欧州関連

英国、ウクライナに提供したAS90の代替品としてArcher取得を発表

英国がウクライナに提供したAS90のギャップを埋めるため「Archerを取得する」と噂されていたが、英国防省は16日「ウクライナに提供したAS90(32輌)の暫定的な代替品としてArcherを取得する」と正式に発表した。

参考:British Army announces new artillery deal with Sweden

短期間での契約成立もさることながら「3月末までに14輌のArcherを受け取る」という点が驚き

英国はウクライナにAS90提供したため陸軍の自走砲戦力にギャップが発生、スナク首相が12日「国防予算を2年間で50億ポンド増やし、内19億ポンドをウクライナに提供した装備・弾薬の埋戻しに投資する」と発表、防衛市場の動向を報じるShephardが「まもなく暫定的な自走砲として6輌~8輌のArcher取得する」と報じていたが、英国防省は16日「AS90提供のギャップを埋めるためArcherを取得する」と正式に発表した。

出典:Richard Watt / OGL v1.0

英国防省は「ウクライナに提供したAS90(32輌)の暫定的な代替品としてArcherを取得する。最初の14輌は今月中に到着して来年の春までに完全運用能力を獲得する」と発表、ウォレス国防相も「スウェーデンからの迅速なArcher取得は、2020年代後半に取得する次期自走砲までのギャップを埋めるためのものだ」と述べており、この契約は8週間で成立したと「迅速な調達」を強調しているのが興味深い。

短期間での契約成立もさることながら「3月末までに14輌のArcherを受け取る」という点が驚きで、恐らくスウェーデン陸軍が保有しているArcherを譲ってもらうのではないだろうか?

出典:Ibaril/CC BY-SA 3.0、KMW、©Marie-LanNguyen/CC-BY 2.5、Republic of Korea Armed Forces/CC BY-SA 2.0

Shephardは「Archer調達の目的は次期自走砲を導入するまでのつなぎ=暫定的な能力の獲得だ」と指摘していたが、英国防省も「Archerは次期自走砲への橋渡し的存在になる」と述べており、予定している次期自走砲の選定(Archer、Caesar、RCH155、K9A2の提案が濃厚)はキャンセルされることないが、今回の決定は装輪式を提案予定の仏Nexterと独KMWを微妙な立場(次期自走砲に装輪式を選択するならArcherを選ぶ可能性が濃厚)に追いやることになるだろう。

関連記事:英国、AS90提供のギャップを埋めるため暫定的にArcherを取得か
関連記事:英陸軍の次期自走砲、英Archer、仏Caesar、独RCH155、韓K9A2が競合か
関連記事:ロッキード・マーティン、英陸軍にK9A2提案するTeam Thunder参加を決定

 

※アイキャッチ画像の出典:Ibaril / CC BY-SA 3.0

米メディアで自軍を批判したウクライナ軍指揮官、降格を命じられ辞表を提出前のページ

ノルウェー軍の調達部門、レオパルト2A7とK2に大きな性能差はなかった次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    北欧4ヶ国が空軍戦力の統一運用で合意、欧州の大国に匹敵する運用規模

    ロシアの脅威を目の当たりしたスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デ…

  2. 欧州関連

    独外相はレオパルト2の未承認移転を容認、仏大統領はルクレール提供を検討

    ドイツのベアボック外相は「承認なしにポーランドがレオパルト2をウクライ…

  3. 欧州関連

    F-35B導入継続か?イタリア、F-35B搭載のため空母「カヴール」改修に着手

    イタリアは、AV-8Bを運用中の空母「カヴール」に、F-35Bを搭載す…

  4. 欧州関連

    英空母が水漏れの影響で戦力化に遅れ、1番艦クイーン・エリザベスも工事が必要

    実戦配備に向けて準備を進める英海軍のクイーン・エリザベス級空母2番艦「…

  5. 欧州関連

    トルコ、実戦で効果的だった電子妨害システム「KORAL」の後継を開発中

    トルコのエルドアン大統領は12日、防衛産業企業アセルサンの新しい施設の…

コメント

    • 58式素人
    • 2023年 3月 17日

    素直な(?)疑問を一つ。
    仏のカエサルですが、射撃姿勢の後ろ姿を見ても、
    スペード(駐耡)が有るのか無いのか判らないのです。
    アーチャーの写真では、油圧駆動(?)のそれがあると判るのですが。
    カエサルの実際はどうなのでしょう。まさかスペードが無いとか。
    ここの記事でも、ウクライナ兵が”カエサルはシャーシが弱い”と言ってたような。

    1
      • ブルーピーコック
      • 2023年 3月 17日

      wikiで「射撃演習中のカエサル」の写真で兵士が踏んでる足場のようなものがカエサルの駐鋤です。アーチャーのはアウトリガーですね。カエサル8×8で画像か動画検索した方がわかりやすいかも。

      車重で反動を殺しきれないのは装輪式の共通点ですね。現行のアーチャーや普通のカエサルは6輪なのですが、カエサルは素の重量が18トンくらいしかないためか砲旋回が15度前後に制限されています。約25トンの19式は総火演で45度くらいは回していたので、その辺に数トンの差が出てるのかなと。
      だからか分かりませんが開発中の『CAESAR 6×6 Mark II』は25〜28トンほどの重量になるとか。カエサル8×8は約28トンですので結構重くなりますね。
      スウェーデンが新規に発注してるアーチャーは車体にMANのHXシリーズ8✕8を採用予定てす。

