ウクライナ戦況

敗走を重ねるロシア軍、イジューム奪還で終わらないウクライナ軍の反撃

ウクライナ軍はロシア軍にイジュームからの撤退を強いることに成功したが、まだ反撃の手を緩めておらずリシチャンシク近郊やクレミンナ、ハルキウ州北部のボルチャンスクに向けて攻撃を仕掛けているらしい。

戦況マップの更新が絶望的に追いついていないが、ウクライナ軍が戦いを優勢に進めていることだけは確実だ

ウクライナ軍がイジュームに入ったことを視覚的に確認、ロシア国防省も撤退を発表しているため「クピャンス~イジューム間のオスキル川西岸地域はウクライナ軍が支配している」と解釈すべきで、この地域の戦闘は逃げ遅れた敵の掃討レベルと言って良い。

出典:Google Map ハルキウ州の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

イジュームを起点にしたロシア軍の突出部が(恐らく)消滅したためスラビャンスクの状況が大幅に改善したが、ウクライナ軍はドネツ川の対岸でも攻勢(リマン、ヤムピリ、スヴャトヒルシク)に出ているという情報があり、ハルキウ州北部でもBuhaivka、Zarichne、Khotimlya、Martoveを解放したという報告があるが視覚的な確認は取れていない。

ただボルチャンスクを抑えてロシア領ベルゴロドとのアクセスが断てば、クピャンスより北の地域は補給が苦しくなるためハルキウ州からロシア軍を追い出しやすくなる。

出典:Google Map ルハンシク州の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

さらにルハンシク州のガイダイ知事は「ウクライナ軍がロシア軍占領下のリシチャンシク近郊にいる」と明かし、Verkhn’okam’yankaの石油施設付記でウクライナ軍とロシア軍が交戦しているという話や、ウクライナ軍がクレミンナを攻撃しているという噂もあり、もう何が真実で何がデマなのか判断するのが難しい。

イジューム奪還で陽動扱いされるヘルソン州の反撃も続いており、南部司令部は10日「ヘルソン州の北岸地域であらゆる方向に2km~数十km前進、まもなく解放した拠点を明らかにする」と発表、ハルキウ州ほど劇的な進展はないものの着実にロシア軍から領土を奪還している可能性がある。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

次々と登場してくる情報の確認や戦況マップの更新が絶望的に追いついていないが、ウクライナ軍が戦いを優勢に進めていることだけは確実だ。

追記:リマン市長は郊外でロシア軍の抵抗が続いているため「まだウクライナの国旗を掲げるの待たなければならない」と声明を出しており、視覚的な証拠はないがウクライナ軍がリマンに向かっているのは事実なのだろう。

関連記事:ロシア国防省、ドンバス解放のためイジュームからの撤退を正式に発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Telegram経由

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コメント

    • すえすえ
    • 2022年 9月 11日

    ウクライナ軍

    なんて恐ろしい子w
    もう何がどうなっているやら

    21
    • zerotester
    • 2022年 9月 11日

    イジュームからの圧力が無くなったことでスラビャンスク防衛が楽になり、張り付いていた部隊をリマンやリシチャンシク攻撃に使えているのではないでしょうか。一方でロシア軍は戦力の多くが敗走中なのて今はチャンスでしょう。

    ロシアはこれからどうするのでしょうか。どこに前線を作って守るのか。私だったら南部のドネツ川西岸は諦めてヘルソン市付近以外から撤退し、その戦力を東部に回しますね。とうせ守れないし、それくらいやらないと東部は崩壊するでしょう。

    20
      • ダヴー
      • 2022年 9月 11日

      それこそがウクライナ軍の狙いでもあるのでしょうね。
      南部にロシア軍を誘引し、がら空きになった東部で攻勢に出て、ロシア軍が再び東部に移動したら、今度こそヘルソンまで前進するという。

      26
        • zerotester
        • 2022年 9月 11日

        南部ではノーバカホフカを奪還するのが当面の目標だそうで、水源のダムがあるからですが、ロシアが東部に戦力を回せばそれも現実的になりますね

        5
  1. ウクライナの先遣偵察部隊がセベロドネツク郡の郡境に達したという映像が出てますね。これだけだとどの方面から入ったのか分かりませんが、ロシアやZのお出迎えもなさそうで…。
    ウクライナ軍、今日だけで何キロ進軍したんだろう…。

    3
      • 折口
      • 2022年 9月 11日

      訂正、どうも映像が別の時期のものだった可能性がある模様。

      5
    • 2022年 9月 11日

    アルデンヌ攻勢を彷彿とさせる快進撃ですな

    4
    • 甘寧 一番乗り
    • 2022年 9月 11日

    今までの戦況図ではリマンあたりで見切れていたが、広域で見るとリマンやヤムピリの確保はシヴェルスク側面の安定化にもつながることが分かった。管理人さんGJ
    勝ち戦の勢いは恐ろしいが、さすがにクレミンナの攻撃は砲兵の仕事で、地上部隊ではないと思うが。

    10
    • ななし
    • 2022年 9月 11日

    すでに北部DvorichnaとVelykyi Burlukにウクライナ軍が到達したとの噂も出てますね

    3
    • 2022年 9月 11日

    虎の子の第三軍が実は既に投入されてる上にもう既に撃破されてるとの話まで入ってきてるがマジなのか…?
    貴重な貴重な戦力予備が仕事する前に溶けたってことだぞ…

    31
      • 匿名11号
      • 2022年 9月 11日

      急造部隊にありがちな装備未了、訓練未了の虚仮脅し部隊だったということでしょうな。

      9
      • けい2020
      • 2022年 9月 11日

      そもそも、アレ程の兵力を自由に動かせる補給兵站を、ロシア軍が構築できるのかという最初の問題に
      鉄道輸送から先は野ざらしになっててもビックリしない

      6
    • 名無し
    • 2022年 9月 11日

    アルデンヌ攻勢と言うかバグラチオン作戦ですな
    一週間以内にイジューム奪還した上に
    後方まで浸透してると言う噂もあるから
    もはやあの赤いナポレオンが提唱した縦深攻撃を彷彿させる
    このままいけばリシチャンシクどころか
    セベロドネツク奪還もあり得る

    18
      • ダヴー
      • 2022年 9月 11日

      全体で見るとバグラチオン作戦+リヴォフ=サンドミール作戦ですかね。
      ドイツ軍がウクライナからのソ連の攻勢を警戒して装甲戦力の大半をウクライナ方面に回したのをうけて、ソ連はベラルーシ方面からバグラチオン作戦を発動。これに対処するためにドイツ軍がベラルーシに装甲戦力を回すと、ウクライナ方面からソ連がリヴォフ=サンドミール作戦を発動。
      時間差2方面からの攻勢に振り回され、どちらの防衛にも失敗しました。

      17
    • 2022年 9月 11日

    リシチャンシクから南下してコムナルスクを抑えれば鉄道と道路の兵站拠点を失いロシア軍東部戦線を恐慌状態にさせて戦争を早く終わらせられるかも
    深入りしすぎのリスクも半々

    • うまぴょい
    • 2022年 9月 11日

    New Tsushima日本海海戦レベルの敗北やな。

    3
      • 無無
      • 2022年 9月 11日

      こういうときは奉天会戦と言わないと、陸軍なのに失礼なり
      ロシアに再びステッセル将軍が現れるかな

      6
        • h4
        • 2022年 9月 11日

        ウクライナの政治家ゴンチャレンコが”new Tsushima”と書き、ロシアのギルキンがMukden(奉天会戦)と書いていたようです。

        9
    • ゆう
    • 2022年 9月 11日

    戦場マップに、ついにロシア領が表示されることになりましたね。
    国境近くでの戦闘なら、ロシア領で人的・物的被害が無い場所に「流れ弾」の発生も十分考えられます。
    うわさが「ロシア弱っウクライナすげー」だけというのも面白いです。

    7
    • h4
    • 2022年 9月 11日

    ロシア軍のこの脆さについて、この地方の司令官がプーチンのお冠に触れて9月頭で解任されて実質指揮官不在だったという話が出てますね。これは後で検証されるでしょう。

    5
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 9月 11日

    軍事に詳しくない素人だが、戦線を立て直すってどうやるんだろうか? 浮足立って「潰走」して武器も捨てて逃げて来た、士気の低い兵士たちをかき集めても、防波堤の役は果たせそうもない。

    新手の部隊が必要だと思うけれど、戦線立て直しを命じられた将軍は、かなり有能な人なんだろうね。こんなことできる人は限られていると思う。彼我の力関係を冷徹に見極めたうえで、どこに防御線を構築するか現実的な判断を下す。こういうことのできる人は本当に頼りになる。私が軍人ならやりたくない仕事。

    ただでさえ、ロシア軍は兵器や兵士が足りていなかったのに、万単位の方面軍が瓦解したので、取り返しのつかない損失が発生したと思う。どうやって埋め合わせするのだろう?

    最近NHKの特番で「ヒトラーvs.スターリン」というのを観た。ヒトラーのバルバロッサ作戦が実際に発動されるまで、スターリンはヒトラーをお友だちだと思っていたらしく、ただでさえ粛清で弱っていたソ連赤軍は、この誤った判断のおかげで潰走に次ぐ潰走だったらしい。ジューコフ元帥はどうやって戦線を立て直したんだろう?

    6
      • けい2020
      • 2022年 9月 11日

      後ろに下がれないように、大量の督戦隊を用意します
      それで足らなくなった兵士は、畑から調達して送り込みます

      5
      • 無無
      • 2022年 9月 11日

      ジューコフは先にノモンハンでの勝利を買われてスターリンの直命で対ドイツ司令官の座についたが、ざっくり言えばドイツ電撃戦に対して有効な縦深理論の確立者であり、また軍事に対する共産党の干渉を限定することに成功した。
      他にも冬将軍の到来が早かったのにドイツは早期決戦のつもりで寒冷装備が整ってなく、また開戦前から予想されていたように補給路が延びきって前線の停滞を招いてしまう、そしてヒトラーの干渉によりスターリングラード攻略に固執した大失策が大きい。
      もっとも、ジューコフは戦後に軍への政治干渉を排した責任を問われ、かつ人望の大きさゆえに危険視されてフルシチョフから追放される
      かの国の軍人は、敗北しても勝利しても同じく粛清されるのだ

      5
    • 黒足袋
    • 2022年 9月 11日

    独裁者の常として、軍事的常識を無視して、これまでに「獲得」した主要拠点のすべてに対して「死守せよ!」を連発し、ついには戦線の崩壊を招く。

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