欧州関連

転売目的か? ウクライナ空軍のMiG-29が持ち込んだ工場で盗まれる

ウクライナ空軍が戦闘機MiG-29をアップグレードするため工場に持ち込み盗難にあうという前代未聞の事件が発生したと報じられている。

参考:MiG-29 was stolen at an aircraft factory

MiG-29をアップグレードするため工場に持ち込んで盗難にあう?

ウクライナ空軍は運用から30年が経過した戦闘機「MiG-29 フルクラム」のアップグレードを進めており、今年2月に軍用機の修繕を専門に扱う国営企業「リヴィウ航空機修理工場」にMiG-29を持ち込んだのだが、そこで略奪事件が大きな注目を集めている。

現地メディアの報道によればリヴィウ航空機修理工場に持ち込まれたMiG-29は、転売目的で機体に搭載されていた電子装置や部品が取り外され持ち去られた状態で発見されたという。しかし、この事件が発覚後、持ちされた一部装置が工場近くの場所で投げ捨てられているのが発見され、現在はウクライナの国家捜査局(GBR)が捜査を行っているらしい。

そのためMiG-29のアップグレード作業は中断中で再開予定の目処はたっておらず、ウクライナ空軍の近代化スケジュールに影響が出るかもしれない。

出典:bibiphoto / stock.adobe.com

ウクライナ空軍が計画しているMiG-29のアップグレードは3段階に分かれており、第1フェーズのアップグレード「MU1」は搭載レーダーの換装、衛星航法システム、新型レーダー警報装置、機内搭載用の電子戦装置と機外携行型の電子妨害ポットへの対応が含まれており、第2フェーズのアップグレード「MU2」はミッションコンピュターの刷新を行って空対地誘導ミサイル「Kh-29」や精密誘導兵器「KAB-500KR」などの運用能力が付与される予定で、第3フェーズのアップグレード「MU3」についてはよく分かっていない。

ただこのアップグレードプログラムは1機あたり200万ドル以上(約2億2,000万円)の費用がかかるため、保有する37機のMiG-29を全てアップグレードしないと言われている。これはウクライナで次期戦闘機導入計画が進んでいることに関係している。

ウクライナは今後10年間で西側製の第4.5世代戦闘機を調達する予定で米国や欧州の戦闘機を検討しているらしいが、最も有力な候補はロッキード・マーティン製の戦闘機F-16Vらしい。今の所調達数量はハッキリしていないがウクライナは新しい戦闘機導入に最大75億ドル(約8,200億円)投資するつもりなので、ここでも欧米の防衛産業企業が採用を勝ち取るため火花を散らすことになるはずだ。

補足:ウクライナ政府は最近82億ドルの国防予算(国防省に48億ドル:内務省に34億ドル)を更に16%引き上げて約90億ドルとすることを計画しており、これはGDP(国内総生産)比6.0%水準だ。

ウクライナの次期戦闘機入札は2021年または2022年を予定している。

 

※アイキャッチ画像の出典:Downloader2282 / CC BY-SA 4.0 ウクライナ空軍のMiG-29

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    そろそろアップグレード終わっただろう、パーツ外して我が国でコピーするアル
    それポンコツの型落ち部品だよ、捨てて帰ってこい!

      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      中国はウクライナからヴァリャーグやSu-33のプロトタイプT-10K-3を購入して遼寧やJ-15を造っているから、別に盗まなくても金さえ積めばウクライナは何でも売ってくれると思うぞ。

      4
    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    間違いなく軍の関係者が絡んでいる、ウクライナ軍もぐだぐだ状態だよなあ。

    戦闘機1機から部品を外して盗んでもマニア位しか買い手はいないと思うけど。

    運動性に優れていても近代化していないMig-29は新世代戦闘機の相手にはならないから第4.5世代機の導入は当然だけどウクライナもF-16Vなのか、最近大人気ですな。

    1
    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    旧ソ連のユルさ
    雨降って地固まるで西側依存が加速する結果に

      • 匿名
      • 2020年 6月 11日

      西側にすり寄った結果が今のウクライナなんだけど

    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    すごい喧嘩してるけどロシア人とウクライナ人の何が違うのかさっぱり分からん
    ロシアと一緒にやっていけば少しはマシになるんじゃないか?

      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      ましどころか、困窮を極めてますが…
      Youtubeでウラクイナの路面電車の動画を見るとよくわかりますよ、
      戦後復興中の日本みたいな光景です。

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      おおざっぱに言ってもロシア人はロシア語を、ウクライナ人はウクライナ語を話すよ
      あなたは欧米の旅先でチーノ(中国人)言われたら訂正せずにいられるか?

      2
      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      日本人と中国人と韓国人は喧嘩ばっかせず融合しちゃえよ^^
      なんて言って来る外国人に対してどんな気持ちになるのか、考えたこともないんだろうなあ・・

      2
    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    ウクライナの行動は訳が分からない。
    経済ではロシアに完全に従属してる(輸出はロシア向けが多いし)し、
    クソ寒い冬季の暖房はロシアからの天然ガスに100%頼っている。
    でもって、旧ソ連からの独立国では最貧国、ポーランドの40%ぐらい
    なのにEUへの所属を希望してる(らしい)、アホなの?

      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      石油など経済的な依存度が高く、総力戦研究では必負判定。
      それでも対米戦に突入し敗戦となった我が国みたいな事例もあります。
      理屈ではなく、感情に支配される季節もあるのでしょう。
      端から見たら馬鹿らしい事ですが。

      3
    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    ウクライナだもん。
    クリミアの件で欧州各国から同情されているが、ロシアと同等、もしかしたらいろいろとやらかしている大概の国だろう。

    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    マッコイじいさんでも暗躍してるのかと思った
    それよりもF-16Vってそんなに良いのかなと
    逆に考えるとF-2のとき「小型で拡張性に限りが有るから調達中止」って言ってたのは何なんだろうなと思う今日この頃

    2
      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      >F-2のとき「小型で拡張性に限りが有るから調達中止」って言ってたのは何なんだろうなと思う今日この頃

      雑誌主宰の座談会で、開発者も同じようなことを述べていました。
      F-2 Super Kaiを唐突に提示したLMも、似たような思いだったのだと思います。
      まぁあの時は、F-22が欲しくて欲しくて、妙な言動に走ったのでしょう。

      3
      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      アメリカが何時までも最新鋭機を提供し、また改造も自由に許可するとの幻想を抱いていたが故の気の迷いですね。実際は全く逆になった訳だけども

      3
        • 匿名
        • 2020年 6月 10日

        あの頃は、戦闘機の相対的な質が最も低い時期だったような。
        新鋭機を早急に手に入れたいと、焦りがあったのだと思います。

        1
    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    ウクライナはいつもの内部はガタガタだな。

      • 匿名
      • 2020年 6月 09日

      ウクライナは軽戦闘機を開発していたはず。

    • 匿名
    • 2020年 6月 09日

    カッコ悪いにも程がある
    こんなことしていると西欧諸国が見捨てるぞ

    • 匿名
    • 2020年 6月 10日

    リアルGTOかな?

    仮に盗んだのがポーランド空軍なら自軍で使う為に盗んだと納得できるが、
    一般人が盗んだところで・・・転売目的だとしても誰が金を出すのかと?

    • 匿名
    • 2020年 9月 27日

    こんな体たらくだと、どこだってウクライナへの新鋭機販売は御免だろう。
    だから、ロシアが攪乱しているとも考えられるが。

    1
      • 匿名
      • 2020年 9月 28日

      それにしても軍内部にそれなりの協力者がいないと不可能だろ、
      クリミア半島以前からずっと不穏なのに、まだそれだけロシアに食い込まれてるようじゃウクライナヤバいよ

    • 匿名
    • 2021年 6月 20日

    ウクライナ政府のバカが絶対中国に密輸してるな

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