ウクライナ戦況

ウクライナ国防相、フランス提供の多連装ロケットシステムが到着した

レズニコフ国防相は29日「フランスが提供を約束していたLRU MLRSがウクライナに到着した。これはゼレンスキー大統領とマクロン大統領の友情の賜で、ルコルニュ国防相に加えフランス政府や国民にも感謝する」と発表した。

参考:Еще одна дальнобойная система залпового огня прибыла в Украину из Франции

最大射程80kmのGMLRS弾を運用できるランチャー数は計31輌、但しGMLRS弾の供給が問題

フランスは10月に多連装ロケットシステム「LRU MLRS(欧州向けの派生型M270A1に相当)」をウクライナに2輌提供すると明かし「今月20日にウクライナ軍に引き渡した」と報じられていたが、レズニコフ国防相は29日「フランスが提供を約束していたLRU MLRSがウクライナに到着した。これはゼレンスキー大統領とマクロン大統領の友情の賜で、ルコルニュ国防相に加えフランス政府や国民にも感謝する」と発表した。

これで最大射程80kmのGMLRS弾を運用できるランチャーはHIMARS×18輌(+新規調達分18輌を数年後に引き渡し予定)とM270MLRS×13輌(英国6輌+ドイツ5輌+フランス2輌)の計31輌になり、今のところロシア軍に破壊されたものは確認されていない。

因みにウクライナ軍が保有するHIMARS(6発)とM270MLRS(12発)でフル装填の攻撃を行うにはGMLRS弾が264発も必要で、これを毎日1回実施すると1ヶ月間で米軍の年間調達量(3,000発~5,000発)を上回る7,920発のGMLRS弾を消費することになる。

ロッキード・マーティンが1年に生産できるGMLRS弾は最大1万発で「要請さえあれば増産に対応する」と述べているが、実際に増産体制が確立されるまでには年単位のリードタイムが発生する上、殺到しているHIMARSの需要にも対応する必要があり、ウクライナ軍は運用できるランチャーが増えても好きなだけGMLRS弾を使用できる訳では無い。

関連記事:米国防総省、HIMARSやGMLRS弾の生産加速に必要な投資を発表
関連記事:ウクライナが切望していた高度な防空システム、仏伊がSAMP/T提供を準備中

 

※アイキャッチ画像の出典:Oleksii Reznikov

両軍が激しく争うバフムートの戦い、弾薬や物資を無限に消耗するブラックホール前のページ

潜水艦をUUV母艦化したい米海軍、水中発射・回収に対応したMUUVを開発中次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ザポリージャの戦い、ウクライナ軍の機械化部隊が突破を試みるも失敗

    南ドネツクと同時並行でザポリージャ州オレホボ周辺の反撃も続いており、カ…

  2. ウクライナ戦況

    アウディーイウカ西郊外、ロシア軍が国旗を掲げるも3集落の運命は不明

    アウディーイウカ西郊外についてロシア人ミルブロガーが運営するRYBAR…

  3. ウクライナ戦況

    侵攻520日目、ザポリージャ、スバトボ、クピャンスク方面の動き

    ウクライナ軍はザポリージャ州オレホボ周辺でロシア軍が準備した防衛ライン…

  4. ウクライナ戦況

    南ドネツクの戦い、ウクライナ軍がウロジャイネの集落内に侵入

    南ドネツクで戦うウクライナ軍がウロジャイネに侵入して集落の一部に定着、…

  5. ウクライナ戦況

    ロシア国防省がクピャンスク方面のタバイフカ解放を発表、ウクライナは否定

    ウクライナ軍やDEEP STATEはクピャンスク方面について「ロシア軍…

  6. ウクライナ戦況

    ロシア軍の空爆を受けるマリウポリ、スティンガーではなく通常の防空システムが必要

    地対空ミサイルによる抑止がないウクライナの都市マリウポリではロシア軍が…

コメント

    • 名無し2
    • 2022年 11月 29日

    NATO→自由民主主義を逸脱しない範囲内で足りない予算をやりくりするのも限界が近い
    ロシア→人権も何もかも無視して無理やり生産させても追いつかない(国家予算の3割、なおGDPは戦争特需で増加の模様)
    GDP増加!経済成長!これは支持率増加間違い無し。30年間ゼロ成長のどっかの島国も戦争を仕掛けて経済成長したら?

