英国、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発したタイフーンは開発国と海外輸出から250機以上の需要が期待され、ユーロファイター・コンソーシアムはパリ航空ショーで「3年以内に年間生産数を20機、海外から新規発注が入れば年30機まで増やすつもりだ」と明かした。
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英国と欧州大陸の国々では脅威のピークがいつ来るのか、それまでに何を実現出来るのか、限られた資金を何処に配分するのかに違いがあるのだろう
英国、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発したタイフーンは第5世代機と登場時期が重なったこと、冷戦終結後の国防予算削減の影響を受けたこと、海外入札でF-35Aと競合したため受注が伸び悩んでいたが、海外輸出機へのCaptor-E Mk0採用、ドイツとスペインも既存機へのCaptor-E Mk1導入、英国も既存機へのCaptor-E Mk2導入を開始し、ドイツはTranche1を更新するためTranche4を38機、トーネードECRを更新するため既存機を改造したEK仕様を15機、イタリアもTranche1を更新するためTranche4を24機、スペインもEF-18A+を更新するためTranche4を45機発注。

出典:Airbus Eurofighter EK
さらにドイツは2025年にTranche5を20機発注する予定で、開発国からの新規発注だけでも127機の需要が見込める上、カタール、サウジアラビア、トルコ、ポーランド、オーストリアでもタイフーン導入の動きがあり、カタールは昨年「Tranche4を12機追加調達したい」と正式に表明、ドイツが中東情勢の変化を受けて方針を転換したためサウジアラビアへの追加輸出(恐らくTranche4かTranche5)48機も、英国が積極的に進めているトルコへのTranche4輸出も実現する可能性がある。
ポーランドも空軍近代化の最後ピースと呼ばれる「第3の戦闘機取得(32機)」を進めている最中で、選択肢にはF-35A、F-15EX、タイフーンが浮上しているものの、トゥスク首相は疎遠になっていた欧州主要国との関係強化を望んでいるためタイフーンを選択しても不思議ではなく、オーストリアでも安全保障環境の急激な変化に伴い「Tranche1をTranche4で更新する計画」が浮上し、海外輸出でも138機以上の需要が見込めるため、ユーロファイター・コンソーシアムは短期的な戦力増強を重視する新たな成長目標を掲げた。

出典:Eurofighter Typhoon
このコンソーシアムのデゲンハート最高経営責任者はパリ航空ショーで「安全保障環境の変化を受けて、我々はより多くの戦闘機をより早く生産することにした。タイフーンの年間生産数は現在14機だが、3年以内に年20機に増やし、海外から新規発注が入れば年30機まで増やすつもりだ。新しいタイフーンは2060年まで問題なく機能するだろう。問題はタイフーンの能力を脅威に対応させ続けることで、重要な鍵は定義されていない中間アップグレードの策定にある」「技術的な側面から言えば既存のハードウェアアーキテクチャは限界に達しつつあり、搭載されたコンピューターの能力問題も解決しなければならない」と述べた。
因みにデゲンハート氏はTranche4を発注していない唯一の開発国=英国について「彼らは国防戦略の見直しの中で『より多くのF-35が必要になる』『将来の要件に応じてF-35の戦力構造はA型とB型の組み合わせになるかもしれない』と述べている」「彼らの関心はF-35の運用とGCAPへの移行に集中している」「そのため英国の追加発注には期待していない」と述べ、このプログラムに対する英国の影響力はタイフーンのアップグレードと海外輸出に限定されるという見方を示している。

出典:Ministère des Armées et des Anciens combattants
Defense Newsはユーロファイター・コンソーシアムの動きについて「デゲンハート氏が言及した戦闘機を早く量産するというアイデアは欧州や周辺地域で勃発した戦争の緊急性を反映したものだ」「ステルスが欠ける第4世代+機で構成された大規模な航空戦力は、今のところ紙の上でしか存在しな未来的な航空戦力=第6世代機よりも優れてる」「フランスでも同じ傾向が見られる」「ダッソーは無人戦闘機を統合したラファールのF5規格を準備中で最低でも能力的な運用寿命を20年伸ばしたいと考えている」「パリ航空ショーにおけるFCASの立ち位置も過去と比べて『より遠い未来』『より野心的な調子』を帯びたものになっている」と指摘した。
各国の思惑の違いは「どこに投資して、何を強化し、次の脅威までにどう備えるか」を反映したもので、各パラメーターが国よって異なるため正解も1つではないが、欧州大陸の国々は第6世代機よりも4世代+機と無人戦闘機の組み合わせへの投資を増やすのかもしれない。

出典:Airbus
恐らく英国と欧州大陸の国々では脅威のピークがいつ来るのか、それまでに何を実現出来るのか、限られた資金を何処に配分するのかに違いがあるのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado
かつて使った贈賄の費用はペイできるかな。
第5世代機に進むと思われましたが、第4世代・第4.5世代戦闘機の高い需要は興味深いなと。
イスラエルのライジングライオン作戦でも、初動200機が参加したとされていますが、主力はF-15・F-16になりますからね。
第4.5世代・第5世代戦闘機のハイローミックスかもしれませんが、第4.5世代戦闘機がどういった役割を果たせたのか、今後の情報も気になっています。
F-35イスラエルは、特別待遇のため上手くいったわけですが…
他国は、運用に主権がない・いつ更新が終わるのか分からない・そのため数が足りない・自国保有武器との統合は許可がいる・稼働率が低い、これではどうしようもないわけですからタイフーンの動きも興味深く感じています。
これ多分4Gen、4.5Genに真の需要があるというよりもGCAPとFCASまでのつなぎ需要ですよ
どっちもまだ生産が始まってないので、少なくとも2030年代まで仕事を与えないとノウハウも工場も無くなってします
性能向上とかもはや若干諦められてますし
工場のノウハウを考えるのは、仰る通り重要ですね。
タイフーンもなかなか高価な価格なわけで、戦闘機の寿命が20年30年あるわけですから、腹をくくった決断だなあと。
タイフーンあれだけ売れないと言われた船出を考えれば、かなり市場環境は変わったと感じています。
数十年の運用ノウハウがある米軍ですらステルス戦闘機の維持費に苦労しているのに、それ以外の国に運用なんてはじめから無理だったのでは…
一方で無人機は人間のスペースと生存を考慮しなくて良いから遥かにコストが安く済むでしょうし。
爆撃機ならば任務は限定されますが、マルチロール機は即応性も求められるため、なかなか難しさを感じます。
無人機の拡張性は仰る通りで、割り切った設計ができるかもしれませんね。
しかし、みんなの興味は、もうイランとの戦争と次の戦争になっていてウクライナは、ドローン攻撃が最後の徒花になりそうな勢い。
本当に仰る通りで、日本だけ見ても石油の90%が中東から輸入で、日本に与える影響が段違いですからね。
ウクライナ優勢と言われたり・余力のあるうちに、有利な条件で早期講和を決断して欲しかったですが、もう仕方ないのかなと…
イスラエルを見た後だと対露も空爆で叩きまくるのが最適解ではないか?と思うようになったな
ロシア国内をテヘラン並にボコボコにすればええやんくらいには今や空軍万能論になってしまったよ
ロシアの防空コンプレックスを機能不全にするのは相当困難でしょう。
米軍が全力でSEADできるのも一部戦域だけでしょうし。
ウクライナが後方基地の高価格目標の駐機を狙ったのもオンステージのSAM陣地はさすがに警戒されていたからという事もあるでしょう。
S-300が、弾道ミサイルモード対地攻撃モードにして、ガンガン撃っていましたからね。
6000発以上あると、ウクライナのレズニコフ国防相が言及していますから、機能不全にまで持ち込むのは数も多すぎて困難かなと…
(2023.01.15 ロシア軍がS-300でキーウを攻撃、ウクライナ軍には有効な対抗手段がない 航空万能論)
(2024.01.3 ウクライナ軍のミサイル防衛能力は限定的、撃ち込まれるS-300にはお手上げ 航空万能論)
そもそもSEAD機の持つ対レーダーミサイルよりSAMの射程のほうが圧倒的に長いので、複数のSAMの射程範囲に入らないとSEAD任務が行えない時点で詰んでる
イランの防空網があっさり崩壊した事でウクライナ戦争でさかんに喧伝された「防空ミサイルによる敵航空機の接近拒否」などは一気に影を潜めてしまった感がありますが、問題はロシア国内をテヘラン並みにボコボコに出来る位の空軍力をウクライナが持ち合わせていない事ですね。
トランプ政権=ウクライナが、情報共有を停止ゴタゴタしたタイミングでクルスク占領地の支配権が一気に塗り替わり、アメリカの情報力の重要性が再注目されたのを思い出しました。
空軍力も仰る通りですし、対ドローン・無人機戦により、両軍SAMの隠蔽・分散も意識されている中で、単独での情報収集~ターゲッティングも難しいだろうなと。
自衛隊も同様に、アメリカから情報を得られなければ、情報収集かなり苦しいでしょうね。
とは言ってもロシアも前線を全く進めれていないからね
まだ2〜3年経ってもこのまま戦争は続いてるんじゃないですかね
しかし、機体寿命を半分以上残しながら実質的に性能寿命で退役させるトランシェ1をトランシェ4以降の新品に置き換えることを通常の意味における「需要」とみなしてもいいのだろうか?という疑問をどうしても抱いてしまいます。
英国のユーロファイター計画の総ライフサイクルコストは370億ポンドの見積もりなのだとか。
1ポンド160円で計算すると約5.9兆円。
調達した160機のうち53機のトランシェ1は早期退役。
手元に残るのは近代化改修機107機、それで総コストは5.9兆円???
総コストの2/3ぐらい(?)は国内への資本投下とはいえ、輸出利益によってもっと軽減されるとはいえ、なかなかにこれは。
F-16を初期型からブロック50に買い換えるみたいなもんですかね
初期型は叩き売りするんですかね
防空なら使えるでしょうし
どうなのでしょう。
素人は、戦闘機の数は必要だけど、AEW/C機は現在よりもっと必要では、と思います。
先日のラファール/Su-35S喪失の話を再度持ち出すと。
自機レーダーを封止して低空から接近した第4世代機が長射程ARHミサイルを発射し、
ミサイルが目標をロックするまでAEW/C機が誘導をした、ということか、と。
これは、AEW/C機のレーダーの覆域内で一切が起こっています。
であれば、長射程ARHミサイルを運ぶのは、無人機でも良いはずだけれど、
まだそれは無い、ということか、と想像します。
ですから、必要なのはAEW/C機と長射程ARHミサイルを獲得することかな、と。
F-35が本格的に使用され始めれば、また流れが変わるかもしれませんね。
理屈の上ではSM-6の誘導のできるE-2Dは、AIM-120の誘導もできそうだけどね。
同じアメリカ製のE-7はしらないけど
wikipediaのNIFC-CAのページではリンク16経由でAMRAAMが誘導できるみたいです。
SM-6ができるならAIM-174BもCECがあれば誘導できそうですね。
例の「ウクライナ空軍のF-16がSAAB340 AEW&Cの支援を受けてSu-35を撃墜した」なる話は単なる推測に過ぎないSNSの投稿を「ドイツの東スポ」ともいうべきBildが報じただけで、裏付けは全くありませんよ。
そうでしたか。知りませんでしたが。
ご教授ありがとうございます。
ステルス機を導入するならば、コクピットのスペースを確保して人間の安全性を守る必要のある有人機よりも、そのあたりを省略できて状況次第では使い捨てにできる無人機のほうが導入も維持管理も容易なのでしょうね。
英国がGCAPに本気なのは日本にとって朗報ですかね。
このEU各国の状況見るにFCASの登場なんて2040年代になりそうですからね。これでGCAPと統合なんてなったら目も当てられない。