ウクライナ戦況

ウクライナ軍がドネツ川渡河に成功、ロシア軍は補給ルートを失う可能性も

イジューム方面で戦うロシア軍の補給ルート遮断に向けて「ウクライナ軍がドネツ川の渡河に成功した」という情報があり、ボルチャンスクに向かって進んでいるらしい。

参考:Рыбарь
参考:Def My
参考:Nathan Ruser

こうも簡単にドネツ川の渡河を許してしまったこと自体がロシア軍の失態だが、ウクライナ軍にとっては大チャンス

ハルキウ周辺に残るロシア軍の掃討を進めるウクライナ軍はLyptsiとMakaroveを奪還、もはや州都北部のロシア軍部隊が国境を越えて撤退するのは時間の問題と言えるが、最も注目すべき動きは橋が破壊されたドネツ川の渡河にウクライナ軍が成功した点だ。

出典:GoogleMap 最新の大まかなルハルキウ周辺の戦況/管理人加工

どちらの陣営が破壊したのか不明だが、ハルキウ州の中央地域と東部地域を繋ぐドネツ川の橋は破壊されているのが衛星画像で確認されており、今のところ橋が修理されたり舟橋による渡河ポイントが設置されている様子はない。

しかしウクライナ軍は何らかの方法でドネツ川を渡河、対岸の拠点を複数奪還して橋頭堡を築くのに成功、ボルチャンスク方面に向かって進んでいるという情報があり、イジューム方面で戦うロシア軍の補給ルート(ロシア領ベルゴロドを起点したとしたルート)の遮断が現実味を帯びてきた。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

こうも簡単にドネツ川の渡河を許してしまったこと自体がロシア軍の失態(戦場認識力に致命的な問題がある)で、対岸に橋頭堡を築くのに成功したStaryi Saltivの橋が修理されてウクライナ軍の装甲部隊が対岸に送り込まれるとハルキウ州東部やルハーンシク州北部の占領地維持も怪しくなり、ロシア軍はドンバス解放に集中するどころではなくなるだろう。

お知らせ:戦況マップをクリックすると拡大表示できようになりました。特にPCで見やすくなりました。

関連記事:米メディア、ロシア軍はキーウと同様にハルキウからの撤退を開始か?
関連記事:ロシア軍の渡河作戦は大失敗、生き残ったロシア人も川を泳いで逃げる

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

プーチン大統領、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟に問題ないと表明前のページ

ドンバス解放の失敗原因はプーチン、部隊レベルの意思決定に干渉するため次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    アウディーイウカの戦い、ロシア軍が防衛ラインを突破して市内に侵入

    ウクライナ人が運営するDEEP STATE、 ウクライナ人ジャーナリス…

  2. ウクライナ戦況

    3日間でロシア軍兵士が1,200人以上戦死か、リマン方面で激しい交戦が続く

    ウクライナ軍が発表の数字を集計すると「ロシア軍兵士は3日間で1,250…

  3. ウクライナ戦況

    ポパスナを手中に収めたロシア軍、イジュームで反撃に出たウクライナ軍

    約2ヶ月の攻防の末にロシア軍はポパスナをほぼ手中に収めたと発表、公開さ…

  4. ウクライナ戦況

    ウクライナ、ドゥギナ氏の告別式はプーチンへの忠誠心を示すショー

    ウクライナ軍特殊部隊の犯行だとロシアが主張するドゥギナ氏の告別式はゼレ…

  5. ウクライナ戦況

    首都を巡る攻防戦、ゼレンスキー大統領が自身とキエフの健在ぶりをアピール

    ゼレンスキー大統領は「ウクライナの運命は今夜の戦いで決まる」と語って注…

  6. ウクライナ戦況

    ドイツがウクライナへの武器供与を発表、対戦車兵器1,000発、スティンガー500発

    ウクライナへの武器供与を否定し続けてきたドイツのショルツ首相は26日、…

コメント

    • らんらんるー
    • 2022年 5月 17日

    戦況マップありがとうございます!

