欧州関連

英伊日が推進するGCAP開発、18ヶ月の開発契約を46億ポンドで締結

英国防省は3日「次世代戦闘機を納入するため46億ポンドの契約が締結された」と発表、Edgewingも「戦闘機開発計画の次段階が46億ポンドの契約で始動した」と発表し、事前の報道通り「開発フェーズ全体をカバーする完全な複数年契約」ではなく「18ヶ月の契約」となった。

参考:Over £4 billion invested in next-generation fighter jet with new international contract
参考:Next stage of trinational fighter jet programme takes off with £4.6bn contract
参考:The lesson from Ukraine the Defence Plan left out
参考:The Good, the Bad and the Ugly: Der Defence Investment Plan und die British Army
参考:Mit halber Kraft in die Zukunft: Die Royal Navy und der Defence Investment Plan

この国防投資計画が軌道に乗るかどうか秋の予算審議で必要な財源が確保されるかどうかにかかっているらしい

スターマー首相は30日「国防費150億ポンドの増額」と「今後4年間の主な投資先」を発表、英国は2026年~2029年の国防費として計2,980億ポンド=約64兆円を支出し、1年あたりの国防費も2029年までに年約800億ポンド=17.1兆円まで引き上げられ、GDP比に占める2029年の国防費は2.7%に達する見込みで、軍事インフラとしても活用できる分野(重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤など)への投資=1.5%を合わせると国防関連支出は4.2%になる。

今後4年間の主な投資先については「核抑止力強化のためドレッドノート級弾道ミサイル原潜、AUKUS級攻撃型原潜、新型核弾頭、F-35A×12機調達に640億ポンド」「GCAPに86億ポンド」「自律型無人システムに50億ポンド以上」「長距離攻撃兵器、低コスト巡航ミサイル、自爆型攻撃兵器、これを調達するための生産能力などに110億ポンド」などを挙げていたが、英国防省は3日「イタリアと日本との間で次世代戦闘機を納入するため46億ポンドの契約が締結された」と発表。

GCAP開発を請け負う3ヶ国の企業(BAEシステム、レオナルド、日本航空機産業振興株式会社=JAIEC)で構成されたEdgewingも「戦闘機開発計画の次段階が46億ポンドの契約で始動した」「18カ月間の契約によりプログラムの高度な概念・評価フェーズの完了および共同の詳細設計と開発がさらに可能になる」「この契約は2026年4月に締結された6億8,600万ポンドの契約に続く2番目の共同国際契約だ」と発表し、事前の報道通り「本格的な開発フェーズ全体をカバーする完全な複数年契約」ではなく「18ヶ月のつなぎ契約」と「将来の予算枠の確保」という形に落ち着いた格好だ。

ちなみに国防投資計画は今後10年間にどこの分野にどれだけの資金を投資するのかを具体的に示す政策文書や戦略的計画文書だと言われてきたが、既に国内からは「計画全体への資金供給に関する説明は2026年~2029年までの4年間のみ」「国防投資計画の中で言及した投資先や資金供給量も2029年までの4年間のみ」「今後4年間の国防費増額分=150億ポンドのうち財源が確保されているのは103億ポンド」「この103億ポンドですら巧妙かつ創造的な会計操作による捻出で財源が曖昧」「残り47億ポンドの財源確保は後任政権に先送り」と強烈な批判を受けている。

さらに資金供給が核抑止、GCAP、AUKUS級原潜、自律型無人システムに50%以上も集中しているため、現在判明しているだけでも83型駆逐艦や32型フリゲート艦の取得断念、次世代軍事通信衛星のスカイネット6構想撤回、 AW159やストームシャドウといった一部装備の調達中止や早期退役、ミーティア能力向上計画の中止、軍人住宅の改善に向けた90億ポンド規模の投資が先送りされ、英国のディフェンスメディア=UK Defence Journalは以下のように酷評した。

“この国防投資計画はウクライナの教訓(重要能力における主権の確保)が抜け落ちている。火曜日に公表された国防投資計画は二つの異なるトーンで書かれており、一つは野心、公約、巨額の予算、そして激戦地を語るトーンであり、もう一つは先送り、延長、模索、検討を語るトーンだ。野心的な国防投資計画は素晴らしく、無人機および自律型システムに50億ポンド以上が割り当てられている。また同計画はこうしたシステムが何に依存して稼働しているかについて、これまでのどの計画よりも率直に述べており「宇宙空間こそがハイエンドの戦いにおける中枢神経系だ」と明言している”

