ウクライナ戦況

米国が韓国製MANPADSを購入、これをチェコ経由でウクライナに提供?

チェコのiDNES.cz誌は29日、米国が韓国から携帯式防空ミサイルシステム「神弓(KP-SAM Chiron)」を750億チェコ・コルナ=約4,300億円分購入、これをチェコ経由でウクライナに提供する案が合意に達したと報じている。

参考:Tajný obchod. Korejské zbraně za 75 miliard zamíří na Ukrajinu přes Česko

言及された取引が本当かどうかは不明だが、KP-SAMを4,300億円も購入するというのはMANPADSをウクライナ軍へ安定供給する狙い?

ウクライナ東部ではロシア軍との戦いが継続中で「これを支援する新たな武器供給案件でチェコは重要な役割を担っている」とiDNES.cz誌は報じており、米国は韓国のLIG Nex1が製造する「神弓(KP-SAM Chiron)」のランチャーと弾薬を750億チェコ・コルナ分購入、これをチェコ経由でウクライナに提供することで合意に達したらしい。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young スティンガー

ウクライナ軍は低空を飛行する戦闘機やヘリは勿論、小型UAVや徘徊型弾薬に対処するためにも携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)を多用しており、西側諸国は米国製のスティンガー、英国製のスターストリーク、仏独製のミラン2、フランス製のミストラル、ポーランド製のグロム、旧ソ連製のストレラ2などを提供しているが、急激に減少した備蓄量を埋め戻すには相当な時間が必要で、さらにMANPADSの有効性を再確認した国からの発注も相次いている。

補足:米軍はスティンガーの在庫(推定8,000発)の約1/4をウクライナに供与したため、ギャップを埋めるのに5年(年間約720発まで生産量を引き上げる2年+生産に3年)かかるらしい。

つまり米国は何年続くか分からないウクライナとロシアの戦いにMANPADSを安定的に供給するため、韓国製のChironを買い上げてチェコ経由でウクライナに提供するという意味だとは思うが、MANPADSの1回の取引額として750億チェコ・コルナ=約4,300億円は額が大きすぎるので、取引額の上限が750億チェコ・コルナ(上限の範囲内で発注を複数回行う方式)なのだろう。

iDNES.cz誌の言及した取引が本当かどうかは今のところ不明だが、ヤナ・チェルノホバー国防相は「メディアの憶測にはコメントしない」と述べているものの「ウクライナ支援は継続中で安全保障上の理由から詳細は明かせない」と付け加えている。

追記:韓国はウクライナへの直接供給に難色を示したためチェコ経由になったという説がある。

関連記事:韓国の尹大統領、カナダ経由でウクライナへの155mm砲弾提供を承認か
関連記事:韓国がスロバキアに対戦車ミサイル輸出? 第三国を経由したウクライナ支援?
関連記事:ウクライナ支援で減少した米軍備蓄、ジャベリン7,000発の補充に最低でも3年

 

※アイキャッチ画像の出典:LIG Nex1

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コメント

    • 幽霊
    • 2022年 9月 30日

    現状提供能力で余力があるのは韓国ぐらいですから可能性は高そうですね。
    気になるのは韓国は直接的な武器支援は行わないそうですが、第三国が購入して提供する場合は協力するんでしょうか?

    24
      • glw1
      • 2022年 9月 30日

      ポーランドはAHSクラブ自走砲(車体がK9自走砲)をウクライナに提供していますので、韓国は間接的な武器支援でしたら協力していますね。

      15
      • 2022年 9月 30日

      ロシアは北朝鮮が支援してウクライナは韓国が支援。
      なんと言いましょうか、これは代理戦争といえますかね?

      26
        • 無無
        • 2022年 9月 30日

        北朝鮮がロシアを支援する図式を予め予想した人なんていない、それに韓国とロシアはウクライナがなければさほど悪くない関係

        結果的な偶発的事態としか、面白いと言っていいかな

        30
    • 匿名
    • 2022年 9月 30日

    神弓のシーカ部は9K38の流れを汲む物、つまりは自身が撒いた技術の末裔が牙を向いて来る訳で…

    13
      • 無印
      • 2022年 9月 30日

      まぁ、戦車は同じ物(T-72)を使って殴り合ってるから、そう言う所はお互い何も思って無いのでは

      29
        • 匿名
        • 2022年 9月 30日

        …😳!
        それは確かに
        つーか、ウクライナ自体が旧ソ連の兵器生産拠点ですしね

        8
      • ブルーピーコック
      • 2022年 9月 30日

      武器を輸出するということは、そうなるリスクも許容しないといけないということです。

      10
    • もり
    • 2022年 9月 30日

    一体何発分なんだ?
    しかし、あと5年早く政府が動いてたら91式携SAMもお零れに与れたのではないだろうか?

    5
      • YO
      • 2022年 9月 30日

      日本の場合は兵器の性能、政府以前に「市民」が問題。

      49
      • ナイトアウル
      • 2022年 9月 30日

       実績無いし価格が世界一だと思うから自衛隊が他国のグロムやスティンガーに対して妨害やロックオンを総合した命中率が優れているとか言わないと俎上にも上がらない。近年ならUASに対しての性能が求められるけど、それに対してどうなのかの発表も無く旧態依然とした目標だけを想定しているとしか思えない。

       他国MANPADSと比較して優位だと思うのは91式携帯地対空誘導弾(改ならば赤外線画像 (IIR) 誘導方式による認識能力向上と非冷却性能だけでそれをメリットに感じないと採用は無いだろう。
       価格が高い、速度は遅め、射程は短い方、近接信管無し。近年は高価格な航空機やヘリよりUAS対策の方が求められると思うので安くて近接信管のあるそこそこの命中率で数が揃えられるMANPADSの方が人気だと思う。

      21
        • もり
        • 2022年 9月 30日

        アメリカ的には金が無いのでは無く物がないのだから体制さえ整っていれば割高な91式も行けたハズ

        3
        • 原点にして頂点
        • 2022年 9月 30日

        91式携帯地対空誘導弾は、あなたが例として挙げているスティンガーよりも長い有効射程を持つし、速度もあまり変わらないし、スティンガーも近接信管を持っていない。

        スティンガーは、貫通衝撃信管を採用しているからね。

        他にも、91式携帯地対空誘導弾はスティンガーに比べて低空域における各種目標対処能力、正面要撃性、瞬間交戦性、対妨害性などに優れている。

        なので、日本が91式携帯地対空誘導弾を売ろうとすればいけるはず。

        ただし、そもそも今の日本は攻撃用装備の輸出を認めていないので、日本が「防衛装備移転三原則」を緩和しないと輸出は無理だね。

        5
    • 774rr
    • 2022年 9月 30日

    日本は武器支援の要請すらされてないんだろうか?
    初期の初期に防弾チョッキを渡してハイ終わり! ではあまりにも情けなさ過ぎる

    14
      • 霞ヶ浦
      • 2022年 9月 30日

      国民の支持得られるか微妙だしそもそも生産余力ないからまぁ多分言われてもやらないんじゃない

      33
      • HAi
      • 2022年 9月 30日

      そもそも武器輸出しません!ハイ終わり!って日本政府自身言っちゃってるから迂回輸出すら無理だし、出来たとしてもそもそも生産レーンが細すぎて…

      48
      • ホテルラウンジ
      • 2022年 9月 30日

      武器丸出しの武器は輸出できないとしても、トヨタと日産から極上のピックアップトラックを民間支援目的で提供するだけでもめっちゃ喜ばれると思うんですけどね
      いろんな使い道ができますし

      18
        • 第十軍団
        • 2022年 9月 30日

        プリウスとかアウトランダーPHEVはウクライナ警察に納入されてるみたい
        そういえば自衛隊からバンを提供したって報道有ったけど車種は何なんだろ?ハイエース辺り?

        17
      • 2022年 9月 30日

      インフラの復旧や医療、介護などで人的以外の物質面やノウハウで存在感を出せれば良いなと思う。
      戦後は人的貢献ができれば民主主義先進国としての役割が果たせるのではないでしょうか。

      日本がロシアににらまれるかもしれないが、円借款模も喜ばれるかも。
      日露戦争ではイギリス、アメリカからの借金でかろうじてロシアに勝てた。

      18
        • 名無しさん
        • 2022年 10月 01日

        それらはお金さえあればG7以外でも出来る事なのであまり存在感はしめせないんじゃないかと。
        日本がやるとしたらそれらに加え、地雷の撤去が良さそうなきがします。

      • ななし
      • 2022年 9月 30日

      ウクライナも以前とは違って日本の都合はわかっているので武器支援の要請はないよ。

      8月の防衛省のリリースに民生車両(バン)を提供するってあるので自衛隊からだと業務車4号(ハイエース)じゃないかな?。
      あとは小型ドローンの追加提供。
      リンク

      17
      • ブルーピーコック
      • 2022年 9月 30日

      北海道の目の前にロシアが居るの忘れてません?

      6
    •  
    • 2022年 9月 30日

    今はドル高だしアメリカの供給能力が整うまではこういう買い取り迂回供与がしばらく需要ありそうですね

    10
    • 匿名希望
    • 2022年 9月 30日

    弾頭自体がロシア製だし
    ロシアに売られても困るから何じゃあないかな?
    後状況的に見て現品限りになりそうだし。

    7
    • 2022年 9月 30日

    ユン政権は米国との関係強化に力入れてるし、要請があったんならあり得るな。
    しかしウクライナが一気に多国籍兵器化してるが、保全とか整備とか追いついてるのかな?

    3
    • TA
    • 2022年 9月 30日

    案外米軍がそのまま使うかも
    スティンガーは旧式の武器だしわざわざ投資して大量生産ってのも妙な話
    結局当たれば何でもいいんだし

    1
    • no
    • 2022年 9月 30日

    チェコの軍事予算は32.8億ドルでした。
    リンク
    今なら4700億円位でしょうか。

    • 名無しさん
    • 2022年 9月 30日

    >約4,300億円は額が大きすぎるので、取引額の上限が750億チェコ・コルナ(上限の範囲内で発注を複数回行う方式)なのだろう。

    携帯式SAMの取引額としては破格に見えるけど、今後戦争が年単位で行われ続けることを考えると、
    仮にSAM一式を3000万円程度としても1万4先発ちょいで、無人機相手に撃ちまくってる状況を踏まえて
    年間消費が3000発なら5年、5000発なら3年分か。

    戦争ってのは本当に金がかかる・・・。

    7
      • 2022年 9月 30日

      無駄に見えるけど、ロシアや北朝鮮、中国みたいなのがあるから必要経費だね。
      戦争は外交と同じくたんなる政策手段らしいから、中国みたいなのを非難しても意味がないかもしれんし。

      2
    • daishi
    • 2022年 9月 30日

    NATOだけでなく韓国からも仕入れるとなると完全に西と東の代理戦争、総力戦になってますね。
    今回は朝鮮半島やベトナムと違い、ロシア本体が相手なので「西側だけ代理戦争」ではあるのですが

    3
    • 似非市民
    • 2022年 9月 30日

     米国は直接ウクライナに軍事援助しているのに、韓国から買った兵器をチェコ経由でウクライナに提供する理由がさっぱりわからへん。
     兵站からすると全く意味がない迂回提供になるんやけど、一部をチェコに援助するのが目的なんやろか?

    > 追記:韓国はウクライナへの直接供給に難色を示したためチェコ経由になったという説がある。

     ちゅうても、米国を挟んでの間接供給になるわけやし、どうしても更に一国挟みたいのならウクライナの隣国でいまや異常に仲のいいポーランドからの供給の方が兵站的に理にかなってると思うんやわ。
     米国は、チェコもウクライナを強力に支援しているという形を作りたいんやろか? それとも韓国がチェコに武器輸出をしたという実績づくりに協力しているのか?  どちらにしても、なんで米国がそこまでしなければならないんかが全くわからへん。 目的はなんなんやろ?

     

    • 名無し
    • 2022年 10月 01日

    対空ミサイルは防御兵器じゃん

    SM-6でもあるまいしね

    • いおり
    • 2022年 10月 03日

    政府がチェコを通じてウクライナに29億ドル相当の攻撃武器を提供することにした、という一部の外国メディアの報道に、国防部が「事実ではない」と発表した。
    国防部は2日、「ウクライナに兵器を支援しないという政府の方針には変わりがない」と述べた。

    リンク
    ガセネタみたいです。

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