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高まるMQ-9タイプの無人機需要、独企業も独自のUCAVをまもなく発表

米空軍参謀総長は議会で「対イラン作戦で最も優秀な役割を果たしたのはMQ-9だった」と証言し、EO/IRセンサーを搭載して中高度を長時間飛行できるUCAVやUAVの必要性や需要が高まっており、ドイツのドローン企業も6月10日に開幕する防衛見本市で独自のUCAV=Pulse P19を発表するらしい。

参考:Florian Seibel
参考:Pulse P19 – Quantum Systems wird bewaffnungsfähige Mehrzweckdrohne der MALE-Klasse vorstellen
参考:SpaceX wins $4.16B Space Force contract to detect airborne moving targets

ドイツもUCAV市場参入が濃厚となっており、独ドローン企業はILA Berlin 2026で独自のUCAV=Pulse P19を発表する可能性が高い

偵察衛星による監視能力はニアリアルタイムであり、低軌道を周回しているため特定地点の継続的な監視能力も1回の通過で数分程度しかなく、偵察衛星の監視能力に基づいた静止目標の位置特定は得意でも、移動目標の位置を追尾するのは不可能に近く、偵察衛星さえあれば攻撃目標の位置特定を全てカバーできるわけではない。

出典:Photo by Staff Sgt. Taylor Drzazgowski

米空軍も湾岸戦争時「イラク軍がスカッドミサイルを発射した移動式発射装置の撤収作業に30分かかると考え、これだけの時間があればDSP衛星が発射を検出し、射点の座標を割り出し、戦闘機で撤収作業中の移動式発射装置を破壊できる」と計算していたが、イラク軍はソ連のマニュアルに頼るのではなく「30分かかるはずだった移動式発射装置の撤収作業を6分に短縮する方法」を発見、そのためスカッドミサイルを発射してすぐ逃走したため、当時のISR能力では移動式発射装置の位置を把握するのが困難だった。

最終的に推定射点や移動式発射装置が隠れていそうな場所をB-52で爆撃してスカッドミサイルの発射を抑制したが、最後までスカッドミサイルの発射を止めることは出来ず、計2,493回のミッションで発射装置によく似た燃料補給車両や囮を破壊しただけで、本物の移動式発射装置を1基も破壊することが出来なかったため「米空軍最大の失策」と呼ばれている。

出典:Армія Інформ / CC BY 4.0

この技術的問題は2022年2月に勃発したウクライナ戦争、2026年2月に勃発したイラン戦争でも同じ傾向が確認されたが、この問題に一定の解決策をもたらすのがゼネラル・アトミックス製のMQ-1、MQ-1C、MQ-9A、MQ-9B、バイカル製のバイラクタル・TB2、バイラクタル・アクンジュ、トルコ航空宇宙産業製のアンカA、アンカB、アンカC、イスラエル航空宇宙産業のヘロンTPといった武装可能な無人航空機=UCAVで、この無人プラットフォームは情報収集、監視、目標捕捉、偵察=ISTAR能力に加えて攻撃兵器を携行することができる。

例えばTB2が装備するEO/IRセンサーは最大75km先の車両を認識でき、最大20km先にある目標の位置を特定可能で、最大24時間以上の滞空能力を活かしてリアルタイムで移動目標を発見したり、移動目標を追尾して位置特定したり、状況が許せば携行する攻撃兵器で目標を直接破壊することもできるが、有人機よりも小型なUCAVは低観測性に優れていても高度な防空システムが作動する空域での生存性は低くなるが、ポーランドのブラスザック国防相は2022年10月のTB2引き渡しの際「ウクライナでの結果を見れば偵察にも攻撃にも使用できるTB2の有効性は明らかだ」「もはや無人航空機を保有しない近代的な軍隊は存在しない」と主張。