      8
        • 58式素人
        • 2023年 3月 17日

        ありがとうございます。
        軽い方が良いのだけど、重い方が安全だというわけですね。
        機動性との兼ね合いで難しいところなのですね。

        2
    • ズマ
    • 2023年 3月 17日

    ウクライナ戦争で撃破された自走砲に意外にも装軌式自走砲が目立つ
    トランスポーターなしに長期運用しづらく、装軌式故に重整備が必要で停車時間が長く爆撃される事例が目立つ
    結局の所、多少の装甲があっても戦車並みには出来ないので旧式対戦車兵器にも致命打になる傾向がある
    路外走行力さえ除けば、装輪式と装軌式に大きな生存性がないのであれば装輪式を選ぶ国も今後増える可能性がある

    7
      •  タカ
      • 2023年 3月 17日

       ホントなら、とても面白い話ですね。
      確かにこれからのドローン全盛時代に多少の装甲があってもどれほど意味があるか疑問に思います。
       今のロシアのアバウトな対砲兵戦なら榴弾片を防げる意味は大きいと思いますが、将来はロシアもドローンを強化してくるでしょうし。
       数両の自走榴弾砲にアンチドローン車両をつける方向に行くのが合理的な気がします。

      2
        • ズマ
        • 2023年 3月 17日

        リンク
        M109シリーズはもちろん、比較的新しいAHSクラブも撃破
        M777は40門以上の被害に対してFH70は2門の被害
        供与した時期や数、任務の違いを加味しても機動性を考慮するのが無難
        西側が供与した自走砲の中では装軌式が目立つ
        Twitterの動画によるとカエサルもやはり停車中にランセットを被弾したようだ

        6
        • 七面鳥
        • 2023年 3月 18日

        カミカゼドローンの操縦者を想像すると、狙いたくなるかなぁ
        大砲が生えてて遠目にわかりやすいし、デカくて遅いから当てやすそう、当てれば堅くないからダメージ入りそう、値段も高そう

    • ブルーピーコック
    • 2023年 3月 17日

    wikiの英語版より。翻訳後、一部改変
    『スウェーデン政府は24のシステムが稼働しており、24のシステムが保管されていると発表しました。そのうち14両は2023年3月に売却され、イギリス軍に移送され、8両はウクライナに移送される』

    『プラットフォーム ラインメタルHX2 8×8: 24注文。 スウェーデン国防資材管理 ( FMV、Försvaretsmaterielverk ), 2022年6月に24のアーチャーシステムを購入する意向書に署名しました。その意図は、2025年までに第3の大砲を装備することでした』

    保管してたのを買うようで。HX2版はスウェーデンが買うのかあ。

      • あああ
      • 2023年 3月 17日

      アーティキュレート型は自走で速度出せないから高機動トラック車載型に更新で当たり前でしょうね。英軍は予備保管の旧型ので各種試験と運用習熟やって本採用のは自軍装備に相互運用性あるHX2車体で間違いない。
      そこで装軌装甲式を全廃で英軍次期採用のボクサー系に共通の装輪装甲式のを入れるか、はたまたK9を新規採用するかの話になり完全に当て馬のカエサル8×8は話題にもならんでしょう。
      しかしウ戦線では最も重装甲な装軌装甲のが徘徊自爆無人火力に脆弱なのを見るにシリーズHV化でもせん事には装軌装甲は選択しづらいだろう。だがK9は砲塔無人化こそされども走行装置は既存系から脱する予定はない。APS盛々で迎撃手段も追加して多砲塔化してまで装軌装甲式が必要なのかの議論にたぶんなる。

      2
        • ズマ
        • 2023年 3月 17日

        意外にも脱出しやすいトラックタイプの方が乗員の生存性ももしかしたら高いかもしれない
        カエサルがランセットに被弾した際の映像では乗員らしき兵士が被弾後に背後に走ってるシーンも写っている
        最も当たりどころも関係してそうだが

    • J
    • 2023年 3月 17日

    欧州各国の急な需要に対して供給が全然追いついてないから
    10式戦車 16式機動戦闘車 99式自走155mmりゅう弾砲 19式装輪自走155mmりゅう弾砲
    このあたりの陸自装備を売り込むチャンスなんですけどね
    要求満たせない部分は独自改修を認めるとかやりようはある
    欧州の先進国は契約内容を守るから東南アジアへの売り込みよりリスクが低い

    4
      • 幽霊
      • 2023年 3月 17日

      日本の装備は売り込みに成功しても生産能力が低いので提供可能数は少ないのでは?
      生産能力を上げてもその頃には他の国のメーカーも生産力が上がってるでしょうし。

      1
    • トト
    • 2023年 3月 17日

    今月中に14両ってすごいなぁ、先のデンマークの時にはなんで手を挙げなかったんだろう。
    このまま装輪式の流れが続くとKNDSが計画しているCIFSは開発されないかも?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP