欧州関連

ウクライナ軍、ソレダル西郊外に保持していた拠点をロシア軍に奪われる

ロシア軍がソレダル西郊外の岩塩坑施設をウクライナ軍から奪取、さらにクリシェイフカ周辺の高台陣地もロシア軍に奪われた可能性が浮上しており、これが事実ならバフムート包囲を阻んできた同拠点は危機的状況と言える。

参考:МАДЯР:Командир окремої тактичної групи аеророзвідки S.A.R.G. ПТАХИ МАДЯРА

そろそろウクライナ軍はロシア軍の攻勢を押し返さないとバフムートの保持自体が怪しくなってくる

ロシア国防省は13日に「ソレダルを事実上占領した」と発表、ウクライナ国防省も直ぐに「ソレダル西郊外の岩塩坑施設=Ⓐを保持している、ロシアのプロパガンダを信じるな」と主張する兵士の動画を公開して対抗したが、この動画に登場した兵士(コールサイン:Magyar)は15日「岩塩坑施設をロシア軍に奪われた」と明かした。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

さらにMagyarと名乗る兵士(ドローンを使用した戦術航空偵察部隊の隊長らしい)は「ロシア軍部隊はソレダルの行政境界線上に達している」と明かしているため、ウクライナ軍はソレダル自体から押し出された可能性もあるが、バフムートの南に位置するクリシェイフカ周辺の方がソレダルよりも緊迫している。

ウクライナ軍がロシア軍陣地=を攻撃する様子が視覚的に確認されため「ロシア軍がクルデュミフカからチャシブ・ヤールに伸びる道路沿いに進んでいる」と解釈でき、参謀本部は「ロシア軍の攻撃を撃退した」と発表していたが、ロシア側の情報源は「クリシェイフカ南の高台にあるウクライナ軍陣地をロシア軍が占領した」と主張している。

もし高台の陣地占領が事実なら、クリシェイフカを守るウクライナ軍は「ポイントⒸ」をロシア軍に押さえられると道路による兵站ルートを完全に失うハメになり、同拠点へのアクセスは田んぼ道(?)的なものに限定されるため非常に危機的な状況だ。

陣地占領の視覚的な確認は取れていないが、ヤコヴリフカ制圧後から始まった一連の攻勢は「ウクライナ側情報源」よりも「ロシア側情報源」の報告に近い形で推移しており、管理人の感覚ではリシチャンシク巡る戦いの時と同じ印象を受けるため何となく嫌な予感がする。

出典:Telegram経由 リシチャンシクを制圧したロシア軍

クリシェイフカを失えば本当に「バフムート包囲」が現実味を帯びてくるため、そろそろウクライナ軍はロシア軍の攻勢を押し返さないとバフムートの保持自体が怪しくなってくる。

追記:ロシア軍がバフムート東郊外の森林地帯を抜けて市街地に侵入したらしい。

関連記事:ロシア軍がS-300でキーウを攻撃、ウクライナ軍には有効な対抗手段がない
関連記事:ロシア軍はソレダル占領を宣言、ウクライナ軍は市内中心部で戦闘中と反論

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

英国政府、チャレンジャー2とAS90のウクライナ提供を公式に発表前のページ

現代戦に大きな影響をもたらしたウクライナ侵攻、米軍も1万ドルの自爆型無人機を要望次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    エルドアン大統領の真意は?トルコがフランスに防空システム売却を要請

    トルコは東地中海問題、シリア内戦やリビア内戦で対立中のフランスに防空シ…

  2. 欧州関連

    EU代表、ウクライナに砲弾を送るためには備蓄分を解放するしかない

    EU外務・安全保障政策上級代表のボレル氏は「ロシアの攻勢に対応するため…

  3. 欧州関連

    ルーマニア国防省、大隊規模のM1エイブラムス調達に動いていると明かす

    ポーランドは米国からM1A2エイブラムスのSEPv3を250輌、米海兵…

  4. 欧州関連

    トルコ、リチウムイオン電池搭載で浅瀬運用に特化した潜水艦「STM500」の詳細を発表

    トルコの防衛産業「STM」は沿岸海域の浅瀬運用に特化した小型潜水艦「S…

  5. 欧州関連

    フランス、ドイツがダッソー主導を受け入れないならFCAS崩壊の可能性

    ダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は26日、将来戦闘…

  6. 欧州関連

    G7がウクライナの安全保障に関する共同宣言を発表、支援の公式化が狙いか

    G7はウクライナの安全保障に関する共同宣言を発表、バイデン大統領は「G…

コメント

    • PHiagato
    • 2023年 1月 16日

    ウクライナがBakhmutを長期に渡って占有できると考えてる軍指揮官は誰も居ないのではないでしょうか。粘るようにと、上から強弁されているだけではないかと思います。
    より大局的には、オデッサでどの程度まで抵抗するつもりなのかを考えていくことになるでしょう。
    この2年3年で同様に状況になると思います。街が戦場化して、ことごとく破壊される結果になってでも
    抵抗することに意味があるかどうか。現地の住民と将来のウクライナ首脳が、健全で自由な議論ができますように。
    今の腐った大統領より現実的な解を見つけ出される事を願っております。

    20
      • 黒丸
      • 2023年 1月 16日

      ロシア占領下で何が起こっているかを考えると
      抵抗には意味があるかと。
      洗濯機や冷蔵庫 スマホの略奪だけではすまない。
      戦場になってもならなくても基本的人権含め全てが失われるので、
      抵抗したほうが良い未来につながる。

      80
      • Ard
      • 2023年 1月 16日

      ヘルソン奪還でより安全になったオデッサで何が出来るってんだ…

      31
      • ロバ
      • 2023年 1月 16日

      親露派さん、プロパガンダを流さないでください。

      57
      • ido
      • 2023年 1月 16日

      基本的人権の失効してくる国に対し降伏しろと?

      52
      • panda
      • 2023年 1月 16日

      オデーサ?
      ミコライウどころかヘルソンを奪還されたのにどのようにロシアがオデーサを脅かすのでしょうか

      31
    • 勧進帳
    • 2023年 1月 16日

    腐った大統領はウクライナではなくロシアにいます。

    94
    •  
    • 2023年 1月 16日

    あちゃー……恐れていた形になりつつありますね。
    ソレダルもクリシェイフカも速やかに二重包囲が完成したところを見ると、もうこの戦線のウクライナ軍にはロシア軍の迂回攻撃を止められる機甲部隊がいないのでしょう。
    アルチェモフスクを放棄したとしても戦線の安定化には相当時間がかかりそうな予感が……

    12
      • TKT
      • 2023年 1月 16日

      戦線の安定化には相当時間がかかるというのは、要するにドネツク州の防衛戦が完全に突破されて、この方面のウクライナ軍が崩壊するということを意味します。

      ウクライナ軍に防衛戦を立て直す手段があるとすれば、チェコから供与されるT-72戦車や、10台前後供与されるかもしれないチャレンジャー2戦車、ドイツが承認すればポーランドから供与されるかもしれない10台くらいのレオパルド2戦車、ブラッドレー装甲車、フランスの装輪装甲車などですが、ドネツク州での反撃に間に合うかはわかりません。

      ロシア軍は一説に約7000台のT-72戦車を保管しているといわれ、もちろん実際に何台動くかはわかりませんが、仮に実際に動くのが10分の1だったとしても約700台になります。さらにその他にT-62戦車などもあります。

      2月、3月にさらにゲラシモフ参謀総長が直接指揮を執るロシア軍の大攻勢があるという予想もありますが、すでに今の時点でも十分に大きな攻勢に思えます。

      あと
      「Magyar」
      という兵士ですが、これはハンガリー語でハンガリー人のことであり、ひょっとするとハンガリー人の兵士か、ハンガリー軍の兵士かもしれません。ウクライナ人の兵士がわざわざMagyarと名乗ることはなかなか考えにくいことです。

      しかしチェコから供与されたT-72戦車を投入するにしても、すでに戦況は飽和攻勢のような状態になっており、分散して投入すると、各個撃破される可能性が高くなり、また集中して投入すれば、手薄になった他の地区で突破されるかもしれません。

      第二次世界大戦の東部戦線で、ティーガー戦車は後衛の火消しとして活躍しましたが、圧倒的に台数が足りず、ティーガー戦車がいない地区を、台数や稼働率、燃費や航続距離で優るソ連軍のT-34戦車にどんどん突破されてしまいました。

      13
    • おわふ
    • 2023年 1月 16日

    ドローンと砲兵が潜水艦ゲームの様な戦闘をしているウクライナ戦では、固定陣地の防衛側は圧倒的不利。
    どこかで戦い方を変えるしかないですね。

    7
    • panda
    • 2023年 1月 16日

    この時代になっても人命を省みない人海戦術をやらかす国家が存在する
    人道上の理由で面制圧兵器や対人地雷を放棄している西側諸国にとってこれほど苦しい攻撃はないかもしれません

    22
    • 名無し
    • 2023年 1月 16日

    アメリカ「なんでクラスター爆弾や対人地雷を手放したと思い込んでるんだ?」
    ウクライナ「俺もそんな条約、締結した覚えはないぞ。」

    3
      • panda
      • 2023年 1月 16日

      ウクライナ君はオタワ条約加盟国でしょう?

      4
    • サブマリナー
    • 2023年 1月 16日

    四日前に見た海外の衛星写真と比べるとかなり押し込まれてますねえ。
    ここ数日の他の動きはルハンシク方面ではウクライナが部分的に前進。
    へルソン方面では両陣営ともに砲陣地、対空陣地の増強
    後方では竜の牙の延長、接続されてない部分を簡易妨害物や塹壕で接続の動き。

    1
    • タカ
    • 2023年 1月 16日

     何かソレダル陥落で幸せになっている方々がいるようですが、意味がわかりません。
     バフムトが落ちたわけでもなく、その周辺部を一部押さえられているだけでしょ?
     仮にバフムトが落ちたとしても、セベロドネツク、リシチャンスクが落ちた時より、全然軽いと思うんだが。
     でセベロドネツク落ちてその後どうなりましたか?
     領土の回復状況だけ見ても、ハルキウとヘルソンの、せめてどちらかと同じくらい土地を取って初めてウクライナ劣勢ということになるのではないかな?
     土地の広さより主力精鋭部隊が包囲殲滅でもされない限り大勢は覆らないと考えるのが自然ではないか。

    7
      • paxai
      • 2023年 1月 16日

      ソレダールに関しちゃウクライナ政府の発表が変な憶測を呼んでる面が大きい気がするなあ。
      仰る通りまだバフムートは落ちていない。仮に落ちたとしても後退して西側物資で立て直しを図ればいい。
      でもウクライナ政府の公表通りソレダールに拘り不利な状況で戦闘をし続けてるのならそれは立て直しの機会を喪失する事になりかねんと思うのだ・・・

      3
        • りにあ
        • 2023年 1月 17日

        昨年夏ですら、ビロホリフカにてこずってましたしね。ビロホリフカはロシアにとって鬼門になりつつあります。また、バフムト包囲戦略にしてもバフムト西側に回りこむことは難しいでしょう。東西から挟撃されます。内陸都市包囲は360度全方向でしないといけない。

      •  
      • 2023年 1月 16日

      リシチャンシクの時は攻勢限界の最後に陥落を許してしまっただけですからそれ以上戦果を拡大されることもありませんでしたが、今回は動員によって充足を回復したロシア軍の攻勢が始まったところですから同じように止められるだろうと期待するのは難しそうです。
      どこかでまたロシア軍が攻勢限界に達してウクライナの反撃が始まるわけですが、それまでに出る損害はなるべく少なくなければなりません。
      おっしゃる通り土地の広さより野戦軍の撃滅が両軍にとって大事ですからね。

      5
    • mun
    • 2023年 1月 16日

    ウクライナ軍に余裕がない
    わかっていた事ではありますが、実感はしていなかった
    西側戦車の供与も遅すぎました
    しかし、皮肉な話ですがこういった局面にならないとNATOは決断をしない
    現状の支援では足りないのだと明らかになる場面は必要だったのでしょう

    ウクライナ人の血が流れ、ギリギリまで国土が荒廃しても
    ロシアに勝てるだけの武器をもっているのに、出し渋る
    本当に罪深いことだと思います
    ウクライナに核を放棄させ、安全を保証したはずの米英
    結果的には戦火の火種をバラ撒いておいて
    ウクライナはNATO加盟国ではないから参戦はしないと言う
    やりきれないですね

    16
    • 匿名
    • 2023年 1月 17日

    米欄もリシチャンシクのときそっくりな雰囲気だな

    2
    • けい2020
    • 2023年 1月 17日

    日本もクラスター爆弾禁止条約、対人地雷禁止条約を脱退して再装備しないと
    中国からすれば攻めやすい国だよなぁ

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP