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ウクライナ軍、第36旅団の司令官はマリウポリから勝手に逃亡した臆病者

捕虜になっていたウクライナ軍第36旅団の司令官が露メディアに登場して「政府や軍が偽りの約束で抵抗を強いた」と主張、ウクライナ軍も「バラニューク大佐は命令に違反して逃亡した臆病者だ」と発表して注目を集めている。

参考:Ukraine lied to its encircled troops – commander
参考:ВСУ не готовились к боям в Мариуполе, заявил пленный полковник
参考:Защитники Мариуполя рассказали, как командир морпехов бежал из города

自分の命の心配ばかりして義務や誓いを無視する臆病者もいる、まさに第36旅団のバラニューク司令官がそうだ

アゾフマッシュ工場を拠点にマリウポリを防衛していたウクライナ軍の第36独立海軍歩兵旅団(海兵隊)は先月11日、包囲されつつある拠点から「弾薬不足のためロシア軍への抵抗は今日が最後になるかもしれない」とFacebookに投稿後、マリウポリからの脱出を図る司令官グループ、アゾフ連隊の提案を受け入れてアゾフスタル製鉄所に脱出したグループ、提案を拒否して工場に残りロシア軍に投降したグループの3つに分裂した。

出典:GoogleMap 当時のマリウポリ市内の状況/管理人加工

マリウポリ郊外で孤立する味方部隊から「ロシア軍の包囲を突破して救出して欲しい」と要請を受けていた第36旅団のバラニューク司令官(大佐)は救出作戦を準備していたが、11日夜に突然計画を変更して「自力でロシア軍の包囲を突破、約90km離れたウクライナ軍支配領域を目指してマリウポリ脱出する」と主張、司令官に率いられた部隊は30輌の車輌に分乗して工場を出発したものの直ぐに見つかり、攻撃を受けて車輌が大破→兵士はロシア軍に殺されるか捕虜になってしまう。

バラニューク司令官の行方について当初「付近の建物内で遺体で見つかった」と報じられていたが、突然司令官は露メディアに登場して「政府や軍上層部はマリウポリでの抵抗をより長く続けさせるため我々に嘘をついた。アゾフマッシュ工場からの逃亡を図ったのは約束した救援や封鎖を解除する試みを諦めていることに気づいたからだ」と明かし注目を集めている。

出典:露メディアRTが公開した動画のキャプチャ

ウクライナ政府や軍は「直ぐにマリウポリの包囲を打ち破るのは不可能だ」と繰り返し述べていたが、司令官曰く「直ぐに包囲を打ち破る部隊がマリウポリに到着するので抵抗を続けろ」と政府や軍が命令していたらしい。

ここまでの話なら「銃で脅されロシアのプロパガンダに協力させられている」と解釈することも可能だが、これがメディアで報じ始められるとウクライナ軍も「第36旅団のバラニューク司令官は自分だけが助かるため命令を拒否して逃亡した」と発表したため、バラニューク司令官は製鉄所へ脱出するグループを援護するため囮になったではなく「仲間を見捨ててマリウポリからの逃亡を図った裏切り者」になってしまった。

出典:АЗОВ Маріуполь

ウクライナメディアの取材に応じた軍の将校は「自分の命の心配ばかりして義務や誓いを無視する臆病者もいる。まさに第36旅団のバラニューク司令官がそうだ。彼は自身に課された命令遂行を拒否して戦車や装甲車を勝手に持ち出し、彼の主張に賛同した少数の人間とマリウポリからの逃亡を企てて失敗した」と説明。

アゾフ連隊も「第36旅団のバラニューク司令官は誰にも連絡することなく突然、未知の方向に突破を試み多くの兵士を失った。もし第36旅団がアゾフマッシュ工場での抵抗を維持していればマリウポリ右岸地域の防衛ラインをもっと長く維持できたのに、指揮官を失った工場がロシア軍に制圧されたため後退を余儀なくされた」と証言しており、中々衝撃的な話だ。

出典:GoogleMap アゾフマッシュ工場が陥落後のマリウポリ市内の状況/管理人加工

恐らくウクライナ軍は全軍の士気に影響を及ぼすため「第36旅団の顛末」を秘密にしておきたかったのだが、死亡したと思っていたバラニューク司令官が登場して「政府や軍が偽りの約束で抵抗を強いた」と主張し始めたので真実の公開に踏み切ったのかもしれない。

まぁ司令官の話が真実というパターンもあり得るが、どちらにしてもウクライナ軍にとってはマイナスの話でしかなく、第36旅団最後の呼びかけ(最後まで持ち場を放棄せずウクライナに忠誠を誓う、この抵抗の代償を忘れずロシアに勝利して欲しい)は虚しいものになってしまった。

関連記事:第36旅団はマリウポリ脱出、アゾフ連隊合流、製鉄所残留に3つに分裂?
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関連記事:マリウポリで最後の瞬間を待つ第36旅団、抵抗の代償を忘れず勝利してくれ
関連記事:マリウポリを防衛する第36旅団の弾薬が枯渇、今日が最後の戦いになる

 

アイキャッチ画像の出典:露メディアRTが公開した動画のキャプチャ

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コメント

    • はぁ
    • 2022年 5月 09日

    >彼は自身に課された命令遂行を拒否して戦車や装甲車を勝手に持ち出し、彼の主張に賛同した少数の人間とマリウポリからの逃亡を企てて失敗した

    徴収された兵士なら分からなくもないが、司令官という職業軍人でも重責のポジションにいながら逃げ出すとは。
    お前は安全地帯にいるんだから、何も言うな!という主張もわかるが、これは良くないだろう。
    市民まで銃を取って戦っているのに、部下の命よりも自分の命を優先するような司令官が、擁護されていいわけがない。

    32
      • はぁ
      • 2022年 5月 09日

      まぁ、自分の命が可愛いのはわかるけど。

      20
      • はぁ
      • 2022年 5月 09日

      脱走又は逃亡の企てについて有罪を受けた者は、その犯罪が戦時に行われたときは、死刑、又は軍法会議の指示する処罰に処し、脱走又は逃亡の企て平時に行われたときは、軍法会議の指示する死刑以外の処罰に処する。

      アメリカでも死刑ですからね。
      執行されることは稀ですが。

      25
    • バクー油田
    • 2022年 5月 09日

    色んな物語がありますわな。命のやり取りをする極限状態での人間やからな。
    だからその中で戦いに向き合い続けられる兵士は本当に尊敬できる。
    特に2月24日戦端が開いてキエフの空港を強襲したロシア部隊に対して勇敢に戦闘を仕掛けたウクライナ兵士が凄い。
    ゼレンスキーが逃げるかもしれず、国が1-2日で降伏するとの前評判の中であれば、敗戦後の事を考えたら変に戦わない方が得という気持ちが働いてもおかしくない中で戦いに行ったからな。

    44
      • zerotester
      • 2022年 5月 09日

      これが本当だとしたら軍人としてはダメなのでしょうが、極限状態なのでそういうこともあるかもしれません。
      ナチスのユダヤ人収容所を経験した精神科医の手記「夜と霧」によれば、収容所という極限状態でエゴをむき出しにする人もいれば、最後まで高潔な精神を保ち続ける人もいたそうです。どちらも人間なのでしょう。

      43
    • なんとも
    • 2022年 5月 09日

    第36旅団最後の呼びかけと逃亡した司令官がイコールの訳ではなく、別に虚しくは無いのでは?
    ここまで戦い続けていたことには敬意を表したいです。
    司令官の立場で逃亡した結果多くの兵士を殺す結果になったのであれば、それは非難されるべきではあるが逃亡が多くの兵士を残そうとしたのであれば、何とも責め難い。。

    31
    • 匿名
    • 2022年 5月 09日

    彼を叩くのは簡単な事だけど、自分がその場に立たされた時を考えたらとても責める気にはなりませんわ

    先の大戦中には捕虜になろうとも脱走を企てる事で、敵の後方撹乱を誘った例も多々あった訳ですし

    26
    • だいぶ溜まってんじゃん
    • 2022年 5月 09日

    やっぱり指揮官には頭脳だけじゃなく強い精神も必要なんやなって

    11
    • 無無
    • 2022年 5月 09日

    組織では、こういうこともあり得ることを前提に人事を考えること
    この司令官の問題は、降伏したそのものでなくロシアメディアに発言してしまったことなんだから

    6
    • 無能
    • 2022年 5月 09日

    評価はどうあれ彼は生き残った。製鉄所の抵抗も続いてるし何とも言えん。

    ただ軍幹部である以上、以前から指摘される組織の腐敗とどう関わっていたかの検証によって評価したいがこれは時間が必要だろうな。

    5
    • 下僕
    • 2022年 5月 09日

    佐藤幸徳みたいなもんじゃないですかね、約束された補給がなにもない事に激怒し独断で撤退した。

    3
      • 無無
      • 2022年 5月 09日

      インパール作戦との比較は難しい、むしろ補給路すら確保できぬままに進撃した日本軍は今のロシア軍のほうに被りそう

      1
    • や、やめろー
    • 2022年 5月 09日

    この点、ゼレンスキー大統領はすごいんだなって。まあ一括で比べることはできないけど

    8
    • さめ
    • 2022年 5月 09日

    司令官の主張とウクライナ政府側の主張って別に矛盾しないよね
    ウクライナ政府から後ろ盾のない作戦の遂行を要求されて(司令官主張)、司令官はそれを放棄した(ウクライナ政府主張)

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