイフーン・グリペンなどの欧州機以外にミーティアが適合したという話は聞いたことがないのですが?
英国はF-35Bに載せられるように要求しているくらいで。
うろ覚えのことは、まずAIに相談するといいですよ。
AIにまだまだ判断は任せられなくても、Webソースのスクレイピングで、そうしたソースが存在したかどうかのチェックは信頼できます。
トルコのアナドルにF-35Bを載せないと。
イギリスの飛行隊を派遣できないのかな。
トルコ、金持ってるなぁ
中古ってトランシェ2か3かな
なんだかんだNATO同士のギリシャとは仲良く喧嘩しなで放っておけそうだけど、イスラエルともきな臭くなってるタイミングでトルコにユーロファイター渡すのは流石の英国仕草と言わざるを得ない
まあ英の航空産業が保ってくれるのは良いことでしか無いから有難く見守らせて貰おう
三菱T-Xのライセンス生産および販売とかやり出したら笑う。
20機で80億ポンド、今の為替相場だと1ポンド200円を超えていますから、1兆6千億円。
1機あたり800億円の計算になりますが、中東からの中古機体の購入分も含まれているんでしょうかね。