ウクライナ戦況

ウクライナで防空アプリが登場、ロシア軍の攻撃を防ぐ戦いに市民も参加

ウクライナではロシア軍の巡航ミサイルや無人航空機の位置を軍に通報できる防空アプリ「єППО/ePPO」が登場、現地メディアは「祖国を空からの攻撃から守る戦いに市民が参加できるようになった」と報じている。

参考:В Україні з’явився додаток “єППО”, щоб повідомляти про ракети чи дрони ворога

市民の肉眼を組織化してレーダーの脆弱性を補完するアプリ、問題になっているShahed-136との戦いに役立つ可能性

ウクライナ軍はロシア軍による侵攻直後、Telegramに「STOP Russian War」というアカウントを開設して市民からロシア軍の情報を収集、市民は見かけたロシア軍の位置、撮影した写真、知りうる限りの情報を入力して送信、これがウクライナ軍の戦いに効果的だったため直ぐに国民数百万人が利用する専用アプリ「Diia(運転免許書やCOVID‑19パスなど公文書をデジタル上で取得できる政府開発のアプリ)」でも通報が行えるように環境を整備。

出典:Дія

英FT紙は「この素早い柔軟な対応力こそが侵攻序盤の善戦を生み出した」と称賛していたが、今度はロシア軍の巡航ミサイルや無人航空機の位置をウクライナ軍に通報できる防空アプリ「єППО/ePPO」が登場、現地メディアは「祖国を空からの攻撃から守る戦いに市民が参加できるようになった」と報じている。

軍と協力してアプリを開発したウクライナ人のスルディン氏は「地球は丸いため、低空から侵入してくる巡航ミサイルや無人航空機は接近してくるまでレーダーに映らないが、私達は肉眼で目標を捉えることができる。もし目標を見かけたらePPOを起動したスマートフォンを向けてボタンを押すだけ良い。そうすれば目標の情報が通報され軍による迎撃活動を手助けできる」と述べており、ePPOをインストールすれば「誰でも祖国を空からの攻撃から守る戦いに参加できる」と付け加えた。

出典:Google

つまりウクライナで問題となっているShahed-136(飛行速度は非常に遅い)の位置を市民が通報してくれれば、ある程度接近してくるまで検出できないレーダーの脆弱性を補完することができ、同一目標に対して複数の通報があれば飛行ルートの予測精度も高まり、MANPADSを担いだ兵士が有利なポジションで目標を待ち伏せできるという意味(勿論夜間では目視できないなどの欠点もある)だ。

因みにePPOは現在Android版しか提供されていないが、2週間~3週間以内にiOS版の提供が可能になるらしい。

関連記事:キーウが生き残れた理由、ウクライナ軍の工夫とロシア軍の不手際
関連記事:ウクライナ、ロシア軍の攻撃でエネルギーインフラの30%が破壊される
関連記事:ゼレンスキー大統領がG7で防空システム供給を要請、ロシアはShahed-136を2400機発注

 

※アイキャッチ画像の出典:Google

10/13更新|各国がウクライナに提供している装備や物資のリスト前のページ

ロシアはテロ政権と欧州評議会が認定、加盟国に宣言を行うよう要請次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    リマン方面の戦い、ゼレベツ川右岸のウクライナ軍は厳しい状況に直面

    リマン方面についてシルシキー大将は昨年末「敵は集中的な攻撃を再開した」…

  2. ウクライナ戦況

    バフムートの戦い、ロシア軍が戦術的に重要なクリシェイフカの高台に迫る

    バフムート方面についてロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも、ウク…

  3. ウクライナ戦況

    ロシア軍が記録的な数のShahed-136でキーウを襲撃、75機中74機を撃墜

    ウクライナ軍は25日「ロシア軍が記録的な数のShahed-136でキー…

  4. ウクライナ戦況

    ゲラシモフ参謀総長が滞在する露軍司令部近くで爆発、多くの士官が死亡か

    ウクライナ内務相顧問は1日、ロシア軍参謀総長のゲラシモフ上級大将が滞在…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ国産の小型無人機、ロシア軍の燃料・弾薬集積所を焼き払う

    ナゴルノ・カラバフ紛争で価値を示したトルコ製UCAV「バイラクタルTB…

  6. ウクライナ戦況

    HIMARS×2輌分の火力を投射可能なM270MLRS、ウクライナへ到着

    ウクライナのレズニコフ国防相は15日、HIMARS×2輌分の火力を投射…

コメント

    • 名前
    • 2022年 10月 13日

    Cocoaがまともに動かない国の民としては迅速なアプリ開発はうらやましい限りだが、実際のところロシア側が偽通報を複数回線でやることは難しくないと思うので、ちゃんと有効に働くだろうか。
    まあ、結果はどうあれ国民の一体感が増すと思うので、効果はあると思うが。

    38
      • class
      • 2022年 10月 13日

      偽通報はそこまで多くの被害が出ないのでは?
      根拠としては、
      ミサイル発射後にアプリに露助がデマを何通りかに絞って大量に偽通報を送ってくるとすると、届いた通報は1.市民が投稿する本当の情報、2.露助が送ってくる何通りかの偽情報が出てきます。この場合、ミサイルの可能性がある情報はデマを含めて数通りに絞られるので、情報通りレーダーや防空システムをを警戒させても十分効率的と言えます。また、露助がデマを絞ってこないなら、デマは分散して、数の面で本当の情報が目立つはずなので、より影響は少ないはずです。
       間違っていたら指摘お願いします
       

      3
        • 航空万能論GF管理人
        • 2022年 10月 14日

        ePPOを使用するには電子署名が必要な「Diia」による認証が必須なので、ロシア人がePPOだけをダウンロードして偽情報を報告するのは出来ないらしいです。

        49
      • てつ
      • 2022年 10月 14日

      このアプリは本邦で言うマイナンバーと連動しているようですから、なりすましは不可能ではないけれどかなり敷居が高いと思います。
      この手のシステムをハッキングできるなら、その手間暇で軍用システムをハッキングした方がいいし、占領地の住民から取り上げたスマホで偽情報を上げても、予想進行方向から続報が上がってこなければ誤報扱いになるでしょう。
      そもそもこれは早期警戒レーダー網の補完システムで、通報を受けると軍がレーダーや目視で確認するのが前提でしょうし。

      19
    • 黒丸
    • 2022年 10月 13日

    ウクライナ防空戦はどんどんバトル・オブ・ブリテンになってきたな。
    市民の被害や損害が少しでも減りますように。

    47
    • ほげ
    • 2022年 10月 13日

    人力警戒網とか一昔前には考えられない戦争の形態だよね
    でもロシアの占領地でこのアプリ入ってたらひどい目に合いそう

    16
      • 横田
      • 2022年 10月 13日

      いやむしろ先祖返りかも
      レーダーが登場した二次大戦でも文字通り人の目と耳で警戒網が作られてたわけで(特設監視艇隊や聴音壕など)

      13
        • eyeball mk1
        • 2022年 10月 14日

        大戦時、アメリカ本土の防空監視網は人力だったそうで・・・戦後もレーダーの配備が進まずしばらく監視隊は存続したんだとか。

        しかし機械やシステムの高度化が進んだ時代に、技術の助けを借りて再び人力が有効な武器になるとは興味深いですね。

        20
    • けい2020
    • 2022年 10月 13日

    あーこれで巡航ミサイルの飛行ルートが事前にわかるのか

    数日前に、ロシアの巡航ミサイルを待ち伏せしてMANPADSで撃墜してる動画を見かけたんだけど
    どうやって待ち伏せしたのか不思議ではあった

    動画のTwitterリンクは返信に貼ります

    22
      • けい2020
      • 2022年 10月 13日

      リンク
      ロシアの巡航ミサイルがMANPADSでウクライナ軍に撃墜された。

      6
        • 匿名
        • 2022年 10月 14日

        めっちゃはしゃいでるやんw

        8
      • 月虹
      • 2022年 10月 14日

      今回はミサイルの目撃情報をアプリで送信→ミサイルの推定軌道のはるか先にいる迎撃可能な舞台に迎撃指示→MANPADSを構えていた兵士によって目視での撃墜といった流れなのでしょう。巡航ミサイルは亜音速で軌道が一定ですが、軌道直下でも飛翔音が聞こえる時間の2/3~1/2の時間で頭上を通過して行くのでその後に撃ったら間に合わない確率が高くなります。アプリもですがタイミングを逃さずに撃墜を成功させたウクライナ兵(ヴァーニャさん)の腕前は凄いと思います。

      ちなみに撃墜で使用されたMANPADSは9K38イグラの模様でスティンガーと違いシーカーが非冷却式で即応性に優れている部分は現場の兵士に評価されている様です。

      17
    • りんりん
    • 2022年 10月 13日

    wikiによればShahed-136の最高速度は時速185km/hとのこと。
    なるほど、これならスマホからの通報で迎撃も可能ですね。

    18
      • G
      • 2022年 10月 14日

      とはいえ
      ロシア軍展開地域→ウクライナ国民がまだいる地域→ロシア軍低速飛行体の攻撃目標
      までの各距離があるからこそできたことでしょうし、目標が比較的前線近くでは迎撃態勢の準備完了までに着弾する可能性は高いと思われますので、その危険にさらされる通報者も自身の身を大切にしてほしいところではありますね

      2
    • トーリスガーリン
    • 2022年 10月 14日

    Mk.1アイボールセンサー再びか
    ウクライナ戦争では過去になったと思っていた色んなものが顔を出してきますね…

    7
    • 名無志野
    • 2022年 10月 14日

    現代版対空監視哨…!
    GIS Artとスターリンクの組み合わせでも思いましたがITに強い国らしい実装ですね

    11
    • 名無しさん
    • 2022年 10月 14日

    我が日本では「日本野鳥の会」と言う防空監視員養成のダミー法人があるから
    彼等のスマホにこんなアプリ入れさせるのも良いかもな

    7
    • 2022年 10月 14日

    ウェザーニューズの雨雲リポートみたいなもんか。
    ネット社会ならでわの柔軟な発想やね。
    日本もいざって時のために、自衛隊や消防、警察に直で通報できるアプリとか作ればいいのに。
    まあ現場が混乱するか。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP