ウクライナ戦況

ウクライナ軍はリマン近郊で拠点を解放、ロシア軍はスバトボの守りを固める

ウクライナ軍がリマン近郊のDibrovaとSzczuroweを解放することに成功したが、ウクライナも英国防省も「ロシア軍がスバトボに戦力を集結させて防衛ラインを構築している」と指摘している。

参考:Россияне скапливают войска в Сватовском районе и строят укрепления в Луганской области – Гайдай

個人的には東部戦線での反撃はリマン奪還にかかっているような気がする

ウクライナ軍の兵士がDibrovaとSzczuroweで国旗を掲げる様子を映した映像が登場、順調にロシア軍支配下にあるリマン周辺へ足場を築きつつあるが、ルハンシク州のガイダイ知事は「ロシア軍がスバトボに戦力を集結させて防衛ラインを構築している」と明かした。

出典:Google Map 東部方面の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ガイダイ知事は「ロシア軍がルハンシク州内のモバイル通信とケーブル通信を遮断、州内に防衛ラインを構築してスバトボに部隊や戦力を集結させている」と主張しており、英国防省も「スバトボはベルゴロド経由の輸送ルートが機能している中継地点で、解放するはずのルハンシク州を失うのはロシアの戦略を台無しにするためオスキル川とスバトボの間に防衛ラインを構築している」と指摘している。

ただ英国防省は「ロシア軍の前線部隊にウクライナ軍の総攻撃を耐えるだけの士気や予備戦力が残されているかは不明だ」とも付け加えおり、そもそもオスキル川の対岸に重装備を送り込むための橋が殆ど残っていないため、ハルキウ州で実施された規模の総攻撃をオスキル川東岸地域でやるにはリマンを奪還後に南から北上するしかない。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

つまりオスキル川東岸地域への総攻撃を開始するには準備に時間が掛かる可能性が高く、時間が掛かるほどロシア軍の防衛ラインは強固になり戦力の備蓄も進むという意味だが、スバトボ経由の輸送ルート上には幾つかウイークポイントとなりそうな橋があるので、ここをHIMARSで叩けば補給を妨害することも可能だろう。

果たして「オスキル川渡河→ルハンシク州へ向けて東進」という総攻撃をウクライナ軍が狙っているのは謎だが、個人的には東部戦線での反撃はリマン奪還にかかっているような気がする。

関連記事:ウクライナ軍、オスキル川の対岸にあるクピャンスク東部地区を解放か

 

※アイキャッチ画像の出典:Telegram

韓国製攻撃機の欧州上陸が確定、ポーランドがFA-50の本契約に署名前のページ

ドイツがウクライナのRCH155購入を承認、ただし納品は早くても30ヶ月後次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ウクライナは越冬資金8.4億ドルを要請、国際社会は要請を上回る支援を約束

    ゼレンスキー大統領はパリで開催されたウクライナ援助会議で「最低でも越冬…

  2. ウクライナ戦況

    ザポリージャ州の戦い、ウクライナ軍がロボーティネに取り残された民間人を救出

    ウクライナ軍兵士がロボーティネ集落内のメインストリートに進出したことが…

  3. ウクライナ戦況

    ドニエプル川の戦い、ロシア軍はダチのウクライナ軍にイスカンデルを使用

    ロシア軍は「ヘルソン州左岸に築かれたウクライナ軍の足場=ダチ」を制圧す…

  4. ウクライナ戦況

    中国製ドローンへの依存、ウクライナはMavicの生産量の60%を購入

    ウクライナのシュミハル首相は「400億フリヴニャ(約1,640億円)も…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍、本物の反撃計画を秘匿するため裏切り者を根絶やしにした

    英Guardian紙は10日、鳴り物入りで開始されたヘルソン州の反撃は…

  6. ウクライナ戦況

    オランダがPzH2000をウクライナに提供、ドイツが弾薬と訓練を提供

    米ブルームバーグは20日、ドイツはオランダがウクライナに提供するPzH…

コメント

    • トト
    • 2022年 9月 17日

    >果たして「オスキル川渡河→ルハンシク州へ向けて東進」という総攻撃をウクライナ軍が狙っているのは謎だが

    まあ広大な土地は奪還できますが、前進するほど守らなければならない側背は広がり、兵站は厳しくなりますからね。

    13
      • ブルーピーコック
      • 2022年 9月 17日

      薄くなったウクライナ軍の側背を突ける余力がロシア軍に残っていれば良いんですがね。兵員不足にあえぐロシア軍は犯罪者や中央アジア出身者を勧誘したり、ドネツクやルガンスクの民間人を動員する始末ですが。
      ましてや装備も弾も足りず、イランや北朝鮮に援助してもらう有様。こんなんじゃ中央アジア諸国もロシアを見限っちまうよ!
      (なお先月にカザフ、タジク、キルギスがアメリカと共同軍事演習した模様。まあ2004年から続いてる演習だけども。今年はウズベキスタン、パキスタン、モンゴルも参加。仲間が増えるよ!やったねたえちゃん!早速、参加国同士で殺し合ってるけどな!)

      23
    • 台湾大好き
    • 2022年 9月 17日

    戦線の流れが早すぎてついていけない(汗)
    オスキルには露ベテラン部隊が殿としてがんばっていると聞いていましたがそこは抜いたんですかね。続くYats’kivkaが抜ければ南のスビャトヒルスクからの攻勢と合流して北上、東進の自由が効くようになるね。機甲部隊の突進再び?

    14
    • けい2020
    • 2022年 9月 17日

    スバトボなどに防衛ラインを構築する資材や補給はどこから集めるんだろうな
    手作業で塹壕土のう位はいけても、逃げ込んだ敗残兵への水食料すら厳しそうな状況だが

    ロシア軍側も新たな部隊を投入しなければ、重装備の殆どを喪失してるし
    こんな後方に重装備の予備部隊を置けていたとは思えないし、防衛線はあなり脆弱な予想してる

    ウクライナ軍は民間人が多い拠点以外に防衛ラインがあれば、後方から砲撃で潰せばよいわけだし

    11
    • ユタカ
    • 2022年 9月 17日

    今橋が架かっているかはあまり問題じゃないですよ。戦車が通れる仮設橋なんか数時間で架けられます。
    問題は橋を渡るウクライナ軍を砲撃するロシア軍守備隊がいるかどうかです。東岸にロシア軍守備隊がいないなら仮設橋を架けて進軍すればいいだけです。

    5
      • 通りすがり
      • 2022年 9月 17日

      戦車だけ渡河出来ても安定的に弾薬や燃料を供給できないと意味ないから、安定的に川を渡れるルートの確保は必要だよ。

      架橋設備で一時的に渡河して補給が途絶えたら、それこそ酷い目に遭う。

      53
    • TKT
    • 2022年 9月 17日

    スバトボはベルゴロド経由の輸送ルートが機能している中継地点、ということは、要するにロシア軍がイジュ―ムを放棄しても、スバトボさえ押さえとけば、ロシア領のベルゴロドから、リマンや、リシチャンスク、クレミンナ、ルビジュネといったドネツ川北岸地区、プーチンが重視するドネツク州北部、ルガンスク州西部への輸送、補給に特に支障はない、ということを意味する。

    ロシア軍がイジュ―ムの放棄を早々と決めたのは、スバトボさえ押さえとけば、ルガンスク州を防御するための輸送、補給に大きな問題はないという大局的、戦略的な判断があるのかもしれない。

    ロシア軍に士気や予備戦力があるのか不明だ、では仮にロシア軍に士気や予備戦力があった場合には、ウクライナ軍の方が大きな損害を蒙る可能性もある。不明の状況のままで攻撃を継続するのは一種の賭けになる。

    ロシア軍がスバトボに戦力を集結させて防衛ラインを構築している、というんなら、やっぱり予備の戦力はあるんだろう、という話にもなり、どっちなんだ?という話でもある。

    新編成の第3軍団というのも、どこで何をしているというような詳しい話はなく、もちろん状況に応じてさらに移動することも考えられる。

    19
    • とり
    • 2022年 9月 17日

    話が逸れますが、ISW発表の12日の戦線図で、ザポリージャ南方の後方地帯のかなり広い範囲をウクライナパルチザンが占拠しているものがありました。ウクライナ支配地域とは接続がなく、いろいろと不明な点が多いのですが、これに関してご存じの方いらっしゃいますか? 
    まあ、記事にまとめるには視覚情報が足りないと思うのですが。

    2
      • 匿名さん
      • 2022年 9月 17日

      パルチザンによる鉄道施設や露助への爆破が8月中旬に報じられていますが
      それ以上の情報は見つかりませんね。
      ただウクライナ側と接触しているのは確実と思われるので
      今後の南部反攻の鍵になるかもしれませんね。

      9
        • とり
        • 2022年 9月 17日

        ウクライナ軍と接続できなければ待っているのは凄惨な制圧に違いないので、ザポリージャ方面でも前進を期待したくなってしまいます

        6
    • 名前
    • 2022年 9月 17日

    ロシアの準備が完璧でないとは思うけれど、ウクライナ側も一気に奪還した結果、兵站が間に合わなかったり安全確保に手間取って攻勢に十分な状況じゃない可能性も考えてしまう
    秋のぬかるみの道の動画もみたし、ドンバス方面は一時的に落ち着くのかも

    2
      • 鳥刺
      • 2022年 9月 17日

      実際問題、冬営の主抵抗線としてオスキル川~ドネツ川は非常に有利なので、ここで無理をして40~60km戦線を押し込むのは却って自軍の態勢を不利にするという見方は充分成り立ちます。その距離を攻撃前進するにも相応の兵站上の準備が必要ですし。

      13
        • ユタカ
        • 2022年 9月 18日

        ウクライナ軍は渡河してリマン南部で盛んに戦ってますから、オスキル川・ドネツ川に防衛ラインを敷くつもりはないんでしょうね。
        少なくともリマン・リシチャンシク・セベロドネツクを奪還するつもりがないのであれば渡河してリマンに攻め込むのは戦力を減らすだけですから。

        2
    • ブルーピーコック
    • 2022年 9月 17日

    「スバトボはベルゴロド経由の輸送ルートが機能している中継地点で、解放するはずのルハンシク州を失うのはロシアの戦略を台無しにするためオスキル川とスバトボの間に防衛ラインを構築している」

    つまりベルゴロドとの導線をシャットアウトすればウクライナ有利か。ベルゴロド住民はウクライナ軍によるロシア軍集積地への攻撃だけでなく、ロシア軍のミサイル誤射にも怯える日々を過ごす訳だな。なんで短期間に二度も露軍のミサイルがベルゴロドに落ちるんじゃい。
    (イスカンダルは1日の夜にベルゴロド市内から発射後、あらぬ方向へ。S-300はハルキウ州北東部で発射された物が住宅地へ落下。イスカンダルはまだ分かるが、S-300は逆方向に飛んどるがな)

    11
    • 鳥刺
    • 2022年 9月 17日

    今の所は対岸からの援護射撃が届きそうな範囲での歩兵の攻撃という感じですね。オスキル川南端の橋頭堡はそろそろ浮橋を架けられそうな深さになって来たように見えますが、さて? リマンは左右からの浸透が進めばそんなに長く保持できる地点とも思えないですが、ここでも橋は架けて行きたい所です。

    川に沿った戦線を進出確保して、自軍が対岸に複数の橋頭堡を確保している有利な状況を更に発展させたいのはやまやまですが、進出目標線の設定、敵の規模と抵抗、進出後の確保の難易度を考えるとなかなか難しい問題です。

    >スバトボ経由の輸送ルート上には幾つかウイークポイントとなりそうな橋があるので、
    >ここをHIMARSで叩けば補給を妨害することも可能だろう。

    吊り上げて後方連絡線を遮断して敵の消耗を図る作戦は、各所でその有効性を証明していますからね。

    2
    • 美濃尾張をやろう
    • 2022年 9月 17日

    あの悪魔たちは必ず裁かれなくてはならない
    被害者が受けた苦痛と屈辱は必ず悪魔たちに注がれなければならない

    15
    • ミリ猫
    • 2022年 9月 18日

    9月14日にフランスの外相がインドのモディ首相と会談。
    リンク
    今週ニューデリーを公式訪問したフランスのCatherine Colonna外相は、印露関係の歴史を「理解し尊重する」と述べ、モスクワとキエフの間の会談を開く上でインドが果たすべき役割を強調した。

    そのすぐ後、9月16日に上海経済機構に出席したモディ首相は
    プーチンに面と向かってウクライナ戦争への批判を述べました。
    リンク
    —————
    勝馬に乗りたいインドは、西側寄りに舵を切り変えたように思えます。

    4
    • ナイトアウル
    • 2022年 9月 18日

     ロシアに大量のBM-30用9M544/9M549ロケット弾とまともな敵監視体制あればHIMARSや今の軽武装ウクライナ先遣隊にそれなりの打撃与えられるはずなのにもったいないよな。
     UAVによるリアルタイムの監視体制を反映出来て長距離滑空爆弾とロケット有ればこんな本国国境付近にウクライナなんて展開出来ずにいただろうに。装備が限定されていると上手くいかないな。