    54
    • や、やめろー
    • 2022年 5月 17日

    ロシアの砲兵部隊は寝てたのかな?まあ、このままルハーンシク州も奪還して早めにマリウポリに向かってもらいたい。あと、マップありがとうございます。

    24
    • show the flag
    • 2022年 5月 17日

    こんな感じに両側に土手があって橋の部分は100mぐらいなんですね。
    リンク
    戦時も平時も土木は大事ってことでしょうか。
    しかし風景もなんとなく浜名湖っぽい風情、こんなところで戦争しないでも…

    8
      • 通りすがり
      • 2022年 5月 17日

      端の欄干がウクライナ色に塗装されています。

      リンク

      3
      • samo
      • 2022年 5月 17日

      既にウクライナ軍は強固な工兵などによる土木支援体制を確立していると、小川元陸将が指摘していたよ
      仮に道路や鉄道を破壊されても、数時間で復旧できているとのこと

      13
    • 名無しさん
    • 2022年 5月 17日

    ウクライナ軍「渡河作戦とはこうやるんですよ。」

    29
      • や、やめろー
      • 2022年 5月 17日

      まさかのロシアが生徒でウクライナが教師という意味わからん構図が…

      18
      • くらうん
      • 2022年 5月 17日

      ロシア軍「こっちも成功してるで(三途の川)」

      50
        • や、やめろー
        • 2022年 5月 17日

        座布団10枚!

        20
    • タコ
    • 2022年 5月 17日

    喜ぶな、ロシアのねらいは海上封鎖で世界が食料危機に陥り、ウクライナや西側が困っていずれ折れてくるだろうと思っている。今後は南部ゃ船舶の航行権を確保せよ。偉そうにすみません。タコでした。

    1
    • 四凶
    • 2022年 5月 17日

     さてこれが間抜けなロシア軍を演じて補給線伸ばしての反撃の序章なのか、単なる間抜けのままで終わるのかどっちだろうか。

    8
    • リポビタン少佐
    • 2022年 5月 17日

    つい先日渡河に失敗したロシア軍とは大違いですね

    16
    • きたのほうから
    • 2022年 5月 17日

    ベルゴロド→ボルチャンスク→イジュームの補給路がヤバくなると、ヴァルイキ→クピャンスク→イジュームと補給するんでしょうかね。集積した物資の移動し直しも大変そうだな…
    鉄道でイジューム方面が繋がってそうだけど、イジューム方面、仁川上陸作戦で補給路断たれて崩壊した北朝鮮軍みたいになったりして…

    7
      • samo
      • 2022年 5月 17日

      でしょうね。
      ただ、クビャンスク経由の補給路の一つを潰すことになるので、補給はかなり先細るでしょうね
      補給路の最先端にあるイジュームでは物資の不足が起こり始める可能性があります。
      鉄道ルートはヴァルイキ経由になるため、
      今回のボルチャンスク攻略は、クビャンスク補給ルート寸断作戦の前哨戦かと思われます

      3
      • けい2020
      • 2022年 5月 17日

      集積した物資が無いから、引き込む作戦の可能性も0ではないかも

      1
    • h4
    • 2022年 5月 17日

    今までのウクライナ軍のドローン活用から類推すれば、常にドローンを飛ばして敵の密度が低いところを探し、静穏性の高いボートか水陸両用車で渡河した、とかがあり得そう。

    3
      • ネコ歩き
      • 2022年 5月 17日

      報道では、ウクライナ軍は米衛星による偵察情報を受けロシア軍の動きを把握してるという話です。
      偵察ドローンは情報確認用というふうに効率良く使えてるんじゃないでしょうか。
      一方でロシア軍は暗視装置の配布も限定的で全く足りてないとか。偵察能力の差で完全な奇襲だったんでしょうね。

      6
    • ダヴー
    • 2022年 5月 17日

    河を渡ったのがどの程度の戦力なのかが気になりますね。
    それなりの戦力が渡河したのでないと、反撃で追い返されてしまう危険性がありますから。
    ウクライナ軍に戦果を拡張できるだけの機動戦力の予備が残されていたのか、あるいはロシア軍の戦力配置が想像以上に少ないのか。

    7
    • samo
    • 2022年 5月 17日

    >ロシア軍部隊が国境を越えて撤退するのは時間の問題と言えるが
    既にハルキウ周辺にいたロシア軍部隊が国境を超えての撤退しているけれど、
    その過程で同じく撤退してきた親ロシア派部隊がロシア入国を認められず、国境付近でロシア軍に見捨てられた状態でたむろしてるらしいね。
    プーチンの戦争のお題目が、この親ロシア派の保護だったはずだけど、見捨ててるんだからやはりお題目はただの方便だったことを証明した格好。

    因果応報といえば因果応報だけれど、見捨てられた彼らはいったいどうするのだろうね。
    彼らはウクライナに反抗し、侵略、略奪者であるロシア軍に味方し、結果見捨てられた。
    ウクライナで膨大な恨みを買った彼らが生きられる地なんてあるのか?

    26
      • makumaku
      • 2022年 5月 17日

      全体像はその通りなんでしょうけど、ロシア軍やLDNR軍は、占領地のウクライナ人たちを(恐らく脅迫して)強制的に徴兵しているという報告が出されています。
      リンク
      また、ロシア軍がウクライナで”少年兵”を養成して戦わせているという報道もあります。
      リンク
      必ずしも自分の意思で従軍しているわけではないだろう人たちや、騙されて戦わさせられているだろう人たちもいることは、知っておくべきでしょう。

      3
      • KNOB CREEK
      • 2022年 5月 17日

      やってる事はまんま外患誘致なので順当に考えればまぁ…御愁傷様ですとしか言えないですね。

      8
      • おっさん
      • 2022年 5月 17日

      ロシアに迎えたら迎えたでウクライナ側から「戦争犯罪者を匿う国」とかいういう負い目を抱えるだろうしねえ。
      今更といえば今更だろうが親ロシア派の自律的な分離活動なはずの後ろ盾を追認する行為はしたくない、と。

      ウクライナの民間人は口封じだか世論工作の為だか国内に強制移住させてるのにねえ。

      • 名無しさん
      • 2022年 5月 18日

      BSの報道で「ロシアに協力した住民」達が逮捕される映像が流されてましたよ。
      手錠も足りないのかテープで目隠しと拘束を行ってました。

      ちなみにウクライナには死刑がなく、終身刑が最高刑となっております。
      協力した内容や本人の意志によって裁判の結果も変わってくるのではないですかね。
      問題は刑期を終えた後、どんな生活が待ってるかだとは思いますが。

      1
    • 折口
    • 2022年 5月 17日

    とにかく兵士が足りてない感じですねロシア…
    開戦当初は総動員をかけたウクライナよりもロシアのほうが兵力で優勢と見られていましたが、緒戦でのロシアの消耗やウクライナが地の利を活かして機動的に戦っていることを考えると現時点での実質的な兵力は既にウクライナ側が優勢と見るべきなんでしょうね。

    戦闘、戦線の維持、兵站線確保と運用など全てに正規軍兵士の人員を割かれているロシアに対して(現存90個BTGに対して最前線を張っているのは30程度という)、正規軍はもとより民兵組織や民間防衛団体なども総動員しているウクライナはいくつかの地域を除いてロシアに対して互角以上に戦えています。攻撃側は守備側の3倍の兵が必要という話はこういう事情も加味した上で形成されたものだったんでしょうね。

    10
    • ななななな
    • 2022年 5月 18日

    先日の露軍の渡河作戦、ウ軍の「GPS Arta」と呼ばれるプログラムソフトが決定的な役割を果たしたとか。(ソースはThe Time紙)これはデジタル距離測定器や偵察用ドローン、スマートフォン、GPS、NATOの大気圏外資産、防空レーダー、索敵レーダーなどから得られた情報を統合し、敵の種類と位置をmap上に表示、それを確認した上で周辺の攻撃用資産から最適な攻撃手段を半自動的に提案、そして選択する事ができるシステムとのこと。(この辺、ちょっと曖昧ですみません、、、) 関係者によれば「GPS Arta」を使えば発見から攻撃準備まで1-2分で完了し、目標さえ確認すれば、非常に迅速かつ効率的に集中砲撃を浴びせることができると説明していますね。

     自軍の攻撃兵器を様々な位置に分散配備してあらゆる方向と距離から敵軍を攻撃でき、敵軍に対してタイムリーに集中砲火を与える事ができる一方、自軍の位置などは相手に把握されないため、被害も最小限に抑えられるそう。このプログラムを開発した「ウラジミール氏」はThe Times紙とのインタビューで「この戦争でロシア軍が身を隠せる場所はこの世に存在しない」「我々は彼らをどこでも、あるいはロシア国内においても探し出すことができる」と言っています。

    かなり興味深い話なので、できたら見に行ってみてください。イギリスの他社紙でも扱ってますね。
    (管理人さんまとめてうまく訳してくれないかなぁ…)

    9
    • 匿名
    • 2022年 5月 19日

    トップ画像またサムズアップおじさん来たのか

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  2. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP