ウクライナ戦況

ウクライナ軍の反攻、ロシア軍に占拠されていたイルピン奪還に成功

ウクライナ軍はキエフに最も近づいていたロシア軍の拠点「イルピン」の奪還に成功したと28日に発表、因みに33日目の各戦況の詳細は以下の通りだ。

参考:Ирпень освободили от оккупантов – мэр

北部戦線

ウクライナ軍参謀本部は「ベラルーシのホメリ州ナロヴリアンスキー地区、チェルノブイリ原発に近いプリピャチ地区の兵站拠点に毎日大量の弾薬を運び込んでいる。損害を被った部隊もベラルーシに下げて再編中で、ロシア軍は首都防衛ラインの突破を諦めていない」と主張している。

ドニエプル川西岸のウクライナ軍はブチャとイルピンでロシア軍と交戦中で「占拠されたホストーメリ空港に向けて前線を押し上げようとしている」と予想されているが、東岸については目立った動きや戦闘は報告されておらず、ロシア軍に包囲されたチェルニーヒウではロシア軍による砲撃や空爆が続いているらしい。

追記:ウクライナ軍が28日にイルピン奪還に成功(ロシア軍の残存勢力を掃討中)したと発表

チェルニヒウの西に位置するスラヴィティチ市を占拠したロシア軍は街から出ていったと報告されているが、依然として街の郊外に布陣している。

北東部戦線

トロスティアネッツ市の奪回に成功したスームィ方面のウクライナ軍は国境沿いのKrasnopilliaとSlavhorodに到達、ここ拠点にしてスームィを包囲するロシア軍の排除に乗り出す模様。スームィ州とハリコフ州の交通を遮断しているロシア軍の突出部の排除も進行中だ。

ハリコフを包囲していたロシア軍もウクライナ軍の攻勢によって後退中だが、イジュームの状況は依然として厳しくウクライナ軍が保持していた街の南部地域にもロシア軍が侵入したと言われている。

ドンバス戦線

ルハーンシク州やドネツィク州の戦闘は激しいもののロシア軍(ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国を含む)の攻勢は全て撃退され、特に目立った戦線の変化はない。

イジュームの防衛ラインを突破されると合同部隊作戦(Joint Forces Operation)の背後にロシア軍が回り込めるようになるため、ここの防衛に失敗すればドンバス戦線にも大きな変化が出てくるかもしれない。

南東部戦線

マリウポリの中心部に侵入したロシア軍は全て撃退されたと言われているが街の約半分はロシア軍の手に落ちており、マリウポリ中心部を取り囲むロシア軍の包囲の輪は日に日に小さくなっている。

出典:GoogleMap

さらにマリウポリの市街戦にはチェチェン共和国のカディロフツィが参加しており、市街戦の様子(見るに堪えない)をTelegram上にアップし続けている。

ザポリージャ州に目立った変化はない。

南西部戦線

ムィコラーイウ州のロシア軍は所々で分断され、ムィコラーイウを迂回しようとしたロシア軍の突出部はウクライナ軍に包囲された格好になっている。

ヘルソン州ではウクライナ軍が黒海に面したStanislavに入りロシア軍と交戦中で、ムィコラーイウに伸びていた突出部は日に日に押し戻され、ウクライナ軍がヘルソン奪還に向けて優勢に戦いを進めていると言って過言ではない。

オデッサ州は目立った変化はない。

関連記事:ウクライナ軍の反攻、ヘルソン州のノボボロンツォフカ奪回に成功
関連記事:ロシア軍、作戦規模をウクライナ軍の弱体化とドンバス解放に縮小か
関連記事:ウクライナ軍の反攻、スームィ州のトロスティアネッツ奪回に成功

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • hiroさん
    • 2022年 3月 28日

    マリウポリが焦点だと思いますが、さすがに奪還作戦は厳しいかも。
    ウクライナの戦力がどこまで保つか、いい加減にNATOも実行力を発揮しないとプーチンの粘り勝ちになりそうな。

    40
    • バクー油田
    • 2022年 3月 28日

    南東部戦線以外は膠着又はウクライナが優勢転換中という理解で良いんかな?

    4
    • ダヴー
    • 2022年 3月 29日

    ベラルーシでの再編は派遣されてきてる第35、36軍の司令官ではなく、東部軍管区の司令官がじきじきにやってるとかいう話がありますね。
    経歴を見るとクッソ優秀な人らしい。

    5
      • や、やめろー
      • 2022年 3月 29日

      経歴だけなんだよなぁ。信頼性がちょっと…

      8
      • アレクサンドル・チャイコ
      • 2022年 3月 29日

      極東から赴任した優秀な将軍か
      なんだか第二次大戦でソ連軍を勝利に導いたジューコフと被るところがあって不気味だな

      8
        • ぺぺ
        • 2022年 3月 29日

        ジューコフ元帥はノモンハンでの経験を買われてのことですがその人物はどうなんでしょう
        中国との演習で優秀だった人とか?

        5
          • 無無
          • 2022年 3月 29日

          ロシア軍にジューコフの知見が継承されていないから、今回のような体たらくなんだけだね
          そのジューコフも晩年は失脚する、そんな国

          5
          • 774
          • 2022年 3月 29日

          極東着任前はジョージア紛争で派遣された歩兵旅団の団長をしたり
          シリア紛争ではシリア派遣ロシア軍の参謀長だったりして手腕を存分に発揮したらしい。

          2
      • ヤゾフ
      • 2022年 3月 29日

      ISWでも言及されてるので東部軍管区の司令官なのはほぼ確定だと思います。

      2
      • A
      • 2022年 3月 29日

      人事って普通秘匿情報なのでは?
      ここまでいろいろとバレバレならば前線出て来たところをあっさりと・・・。

      2
    • 名無し
    • 2022年 3月 29日

    キエフだけでもいい加減落とせないと世界中に「情けないロシア軍」ってイメージがついてしまうぞ、ロシアくん。
    しかしマリウポリは立地的にもっと早く完全に占領されると思ってたけど意外と粘ってるな。

    13
      • きっど
      • 2022年 3月 29日

      最初の週末、遅くとも1週間以内にキエフを落とせなかった時点で、もう取り返しがつかないレベルで「強いロシア軍」は幻影だったと全世界から思われていますよ
      そんな「弱いロシア軍」の癖に、マリウポリを廃墟にして民族浄化するわ、挙句の果てには「ロシア語を話すすべての人を同胞と見なす法案」がロシア下院に提出されるわで、割とマジメに絶滅戦争以外の手段が無くなりつつある……
      文明が滅ばなければ滅んでいなければ、今世紀の終わりにはチョビヒゲが英雄になっているかもね

      ソース
      リンク

      4
    • ヤゾフ
    • 2022年 3月 29日

    ネオナチだの何だ言われてるアゾフ連隊が守るために死者を積み上げながら戦ってる
    アゾフ連隊の司令官インタビューでここで最期まで戦うて言ってて状況的に死ぬまでやるのか…てなってる

    8
      • トーリスガーリン
      • 2022年 3月 29日

      包囲下を突破して味方に合流するのは困難な上に、ロシアが名指しで非難対象にしてるアゾフ連隊を逃がすとも思えないし降伏しても凄惨な目に合うだけだと想像がついてしまう
      であるならば最期まで戦い抜いてやるという感じなんでしょうね…

      21
    • zerotester
    • 2022年 3月 29日

    イルピンは守りやすい地形なので、部分的に押し返すことは出来ても奪還には苦労するのではと言われていましたが、あっさり奪還したのですね。ウクライナ軍が優秀なのかロシア軍に問題があるのか。

    ムィコラーイウを迂回しようとした部隊が叩かれるというのは前もやっていましたが、これも命令を繰り返すしか能が無いロシア軍の例なのでしょう。そうやって無駄に戦力をすり減らしてくれればヘルソン奪還も夢ではないですね。

    18
    • にゃ
    • 2022年 3月 29日

    日本人に分かりやすく翻訳いただいている
    両軍のどちらにも冷静であるため変な期待が排除されている
    このような情報を継続的にご提供いただくことを感謝します。

    29
    • ネトウヨ
    • 2022年 3月 29日

    俺、何だかんだロシア軍強いと思ってたんだけど本当に弱いのかな・・・?
    このまま核や生物兵器使わずに勝ったとしても多分それ物量で何とかしてるだけなんだよな。
    車列の話を聞いて、湾岸戦争(だったかな)のアメリカ軍みたいに誘い込みしてるのかなと思ったら
    してないっぽいし(作戦だとしても失敗してる)。
    ロシアが中国より軍事力あるか疑問だったけど。こりゃなさそうだな・・・。

    2
    • 58式素人
    • 2022年 3月 29日

    補給品の集積場所がわかっているならば、速やかに攻撃した方が良いのでは。
    原発に近すぎる場所なのかな?。URVとMRLの出番だと思えます。
    あと1ヶ月もすれば、地面が締まってくると思われます。
    今までの線ではなく、面で攻めてくるのでは。
    それまでに、なるべく、ロシア側の補給品に打撃を与えた方が良いと思えます。
    今まで温存してきた(?)機甲戦力の出番も近いかと思います。
    結局のところ、ロシアは機甲戦力に絶対の自信を持っているので、機甲戦で勝つ必要もあるでしょう。
    ウクライナに色々な物が足らないように思えますが、米国はどうするつもりだろう。

    • 絶滅戦
    • 2022年 3月 29日

    ウクライナ国内だけやられ放題になっているが、ここいらでウクライナからロシアに
    ロケット弾でも撃ち込むぐらいしてもいいんだろうけど
    あのキチガイは生物化学兵器等を使う口実にするんだろな・・・。

    • jiro.siwaku
    • 2022年 3月 29日

    米、独に電子戦機6機派遣 「ロシア軍に対して使用はない」
    3/29(火) 10:22配信
    共同通信

    > 西部ワシントン州の海軍基地所属のEA18G電子戦機6機をドイツに派遣する
    > (NATO)加盟国である東欧諸国の抑止力を強化
    > EA18Gは敵国のレーダーを妨害し、対空防衛能力を低減させる
    > 「ウクライナに展開するロシア軍に対して使用するものではない」

    これは,ポーランド国内で離発着するミグ29のウクライナ侵入・離脱を隠蔽するためとも考えられる。証拠さえなければ,ロシア側に探知されなければ,それで良しとする考え方。
    ウクライナ国内でミグ29の機体やエンジンを整備・保守できる施設は破壊されているので,継続的な航空戦力の運用は苦しい。だからウクライナは戦闘機の供与や飛行禁止空域の設定を繰り返し求めていた。これに対し,一歩踏み込んだアプローチを行なうのかもしれない。
    そして,当初はウクライナ勢力の近接航空支援を,なかんずくロシアから奪還した地域の維持を,その上で,キエフ以西のエアカバーもしくは飛行禁止空域化へと持っていこうとしているのかも。
    これが,今回,バイデンとブリンケンとオースティンがポーランドに入り,ポーランドでウクライナの外相とも会合を開いた目的だったのかもしれない。

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