ウクライナ戦況

ウクライナ軍が多方面で反撃、ロシア軍はアントノフスキー橋の修復を断念

ウクライナ軍南部司令部のフメニウク報道官は6日、新たに幾つかの拠点を解放することに成功して「まもなく我々の管理下にあると宣言できる」と発表、米当局も反撃が前進を見せているのを確認していると明かした。

参考:ВСУ освободили на юге новые населенные пункты – Гуменюк
参考:Пентагон подтвердил успешность контрнаступления Украины на юге
参考:Оккупанты прекратили пытаться восстановить Антоновский мост – росСМИ

多方面で反撃を開始したウクライナ軍、バラクレヤ方面やリマン方面でも前進を見せる

ウクライナ軍南部司令部のフメニウク報道官は6日「解放に成功した拠点が幾つかあるものの周辺の敵を掃討して地雷を除去する必要があり、我々の管理下にあると宣言するため準備を進めているところだ」と明かし、米国防総省のライダー報道官も6日の会見で「ウクライナ軍の反撃は拠点の奪還を含めて前進を見せているのを承知している」と述べている。

出典:Google Map ヘルソン地域の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

既に視覚的な証拠が伴う前進が確認されているので、ヘルソン州でウクライナ軍が前進を遂げている大凡の範囲は上記の通りだが、 BezimenneとShchaslyveの解放にも成功して中央の突出部を拡大させていると噂もあるが、まだ視覚的な証拠は確認できていない。

ただウクライナ軍の反撃はハルキウ州のバラクレヤ方面でも始まっており、既にバラクレヤ近郊のVerbivkaとYakovenkoveまでウクライナ軍が前進(もしくは解放)している可能性が高く、ロシア軍はバラクレヤに通じる主要幹線「T2105」の道路橋を破壊して守りを固めている。

出典:Google Map ハルキウ州の戦況/管理人加工

さらに興味深いのはドネツ川の対岸にあるリマン方面でウクライナ軍の活動が活発化しているという点だ。

ウクライナの国家親衛隊第15独立連隊と第103独立領土防衛旅団の兵士がドネツク州のOzerneを奪還、このことは視覚的にも確認済みでゼレンスキー大統領も言及していた部分だが、Staryi Karavanにもウクライナ軍の兵士が入ったことを示す動画が見つかっている。

出典:Google Map ドネツク州の戦況/管理人加工

恐らくリマン方面のロシア軍部隊は他の戦線に戦力が引き抜かれ、主要拠点以外の防衛が手薄になっているのかもしれないが、ドネツ川に架かる橋が全て壊されているため重装備を対岸に持ち込むは今のところ不可能だ。

ウクライナ軍はOzerneやStaryi Karavanを拠点にゲリラ戦を仕掛け、重装備のロシア軍が制圧に乗り出してくると拠点を放棄して対岸に撤退するつもりなのかもしれない。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

因みにヘルソン州民軍行政府は繰り返し破壊されるアントノフスキー橋について「無意味なので今のところ修復作業を予定していない」と声明を発表しており、修復してもHIMARSの攻撃で破壊されるだけのアントノフスキー橋を諦めた格好だ。

関連記事:ウクライナ軍の反撃はヘルソン限定ではない? ハルキウ州でも反撃を開始か
関連記事:前進を見せるウクライナ軍の反撃、ポーランドも12輌以上のKRABも出荷

 

※アイキャッチ画像の出典:93-тя ОМБр Холодний Яр

ドイツのショルツ首相、レオパルト2A7のウクライナ輸出に同意せず前のページ

ウクライナ軍がバラクレヤを包囲か、さらにイジュームに向けても前進?次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ロシア軍による大規模なミサイル攻撃、ウクライナ軍は131発中107発を撃墜

    ロシア軍はウクライナに計131発のミサイルと無人機を発射、ウクライナ空…

  2. ウクライナ戦況

    バフムートにゼレンスキー大統領が決定を下す、今後も防衛して保持する

    バフムート市内では制圧を目論む露ワグナーとの戦いが激しさを増しているが…

  3. ウクライナ戦況

    ウクライナ国防次官、バフムート市内の陣地を1つも失わず周辺で2km前進

    ウクライナのマリャル国防次官は12日「7日以降にバフムート市内の陣地を…

  4. ウクライナ戦況

    南ドネツクの戦い、ロシア軍がポジション改善に成功して前線を維持

    南ドネツク方面のウクライナ軍は8月にウロジャイネ解放に成功したが、9月…

  5. ウクライナ戦況

    バフムートの戦い、ウクライナ軍は南部で前進しクリシェイフカに迫る

    ロシア側情報源はヘルソン方面について「ウクライナ軍によるドニエプル川渡…

  6. ウクライナ戦況

    ゼレンスキー大統領、軍や米英の圧力を受けてザルジニー解任を覆した

    BBCは「ザルジニー解任は時間の問題で両者の相違は限界に達している」と…

コメント

    • 名無し
    • 2022年 9月 07日

    アントノフスキー橋を諦めたってことはヘルソンから撤退するはめになったら重装備置きっぱなしか。

    35
      • 無無
      • 2022年 9月 07日

      実に美味しい話ですが、ロシアも多少学習しているならばトラップくらい仕込んでいるでしょう、油断禁物

      17
      • たまねぎ
      • 2022年 9月 07日

      兵士の実数までわからないが、舟も足りないだろうし最悪泳いで撤退とかもあり得るのでは…

      3
        • A
        • 2022年 9月 07日

        寒くなる前にロシアへお帰り。

        3
          • k.ziro
          • 2022年 9月 07日

          モスクワは寒くても暖房用の燃料に困らないものなあ、
          ガスを止められた仏、独は寒い冬になりそうだ。

          2
      • けい2020
      • 2022年 9月 07日

      撤退許可はまず出ないしょうし、撤退用としてはロシア軍的には問題ないんでしょうけど
      補給をどうする気なのか不思議だけど、ロシアだからで解決かもしれん

      2
      • 無能
      • 2022年 9月 07日

      同志、前進と死守以外に何の選択肢があるというのだね?

      9
    • ido
    • 2022年 9月 07日

    橋の修復は諦めたのか。もう少し資材を使ってくれてもよかったのに。ウクライナ軍もドネツ川対岸に重装備を運び込むのは無理なのでヘルソン方面で頑張ってほしいですね。

    8
      • エニグマ軍曹
      • 2022年 9月 07日

      それもそうだけど、余分にHIMARSを使用しなくても良くなったとも捉えられます。どっちにしろWin-Winですね。

      19
    • h4
    • 2022年 9月 07日

    両群ともSNSにアップするような状況ではない乱戦らしいことは分かるので、塹壕・砲兵戦で、攻勢時に後方への浸透を試みて乱戦になるあたりWW1っぽさが強いですね。物量が足りてないのでソ連流の縦深攻撃ともまた違うというか。

    ただやはり持久力という意味でこの地域のロシア軍は補給から切り離されており、時間がたつほど抵抗力が失われるので、ウクライナ側が年内の攻勢を維持できる限りはロシア軍はどこかで一度一気に崩れるタイミングがあるだろう、というのが自分の予想ですね。

    16
    • すえすえ
    • 2022年 9月 07日

    やっとはし直すの無駄だとわかったのかw

    遅いぞw

    20
      • ido
      • 2022年 9月 07日

      指揮官はウォッカを飲んでいて正常な判断ができなかったに違いない。

      7
      • 名無しさん
      • 2022年 9月 07日

      上から現場を無視したノルマが課される。
      現場はやったふりしてサボタージュ。

      これがソ連時代からのロシア人のやり方です。

      18
    • ダヴ
    • 2022年 9月 07日

    イジューム、ドネツク、ヘルソン方面のうちどれかをまた放棄しないと兵力スカスカが解消できなさそうやねロシア軍。でもどの方面も「ここは永遠にロシアになる!」とアピールしてるので、放棄すると赤っ恥になるからできないという…

    18
      • ヤゾフ
      • 2022年 9月 07日

      戦略的後退だから…(震え声

      4
        • すえすえ
        • 2022年 9月 07日

        断じて後退ではない!

        転進である!!!???

        13
          • ido
          • 2022年 9月 07日

          やはりロシアは大日本帝国だった!?

          14
    • トブルク
    • 2022年 9月 07日

    戦線がハルキウからヘルソンまでの約800kmとして、仮にロシア軍を20万人、そのうち前線に3割を配置するとして6万人とすると、前線のロシア軍の戦力密度は平均75人/kmしかいない。
    もしウクライナ軍に自由に運用できる攻撃部隊が複数あるなら、主攻軸以外でも広く浅く攻撃を仕掛け、ロシア軍が分散した状態で叩くのは理にかなっている。
    ロシア軍からしたら、ウクライナ軍に打撃を与えて主導権を取り返さないと、ジリジリ消耗して戦力が戦線維持に必要な最低ラインを割り込むことで、最終的には戦線崩壊に繋がりかねない状況に進みつつあるように思います。

    15
    • zerotester
    • 2022年 9月 07日

    ISWは、ハルキウのウクライナ軍の攻勢はロシア軍が手薄なことを見て行った日和見的な攻撃ではないかと言ってますね。
    元々この地域にいた第1親衛戦車軍の少なくとも一部が南部に再配置され、手薄になっているということのようです。
    橋を落して撤退したということはすぐに奪い返す意思が無いということで、弱いところを突かれて焦ったのでしょうか。
    ここからさらに利益を広がられるかは分からないけれど、ロシア軍へのプレッシャーにはなりますね。

    例の第3軍は東部に配置されたようなので、第1親衛戦車軍などの代わりでしょうか。装備は良いが訓練不足だとISWは言っていますが。案外このあたりに配備されていたかもしれません。

    11
    • ab
    • 2022年 9月 07日

    占領地回復しても
    地雷やトラップの除去から始まり
    復興も進めないといけない

    実際に賠償金取れるのかねこれ

    2
      • 鼻毛
      • 2022年 9月 07日

      賠償金とれなくても「ロシアは賠償してない!」って永遠に突いて国際社会からリジェクトし続けられればそのほうがウクライナは得するかもしれませんな

      18
    • ぬっこ
    • 2022年 9月 07日

    諦めたと見せかけておいて、墨俣城のように川上から一気に橋のパーツを持ってくるかもしれない…

      • ido
      • 2022年 9月 07日

      資材の載せすぎで沈没するんですねわかります。

      3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP