欧州関連

独VWが兵器生産への本格復帰を協議中、ラファエルと提携でアイアンドームを製造

フランスはルマンのルノー自動車工場を無人機生産に転用する計画で、ドイツもフォルクスワーゲン(VW)のオスナブリュック工場をアイアンドームの部品製造に転換することラファエルと協議しており、ラファエルとの提携は兵器生産への本格的なフォルクスワーゲン復帰を意味する。

参考:VW in talks with Israel’s Iron Dome maker to shift from cars to missile defence

フォルクスワーゲンとラファエルはオスナブリュック工場の自動車生産をアイアン・ドームの部品製造に切り替える契約について協議しているらしい

フランスのマクロン大統領も今年1月「フランスが(消耗型無人機の分野で)遅れているのは明白だ」「ウクライナの戦場で見られるイノベーションの力とスピードに対応するため迅速に行動する必要がある」と言及し、仏メディアのL’Usine Nouvelleは「ルノーがChorus(コーラス)と呼ばれるShahedに類似した多目的任務に使用できる長距離無人機の生産準備を進めている」「コーラスの原型はTurgis Gaillardが開発を進めていたもの」「ルノーはコスト削減と生産の最適化のため自動車用素材の転用や自動車生産ラインで一般的なセルフピアシングリベット接合を採用した」「2026年夏までに10機のプロトタイプを製造する」と報じた。

出典:ТЕЛЕКАНАЛ ЗВЕЗДА

L’Usine Nouvelleは「このコーラス計画はマクロン大統領が言及したイノベーションの力とスピードに対応することを念頭に設計され、装備総局はプロトタイプのテストが成功すればルノーとTurgis Gaillardの合弁企業と10年契約(最大10億ユーロ)を締結する」「コーラスは全長約10m、全幅約8m、最大速度400km/h、最大高度5,000mだ」「自動車車体の設計・製造を行っているルマンのルノー工場に専用ラインを設置して月600機ほど生産可能になる」と説明。

Defense Newsも「NATOのルッテ事務総長は繰り返し『戦時体制に移行したロシアの兵器生産は西側諸国を上回ってる』と繰り返し警告しており、今回の件は欧州の大手自動車企業が直接兵器製造に進出した稀な事例で、欧州諸国が兵器生産の急速な拡大を模索している中での出来事だ」「ドイツの防衛産業も自動車生産能力を軍需生産に転換するよう求めており、Rheinmetallは2つの自動車部品工場を軍需生産に拠点に転換した」と報じていたが、Financial Timesは24日「フォルクスワーゲンがオスナブリュック工場をアイアンドームの部品製造に転換することラファエルと協議中だ」と報じて注目を集めている。

出典:Rafael

フォルクスワーゲンは欧州市場での販売低迷を理由にドイツ国内の工場閉鎖(オスナブリュック工場とドレスデン工場)を検討していたが、労働組合のIG Metallは会社側と交渉して「工場の即時閉鎖」「従業員の強制解雇」を回避することで合意し、同工場での車両生産を2027年までに終了するものの「工場自体を閉鎖しないで済む代替生産」を模索することになり、フォルクスワーゲンとラファエルはオスナブリュック工場の自動車生産をアイアンドームの部品製造(迎撃ミサイル以外の生産)に切り替える契約について協議しているらしい。

ドイツ政府も工場での雇用維持に繋がる動きを支持しており、ラファエルが欧州での生産拠点にドイツを選んだのも「欧州におけるイスラエル最大の支援国」という理由で、既にドイツの防衛産業能力を活用して対戦車ミサイルのスパイクやアクティブ防護システムのトロフィーをドイツ国内で製造している。さらにエルビット・システムズもドイツ陸軍が調達する多連装ロケットシステム=EuroPULS(MARS-3)のロケット弾製造をドイツ国内に移転する予定だ。