    • タイヤキ
    • 2022年 9月 18日

    ザポリージャ方面はロシア側の情報みると第三軍団の一部が配備されたといっているし、コデマ周辺ではワグナー部隊が浸透作戦でいくつかのウクライナ側の街奪っているから、ロシア軍もハルキウ州救援にいき、ハルキウ州がすぐ陥落したから、遊軍となり休息して元の地域に戻っていった部隊が休息と補給とれたから攻撃が活発化して第三軍団がドネツク州やザポリージャ方面などロシア軍に余裕ある地域に分散配備されているためにパルチザンとウクライナ軍が分断されていますよね。
    ウクライナ軍も東部だとロシア国境からの来襲にかなりの予備部隊で備えないといけないから、ウクライナ軍も兵力に余裕なさそうですね。

    • アクアス
    • 2022年 9月 18日

    どうもこの戦争の鍵は南部にあると思うんだが、ウクライナがここで戦力をすり潰す可能性のある賭けに出るんだろうか?

    プーチンが怒鳴りまくって無理やり南や南東から戦力抽出→その裏をかいてアゾフ海に面したあたりまで反攻、ということもあるかもしれない。

    2
      • k
      • 2022年 9月 18日

      >無理やり南や南東から戦力抽出

      それは確実に狙ってるでしょうな。
      ロシア軍が態勢崩してる今の間に叩けるだけ叩き、嫌でも東部に戦力を抽出せざるを得ない形に持っていく。
      プーチンにとってはドンバスやドネツク解放は、この戦争始めた大義名分の根幹なので
      例えより戦略的価値の高い南部と引き換えとなろうと、絶対捨てられないと思う。

      その態勢まで冬季が本格化する前に持っていき、春頃に全土奪還を賭けた決戦…て感じかね…。

      2
      • samo
      • 2022年 9月 18日

      指揮官がまともなら、ヘルソンは放棄して、ドニエプル川に防衛戦を構築し直すことで、南部に必要な戦力量を下げ、
      そこから抽出した東部地域に戦力を集中させることが最も理にかなっている。

      まあロシアがアホすぎて、ヘルソン市とかいう補給も防衛もし辛い街に戦力を投入して、貴重な戦力をすり潰しし続けているのだけど。
      何度あの地で貴重な戦力や将校を失ったか、わかっているだけでも膨大

      5
    • samo
    • 2022年 9月 18日

    以前にも書いたが、オスキル川とクラスナ川の間は、幹線道路の経路上、ロシア側の補給路の確保が難しい地域になってる。
    リマンもすでに補給が大変厳しい状態に陥っていることは想像に難くない。

    スパトバにロシアが戦力を集中させているということは、ロシア軍はクラスナ川まで防衛線を後退させることとを既に想定していると見るのが自然だろう。

    2
    • mun
    • 2022年 9月 18日

    ロシア軍は本来、オスキル川対岸に防衛線を築きたかったが、それはできなかった
    現在はそれより後方の国道沿いに防衛線を築く予定だと思われる

    ウクライナ軍はオスキル川の渡河に成功したが、対岸に渡ったのは主に歩兵部隊
    重装備を対岸に渡すにはもう少し時間がかかる

    時間との戦いになりそうだ
    ロシア軍の防衛線構築、部隊集結、準備が整うのが先か
    ウクライナ軍の十分な戦力が渡河するのが先か

    2
      • l
      • 2022年 9月 18日

      オスキル側を渡ってしまえば、スバトボまでは平地だらけで防衛戦には不向きで、攻めるには易い地域
      ここを決戦の地として誘導出来た時点で、ウクライナ軍の戦略はかなりハマってると思う。
      ウクライナ側の補給がどうなってるかも不安だが、鹵獲品も駆使すれば比較的早期に補充と再編は可能なりそうだし
      冬までに出来るだけ多くの戦果を稼いで欲しい所だね

      1
    • sakamo
    • 2022年 9月 18日

    ドイツに要求していた戦車を装甲車に変えられ、怒っていたウクライナの気持ちが分かる。どう見ても前進するには多数の戦車が必要だ。アメリカをはじめ西側は西側で制作した戦車は支援していない。ロシアの古い機種だけだ。勝つための兵器提供はされておらず、負けない程度の兵器援助でウクライナは戦っている。先は苦しいと思う。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP