ウクライナ戦況

ロシア軍の後退が止まらない東部戦線、ウクライナ軍が複数の拠点を奪回

ウクライナ軍はリマン方面でロシア軍から複数の拠点を奪回、オスキル川沿いに北上して「ボロバ」に入ったという報告まである。さらにゼレベツ川を目指し東進する動きも顕著でロシア軍の後退が止まらない。

2方向からオスキル川沿いのロシア軍を排除→ハルシンク州に向けて東進するための橋頭堡を確保するつもりなのかしれない

ウクライナ軍はリマン方面で確固たる足場を築くことに成功、ロシア軍からピスキーラドキフスキー、カルピフカ、ノヴォセリフカといった拠点を奪回、未確認ながらウクライナ軍がボロバに入ったという報告もあり「オスキル川沿いに北上する意図」がハッキリと読み取れる。

出典:Google Map 東部戦線の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍はクピャンスクからもオスキル川沿いに南下を開始しており、恐らく2方向からオスキル川沿いのロシア軍を排除→ハルシンク州に向けて東進するための拠点とルートを複数確保するつもりなのだろう。

特に興味深いのはカルピフカからリドコダブに向けて前進するウクライナ軍の動きで、ここを確保すればリマンへのアクセスはゼレベツ川を越えるルートに限定され、ウクライナ軍はロシア軍の輸送ルートを叩きやすくなるはずだ。

出典:Сухопутні війська ЗС України

あと数日もすれば動員されたロシア軍部隊が東部戦線にも到着する見込みで、この変化がウクライナ軍の前進を鈍らせることに繋がるのか、リマンやヤムピリを失いゼレベツ川の対岸に引きこもるのか、それとも逆襲に転じてウクライナ軍を押し戻すのか注目される。

追記:ウクライナ大統領府の関係者やハルキウ州行政府もクピャンスク・ウズロヴォイの解放を確認した。

関連記事:ウクライナ軍がウズロヴォイを解放、ロシア軍は1960年代製の装備を移送中

 

※アイキャッチ画像の出典:Сили територіальної оборони ЗСУ

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コメント

    • hiroさん
    • 2022年 9月 27日

    ナポレオンを挫折に追い込んだ、冬将軍作戦に向けた戦略的撤退のわけないですよね。
    本当に予備役のロートルを投入するのだろうか···。

    16
      • HAi
      • 2022年 9月 28日

      兵站線がちぎれかけてる今、冬将軍で凍りつくのは遠征に来てるロシア側ですからねぇ
      勿論ウクライナ側も大変だろうけど、短期決戦で制圧できる兵力があるのでないなら、ロシアが冬を待つ理由はないと思う

      7
    • ななし
    • 2022年 9月 27日

    河を利用した包囲戦を空軍万能と思われたこの時代で見れるとは…。航空優勢をお互いに獲れないと古典的な陸戦になるのだなぁ。米軍の将軍だと敵を徹底的に空軍で焼き払って、河くらいヘリで越せるでしょ?とか言いそう。

    31
      • 「違う」ななし
      • 2022年 9月 28日

      そうですね。
      管理人さんには悪いが、「航空万能」ではなく、「GPS誘導榴弾・ミサイル万能」や「高機動ミサイル攻撃システム万能」ということなんですかね?(笑)

      2
    • kankan
    • 2022年 9月 27日

    増援が到着する前に奪還できるだけ奪還して、相手の補給を叩きやすい場所を確保しておくといった感じかな
    直近の狙いはスバトボだろうか?
    ここを取り戻せばリマンからセべロドネツクのロシア軍は相当苦しくなると思うが

    >あと数日もすれば動員されたロシア軍部隊が東部戦線にも到着する見込みで、
    ホントにこの前動員されたばかり連中がくるのか?
    いくら何でも促成栽培過ぎる
    個人的には錆びたAKといい、モシン・ナガンといいロシアが油断を誘う為のプロパガンダを打っていて
    本当はちゃんと装備が部隊に支給されている罠なんじゃないかと疑っているんだが

    24
      • 匿名
      • 2022年 9月 27日

      十分な訓練期間と信頼できる装備があって、それを隠しているのでは?という疑念ですね
      気持ちはわかる。あまりにも侵略側のボロボロな情報が流れてきてるからね

      でもそんなものがあるならとうの昔に投入しているだろうし、
      なによりこの土壇場で「自発的な投降に懲役10年」なんて法改正しないでしょ…

      53
    • もり
    • 2022年 9月 27日

    割とマジでね、核使うと思うわプーチン

    4
      • 猫ちゃん
      • 2022年 9月 27日

      核保有国にとって最後の切り札である核弾頭、これをきちんと保全できているのかとても気になる。
      核弾頭だけでなく、それを発射するミサイルとその管制施設、更にそれらの支援要員が作り出す複雑なシステム群。
      複雑なシステムはデリケートなものなので一度壊れると回復させるのは至難のワザ。
      今のロシアのグダグダを見ていると「核発射施設だけはちゃんとしてる」と考えるのはかなり難しく、どの程度各発射能力を維持しているか実際に見れるチャンスなのかもしれない。

      24
        • カディロフ
        • 2022年 9月 27日

        ロシアのロケット技術はウクライナ製のパーツを使うのをやめて
        国産化したり、ソ連崩壊によって金がなくなってソ連時代からの技術者から若い技術者への技術継承が失敗してから品質の悪化が深刻なレベルで進行していて
        ソユーズはどうにか品質を意思してるが大型用のプロトンがかなりやばくて年に数回失敗するのは当たり前で
        数年前にセンサーの取付ミスによって打ち上げ後地上にUターンするというとんでもない事故があった
        核兵器も主力のR36はウクライナ製で整備が難しいからちゃんと動くのか怪しいし新しいサルマトやトーポリは
        そもそもちゃんと発射できるかも怪しい

        9
          • G
          • 2022年 9月 27日

          とはいえ戦術核レベルではICBMよりはるかに整備が容易な空中発射型などもあるので、行動から見て取れるプーチン大統領の精神状態からして無条件で無視することはできないかと

          3
        • unnamed
        • 2022年 9月 27日

        あまりのグダグダっぷりに、皮肉にももし最悪のシナリオがあったとしても、少なくとも大量の核を使って世界を道連れにする大層な能力はもはやロシアに残ってない気がしますね・・・。

        やぶれかぶれ数発の核を使って局地的に大惨事を引き起こすことは出来るかもしれませんが、その時点でアメリカやNATOの本気の介入を招いてロシア国内のオンボロな発射能力が完全に無力化されそう。

        中国やインド首脳のプーチンへの塩対応を見るに、これらの国も自国に飛び火介入されない限りは、ロシアが一線を超えて報復処置を受けても庇うほどの何かをやるとは見えなくなってきてますし。

        11
        • 7743
        • 2022年 9月 28日

        ロシアの核兵器1発当たりの開発維持費用は中国の20分の1しかありません。
        核実験もソ連末期の1991年以来、30年以上、行っていなません。

        確かに核兵器を新たに生産している中国に比べると予算が少ないのも一理ありますが
        6000発もの核兵器を維持するには、あまりにも予算が少なすぎます。
        そして、そのなけなしの予算ですら、本当にメンテナンス費用として使われているか、
        今現在どれだけまともに稼働するか誰にも分からない状態だと思います。

        リンク

        4
      • けい2020
      • 2022年 9月 27日

      ここまで通所兵力がボロボロで張り子の虎ってバレてるのは、
      完全に別世界を生きてなければ、嫌でも認識してるとは思われる

      こうなると、もうプーチン+取り巻きの生命財産を守れるのは、
      核による恫喝しか残ってなく、逆に使用ハードルがあがったかと個人的には推定してます

      8
      • 2022年 9月 28日

      ロシアは核兵器使う派と、
      世界中から反撃されるから核兵器を使える訳ないし、使ったとしてもロシアは終わり派、ウクライナ領内での戦闘に留まっている以上、ロシアが核兵器を使用しても得られる利益はなくメリットがないから使うことはない派を繰り返し見る。
      自分は、核兵器使用を匂わすのは抵抗や支援を弱めるため派なので、ロシアがチラチラこっち見ながら匂わしたとしても、無視して話題にしないことが一番良いと思ってます。

      11
    • ab
    • 2022年 9月 27日

    ここまで前線が広いと
    寄せ集めでも拠点確保や防衛線維持くらいはできるんやろな

    徴集兵をばらまいて地図上の優勢を確保するくらいになりそう

    8
      • ミリオタの猫
      • 2022年 9月 27日

      どうでしょう…マトモな装備すら支給されていない以上、下手に徴集兵を前線へばら撒いたら、勢い付いているウクライナ軍の攻撃で一斉に逃げ出す恐れが有るかも知れません。

      15
      • けい2020
      • 2022年 9月 28日

      でもそれは、すでに崩壊気味の補給体制に膨大な負荷が掛かることで
      そうなったら、ただのひき肉になるだけになりそう

      7
    • zerotester
    • 2022年 9月 27日

    狙いはスバトボでしょうね。ロシアもそこを拠点に守ってるので硬いでしょうが、三方から包囲して攻める構えです。 

    その前にリマンのロシア軍を包囲殲滅しようとしてるでしょう。ISWの戦況図ではもっとアグレッシブにリマンは包囲されてます。

    7
    • AAA
    • 2022年 9月 27日

    リマン周辺の展開が目まぐるしいな
    ウクライナ軍がドネツ川越えてクレミンナまで来てるとかいう話はマジなのかどうか

    1
    • ミスチル
    • 2022年 9月 27日

    ウクライナ強!!!!!!!

    4
    • 匿名
    • 2022年 9月 27日

    5月に鉄道の交通結節点があるリマンをロシア軍に取られ、兵站線が強固になり、火力投射の飽和攻撃でウクライナ軍は多くの犠牲と後退を余儀なくされましたが、まさか4ヶ月足らずで奪還目前まで持ち直すとは…。

    逆に今度はウクライナ軍が取り返せば、ロシア軍の兵站線を大幅に弱体化させる事になり、更に追加の軍事資源を得られるかもしれませんね。

    23
    • 2022年 9月 27日

    自由を取り戻した人々の笑顔は、良いなあ・・・。

    24
    • mun
    • 2022年 9月 28日

    リマン死守の命令が出ているのか
    包囲の危機にあるのにロシア軍は抵抗を続けているようだ
    しかし、数少ない士気の高い精兵をこんな戦闘で犬死にさせる愚をまた犯すつもりだろうか

    後方に防衛線を敷き、動員した予備役の兵が到着するまでの時間稼ぎなんだろうけど
    時間稼ぎで貴重な精兵を犠牲にしていたらいくら兵士が居ても足りんと思うが

    8
    • 匿名
    • 2022年 9月 28日

    >あと数日もすれば動員されたロシア軍部隊が東部戦線にも到着する見込みで

    ウクライナ兵「おい、なんかめっちゃボロいトラック来たぞ!!!」

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