    6
      • Ard
      • 2022年 11月 29日

      ネタにしても酷い。戦争なんかせずとも社会費吹き飛ばして出来た金でしっちゃかめっちゃかな大軍拡するだけでGDPになるやろがい。

      55
        • 戦略眼
        • 2022年 11月 30日

        社会保障費吹っ飛ばすと、貴方の両親の介護費用を丸被りする事になるか、見殺しにする事になります。
        やっぱり、人生定年制が必要か。

        2
          • 2022年 11月 30日

          定年するからボケて要介護になってしまう。
          死ぬ前日まで働いてポックリ逝ったほうが幸せ。

          1
          • Ard
          • 2022年 11月 30日

          見殺しでは無い。自分で物を食べられなくなったら寿命である。

          2
          • FF-X7
          • 2022年 11月 30日

          「社会保障費を削って…」って言う人はみんなこの視点が抜けてる。

          皆さん社会保障が無くても困らないほどのお金持ちなの?それとも想像力が残念なの?
          高齢者を足蹴にすることは数十年後の自分の首を絞めるようなもの。

          「社会保障費に手を付けるな」とは言わないが、もう少し自分に跳ね返る事態を考えないと。
          ま、九分九厘ネタでしょうけど…。

          6
          • HAi
          • 2022年 11月 30日

          というより、明らかに無駄な社会保障を消し飛ばす必要があるんだけどその線引がねぇ。
          介護医療や癌治療等難病治療は必要だとしても、老人の井戸端会議開催地にされる定期検診を全部カバーしますはあまりにもにしょうもない

          3
        • ほい
        • 2022年 12月 01日

        GDPはどう分配されるかも重要ですね。
        小国だと一企業のGDPが国のGDPに数字の上で大きな影響を与えます。

      •  
      • 2022年 11月 30日

      >GDP増加!経済成長!これは支持率増加間違い無し。30年間ゼロ成長のどっかの島国も戦争を仕掛けて経済成長したら?
      ご遠慮します。ロシアが成功したら参考にさせていただきます。

      23
      • 2022年 11月 30日

      侵略戦争開始してから連邦国家統計局、経済発展省もマイナス成長を発表してるけどね。

      14
      • nachteule
      • 2022年 11月 30日

       GDP上げる為に世界から孤立する道を選ぶなら1人でやれや。

      5
      • k.ziro
      • 2022年 11月 30日

      それは昔にドイツのひげおじさんがやったことでは?

      6
    • おわふ
    • 2022年 11月 29日

    早いこと通常爆弾もしくは滑空爆弾を使用出来る航空機を提供すべきでは?
    戦闘機は無理だというが、かえってコスパ悪いですね。
    何かしらのCOIN機の提供は無理ですかね。

      • りんりん
      • 2022年 11月 30日

      丁度いま、ひとつ前の記事に似たような内容でコメントしたところですが、互いの防空網が生きているので、もしウクライナに攻撃機の供与を行ったとしても活躍のチャンスはあまり見込めないのです。
      特に東部のドンバス地方に関しては、ロシアの長距離ミサイルはロシア領内に配置されている部隊が多い。
      あからさまな越境攻撃を実施しないと、これらを潰すのは非常に難しいわけです。
      アメリカがそれを許容するまでに至るかが、今回の戦争のひとつの境になるかも知れません。

      18
    • 2022年 11月 29日

    COIN機使う前提として、ウクライナ側か全面的に制空権を取れてる必要あるのだが…ロシア側の対空兵器はまだ残存している可能性あるのでは?

    5
    • タイヤキ
    • 2022年 11月 30日

    ハイマースの砲台があちこちあるだけでロシア軍の動き制約出来るから、ハイマース砲台がいくつもあるのはよくないかな?
    ハイマースの機動力考えても、毎日打てる数には制約あるし、そろそろミサイル打ち過ぎて、ハイマースの整備が必要な車両も出てきそう。

    3
      • 無無
      • 2022年 11月 30日

      台車の多いほうが整備のローテーション組めるから戦力を落とさずに戦闘を持続できる
      ロシアには悪いがフランス製の威力や運用性能を確かめさせて貰おう

      5
    • 2022年 11月 30日

    ロシア側からしたら、どの車両に弾頭が積まれてるか分からないと結構な脅威だよなぁ。
    うまく立ち回れば撃たずにジワジワ押すことも出来るかも。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP