駐豪ウクライナ大使は今年3月「段ボールと輪ゴムで作られた豪企業製の無人機を使用している」と明かし話題になったが、ロシア軍も木製無人機の使用頻度が増加、両軍とも高価なミリタリー仕様機で戦場ニーズをカバーするのが不可能なのだろう。
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UAVを活用して「視覚的に戦場認識力を拡張する能力」は司令部や砲兵部隊の特権ではなく、戦場のあらゆる場所で必要とされている
ミロシュニチェンコ駐豪ウクライナ大使は今年3月、メルボルン郊外で開催されたアバロンエアショーでSypaq社のブースを訪れ「段ボールと輪ゴムで作られた無人機(CORVO PPDS)がロシア軍との戦いで役に立っている。見た目は子供のおもちゃのように見えるが、実際に使用してみると本当に凄い。この無人機は敵に多くのダメージを与えるのに優れている」と明かした。
Sypaq社が開発した固定翼の無人機は「少量の緊急物資を低コストで運搬する」という豪陸軍のニーズに基づき開発されたもので、段ボールで構成された機体はグルーガン、スパナ、ナイフ、テープ、輪ゴムで簡単に組み立てることができ、ミリタリー仕様の制御システムを採用しているため「指定された地点までの飛行」にオペレーターは不要で、もしGPSが妨害されても慣性航法で目標までの飛行を継続できるらしい。
同社の関係者は「ウクライナ軍からのフィードバックを受けて物資輸送だけでなくISR任務に適していることが分かった=PPDSのペイロードにセンサーシステムを搭載して偵察にも活用しているという意味」と述べており、Times紙は「PPDSは使い捨てタイプだが、中には60回も繰り返し飛行したものがあり、1機あたりのコストは564ポンド~2,800ポンドだ」と、Forbesも「PPDSは最大60km先離れた戦場情報を持ち帰ることができ、航法システムもウクライナ製無人機より高度なものを採用しているため爆弾運搬ミッションにも対応できるだろう」と言及。
さらにForbesは「無人機産業界の一角は洗練され高性能なUAVに焦点を当てているが、Sypaq社のような企業は低コストの消耗型UAVを大量提供することに注力しており、同社はUAVの群制御技術にも取り組んでいる。もしPPDSのようなUAVが数千機あれば1機のMQ-9やF-16よりも大きな影響力を持つようになるかもしれない。ロシアは段ボール製のUAVで立ち向かうというアイデアを笑うかもしれないが、その失笑は長くは続かないだろう」とも述べていたが、ロシア軍も木製無人機の使用が確認されている。
戦場で撃墜(捕獲)されたロシア軍の無人機は木製合板、押出発泡スチロール、ポリスチレン板で構成され、動力源は模型飛行機向けのガソリンエンジン「DLE-60」を制御には「GSM通信」を採用、ウクライナ軍は「オルラン10などの無人機が不足している証拠だ」と主張しているが、ウクライナのディフェンスメディアは「この無人機を使用してロシア軍は我が軍のセンサーを混乱させようとしている」と指摘しており、ロシア軍も再使用可能なUAVと使い捨て前提のUAVを使い分け始めているのかもしれない。
Wooden drones found by military intelligence in Volchansk near the Russian border. pic.twitter.com/FYlnUmobGc
— Michael Kobs (@MichaKobs) March 30, 2022
Russian Wooden Drones Try to Deceive Ukrainian Air Defense Systems https://t.co/DL98aOuxr0 pic.twitter.com/ielE41AAOe
— UAS VISION (@UAS_VISION) May 22, 2023
ウクライナ軍が要求するISR向けUAVの数は「4桁」ではなく「5桁(侵攻後にウクライナ軍が養成したUAVオペレーターの数は1万人を突破している)」に到達しており、もはやUAVを活用して「視覚的に戦場認識力を拡張する能力」は司令部や砲兵部隊の特権ではなく、戦場のあらゆる場所で必要とされるUAV需要を高価なミリタリー仕様で揃えられる国は存在せず、安価なUAVは「弱者の兵器」では無くなるだろう。
因みに米陸軍は分隊レベルの「状況認識」と「偵察能力」を改善するため、Skydio製クワッドコプター「X2(1万ドル以上)」をミリタリー仕様に改造したRQ-28Aの調達を開始、2025会計年度の第2四半期までに1,080機(2023年までに480機を納品)を取得する予定だが、これは低率初期生産分の契約なので米陸軍が最終的にRQ-28Aを何機取得するのかは不明だ。
米陸軍がSkydioと2022年に締結した契約額は9,980万ドル(30機分)なので、現時点での調達コストは1機あたり322万ドル=4.4億円になる計算だが、これは低率初期生産分の中でも初期生産に相当するコストなので今後値下がりする可能性が高いものの、仮に1/10に値下がりしても30万ドル=4,000万円台、1/20に値下がりしても15万ドル=2,000万円台なので長期間の消耗戦向きではない。
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※アイキャッチ画像の出典:Командування Десантно-штурмових військ Збройних Сил України
???「ワクワクさん、次は何作るの?」
もはやロボットコンテストだよなぁ。二次大戦時のボツネタが日の目を見たり、相手の優秀なアイデアをパクってさらに洗練させたり、こんな創造力を刺激する娯楽はそうそうないけど、目的が人殺しじゃなきゃもっと楽しめるのにね。
砲弾が無くなったら石を投げ合う・・・
あっ、それ日本だっけ。
インド中国国境衝突2020の主力兵器は素手、こん棒、石、パイプ
核ミサイルは両軍それなりに持ってるし、空母も原潜も持ってる
最近インド側が画期的な武器を繰り出してきて、中共側にかなり被害が出て抗議したとかなんとか
やっぱ創造的軍隊は強いなあ
決戦兵器「竹槍」を忘れてはなりませんぞ!
まさかこの時代に足らぬ足らぬは工夫が足らぬを見てしまう日が来るとは…。紙や木で出来た兵器が何の役に立つんだと笑うことは、もはや出来ないな。
不便、不満、不足は発明の母とも言う
日本の雑誌付録ペーパークラフト技術とか、包装段ボールの立体組技術とか世界一じゃないかと思うので
輸送機や潜水艦の輸出なんかスッパリ諦めて、ダンボール製UAVの開発と輸出に予算を廻そう!
こんな感じですか?
月間UAV創刊!
初回限定特別価格2980円!
第1号は職人が丹精込めて作った、ヒノキ造りのプロペラ!
非金属は金属と比べて携行性に優れてステルス性も高いです
優位性は値段だけではありませんよ
軽量安価その上レーダーに捉えづらい非金属製パーツ使用のドローンは今後も増えそうだ
木製のやつ、大昔のラジコン機みたい
財務省が大喜び。
高価なUAVをいつも使い捨てできる程両国は経済力も技術もないよね 贅沢な戦いできるのはアメリカと中国ぐらいかな ましてこれから数年数十年規模の戦いだからどんどん省エネ化されそう
いかに迅速に敵を見つけ、正確に砲撃を叩き込むには、空からの観測が一番なんでしょうね
対空レーザーのようなもので空を飛ぶ物が即座に叩き落とされる時代が来るまでは、無人ドローン需要は高まるばかりでしょう
スジヤティエ「もうあるよ」
木製とか段ボールと言っても、単なる経済的逼迫からくるケチりと科学的合理性から生み出された結果とは別物ですから。
気をつけたいのは、平時において本来は不必要なほどの高品質高価格が提案され無批判に採用されていないかってほうです
この手の装備は耐久性がなく訓練や演習でも消耗してしまうため、平時に大量に導入するとむしろコスト増を招きかねないのよね。
段ボール製は湿度が高く洋上や島嶼での運用が多くなる日本では特に。
個人的には謎の木製消耗品叩きによって溢れかえってる間伐材を利用した木製の方に期待したい。
管理人さま、日々の更新、お疲れさまです。
攻撃側は自爆用ドローンの囮として安価なドローンを大量投入して、相手の防空システムを混乱させる
防御側は自爆用ドローンのみを検出するシステムを作成して狙い撃ち
> 防御側は自爆用ドローンのみを検出
なぜ自爆用だけ、偵察用でも高価値目標なら砲弾が飛んでくるよ。
レーダーなら確実にねらわらる。
自軍戦力を保存して、敵戦力を殲滅するのが基本。それはお金も同じ。同じ戦果を期待できるなら安ければ安いほどいい。どうせ長期生存は期待できないなら木製や紙製はありだと思います。
電子部品も飛べばいいだけなら安くできそうですが、カメラだけはどうしようもないですね。
スマホ用などの民生品流用でそれなりにコストダウンはできるんじゃないかな。
フィルタだけ替えてIRセンサーにしたりもできるだろうし。
現代の戦闘機1機分約100億円(+パイロット養成費)でこういう安価な攻撃用ドローンが何機調達できるか?
まあ要はバランスなんでしょうけど・・
リンク
両軍が使用するドローンの部品の多くは日本製であり、特にロシアの偵察ドローンオルラン10はエンジンが日本製模型用エンジンとされている。
日本の技術力は高品質なものを比較的安価に製造する能力があるが、軍事利用が思わぬ部分で進んでいる。
台湾有事の折には日本製対艦ドローンが中国軍と対峙することになるのだろうか。
日本はプラモのガンダムで、、。
最近エントリーグレードのガンダム組んで進化を体感できましたよ
アメリカのクアッドコプターいくらなんでも高杉でしょw
超廉価UAVは、いずれリアル社会でのミノフスキー粒子的存在となるんですかねぇ…🤔
こんな安物でも上空をウロウロされたら歩兵のストレス増えそうだし、それなりに効果ありそう
安物なればそこ「1歩兵如き」を狙って突っ込んでこないとも限りませんしね。
小型軽量とはいえ固定翼機ですから急降下突撃掛ければ200km/h程度は余裕で出るでしょうし、弾頭など積んでなくても剥き身の歩兵には十分な脅威です。
東京オリンピックの選手村で使われたダンボール製のベッドを思い出しました。
ゴツいアスリートが何人も乗って同時に飛び跳ねてやっと歪む強度でしたね。
撥水加工すれば悪天候にも耐えられそうだし見た目のチープさに反してなかなか凄いものかもしれません。
リンクロシアはステルス性を期待して比較的高いドローンにも木製プロペラを採用してるっぽい。
あとロシアは良質な北洋材の宝庫だからね。木製に走るのは妥当だと思う。
そういえばうまい棒の段ボールがいい強度をしていると聞いたが、段ボール製UAVの素材の強度はどのようなものなのか、気になる。
岸田さんがウクライナ行った時にうまい棒のダンボールが話題になったけど、持っていきたかったのは中身じゃなくて、段ボール素材のサンプルだったんじゃ?
ダンボール素材なら民生品だから問題なくウクライナに送れるのでは?