ウクライナ戦況

ハルキウを巡る戦い、反撃を退けたウクライナ軍が再びロシア国境に到達か

反撃に転じていたロシア軍と泥臭い戦いを演じていたウクライナ軍は最終的にこれを退け、再びロシア国境に到達してハルキウ北部とドネツ川東岸のロシア軍を分断したらしい。

ハルキウでのロシア軍の反撃は失敗に終わり、スラビャンスク方面では予想どおりリマン周辺の制圧に乗り出した

4月下旬~5月上旬までにウクライナ軍はハルキウの北に展開していたロシア軍を国境近くまで、ハルキウの東に展開していたロシア軍もドネツ川まで押し返すことに成功、Ternovaを奪還したウクライナ軍はロシア国境に到達してハルキウ北部のロシア軍とドネツ川東岸のロシア軍を分断したが、ロシア軍も反撃に転じてTernova周辺の拠点を奪い合う泥臭い戦いに発展。

出典:GoogleMap 大まかなハルキウ周辺の状況/管理人加工

一進一退の時間が長く続いたハルキウ周辺の戦いは最終的にTernovaを確保したウクライナ軍が再びロシア国境に到達したと報告されており、VeseleやTsupivkaもウクライナ軍側が確保しているのでロシア軍の反撃は(今のところ)失敗に終わった格好だ。

ただハルキウ北部のKozacha Lopan’とLyptsiに陣取るロシア軍にはウクライナ軍も手を出せておらず、今後ここのロシア軍を追い出しに掛かるのか、それともドネツ川東岸に位置するボルチャンスクに向かうのかに注目が集まる。

出典:GoogleMap 大まかなスラビャンスク周辺の状況/管理人加工

ロシア軍が20個の戦術大隊を集結させ攻撃を再開したスラビャンスク方面は予想通りリマン周辺の制圧、イジューム方向に伸びていた突出部を潰しており、ドネツ川の対岸に保持するウクライナ軍の拠点はSvyatohirs’k、Staryi Karavan、Ozerneの3つだけだ。

問題はリマン方面を制圧しても重装備が通行可能な橋は全て破壊されている点で、ロシア軍は再びイジューム方面からスラビャンスクに向けて攻勢を再開するしかなく、1ヶ月以上ほとんど前進できなかったイジューム方面の防衛ラインを突破できるのか非常に怪しいが、ウクライナ軍も決して余裕がある訳ではないので1週間後の状況がどうなっているのか予想するのは難しい。

※上記の戦況はウクライナ軍の公式発表とオープンソースのデータで確認できた情報を合わせたもの。

関連記事:ロシアのセベロドネツク包囲が停滞、ウクライナは防衛ライン構築に成功か

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

反撃が続くセベロドネツクの戦い、ウクライナ軍が市内の約80%を支配か前のページ

今度はロシア軍が反撃、ウクライナ軍はセベロドネツク郊外に後退次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    バフムートの戦い、ウクライナ人も複数方向でロシア軍が前進したと認める

    バフムート方面について複数のロシア人達は「ボダニフカ郊外やクロモヴォ周…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍発表のロシア軍戦死者が20万人を突破、3ヶ月間で6万人増

    ウクライナ軍参謀本部は17日「ロシア軍の戦死者は約14ヶ月間の戦いで2…

  3. ウクライナ戦況

    ロシア軍はドニエプル川に仮設の橋を建設、ウクライナ軍は破壊すると予告

    ロシア軍はアントノフスキー橋の橋脚部分にぴったりと沿うよう仮設の橋を建…

  4. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍、クレミンナ解放に関する公式情報を忍耐強く待って欲しい

