英国政府は2日に国防戦略の見直し結果を発表、スターマー首相も「この報告書が提案した62項目の勧告全てを受け入れて実行に移す」と表明し、英国が重視する戦略地域についても「インド太平洋地域」から「本土、欧州、大西洋地域」に変更された。
参考:The Strategic Defence Review 2025 – Making Britain Safer: secure at home, strong abroad
参考:Tax rises loom to put Britain on a war footing
参考:British carriers to get ability to fire long range missiles
もう変革の中心はドローン、ドローン、ドローンと叫んでいると言っても過言ではない
英国政府は2日に国防戦略の見直し結果を発表、スターマー首相も「この報告書が提案した62項目の勧告全てを受け入れて実行に移す」と表明し、国防予算を2027年までにGDP比2.5%、2035年までに3.0%まで引き上げる予定で、2.5%までの増額分は対外援助の削減と財務省がもつ予備資金で賄われる計画だが、英メディアは「(3.0%までの引き上げには)増税もしくは社会保障予算の大幅な削減が必要になる」と報じており、もう安全保障環境の変化に対応するためには国民も覚悟する必要があるのだろう。

出典:Keir Starmer
62項目の勧告内容は今後の方向性を示すもので「具体的な内容」や「方向性の詳細」には欠けるものの、主要なものを挙げると以下のようになる。
①兵力、装甲部隊、防空、通信、AI、ソフトウェア、長距離兵器、ドローンを組み合わせることで地上ベースの抑止力が10倍強化された陸軍を創設する
②ドレッドノート級原潜、AUKUS級攻撃型原潜、最新鋭の戦闘艦と支援艦を建造し、自律型艦艇を導入し、空母を改造してハイブリッド海軍を創設する

BAE Systems
③F-35、改良型タイフーン、GCAP計画による次世代戦闘機、自律的協調プラットホーム=ACPを備えた次世代の空軍を創設する
④本土防衛のため防空・ミサイル防衛に最大10億ポンドを投資し、グレーゾーンからの日常的な攻撃に対処するため新たにサイバー司令部を創設する
⑤軍需品生産に60億ポンド、常時稼働する生産拠点に15億ポンドを投資し、最低でも新しい武器生産工場を国内に6ヶ所新設する
⑥潜水艦建造能力への継続的な投資を通じて生産を拡大し、18ヶ月毎に潜水艦を1隻建造できるようにする

出典:MBDA
⑦英国はAUKUSプログラムを通じて攻撃型原潜を最大12隻まで増強する。
⑧欧州における抑止力を強化するため最大7,000発の新型長距離兵器を国内で製造する
⑨海軍は有人戦闘機、ACP、使い捨てのドローン、最終的には空母の飛行甲板から発射可能な長距離ミサイルで構成された欧州初のハイブリッド航空団に移行する
さらに国防戦略の見直しの中では「冷戦終結後の戦力構造は非正規勢力との紛争に最適化されていたが、これから備えなければならない脅威には社会全体の戦争準備、国内防衛、回復力、産業動員が必要になる」「国防とは戦争に備えることで脅威を抑止し、それが失敗した場合には最終的な保険を提供する役割を果たさなければならない」と述べており、抑止力が10倍強化された陸軍とは「20-40-40という新しい戦闘概念」のことだと思われ、これを達成するための陸軍兵力増員はたったの3,000人に過ぎないため「AI、ソフトウェア、長距離兵器、ドローンが果たす役割が非常に大きい」と示唆している。

出典:British Army
Timesが31日に報じていた「駆逐艦とフリゲート艦の数を14隻から25隻に増強する」という部分について国防戦略の見直しの中で具体的な言及はなく、空母の改造とは「飛行甲板から航空戦力だけでなく長距離精密誘導ミサイルも投射できるようにする」という意味で、UK Defence Journalも「空母の役割が単なる戦闘機の発着艦から『長距離火力も提供できる多領域攻撃プラットフォームへの転換』を意味し、クイーン・エリザベス級空母の運用上における柔軟性と攻撃力が飛躍的に向上する」と指摘しており、もう艦種の肩書きではなく「どんな能力を戦場に投射できるか」が重要になっているのだろう。
