欧州関連

ウクライナ軍指揮官、ドンバスはロシア軍の焦土戦術で地獄と化した

ドンバスの戦いに従事するウクライナ軍部隊は「ロシア軍の戦い方が変化したことで戦場は地獄と化した」と米POLITICOに明かしており、今直ぐ重火器や航空支援などの増援が届かなければマリウポルで戦う部隊と同じ状況に陥ると訴えている。

参考:Heavy weaponry pours into Ukraine as commanders become more desperate

如何にしてドンバスに重装備を素早く届けるか、大量に消耗される弾薬を安定して届けられるかが勝敗のポイント

ロシア軍は防衛ラインの脆弱な部分を見つけ出すためためウクライナ軍と対峙する戦線全て(ハルキウ州を含むドンバス地域とウクライナ南部)で砲撃や空爆による攻撃を強化しているが、その実態について詳しく言及する西側メディアは少なく、ウクライナ軍も敵に利するよう発表は行わないので「砲撃が激しい」程度しか伝わってこない。

しかし米POLITICOは「ロシア軍の戦い方が変化したことで戦場は地獄と化した」と中々興味深いことを報じている。

ウクライナ軍の精鋭部隊「第25独立空挺旅団」はドネツィク州アウディーイウカ防衛を担当、この部隊に所属するイワン・スクラトフスキー中尉は米POLITICOの取材に対し「ロシア軍は戦い方を焦土戦術に変更、昼夜を問わず榴弾砲、迫撃砲、多連装ロケットシステム、Su-25による同時攻撃を行い街にある全ての建造物を破壊した。我々にどの程度の戦力が残っているのは不明だが弾薬が危機的なレベルまで少なくなり、何時届くか分からない補給に頼っている状況だ」と主張。

中尉は「榴弾砲や空爆を行う敵にグレネードランチャーでは長く持ち堪えられない。毎日続く砲撃に我々は耐えられなくなってきた。今すぐにでも航空支援が、ドーロンが必要だ」と訴えており、西側諸国が供給を急いでいる重装備や無人機が1日でも早く届かなければドンバスの戦線は厳しい現実に直面することになるかもしれない。

出典:public domain カエサル6×6

米国やNATO加盟国は榴弾砲、自走砲、徘徊型UAVなどを供給するため急ピッチで準備を進めているいるが、このような装備をウクライナ軍兵士が扱うには1週間~2週間程度の訓練が必要で、5月上旬にならないと実戦投入できないと言われている。

さらに問題なのは重装備をポーランド国境から約1,000km離れたドンバスまで如何にして運ぶかだ。

ロシア空軍機や防空システムが睨みをきかせる空域に大型輸送機を飛ばすのは現実的ではないので「鉄道輸送」が最もベターな選択肢だが、ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルを使用して鉄道路線への攻撃を強化しており、如何にしてドンバスに重装備を素早く届けるか、大量に消耗される弾薬を安定して届けられるかが勝敗のポイントになるだろう。

出典:GoogleMap

まぁ中尉の証言がドンバスの全てに当てはまるのか確証がないので大げさなことは言えないが、少なくとも「楽勝でロシア軍の前進を阻止している」という訳では無さそうだ。

追記:ルハーンシク州知事のガイダイ氏は25日、Novotoshkivs’keを防衛していたウクライナ軍が後退して同地をロシア軍が占領したと明かした。

追記:ロシア軍はウクライナ軍の車輌基地を占領、Tunguska、Osa、Tor-M1などを含む約100輌の車輌を鹵獲したと発表した。この車輌基地がどこにあるのかは不明だがロシア軍が戦線を前進させているのはドンバス地域、イジューム方面、ザポリージャ州なので、これが事実ならウクライナ軍にとって大きな痛手だろう。

関連記事:元米陸軍中佐、ドンバスはウクライナがロシアに補給線を狙われる立場

 

※アイキャッチ画像の出典:Сергій Гайдай ロシア軍の砲撃で焦土化したNovotoshkivs’keの様子

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コメント

    • ダヴー
    • 2022年 4月 26日

    焦土戦術を行っているというより、航空偵察や斥候による偵察が上手くいっていない?ので、見えるものを手当たり次第に砲撃している、というように思えます。
    ロシア軍砲兵の問題を考察されている方がいましたが、やはり効果的な砲撃ができていないのではないでしょうか。

    13
    • 名無し
    • 2022年 4月 26日

    キーウは一旦諦めて南部の侵攻も止めてだから東部はロシア有利じゃないとおかしいっちゃおかしいんですよね。
    とはいえ西側からの装備がフルで届く前に侵攻しなきゃいけないはずのロシア軍の前進速度が遅いっちゃ遅いんだけど。

    9
      • 無能
      • 2022年 4月 26日

      今しか前進するチャンスは無いはずですが
      キーウ失敗の手前、損害を恐れるあまり牛歩になっているようにも見えますね

      2
      • 伊怜
      • 2022年 4月 26日

      BTG編成では正規戦で素早く進軍することは不可能。
      司令官任命以降のロシア軍はこのBTGを最大限に活かせる方法=本来行うべきだった戦術を採っている。
      一見すると手間取っているように見えるがそうではなくて、そもそもこういった戦場・進軍速度を想定してBTGが編成されているのである。

      7
    • バクー油田
    • 2022年 4月 26日

    このニュースのアイキャッチ画像を見ると、改めて千羽鶴を送る側と送られる側とであまりに目線が違うことを送る側は認識しないとあかんなと思う。
    現実に目の前で自分の街が焦土になって略奪や誘拐が始まってる場所に、弾薬食糧医療品ではなく、「気持ち」を送られると送られる側には怒りすら沸きかねない。
    送るのは構わないが、タイミングは戦いが終わった後、慰霊碑などが作成されだす復興のタイミングかと思う。

    34
      • A
      • 2022年 4月 26日

      中途半端な親切ってのが一番嫌われるようですからね-。

      13
    • や、やめろー
    • 2022年 4月 26日

    また虐殺が起きるのか。できれば起こりませんように

    4
    • タコ
    • 2022年 4月 26日

    宇宙からみてポイントにガソリンタンクを落として火をつけろ。ウォッカでもいいよ。

    2
    •    
    • 2022年 4月 26日

    ロシアの凍結資産はウクライナ復興支援に充てられるだろうが、それでも足りずに賠償請求はありそう
    戦争犯罪の謝罪賠償、戦犯引き渡しもあるだろうから、プーチンが倒れて新政権になっても国際社会への復帰は試練だね
    大変だね
    ウクライナさんはしばらくタダで資源貰えそう

    2
    • zerotester
    • 2022年 4月 26日

    アウディーイウカはドネツク市のすぐ北で、守るのが大変そうな場所ですね。ウクライナ軍は「ロシアは アウディーイウカを攻撃しているが成功していない」と主張しています。

    過去24時間で34台の戦車を破壊したと主張しており(トータル918台)、かなり増えてるので戦闘の激化でお互いに損害を出しているのでしょう。ロシアはこのペースの攻撃をそう長期間はできない(あと1週間くらいという専門家が多い)ので、それまでウクライナ軍が耐えられるかどうかでしょう。

    2
    • ananta
    • 2022年 4月 26日

    ロシア側はものすごい密度での砲撃をしてるんですね。見渡す限りクレーターで埋めつくされた景色はまるで第一次大戦の準備砲撃の後みたいです。弾薬の消費量がとんでもないことになってるのでは…

    3
    • 匿名
    • 2022年 4月 26日

    もともとロシアの方がウクライナよりも軍事力が大きいのです。このままの状況で戦争が長引けば、数でまさるロシア軍が勝ってしまうでしょう。戦争は正義のある方が勝つのではなく、強い方が勝つものです。
    もしウクライナが勝ちたければ、あるいは、ウクライナに勝たせたければ、NATOが参戦してロシア軍を一気に押し返すしかないでしょう。
    ロシアにとってもNATOの核戦力は怖いでしょうから、ロシアが核を先制使用することはないかもしれません。

    13
    • t14
    • 2022年 4月 26日

    ニュースでも使われるレベルの映像で当たり前のようにマンションに砲撃ぶち込んでるのマジで終わってる

    1
      • NATTO
      • 2022年 4月 26日

      動画の死体は妙にきれいだけど、酸欠とか爆風で頚部骨折で命を落としたのかな?
      出血や火傷が無いように見えるし、四肢が千切れて無い。

      2
    • shkk
    • 2022年 4月 26日

    ロシアの砲弾備蓄量とか生産量ってどんなもんなんだろ?
    未だにソ連製の兵器や砲弾?が出てくるようなのでとんでもない量抱え込んでるんだろうけど
    流石にこんなに打ち込んでたら尽きるんじゃ…?

    4
    • makumaku
    • 2022年 4月 26日

    ウクライナ軍がドンバス地方で継戦能力を維持するためには、西部国境からドンバスまでの鉄道輸送路が不可欠なわけですが、記事中の指摘通り、ロシア軍はその鉄道輸送路を狙い撃ちにして来ています。
    ↓のマップの通り、西部から東部・南部への鉄道ハブがミサイル攻撃を受けています。
    リンク
    ロシア軍は指揮と戦闘で必ずしも上手くいっていませんが、ウクライナ軍も補給と戦線維持で
    相当苦労しているようです。

    2
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