“同計画は「手足というべき末端の兵器」に巨額を投じる一方で、中枢神経系にあたる宇宙能力については決断を躊躇している。軌道上における能力の有無が死命を制する部隊に対し資金を拠出していながら、その軌道上の能力を自国で保有すべきか否かについては明確な決断を下していないのだ。我々は武力紛争の最中において「民間衛星通信事業者が交戦当事国に自社ネットワークの使用範囲を決定する」という事態を目の当たりにしている。ドローンや無人艦艇の運用基盤はそうした危うい状況の上に成り立っているのだ”

ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも「英国の国防投資計画は将来能力の獲得において中途半端だ」「ハイブリッド海軍は未検証の技術で構成されているにも関わらず、4年間で能力の異なる4種類の大型無人艦艇を開発し、さらにジェットエンジンを採用する空母搭載向け戦闘ドローンも開発する。このような計画は世界中の海軍の中でも前例がない」「陸軍も有人プラットフォームを無人システムで置き換えられると期待しているが、これもハイブリッド海軍と同じでリスクが高く投資額も少なすぎる」「最も残念な点は弾薬調達に投資する110億ポンドを少なすぎるところだ」と酷評した。

海外のディフェンスメディアは英国の国防投資計画を「追求する方向性や獲得する将来能力は正しいものの、全体的に未検証でリスクが高い技術への依存度が高く、割り当てられた資金や時間も少なすぎる」と見ており、多く国では有人戦力の能力を拡張するため自律型無人システムを組み合わせようとしているのに、英国はいきなり有人戦力を削減して自律型無人システムを能力のコアに据えてきたため「リスクが高すぎる」と指摘されるのだ。

出典:Number 10

この国防投資計画を引き継ぐことになる可能性が高いアンディ・バーナム(次期労働党党首候補)は「残り47億ポンドの財源確保に尽力する」と公言し、この国防投資計画が軌道に乗るかどうか秋の予算審議で必要な財源が確保されるかどうかにかかっているらしい。

日本人にとってはGCAP以外の部分に興味ないかもしれないが、英国の国防投資計画はまだまだ嵐の渦中にあるので「これにGCAPが巻き込まれない」とは断言できない状況だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Edgewing

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コメント

  • コメント (7)

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    • 朴秀
    • 2026年 7月 04日

    よくやった
    国際的な約束は守らないとね

    20
    • 匿名希望係
    • 2026年 7月 04日

    ミーティアについては、日本のAAM-6(仮)に相乗り採用した方がF-35にも搭載しやすいだろうからまぁ・・・

    8
      • SB
      • 2026年 7月 05日

      なんかミーティアに関しては日本と英国(欧州)でMRAAMへの思想が違うっぽいんだよね
      前者(米国や中国を含む)は多少射程が短くても良いから到達時間優先、後者は射程優先って感じで

      2
    • YF
    • 2026年 7月 04日

    お金の話ばかりで計画が全然進んでない印象ですが、もう実証機を作ってる段階で公開は2027年だそうです。これで実証機(実証機初飛行は2028年予定)からデータ取って量産機に反映して運用開始までどれぐらいかかるかわかりませんが、開発チームは現状2035年運用開始を諦めてないようにも思われます。
    もう枠組みを変えるだのプランBだの単独開発だの言える段階はとっくに過ぎてて、イギリスのケツ叩きながらGCAPを完遂させるのが最適解だと思いますね。

    24
      • toma
      • 2026年 7月 04日

      それはBAEが前から単独で作ってた実証機とは別のものですか?

      6
    • せい
    • 2026年 7月 04日

    現場の開発は順調と言えそうな分、政治的混乱はなるべく抑えて欲しい
    今から英が抜けるのは痛いどころじゃすまないから、全ての尻拭いを日本がすべしとは言わないけど、協力出来るところは積極的に協力して、政治的混乱を最小限に抑えないとね

    4
    • あうあうあー
    • 2026年 7月 04日

    仮に英国がGCAPから撤退するか、GCAPへの関与度合いを大幅に縮小したとしても、将来の英国の防衛は成立しますが、
    英海軍の水上艦隊、英本土のミサイル防衛、人工衛星ネットワークなどは、予算をつけない→存在しない→防衛計画そのものが成り立たないという事態にもなりかねず、本来であればGCAPよりも予算の優先順位が高いはず。

    将来のDIP見直しでGCAPの予算減額、または完全撤退すらも、まだありえるシナリオではないでしょうか。

    3

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