さらに「政府がF-35Aと戦術核兵器=B61の取得を検討している」と報じられていた部分についても、核抑止分野に対する勧告事項の中で「NATOの核抑止任務への参加強化を検討しなければならない」「参加強化による潜在的な利益と実現可能性について米国やNATOと協議を開始すべきだ」と、空中分野に対する勧告事項の中で「今後10年間でF-35の追加取得が必要になる」「軍事的な要件をより高い費用対効果で実現するためにはA型とB型の両方を導入する必要があるかもしれない」と述べており、Timesは「F-35Aの取得はB61の運用を示唆している」と指摘している。

出典:BAE
因みに国防戦略の見直しは「GCAPへの投資と平行してACPへの投資も検討すべきだ」「ACPは第4世代、第5世代、次世代戦闘機と協調して運用され、海軍の空母からも運用できるよう設計されなければならない」とも述べており、調達数を削減したE-7Aについても「予算が許せば追加調達するべき」と、航空輸送力についても「A400Mの増強か民間機の活用を検討すべき」と、Hawk T2についても「調達コストに優れたジェット練習機で更新すべき」と指摘した。
英国はGCAP、F-35、E-7Aに対する投資を続けるよう勧告し、投資額から言えばGCAPの存在感は非常に大きいのだが、国防戦略の見直しの中で大きなウェイトを占めているのは原潜を含む核抑止、長距離兵器、ドローン、通信、AI、ネットワークいった分野で、管理人の印象では「もう変革の中心はドローン、ドローン、ドローン」と叫んでいるに等しい。

出典:Royal Navy
追記:国防戦略の見直しは英国が重視する戦略地域についても「インド太平洋地域」から「本土、欧州、大西洋地域」に変更されており、今後もクイーン・エリザベス級空母の極東展開が継続されるかは未知数だ。
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※アイキャッチ画像の出典:UK Ministry of Defence
E-737は母機の製造は大丈夫で?
下手するとイスラエルかスウェーデンからレーダー調達してエアバス機につけるほうがローコストになるとかないよね?
世界一のドローン後進国である本邦および自衛隊はますます取り残されてガラパゴス化していきますな
そのうち北センチネル族と大差なくなりそう
ドローン後進国であろうことは否定しませんが、「世界一の」と付けるビョーキはどうにかした方が。
この手の誘い受けレス乞食は反応すると付けあがる。
放置が一番。
国産ドローンの製造能力を持っており、各種ドローンの導入も進み、大規模演習でのドローン運用試験を進める本邦が世界一の後進国…?
あなたの言う先進国や、世界的な平均水準がどこにあるのか、是非教えて頂きたいですね。
或いは、別の世界線から書き込んでらっしゃったりします?(笑)
日本よりドローン導入に遅れている国はまだあるのに「世界一」とは大きく出たな
まぁお前の中の日本は原始時代から進歩してないんだろうがw
世界一という表現がやや広言気味なのは否定しませんが、例えばソマリアやハイチと比較しても意味がなく、その意味からは「世界という枠で見れば日本より遅れてる国もある」という指摘は的外れだと思いますね。
重要なのはドローン全盛の今、旧態依然とした戦略構想から一向に脱しきれない本邦の惨状であり、細かい表現一言一句に噛みついても仕様がないわけです。
アジアや欧州の先進諸国よりはやや劣後している。。
程度の表現だと丸く収まってたのに、「世界一」は今回は余計でしたな・・・
穿って狙った表現よりも、無意識に出た末節の方が、その人の本質をよく現していたりするんですよ。
あなたは、高所から日本disな書き込みをします。
自分はわかっているという意識が透けて見えますけど、その自分が一番、思考汚染されているんじゃないですかね。
正体現したね。
1年前からこの頭「空」っぽ野郎はこんなもんよw
>戦略地域についても「インド太平洋地域」から「本土、欧州、大西洋地域」に変更
自衛隊との共同訓練も無くなるのかな?
加盟国との連携とかで動かしていければまだいいんだろうけどね。
インドも加盟国だし
アジア版NATOとは何だったのか
イギリス=中国が、香港返還の関係で揉めていたのも理由でしょうからね(ほとぼりが冷めたのでしょう)。
『極東』という言葉は、イギリスなどの欧州目線なわけで、遥か彼方なわけです。
(WW2もそうでしたが)日本=欧州の安全保障は装備の共同開発は理解できますが…
対中国、台湾海峡問題は、実務面であまりにも離れ過ぎているので期待できないなあと感じています。
世界で唯一中国だけが西側(の権益)に挑戦してくる可能性がある国だったのが、ソ連崩壊で死に体と化したはずのロシアが西側の世界支配を否定する勢力筆頭として躍り出てくるという地殻変動が起きたからね
WW2の日独伊三国同盟は加盟国がてんでバラバラの外交戦略取ったから意味がなかっただけで、日清日露と日本は英の強いサポートに支えられてたわけだし、WW2の連合国は欧州・中国・アメリカと地球の反対側同士の同盟が成立して戦略目標を達成したんだから地理を理由に悲観する必要はあんまりないと思う
もっとも、今のウクライナでの戦争への日本国民の態度や日本政府の関与レベルとそれに対する欧州側のリアクションをみれば、中国が台湾で引き起こした戦争に欧州がどの程度の関与をするかというのは明白ではあるけど、台湾がどうなるにしろ今の日本は中国と相いれないものがある以上、共通の価値観を持つ国とつながるしかない
今のイギリスに、大英帝国の頃のような力があれば、たしかに期待は持てたかなと…
日本外交は、欧米のイスラエル支持・ガザ攻撃に追随することなく、圧力を受けても上手にやったわけですから激動の時代を上手に乗り越えて欲しいなと感じています。
まあ、アジア各国は独立してるからね
それでも欧州軍拡のビッグウェーブは日本にとっても追い風
ということで侵攻前の西側とウクライナより高い次元の協力体制作っとかないとね
日英同盟は1902年締結なのに1894年の日清戦争と関係があるのですか?
事実関係を疎かにすると論旨全体の信憑性が疑われますよ。
まともにpdfの原文読んでるの管理人だけ説
Chapter5の「Beyond the Euro-Atlantic」に『ユーロ大西洋を越えた重点地域として「インド太平洋」』、『「戦略的に重要」「中国の台頭が不安定要因」』と記述されてるし、P38には「NATO Firstは『NATOのみ』ではなく、インド太平洋の主要国との連携も重視する」と書いてるあるぞ
仰る点、勉強になります。
ウクライナ平和維持軍が話題になりましたが、ローテーションまで考えれば、イギリス陸軍の全力投入の規模なんですよね。
(厳しめに見て)イギリスが極東に割ける余力を考えれば、あまり期待できないということも、念頭に置いておくのが大事かなと感じています。
まあ前回と比べると確実に記述回数は減ってますが
これがアメリカ向けの一時的なアピールなのか、ロシアを見据えて根本的な戦略を転換するのかどうかは数年後に答えが分かるでしょう
まともに原文読む必要があるならこのブログ意味ないのでは?
まぁ実際かなり偏ったまとめ方されてますので、自衛として原文に目は通すべきでしょうが
どうせトランプにアメリカから爆買いさせられるなら、日本もドローン兵器爆買いして下さい。
その方が、多少はマシ。
ウクライナ戦争を見る限り、アジャイルな調達が必要なのに、それがドヘタな我が国では爆買いして、大量の時代遅れ品を納入される未来しか見えない。
F-35Aのbock4待つより、タイフーンのTranche5にB61搭載可能にする方が現実的なのでは…。
英国の航空戦力でタイフーンにB61とか特攻と同意でしょ
欧州の敵となると、復活ロシアかな?。
仮にウクライナ戦役を止めても、ロシアの戦争経済は停まらないだろうし・・。
欧州は、ウクライナ戦役がいつ頃に終わり、いつ頃にロシアが軍事的に復活するか
見計らっているのかな?。その時期に欧州で戦役(戦争?)が始まるのかな?。
ひょっとして、その時期は、極東で中共が暴発?するのと同時期、と考えているのかな?。
WW2のように全世界的に戦役(戦争?)が起こると考えているのかな?。
WWならば、悪い意味で、敵味方は判り易くなるでしょうが・・・。
そう考えると、欧州にしてみれば”極東は極東でなんとかしろ!”となるのかな?。
であれば、Q・EなりP・O・Wが極東に来ることはまずないのかな?。
嫌な予想ですが。
アメリカが欧州のことは欧州で何とかしろと言うスタンスに切り替えたので
であれば欧州もインド太平洋はそっちで何とかしろというスタンスに代わっていくのは仕方ないです
GCAPを筆頭に日英間の戦略的な繋がりがすぐに絶たれる訳でもないので
境遇の似ている島国同士、ドローン作りにしても協力できるところは協力していけるといいですね
必要なものは分かってきましたが、問題は作る事が出来るかですね。
まずイギリスに造船などの重工業は戻るんでしょうか?