    ニューヨーク・タイムズ紙は「ウクライナ軍がクレミンナ奪還に近づいている…

  5. ウクライナ戦況

    英下院、ロシアが意図的に放射線汚染を引き起こすとNATO第5条を適用

    英下院防衛委員会のエルウッド議長は「もしロシアが意図的に放射線汚染を引…

  6. ウクライナ戦況

    来週中にもウクライナ軍がヘルソン奪還? 今のところ大きな動きはない

    FT紙は14日「ウクライナ軍が来週中にもドニプロからヘルソンまでを奪還…

コメント

    • Full
    • 2022年 6月 06日

    なんかここへ来てロシア軍急速に崩壊してないか?
    ウクライナの本格反抗作戦まだなのに…

    14
      • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
      • 2022年 6月 06日

      そう言えば、この一つ前の記事「反撃が続くセベロドネツクの戦い、ウクライナ軍が市内の約80%を支配か」の追記で、現在ロシア軍がセベロドネツク方面で反撃に出てウクライナ軍が急速に押し返されていると報じられている事から考えると、今のロシア軍は負けが込んで来たギャンブラーと同じ状態に陥っている感じがします。
      つまり、残った有り金(兵力)をセベロドネツクへ注ぎ込んだせいでハルキウ方面の戦況に悪影響が出た感じで、このままだとスラビャンスク方面の攻勢にも悪影響が出るんじゃ無いかと思います。
      こうなると何だか、セベロドネツクがゴキブリホイホイ…いや、ロシア軍ホイホイみたいな場所になって来ましたね(笑)。

      5
    • 鳥刺
    • 2022年 6月 06日

    戦線がやっとドネツ川の線に到達しましたか。ここまでは主防御線までの遅滞行動の範囲内ですね。ロシア軍の攻撃力に関しては、三か所の焦点(セベロドネツク、ポパスナ~バフムート、イジューム)で攻勢をを維持する能力があるのか重点を絞るか、イジュームに準備したという部隊の状態など、かなり疑問がありますが、ウクライナ軍も前線部隊の消耗が報じられていますし、ぎりぎりの決戦になりますね。

    9
    • 2022年 6月 06日

    戦争ってのが、個別の戦闘の積み重ねであり、物量のぶつかり合いであり、局所的な勝利が波及して逆転したり、絶対的な物量さが覆せなかったりと、昔から言われている矛盾した言説が現実に起こりうるのを見せてくれる。

    数なのか、戦術なのか、境界上ではどう転ぶか判らない。しかし、境界近くでは逆転は起こるし、それが重なれば結果は大きく変わる。カオスの誕生だ。
    統計とカオス、いずれも科学の予見する結果だ。

    僅かな違いや読み違えが、未来を大きく変える。

    1
      • さて
      • 2022年 6月 06日

      …いんや
      ロシア軍は少数兵力で攻め込むという根本的な戦略ミスを犯しているから当然の帰結

      湾岸戦争で100万、兵力が少ないと言われたイラク戦争でさえ30万だ
      それでもイラクでは戦後統治に失敗している
      アメリカ軍はイラク侵攻前に入念な空爆を行い、かつ危険な市街戦を避けるように作戦を組み立てた
      ロシア軍は考えなしに攻めこんだ

      少数兵力でも一部に戦力集中して局所的な勝利は得られても、トータルでの勝利は不可能、戦術で戦略は覆せない
      損失した兵力を補填する動員さえ覚束ないんだから負け確
      予備兵力も用意しない攻勢ってヒゲの伍長並みに阿保

      22
        • hoge
        • 2022年 6月 06日

        ???「少数兵力で勝つ?できらぁぁぁ!!!(戦術核で地面を耕しながら前進)」
        本当に追い詰められたらやりかねないのが怖い…

        2
    • くらうん
    • 2022年 6月 06日

    戦略的にはT2104を抑えて補給線を寸断するのがいいだろうけど、そこは当然ロシアも防衛戦は敷いているだろうし、押し切れるだろうか。

    • や、やめろー
    • 2022年 6月 06日

    ハルキウ州周辺はいいとして、問題はゼベロドネツクだな。ここでロシア軍を完全に追い返したら殆どウクライナの勝ちが決定する。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
PAGE TOP