出典:Ministerie van Defensie/CC BY-SA 4.0

フォルクスワーゲンは既にラインメタルとの合弁事業として軍用トラックの生産に参加しているが、ラファエルとの提携は兵器生産への本格的なフォルクスワーゲン復帰を意味し、フランスやドイツの事例は「戦時下でもないのに民需生産を軍需生産に転換する」というエポックメイキングな時代が到来すること告げているのかもしれない。

関連記事:民需から軍需への生産転換、仏ルノーがShahedに類似した長距離無人機を生産
関連記事:ドイツ陸軍の多連装ロケットシステム調達、EuroPULSを250両調達予定

 

※アイキャッチ画像の出典:Rafael

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コメント

  • コメント (15)

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    • 特盛
    • 2026年 3月 25日

    日本も日産の追浜工場を国営工廠として活用したり、日産やホンダの救済もかねて軍需生産を担わせたりした方がいいと思います。

    20
      • nachteule
      • 2026年 3月 26日

       ホンダは過度なEVシフトのせいでの巨額赤字で救済が必要かと言われると疑問だし、日産は販管費(広告宣伝費の効果が特に薄い)の割に車両が売れていないので救済するのはアリだと思う。ただ、工場を利用して何を作らせるの?

       VWのオスナブリュック工場にしても市中心部に位置しているのでミサイル製造は有り得ないとすぐに分かる。調べた限りだとミサイル搭載トラック・発射台・電力供給装置など、アイアンドーム中核コンポーネントの生産工場になりミサイルはドイツの別工場。

       追浜を見る限り大量の火薬類を扱うには不向きだし、それは別工場も似たような物で必然的にそれ以外物を製造するしかない。軽装甲機動車後継の装甲化民生車両にパトロールが候補であったならY61シリーズをそこで製造し民生含めて自衛隊向け世界向けの装甲車両を製造するとかならまだ分かるけれども。

       日産の航空宇宙部門は遙か昔に閉鎖済みでその再来とかは期待出来ないし、仮に防需向けにやるならJIS Q 9100/SJAC 9120(航空宇宙・防衛産業特化品質マネジメントシステム)を取らせる事から始めなければいけないと思う時間も金も掛かる話。車両向け工場でも認証受けている所はあるがかなり面倒なヤツなので多分日産では認証なんて取ってないだろう。

       技術や立地や設備等の絡みで簡単にやれる事やれない事があるんだから簡単に工場の転用とは言うが何を作らせるかが問題で、そこらへんどう考えているのかな。

      2
        • 月虹
        • 2026年 3月 26日

        >日産の航空宇宙部門は遙か昔に閉鎖済み

        日産がルノーの資本算入を受けることになり、同社の宇宙航空部門が石川島播磨重工業(現・IHI)に事業譲渡されてアイ・エイチ・アイ・エアロスペース(現・IHIエアロスペース)となりました。

        日産時代にライセンス生産した多連装ロケットシステム(MLRS)はウクライナでのATACMS(射程300km)による精密長距離攻撃が注目されたものの日本はオスロ条約加盟国でクラスター弾頭を用いるATACMSは運用不可、現状では射程100km程度の単一弾頭型のM31しか運用できないために退役することになってしまった(将来に対する予備装備としてモスボール保管となったことは良かったが)

        自走発射機自体はライセンス生産(情報処理装置は東芝が開発)だったもののロケット本体は一貫してアメリカからFMSによる購入だったので自衛隊で再戦力化するには韓国の様にMLRSの規格で運用可能な独自のロケット弾を開発するしかないでしょう。

        4
        • TAIKI
        • 2026年 3月 26日

        追浜工場は小型車中心の生産ラインで軍用車向きの大型ピックアップやSUVを生産する能力はありません
        Y61シリーズを生産していたのは湘南工場でこちらも閉鎖予定(部品工場としては存続)なので湘南工場を装甲車両工場、追浜工場を小型ドローン生産拠点にするのが一番望ましいかと

        2
        • 特盛
        • 2026年 3月 26日

        工場の設備をそっくりそのまま流用する必要はないし、他の方が言うようにドローン生産などできることはあるでしょう。
        認証が必要というのも、Anurilのようなスピード感のある生産を実現するためにはそれこそ不要なのでは?という。

        ダメ出しではなく、何ならできるか、どうやったらできるかを考えた方がいいと思っています。

        5
    • YF
    • 2026年 3月 25日

    大手自動車メーカーが複数ある日本でもこの流れが来るかと思いがちですが
    多くの日本企業が、未だに防衛装備品の製造に関わってる事を公にしたくない風潮があるそうなので、新規に防衛装備品の製造に協力してくれる企業がどれだけ現れるか未知数ですね。
    この辺は欧米企業とは大きく違う点です。
    戦後日本のマインドの問題なので、この辺を変えていかないと現実的な安全保障論も含めて進んで行かないのではと思います。
    防衛装備品の輸出に関しても日本と韓国の一番の違いは、商売やり方や技術以前に軍事、安全保障への国民のマイナスイメージ(企業側が軍事産業に本気になれない)なのではと思います。

    17
      • nachteule
      • 2026年 3月 26日

       防儒にドップリ浸かっている会社の企業説明がどうなっているかはバロメータになると思うが最近はどうなんだろうか?
       5年位前だとプロジェクタには映すが配布資料のその部分は白抜きで口頭説明は物凄く歯切れが悪い某メーカーさんが居たけど。

       商売になると思っているからテラドローンの防衛産業本格参入があった訳だし、同じくドローンのエアカムイとかも似たような物でしょう。大手より中小が生き残りを掛けて防儒に食い込んで行く感じはしますね。

       

      4
        • YF
        • 2026年 3月 26日

        テラドローンのCEOの方がインタビューで日本の大手企業が防衛関係に消極的って話をしてましたね。
        YouTubeでPIVOTのテラドローンCEOの方のインタビュー観れますが
        「日本のドローン戦略、シャアヘドの脅威日本はどう戦う」
        は中々興味深い内容でした。

        ドローン開発については素早い決断が必要なのでベンチャー向きなのかもしれませんね。

        2
      • 中村
      • 2026年 3月 26日

       ダイキンの一言で話が終わってしまいます。

       日本の場合、SUBARUはSUBARUですし、川崎は最近分社化したとは言えバイク屋、立体駐車場の新明和が航空機メーカーなんてカレンダー貰った事が有る人しか知らないでしよう。

       BAE、EADSどころかMBBにすら成って無い現状では国営工廠と国営設計局しか手は無いとおもいます。

      5
    • たむごん
    • 2026年 3月 26日

    フォルクスワーゲンは、激しいリストラやってますからね。

    大株主に、2位ニーダーザクセン州(雇用・対ロシア)・3位カタール政府系ファンド(イラン戦争)もありますから、理解を得やすかった面もあるのか気になる所だなと。

    2
    • せい
    • 2026年 3月 26日

    自動車メーカーの工業力は軍拡時代に見て見ぬ振りは出来ないわな

    6
    • ハレル屋
    • 2026年 3月 26日

    ナチ由来の自動車メーカーがイスラエルの兵器を製造するとは…

    6
      • ブルーピーコック
      • 2026年 3月 26日

      ユダヤ人とロシア人を強制労働させていたフォルクスワーゲンが、ロシア人と戦うためにユダヤ人に使われる・・・あれ?ロシア人だけ立場が変わってねえな

      4
    • リンゴ
    • 2026年 3月 26日

    『エリカ』が聞こえて来そうな内容で、思わず笑ってしまった

    • ブルーピーコック
    • 2026年 3月 26日

    『民需がそのまま戦争に転用される』のが加速するのは時代の流れだから良い(良くない)んだけど、戦争に備えるより失業対策を優先してるのはなんだか民と官で互いに尻拭いしてるように見える。

    2

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