砲弾は平時には無駄になりますが、それでも作りますか?(工場維持できるの?)
ドローンは日進月歩ですが、大量に作るのと少量研究をどう両立させるのか…
日本の場合は仮想敵国が近いので、初手に対するリカバリーや近隣の友好国での修理、補給体制も必要ですし、悩ましいですね…
20-40-40の中身は「有人兵器-無人偵察機-砲弾•ロケット弾•自爆ドローン」であり、八割が無人化と息巻いていたメディアの反応とはだいぶ温度差がありますね
システムの自動化により後方人員の20%を前線にシフト、予備役増員など、人的リソースの拡充を怠っておらず、有人装甲兵器は今後も強化し続けると明言されました
見直しの最大の目玉は「デジタルターゲティングウェブ」、要はウクライナがやってたウーバー砲撃を三軍全体でやるというコンセプトでしょう、「ドローンドローンドローン」とはあまりに単純化が過ぎるでしょう
ガジェット的に面白そうだったのは「空母甲板から運用できる長距離ミサイル」ですね
発射機をポンと追加するという話ではなさそうな気がしますが、どんな代物なのか
VLSだと航海中補充できないから空母から水平に発射できたら面白いなと思いました
空母で無人航空機を運用するため電磁式カタパルト採用を検討か、と昔のここの記事にありました
実現化はまだ先でしょうがどうせなら大きいやつ積んで電磁カタパルトで打ち上げたら現代の戦艦ですね
ボマークやハウンドドックみたいな奴が直接飛行甲板から離陸していくのかな
少し前にイランがドローン空母作ってましたね
巡航ミサイルに補助輪付けて甲板を滑走して『発艦』させれば良いのでは?
要は自爆型無人機を艦載機として搭載するって話かと。
それやるなら、日本が開発中のコンテナ式ランチャー開発する方が汎用性有るかなぁ。
実は離陸型ミサイルは米海軍でも議題に上がったことがあるんですよね
昨今の地対艦ミサイルの発達により空母打撃群はより沖合(数千km)での行動を余儀なくされ、既存のVLSや艦載機では不足するのではないかという懸念がありますので
台湾有事の図演での空母はそれはもうひどいものでしたし、黒海艦隊もあの惨状です
海軍は制海権確保意外の存在意義を模索する必要に迫られています
VLSから発射できる巡航ミサイルで困ってないから、わざわざ貴重な空母のペイロードを消費する離陸型ミサイルは要らないと常識では思う。
だけど英国だからなあw
巡航ミサイルを着艦させる洋上補給?
そのまま飛んでいけばいいのに
昔の話ですが。
WW2で米海軍は、ドイツのV1飛行爆弾をデッドコピーしてました。
日本上陸作戦時に空母の甲板からカタパルト発射して、
空爆の一助にするつもりだったとのこと。
JB-2ルーンという名前で、1,391機を製造したとのこと。
ドイツは約24.200機のV1を発射したそうですから、もし、
降伏しなければ、同じくらいは撃ち込まれたかも、ですね。
同じ考え方は出てくるものだな、と思います。
陸軍を極端な省人化するらしいけど、派遣軍とか必要な一部以外は削られるのかな
英国面なドローンを早く見てみたいな