ゼレンスキー大統領は「米国や同盟国から提供されたHIMARSや155mm榴弾砲が戦況の安定に大きく寄与しており、1日あたりの戦死者数が30人まで減少した」と明かし、不均衡だった両軍の火力投射量が是正されつつあると主張した。
参考:Потери Украины сократились до 30 погибших в день – Зеленский
ウクライナ軍の火力投射量は1日1,000発~2,000発から6,000発まで改善、不均衡だった両軍の火力投射量が是正される
両軍の火力投射量が最も不均衡だったのは5月~6月で、ウクライナ軍は1日1,000発~2,000発の砲弾を敵に撃ち込んでいたが、ロシア軍は1日1万2,000発もの砲弾を撃ち込んできたため毎日100人~200人以上の戦死者が発生して東部戦線では後退に続く後退を強いられてきた。

出典:Ministry of Defense of Ukraine / CC BY-SA 2.0
この問題の原因はウクライナ軍が使用していた旧ソ連規格(152mmや122mm)の砲弾不足、西側諸国による旧ソ連規格砲弾の供給限界、ロシア軍がかき集めてきた榴弾砲よりも射程の長い多連装ロケットシステムの存在の3点で、火力投射量で劣ったウクライナ軍の地上部隊は手も足も出せないまま「大砲の餌」になり毎日膨大な死傷者を出し続けたのだ。
しかしNATO規格対応の榴弾砲へ移行(榴弾砲と自走砲を合わせて400門以上)が進み、ロシア製多連装ロケットシステムよりも射程と命中精度で優れるHIMARSやMLRSが到着、円滑に供給され始めた155mm砲弾やロケット弾のお陰で1日6,000発も撃ち込めるようになり、不均衡だった両軍の火力投射量が是正された結果「1日あたりの戦死者数が30人まで減少した」とゼレンスキー大統領は主張している。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
さらに「東部戦線の安定化は他の戦線でウクライナ軍に反撃の余裕をもたらす」とゼレンスキー大統領は述べた通り、ロシア国防省が16日にドンバス方面の部隊に攻撃再開を命じても目立った前進は観測されておらず、逆にウクライナ軍はHIMARSやMLRSの射程距離を生かしてロシア軍の司令部や物資集積拠点を破壊するなど反撃開始を予感させるが、米国が最も懸念しているのは「バラバラに提供された西側製装備の保守」や「HIMARSやMLRSで使用するロケット弾の消費量」らしい。
提供した装備品の保守体制やスペアパーツの供給に問題が起これば再び両軍の火力投射量に不均衡が生じる可能性があり、ロシア軍の前進を阻止するのに効果的な働きを見せているHIMARSやMLRSのロケット弾供給に問題が生じれば安定してきた戦況が再びロシア軍に傾きかねないため、20日に開催されたラムシュタイン会議では新たな兵器供給よりも上記2点について「重点的に協議が行われた」と報じられている。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
果たして前進再開を命じられた東部戦線のロシア軍はウクライナ軍の砲撃のせいで前進できないのか、防衛ラインの脆弱部分を探し当てる作業を行っているだけで再び前進を始めるのか、逆にウクライナ軍が停滞していたハルキウ方面や、ザポリージャ州、ヘルソン州で反撃開始を開始するのか、今回の戦いにおける専門家の予測は尽く外れているため結果を見るまでは何とも言えない。
因みに国防総省は16番目のウクライナ支援パッケージの内容を22日に発表、HIMARS×4輌、HIMARS用弾薬、指揮所車輌×4輌、105mm砲弾×3万6,000発(恐らく英国が供給するL119向けの砲弾)、追加の対戦車兵器、スペアパーツ、未だに正体が分からない徘徊型弾薬Phoenix Ghost×最大580発が含まれている。
関連記事:ウクライナに約束したHIMARSは20輌以上、ATACMS提供を否定せず
関連記事:ウクライナ軍がロシア軍の戦術大隊3個を包囲、1,000人以上が孤立か
※アイキャッチ画像の出典:Ministerie van Defensie
ほんと、フェニックスゴーストって何なんでしょうね?ここまで何も出てこないのも凄くないですか?
実は大戦果が上がっている、とTwitterで海外の方が発信しているのを見かけましたが、その割にに姿形も戦果もでてこないんですよね。
実は存在そのものがフェイクでロシアに「ヒラヌマ」のような存在として映るようにしているとか…
ヒラヌマは米軍が勘違いしていただけでフェイクではないけど
ポーランド製の徘徊ドローンの戦果はちらほら出てきてるな
ロシア軍は車両を伴わない歩兵だけの進軍も増えてきているようだし、裏には対車両兵器の活躍があるのかもしれない
あとはHIMARSにより前線付近の物資集積所が破壊され、戦闘車両用の燃料・弾薬が進軍するには不足するようになったのかもしれませんね
ゴーストだけにその正体は幽霊。。。
誰も知らないw
ロシア軍も無理して攻めて疲弊してるはずだしウ軍の反転攻勢がブッ刺さりそうです
砲は戦場の女神とはよく言ったものだなぁ
ウクライナ軍の死者は1日30人まで減ったらいいとして、ロシア軍の1日の死者の比率が気になります。HIMARSやMLRSがこれからの時代の主兵装になるんですかねぇ。
射程の与える心理的プレッシャーの恐ろしさ。
エスカレーションを避けるという欧米の方針に基づくなら、新たな武器を供与するよりも
「既に効果があり、ロシアに有効な対抗策がない」支援を継続する方が理にかなっているでしょう。
ハイマースに対してはロシアも何度も警告していますが、最小限の供与から始めたことによって、ロシア側にエスカレーションする口実を与えませんでした。
まさかロシアも4輛程度で大騒ぎするわけにもいかず、かといって、いったん導入されれば10輛でも20輛でも止めようがない、うまい支援方法だと思います。
今後、航空戦力を支援するにあたって、やはり最初はA-10の供与から始めるのがベターなんでしょうかね。
欧米諸国の支援と補給体勢が非常に太いのは理解できましたが、スティンガーやジャヴェリンのときと同じで欧米の在庫を心配するフェーズに入っているのかなあという。
米軍だけ見てもウクライナ軍の数十倍の軍備があるので予備弾薬備蓄もそれなりにあるんでしょうけど、米軍にしろNATOにしろ西側のドクトリンを採用してる国って火力の柱は航空攻撃であって砲火力じゃないんですよね。もちろん砲火力は重視されているけど、地上軍は空軍と協働して迅速に敵を無力化することが基本なので、航空戦抜きに砲兵どうしの火力勝負を何ヶ月もやるような戦いはさすがに想定していないはず。まして相手はその砲兵勝負をトゥハチェフスキー以来心待ちにしていたロシアですからね。やはり「相手が最も得意とする土俵に合わせて戦っている」状況は変わらないんですよね。
せっかく戦局好転の兆しが見えてきたところで弾切れの話はあまりしたくありませんが、恐らくNATOや米国の関係者も具体的なXday(このペースで弾薬消費していった場合に供与可能弾薬が底をつく期日)が見えている中で問題提起しているんでしょうね。戦術の話だとよく、相手の攻撃に同じ手段で対抗して相手を防ぐのは二流で、一流は上位階層の攻撃手段で相手を沈黙させるなんて観念があります。この場合は航空攻撃(のために必要な全ての手段)が上位階層の攻撃手段にあたると思いますが、今の戦い方が続かない以上はどこかで空軍力の供与なり提供の話になってくるのかなと
「戦争ほど尊い人命を無駄にするものはない。たったこれだけの弾薬を使っただけで、一人の戦死者も出さずにすんだのだ。なんと安上がりなことか」
朝鮮戦争でジェームズ・ヴァン・フリート大将が弾薬を使いまくった事を米議会に批判された時の言葉だが、21世紀の戦争でもまだ通じるとは。やはり火力。火力は全てを解決する(誤った解釈)
砲兵の投射量比が1/2まで行ったのなら、両軍の観測・指揮ネットワークの能率を加味すると、差はもうあまり無い事になりますね。
>ロシア軍停滞
以前、ポパスナ突破~T1302遮断危機の時に、リシチャンシク~シヴェルスク間の道路の貧弱さが指摘されていましたが、逆に攻撃通過する場合もそれは障害になります。リシチャンシク方面のロシア軍は、シヴェルスクを直接攻撃するよりも、道路沿いにベレストーブ~ビロホリフカをを抜いてT1302をSoledarまで打通したいんじゃないでしょうかね? 兵站の関係か、ロシア軍の攻撃が道路に拘束される傾向は、泥濘期が終了しても変わっていませんし。まあベレストーブへの攻撃自体進捗が不明確でしかありませんが。
スラビャンスク北面の停滞は、本当よく分かりませんね。防御線東端ボホロディクネ南郊の高地なんか、伝えられるロシア側の投射量ならヴェルダンか沖縄戦のシュガーローフ高地みたいな事になっていそうなんですが一月持っています…
弱点の捜索といっても、ウクライナ側の交代の到着と火力の回復で、4~5月のイジューム南方戦線のような、四方八方に捜索攻撃してみたが打開できずになる可能性はそれなりに。
しかし砲弾も砲身もどこまで供給出来るか…
ウクライナが早期に勝利する事を祈るばかり
もっと早く提供されていればと思わないでもない
>今回の戦いにおける専門家の予測は尽く外れているため結果を見るまでは何とも言えない
これ重要だよな
ことごとく、ではないよ
長期戦を予想する声は最初からあったし、けどそれはこの戦争を欧米による陰謀論と見てると否定されて無視された
聞く方が声の大きい方になびいただけ、多数派がいつも正しいわけではない
各種対空兵器で航空戦力に制限がかかる特殊な状況で地上兵器のガチバトルとなれば射程と弾数勝負になりますからね。
西側としてはウクライナでロシアを押し留めプーチンの野心を砕かないといけないのですが、COVID-19で物流や製造ラインも制限を受け、ひたすら物価上昇では増産は困難かもしれません。
ロシア軍ウクライナ侵攻
「ウクライナ終わったな。。。キエフは数日以内に陥落する」
ロシア軍キエフ攻略に失敗し国境まで撤退 巡洋艦モスクワ撃沈
「ロシア弱過ぎwwソ連時代から進歩ねぇな!ウクライナ越境攻撃はよ!!」
東部戦線でロシア軍攻勢開始
「ウクライナ終わったわ。ウクライナざっこ。スチームローラーでキエフまで押し潰されるな。やっぱロシアつええは」
ハイマース等でウクライナ軍反撃開始
「戦局好転してきたはww」
太平洋戦争の頃もこんな感じに一喜一憂してたんかねぇ
ついこないだの悲観論まみれが嘘のようだな
変わらないのは、ウクライナ人は故郷の存亡を賭けて死に物狂いで戦ってる事と、
撤退しない限りロシアへの制裁は終わらないということ
撤収してもロシアへの制裁は終わらないどころかますます厳しくなる可能性もありますが、第一次大戦後のドイツのようにしないためにも撤収と引き換えに制裁解除は割とアリな線かもしれません
冷静に言及している人もいましたが、ネット界隈は特に根拠もなく大きな声で騒ぎ立てる人が多いので
どうしても冷静さを欠いた主張が目立つのは仕方ないと思います。
太平洋戦争の時は、今のロシアと同じで「大本営は勝った勝ったと言うけど、相変わらず生活は苦しいし、B-29は飛んでくるし、ちっとも好転しないじゃないか」と皆、思っていたけど口にできない状況だったと言われていますよ。
日本軍だって、開戦前の科学的分析で戦争が半年越したら敗けると正確に予想してたのに、それを認めようとしない愚者が戦争指導者やっていただけ
偶然の勝利に期待する人間こそ国を滅ぼすとよく判る
馬鹿な大衆から識者気取りの馬鹿な大衆に進化したミリオタ多すぎワロタ
上への返信再送したら返信設定解除されてた
一億総評論家って聞いたことないのか
メディア、ネットの時代を的確に予想した格言だが、
ここで発言するとあんたも例外でなくなるぞ