欧州関連

ギリシャ、ラファール導入に続きトルコ発注分のF-35Aも取得か

米国のポンペオ国務長官が先月29日、ギリシャを訪問してミツォタキス首相と会談した際にF-35A供給について重要な協議が行われたと報じられている。

参考:GREEK MEDIA OUTLETS CLAIM SIX F-35S ORIGINALLY DESTINED TO TURKEY MAY END UP IN GREECE

ラファール導入に続きF-35Aも平行導入?ギリシャのF-35A導入にポンペオ国務長官がグリーンライトを与えた?

ギリシャは空軍近代化の一貫として保有するF-16C/Dのアップグレード契約を昨年締結、さらにF-35A導入にも関心を示していたがトルコとギリシャの軍事的緊張が高まった影響で今年9月、唐突にフランスからラファールを18機導入することを決定した。

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

なぜ関心を示していたF-35Aではなくラファール導入に踏み切ったのかについては諸説あるのが、最も有力な説はフランスがギリシャの要求した短納期(※1)に応じたためだと言われている。

※1補足:フランスはギリシャが要求したラファール18機の内6機は新規製造で対応して残り12機は仏空軍が使用しているラファールをF-3仕様にアップグレードして引き渡す方針で、導入まで時間のかかるF-35Aよりも早く手に入れることが出来るらしい。

しかし、ここに来て米国の巻き返しが始まった。

ポンペオ国務長官はミツォタキス首相と先月29日ギリシャのクレタ島で東地中海問題について会談を行ったのだが、その際にポンペオ長官はギリシャがF-35Aを20機購入する計画に事実上の「グリーンライト(購入許可)」を与えたとギリシャメディア「Estia」が、初回導入分としてギリシャは2022年にF-35Aを6機購入(恐らく発注という意味)して、フランスがギリシャに引き渡すラファール初回分と同時期にF-35Aが引き渡されるとギリシャメディア「City Times」が報じている。

出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Brandon Shapiro

これが事実ならラファール導入決定でF-35Aの導入は先送りされる可能性が高いという見方を否定する動きとなるため、海外メディアは今回のニュースに半信半疑だ。

ただロシア製防空システム「S-400」導入でF-35プログラムから追放されたトルコ発注分のF-35Aが6機(※2)行き場をなくして保管状態にあるため、これを活用すれば短期間でギリシャにF-35Aを届ける事ができる。さらに現在製造が進むロット12やそれ以降のロットにもトルコ発注分のF-35Aが20機以上組み込まれているため、これを活用すればギリシャが要求している20機のF-35Aを短期間で揃えることも可能だ。

※2補足:トルコが発注した6機のF-35A完成機については米空軍が購入することを許可する内容が国防権限法(NDAA)案に盛り込まれているため、米空軍が一度購入したものをギリシャに回すというのは非常に現実的な落とし所だと言える。

果たしてギリシャメディアが報じた内容が事実なのかは暫く様子を見る必要があるが、米国はギリシャに対するフランスのラファール売り込みを最小限に抑えるため、アラブ首長国連邦(UAE)にF-35Aを販売して不要になるF-16E/Fをギリシャに売却する案も水面下で進めていると言われており、このような米国の必死さを考えるとトルコ発注分をギリシャに回すというのは非常に現実的な提案かもしれない。

出典:public domain UAE空軍のF-16E

ただ問題はギリシャにラファールとF-35Aを同時に導入するだけの予算が確保できるのかだ。

どう考えても予算的にはキャパオーバーのような気もするが、トルコに国益を侵害されている状況なのでギリシャとしては「なりふり構っていられない」のだろう。

関連記事:ギリシャ、F-35Aではなくラファールを選択したのは納期の違い
関連記事:トルコ反発は必至、米議会がトルコ発注分F-35Aの米空軍使用を承認
関連記事:アラブ首長国連邦がギリシャにF-16E/Fを売却? 米国によるフランス牽制か

 

※アイキャッチ画像の出典:US Air Force / Photo by: Staff Sgt. Kate Thornton

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    コロナ対策目的で刷った国債を転用すれば買える買える
    最近のトルコは狂犬過ぎて怖い

    7
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      スレイマン時代ってこんな感じだったんでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    どう考えてもギリシャが支えきれる戦力ではないと思いますが、そこはトルコに対する各国の思惑を利用して甘い汁を吸うつもりだろうと思います。現実的に狂犬と化したトルコを抑え込むのにギリシャはお手頃でしょうから。

    14
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    おーいエルドアン君!

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    トルコ、今までが大人しすぎたのかも。本来は中東の漢族みたいなポジションだし
    逆になんでずっといい子にしてたんだろうね

    12
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      世俗主義を標榜する西側陣営の一員として、ソ連/東側諸国&イスラム過激派という共通の敵がいたから。そしてEU加盟を目指してお行儀良くしていたから。

      17
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    ギリシャ F-35A(トルコ空軍が取得予定だった) vs トルコ F-16C/D Block 50 空戦の可能性ができたということでしょうか。
    その時の条件で不利と分かっている側は避けるでしょうが。。

    9
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      ギリシャのラファールをトルコのF-16がボコって、これを元トルコ向けのF-35Aがボコる。
      ロッキードマーティンの一人勝ち。

      2
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      自己レスです。

      空戦は戦闘機のみの優劣ではなく、早期警戒管制機や電子戦機の比重が高くなります。
      特に電子戦機の役割は重要で、F-22がEA-18Gグラウラーにキルされたのは記憶に新しいところです。
      AWACS/AWE関連で両国保有の機体をググってみました。対空時間ではボーイング737有利と思われます。
      あとは電子戦機を第三国が提供するかがポイントかと。

      トルコ: ボーイング737 AEW&C
      ギリシャ: R-99A (エンブラエル EMB 145 AEW&C)

      13
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    そもそもギリシャ単独でトルコ抑え込むのは国力差を考えると無理だと思うんだが、フランスやアメリカはどの程度本気でギリシャの肩を持つ気なんだろう。兵器だけ買わされていざとなったらあっさり梯子外されそうで見ていて不安になる。

    13
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      その時は、デフォルトで反撃。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    トルコのTFXの完成の目処が立ってないからありっちゃありか?
    ロシアが協力すればなんとかって感じだけどアルメニアの件があるからなぁ

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    アゼルバイジャンとアルメニアの戦いで、どちらも航空優勢採れない状況で、アゼルバイジャンがトルコ製ドローンつかって一方的な戦果を挙げているし、ギリシャとして無茶でも空を押えられるようにしておきたいのだろう。

    8
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      ロシア「クラスハも買うか?w」

    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    こうやってなりふり構わず世界にF-35を売りつけて世界支配の道具にしようとしているアメリカ。本当に嫌な国です。
    万が一にも台湾に売りつけたならば戦争になることを警告します。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      コロナをバラまいた中国に警告しろや
      一年経たずに世界中で100万人以上犠牲者を出した張本人だぞ

      20
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      トルコ・ギリシャの話題と何の関係が…
      世間の空気を読まないところは祖国と同じだねー

      13
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      なんだ釣りか……

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 29日

    F-35Aよく売れるなぁ…こちらとしては価格が下がるから大歓迎だけど、よくここ迄売れたもんだ。

    13
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      グローバリズムが生んだ戦闘機界のiPhoneだとも言える
      F-35の供給網で巨大な仮想軍事同盟が生まれるであろう

      14
      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      事実上、買える第5世代としては唯一無二の存在ですからね
      中露の第5世代戦闘機とやりあう可能性の国家は勿論、それ以外の第4世代戦闘機だって圧倒できる存在ですし
      アメリカから買えるだけの関係と金を持った国家は、そりゃこぞって買うしかないというか、それしか買えないですし

      16
    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    トルコが支払い、そして返金を要求している約15億ドルについて、
    米国はまだ何も決まっていないのだろうか?
    清算してから、ギリシャに売りつけるなりするのが筋だと思うが。

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    以前の記事でトルコ分の在庫をまわせば短納期で納入できるってコメントしたけどやっぱそうなるよなあ
    後は代金のお支払いなんですけどギリシャはちゃんと払えるんかね

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 30日

      アメリカ政府が無償軍事援助でトルコ分だったF-35を出すという裏ワザ使用するかもしれません、世界最強のアメリカを敵に回すと危険ですね。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    聞き流すのが利口

    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    なりふり構わずって言うけど、ギリシャという国を見てるといつもの事って感じしかしない。
    もう忘れられてるかもしれないけど、「ギリシャ危機」で融通された資金で艦艇と戦車を買った国なんだってこと。あの時は対マケドニアが緊張してるからだったけど、今度は対トルコになっただけ。
    彼らは地下経済が大きいから見かけより地力があって、あの国民性だから大騒ぎはするけど、お小遣いもらえれば玩具を買う。今回は「大安売り」ってだけのことだと思うので、平常運転かな。

    地政学的にも国防軍の強化は必要なことだし機会は逃さないってことだろう。

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 30日

    パイロットは用意できるのかな…

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