ウクライナ戦況

ウクライナ軍は露戦闘機を55機撃墜、AGM-88投入で局地的な制空権も確保

在欧・在アフリカ米空軍のヘッカー司令官は「少なくともロシア空軍の戦闘機55機がS-300とBuk-M1によって撃墜され、さらにAGM-88HARMの投入でウクライナ空軍は局地的な制空権を確保している」と明かし注目を集めている。

参考:It took ‘couple of months’ to put US anti-radiation missiles on Ukrainian fighters, USAF reveals
参考:Ukraine Situation Report: 80 Percent Of Kyiv’s Airpower Remains Intact

大量に地対空ミサイルが配備された空域での航空作戦は経験豊富な空軍にとっても難題

米空軍協会主催のカンファレンスに出席した在欧・在アフリカ米空軍のヘッカー司令官は「敵防空網の制圧に失敗したロシア軍がウクライナ軍の地対空ミサイルで大きな被害を被っている」と主張、これまでに失った戦闘機55機の大半がS-300とBuk-M1で撃墜されたと明かし、大量に地対空ミサイルが配備された空域での航空作戦は経験豊富な空軍にとっても難題で「第5世代戦闘機や優れた航空技術をもってしても克服するのが困難だ」と述べた。

出典:Public Domain

さらにウクライナ空軍のSu-27やMiG-29にAGM-88HARMを統合したのは正体不明の請負企業で、ヘッカー司令官は「F-16とAGM-88HARMの組み合わせほどの効果はなく、ロシア軍はレーダーをオフにすることでHARMによる攻撃を避けることが出来る。しかしレーダーの使用制限をロシア軍に強いることでウクライナ空軍は局地的な制空権を確保できる」と述べており、AN/ASQ-213を省いたHAS(HARM as Sensor)モードで使用していることを示唆している。

因みにヘッカー司令官は「HARMの効果にウクライナ空軍の参謀長が興奮していた。HARMを使用する戦術でロシア軍の防空網に穴を開けて無人航空機を使用できるようになった」とも述べ、TB2の対地ミッションが最近増加しているのは「AGM-88HARMがロシア軍のレーダー使用が制限しているため」と言いたいのかもしれない。

関連記事:ウクライナ空軍は健在、最大規模の航空攻撃でロシア軍の防空システムを破壊か
関連記事:米国が19番目のウクライナ支援パッケージを発表、AGM-88HARMを追加提供
関連記事:ウクライナ軍が久々にTB2の攻撃シーンを公開、ヘルソンの反撃にTB2を投入か
関連記事:ウクライナ軍、TB2が3日間でロシア軍のT-72を8輌破壊したと発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

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コメント

    • ラト
    • 2022年 9月 21日

    >ウクライナ空軍のSu-27やMiG-29にAGM-88HARMを統合したのは正体不明の請負企業で

    戦争始まって約半年でそんな事してくれる企業って一体…

    61
      • とくめい
      • 2022年 9月 21日

      その正体不明の請負企業、どっかの国の指示を受けて
      どっかの国の防衛産業の技術者たちが出向して
      ロシアの干渉できない地域に設立したとかそういうやつなのでは…

      40
      • ヤゾフ
      • 2022年 9月 21日

      開発元しかやらないから分かってるでしょ。
      1番重要なのはロシアの電子戦下でもレーダー狩り楽勝て言ってるのですが。。。
      F-35とかいたら余裕しゃくしゃくでしょうね

      35
        • 戦略眼
        • 2022年 9月 22日

        F-16C block50でも楽勝かもね。

        6
      • dai
      • 2022年 9月 21日

      マッコイとかいう爺さんがいるかもしれない!!

      34
      • ゆう
      • 2022年 9月 22日

      独だと能力に制限をかけることはしそうにない。
      米だともっと豪快な解決方法としそう。
      英の香りを感じます。

      4
      • ブルーピーコック
      • 2022年 9月 22日

      IAIやエルビットシステムズ、エアバス(旧ダイムラークライスラー・エアロスペース)の可能性もあります。
      ダイムラークライスラー・エアロスペースは東ドイツのミグ29をNATO仕様に改修した実績があります。また、上記3社でルーマニアのミグ29を改修してテスト飛行させたことがあります。改修計画そのものは頓挫してしまいましたが。

      13
    • 名無し
    • 2022年 9月 21日

    >さらにウクライナ空軍のSu-27やMiG-29にAGM-88HARMを統合したのは正体不明の請負企業で、

    マッコイ爺さん?

    14
      • ミリオタの猫
      • 2022年 9月 21日

      >マッコイ爺さん?
      ココ・ヘクマティアルの可能性も有りますねぇ(東欧某国へMiG-29×3個飛行隊相当の近代化改修キットを納入した実績有り)

      それにしても、湾岸戦争当時の最新モデルだったAGM-88Bだけで沈黙するロシアの防空装備って、湾岸戦争の頃から一歩も進歩していないのが何とも…ステルス機キラーとして恐れられていたS-400の名が泣きますわ
      なので、私はヘッカー司令官の「大量に地対空ミサイルが配備された空域での航空作戦は経験豊富な空軍にとっても難題で『第5世代戦闘機や優れた航空技術をもってしても克服するのが困難だ』と述べた」と言う点は、ウクライナのロシア軍に関しては信用すべきでは無いと考えています

      27
    • 航空太郎
    • 2022年 9月 21日

    HIMARSによる後方デポ潰しで、武器、燃料、弾薬、食料といった物資が枯渇しているから、そもそもロシア軍の対空レーダー車両自体が残燃料を気にして、常時稼働状態を維持できてないように思える。
    対空レーダーを動かせば、僅かな燃料が消費され、追い打ちでHARMが飛んできて、止めれば、バイタルによる追い打ち。

    このコンボって、ウクライナ領域外を飛んでガンガン支援してる欧米の偵察機、空中管制機を潰さないことには止められないんじゃないだろうか……?

    まぁ、つまり、今後も黙って叩かれていけ、ということだが。

    25
      • きっど
      • 2022年 9月 21日

      >そもそもロシア軍の対空レーダー車両自体が残燃料を気にして、常時稼働状態を維持できてないように思える。
      緒戦のキーウ戦線での有様と同じですね
      戦線を縮小してからは、対空火器の密度が増して補給も改善したので防空網が機能しだしたものの、HIMARSとHARMで同様に破綻したと

      12
      • くれくれ
      • 2022年 9月 21日

      北欧の国境に配備されてたのを次々配置転換しているとの事なので在庫切れも案外近いかも?
      潰し続ければ最悪国籍不明の戦闘機がウクライナに領空侵犯してなぜかロシア軍だけ空爆できるし

      2
    • 無能
    • 2022年 9月 21日

    あれれー?ロシア軍は何回ウクライナの制空権を確保したんだっけー?

    22
    • zerotester
    • 2022年 9月 21日

    西側の対空兵器もNASAMSなどいくらか提供されているはずですが、中高度用なのでそこまでの戦果は無いんですかね。
    この際、パトリオットなど長射程の対空兵器も提供しましょう。エスカレーションを気にしたところでロシアがどんどんエスカレーションさせるのだから無駄です

    米国製の戦闘機をウクライナに送る検討を始めたという話がありましたが、F-16があればHARMがさらに有効に使えるわけですね。航空優勢を万全にすれば動員兵が何万人いたところで怖くないでしょう。

    15
      • ヤゾフ
      • 2022年 9月 21日

      10年前、米国と中露で戦略核兵器のシミュレーションしましたが、中露は探知できずに核兵器撃ち込まれてました。
      米国はさらに進化したB-21が出てきますし、First Strike含めて優越するのが楽しみです。

      10
      • てつ
      • 2022年 9月 21日

      西側から供与されているのは、アメリカからのNASANSとドイツからのIRIS-T SLMですが、どちらもまだウクライナに到着していません。
      IRIS-T SLMは11月中に引渡し予定と先日報道がありましたが、NASAMSは引渡し予定もまだ発表されていなかったと思います。
      まあ、NASAMSはどこからか退役した在庫を持ってこれますが、IRIS-T SLMは最新鋭故に工場での完成を待つ必要がありますし、運用する人員の訓練も必要ですから、時間がかかるのも無理ないと思いますが。

      1
        • 2022年 9月 22日

        IRIS-T SLMはスケジュール前倒しで既にウクライナ入りしてるのが確認されてるぞ
        恐らく運用も既に開始されてる
        丸の内OLなんかはウクライナは兵器受け取る前から既にその兵器の訓練を始めて貰ったらすぐに使えるように予定を組んでるため、武器が供与されてから実戦投入されるまでのスパンが異常なまでに短いって言ってる

        5
    • ミリ飯食べたい
    • 2022年 9月 21日

    防空網を貫通する手段がないと一度展開されると接近できなくなるわけですね。戦域防空というと西側にはこれに該当する対空システムは少ないので、今後中国とやり合うかもしれない我が国においては格好のケーススタディでしょう。
    こうなるとハロップのようなSEADができるドローンで飽和攻撃を仕掛けるのが結果的に一番安く制圧できるかもしれませんね。
    我が国の場合は、予想される沖縄方面では海上もしくは空中から展開させないとこういう芸当はできないと思うので、ハードもさることながら戦略機動の分野も研究してもらいたいですね。

    20
      • 戦略眼
      • 2022年 9月 22日

      イージス艦とあきづき型に期待ですね。
      あさひ型とひゅうが型もFCS-3改に改修してくれれば。

      2
    • 干物
    • 2022年 9月 21日

    大半がSAMの戦果となるとウ空軍は戦闘機同士の空戦は意図的に避けてるのでしょうか?

    4
      • ヤゾフ
      • 2022年 9月 21日

      イエス
      勝手に自国の防空内に敵国戦闘機というプレゼントが入ったら楽勝な獲物です
      弱い奴叩いて強いのにらケツ捲るのが普通です。

      7
      • hiroさん
      • 2022年 9月 21日

      侵攻初期はキーウ上空等で空中戦もあったけど、ロシアのミサイル攻撃でそれなりの損害も被って、空中退避や隣国への退避で生き延びた貴重な機体は後方で温存しているだろうし、ロシア軍機の侵入に対し無理にスクランブルするよりも、より前方に配備した対空兵器で対応する方が理に適っているのでは。

      14
      • てつ
      • 2022年 9月 21日

      ウクライナ空軍パイロットのインタビューでは、性能と数で負けているので真正面から戦うのではなく、空戦する構えを見せながらSAMの射程内に誘導して撃破していると答えていたと記憶しています。
      なので、SAMの戦果の幾つかは戦闘機との協同によるものと思われます。
      因みに、爆撃に向かうSu-25やSu-24の護衛任務も熟しているそうです。
      この時ロシア戦闘機を追い返しはしても撃墜する必要はなく、寧ろ貴重な戦闘機を失わない様、深追いを避けていると想像されます。

      24
    • STIH
    • 2022年 9月 21日

    なるほど一ヶ月前位からTB2が活躍が出てくるようになったのは、向こうがレーダを使えなくなったからですか。
    開戦当初からロシア空軍は防空網制圧能力が不十分と言われてましたが、逆にウクライナに防空網を制圧されるとは。
    高い高いと言われる米国製兵器ですが、やはり米軍の経験に裏付けられた優れた性能を持っているんだなあ。

    34
    • ミリ猫
    • 2022年 9月 21日

    >>ウクライナ空軍のSu-27やMiG-29にAGM-88HARMを統合したのは正体不明の請負企業

    『エリア88』
    と書こうと思ったら、すでにたくさん書き込みがありました。
    出遅れたわ。。。

    蛇足ながらウクライナ人の手先の器用さには定評があって、
    部品さえあれば、と言うか部品がなくても工具さえあれば、
    ほぼ何でも修理できるとRedditにありました。

    9
      • 匿名
      • 2022年 9月 23日

      ウクライナ側は車載用の重機関銃を鹵獲や撃破車両から下ろし、後方で組織的に歩兵用へ改造・転換なんかもしてる様ですからね…

    • 鳥刺
    • 2022年 9月 21日

    HARMのシーカー依存の即席SEADがここまでの効果を発揮するとは、ウクライナ側も予想以上だったのではないでしょうか(笑)
    ロシア側が、一月近く経つのに効果的な対応を行わないのも謎です。ロシアも空中早期警戒機は保有していたはずですが。

    貴重なレーダー機材の保全を最優先する命令でも出されてるのか、現場の判断でレーダーが敵機を探知したら即スイッチを切って機材を退避させているとかの類か、 なんにせよHARMへの恐怖で空域でのレーダー警戒を放棄した本末転倒な運用をしているとでも仮定しないと説明がつきませんね。

    9
      • ポテトマニア
      • 2022年 9月 22日

      Kh-31を保有するロシア空軍がウクライナと同じことができていないのはホント謎
      アメリカ自ら自軍より優れていると言わしめた電子線能力もいまだ発揮されず
      ホントに優れていたのか実はただの張り子の虎だったのか
      戦後に検証されたら面白いのにな

      9
    • AAA
    • 2022年 9月 21日

    結構撃ってるなあS300
    弾切れしたらアメリカからもらったNASAMSと交代かな

    14
    • クローム
    • 2022年 9月 21日

    西側の航空機や武器で使われているデータバス(MIL-STD-1553)をMiG-29とSu-27も採用していたためこれ程早く統合できたのではないかという説がありますね。
    米ソで対抗しつつ、自国戦闘機のソフトウェアがアメリカ製で数十年後に自分達に牙を剥くのが何とも…

    3
    • XYZ
    • 2022年 9月 21日

    S-300など最新型とは言えない防空兵器で戦果をあげていますか、これはロシア(旧ソ連)の兵器が優れているのか、撃ち落とされる側の航空機の対ミサイル性能が悪いだけのどちらなのでしょうか?

    3
      • ななし
      • 2022年 9月 22日

      S300は宇露もどちらも使ってるし。有効範囲にはどっちも入らない。
      兵器のスペックは大事だけど、それだけじゃないのね。
      宇軍はT72でT90Mを鹵獲してたりする。その理由を考えた方が楽しいよ。

      8
    • ななし
    • 2022年 9月 22日

    ヘッカーだまれ!>宇空軍
    55機というスコアーが少ないか多いかの受け取り方かね。55機撃墜が攻撃側の1割以下だったら問題無いが、10割は無いだろうけど8割くらいだったらパイロットに死ねと言ってる様な物。
    お互いの防空網が生きてる状態だと一方的な空爆は起こらない。
    砲を頼りにした陸戦勝負になるのな。宇露戦争は示唆に富んでるね。

    3
    • りんりん
    • 2022年 9月 22日

    HARMなんて昨日今日開発された兵器では無いのに、ロシア軍は対抗策を持っていないのかね。
    対レーダーミサイルが実用レベルで投入されたベトナム戦争時ですら、北ベトナム軍はいろいろと対抗策を用いたというのに。
    さまざまな点で進歩があるにせよ、こんなにやられたらさすがにイカンでしょ。

    3
      • 無無
      • 2022年 9月 22日

      そのときベトナム軍に対策指導していたのがソ連軍事顧問団なんだが
      冷戦後のロシアも西側同様にすっかり平和ボケしてくれていたのが好ましい

      11
    • 投石器
    • 2022年 9月 22日

    高性能高コストな戦闘機が対レーダーミサイルで対空レーダー使用を牽制しながら、低性能低コストなドローンで攻撃していくというやり方は今後セオリー化しそうですね
    対レーダーミサイル搭載機がステルス機

      • 投石器
      • 2022年 9月 22日

      途中送信失礼しました

      対レーダーミサイル搭載機側がF35やB21、はたまた開発中止されたX47のような強力なステルス機で
      ミサイル自体もステルス仕様だったら、どう対処したら良いか分からないくらい強そう

      2
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