出典:Poland MOD

ポーランドはNATO加盟国として初めてトルコ製UCAV=TB2を2021年に発注したが、この取引は野党に「有人機の戦闘機と比較して性能が劣るTB2が正規軍相手に役に立つはずない」「TB2による対地攻撃ミッションなどは高度な防空システム相手に撃墜されるだけ」「政府は金をトルコに無駄に流出させている」などと散々批判され、この種の批判はUCAVを高度な有人戦闘機と比較するのが、戦闘中に1機も損失しない一方的な能力しか有効戦力と認めないことが原因で、ブラスザック国防相も精力的に国内の誤解を払拭するため言葉を尽くしてきたものの、ウクライナでUCAVが効果を証明するとTB2導入に対する批判はほぼ沈静化してしまう。

TB2は精密誘導兵器を携行すればISR任務で発見した目標を破壊することもできるが、TB2が認識できる範囲に対する攻撃手段(ミサイル、徘徊型弾薬、榴弾砲、自走砲、多連装ロケットシステムなど)は他にもあるため、キルチェーン全体から見ると「TB2を敵防空システムに撃墜される可能性が高い空域に侵入させて地上の標的を叩く」という必要性は低く、ブラスザック国防相も「TB2は単独で作動するのではなく他の軍事資産と連携して相乗効果を発揮することが重要だ」と述べている。

出典:Turgis Gaillard

米陸軍参謀総長のマコンヴィル大将もウクライナ軍のTB2が活躍し続ける理由について「高度な防空システムを隙間のない壁のようにイメージして『脅威はこれをすり抜けることが出来ない』と考えるかもしれないが、実際にはこれを回避する方法もあるし突破する戦術もある」と述べており、米ディフェンスメディアも「防空システムはあらゆる高度を飛行する目標を確実に検出できる訳ではない。全ての空域を完全にカバーすることは不可能で、24時間以上も戦場をうろつくことができる無人機は脆弱な部分から侵入してインパクトを十分残せる」と指摘した。

フランス装備総局(DGA)も2025年のパリ航空ショーで「最近の激しい紛争を通じて中高度を長時間飛行でき、低コスト、モジュール性、マルチミッション、妨害耐性、迅速な展開能力といった特性をもつ無人機の必要性が浮き彫りになった」「この種の無人機は現代戦において優れた偵察、監視、情報収集、軽攻撃能力で重要な役割を果たしている」と説明し、仏企業5社と契約して国産UCAVの開発に乗り出している。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Renee Blundon

米空軍もウクライナ戦争勃発前「中国が高度な防空システムを運用しているためMQ-9は太平洋地域の生存性が見込めない」と主張して2035年までにMQ-9を全て退役させる予定だが、MQ-9はイラン戦争=エピック・フューリー作戦でイラン領内における移動目標の発見、追尾、攻撃に投入され、イランの報復攻撃による地上での被弾によるものも含めて24〜25機が失われてしまったものの、MQ-9に対する評価は「防空システムに撃墜されるから役に立たない」のではなく「無人機最大のメリットを活かして有人機の撃墜リスクを肩代わりしている」と再評価された。

米空軍のウィルスバッハ参謀総長は「エピック・フューリー作戦に空軍が保有するほぼ全ての戦闘機(F-15E、F-16C/D、F-22A、F-35A、A-10)と爆撃機(B-52H、B-1B、B-2A)を投入してイラン国内の標的1万3000以上を攻撃したが、イランに対する攻撃回数という点でMQ-9に匹敵する機体は他にない」「MQ-9は非常に有用な無人プラットフォームなのでパイロットを危険に晒すことがない」と証言。


本作戦に詳しい関係者も「最も戦闘が激しい時期には一度に約12機のMQ-9がイラン領空内を周回飛行し続け、ミサイル発射装置、ドローン発射装置、航空機、移動式システムなどの動的目標に対する情報収集任務と直接攻撃任務に集中していた」と明かし、ダン・ケイン統合参謀本部議長も停戦直後「標的1万3000以上の中には戦場に突如出現し、即座に対処された4000以上の動的目標が含まれている」と報告し、米空軍は対イラン作戦で失ったMQ-9の補充、さらにMQ-9の後継機として高度なステルス性ではなく「消耗品として利用できる低コスト化」を要求している。

イタリアのレオナルドもトルコのバイカルと提携してトルコ製UCAVを共同生産する予定で、イタリア海軍参謀総長は今年3月「TB3をレオナルド経由で取得して空母カヴールに統合する」と言及し、スペインもコロンビアと共同開発したUCAV=Sirtap(サータップ)を強襲揚陸艦フアン・カルロス1世で運用するつもりだ。

出典:Airbus

そしてドイツもUCAV市場参入が濃厚となっており、独ドローン企業のQuantum Systems=クアンタム・システムズは3日「攻撃ドローンは既存の防空システムが対応しきれない速度で、防空の在り方を根本から変えつつある」「6月10日に開幕するILA Berlin 2026においてこの変革の具体像を提示する」と発表し、独自のUCAV=Pulse P19を発表する可能性が高い。

ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも「公開された映像を見る限り、Pulse P19にはコックピット、機首に装着されたエンジンとプロペラ、そして主翼に少なくとも6カ所以上のハードポイントが存在し、ロケットポッドや複数の誘導ミサイルが搭載されている。コックピットが設けられていることは本システムが有人運用も可能であることを示唆している」「クアンタム・システムズのフロリアン・ザイベル最高経営責任者はLinkedInへの投稿の中で『Pulse P19はオプションで有人操縦が可能だ』と言及していたため、つまり自律運用も可能であるという意味だ」と言及。

ザイベル最高経営責任者は他にも「対無人システム」「有人・無人チーミング(MUM-T)への対応」「VRによる没入型のパイロット訓練」「軽精密攻撃」「海上哨戒」「長距離・長時間ISR=18時間以上」を挙げているため、Pulse P19の想定任務は「空中でのドローン迎撃」「有人機と協調した任務遂行」「対地攻撃」「海上の監視」「長時間の偵察任務」で、ILA Berlin 2026で正式発表されるまで詳細なことは分からないものの、それでもUCAVの中では中々興味深い仕様だ。

ちなみに米宇宙軍は宇宙配備型の空中移動目標指示装置(SB-AMTI)を開発するためSpaceXに41.6億ドルの契約を授与した。このAMTI能力はレーダーを用いて空中の移動目標=航空機やミサイルなどを探知・追跡する能力のことで、従来はE-3が担ってきた能力だが、宇宙配備型のAMTIセンサーはE-7を補完するよう設計されているため「SB-AMTIでE-7を置き換える」という意味ではない。

出典:U.S. Air Force photo

同じように対地版の早期警戒管制機=E-8C退役で失った地上移動目標指示装置(GMTI)も宇宙配備型能力(SB-GMTI)として開発が進められており、宇宙に配置した衛星群に搭載したレーダーと電子光学センサーで車両、部隊、移動式ミサイル発射機、船舶など地上・海上を移動する目標の常時監視を目指しているが、SB-GMTIの支援衛星に搭載される電子光学センサーはレーダー衛星を補完する存在でUAVやUCAVが担っているような戦術レベルのISR任務を代替するようには設計されていない。

支援衛星の電子光学センサーは「MQ-9が供給している高解像度フルモーション動画」や「戦場を直接見下ろす目」としての活用ではなく、レーダーによる広域捜索や目標の初期検知を補助するために使用され、車両の種類、人員の数、カモフラージュされた脅威の判別などは想定外で、これもMQ-9などのISR任務無人機とは補完関係なので「宇宙配備型能力の電子光学センサーでMQ-9を代替することができる」というのは遠い将来の話だろう。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class William Rio Rosado

無人戦闘機は有人戦闘機の能力やペイロードを拡張しても有人戦闘機にとって代わるものではなく、SB-AMTI能力も空中・地上配備センサーの能力や範囲を大幅に拡張しても空中・地上配備センサーにとって代わるものではなく、SB-GMTIもE-8Cの代替能力として機能が大幅に拡張されても戦術レベルのISR任務を代替するようには設計されておらず、電子光学センサーを備えたUCAVやUAVの必要性や需要が増加することはあっても減ることは当分ないと思われる。

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※アイキャッチ画像の出典:Quantum Systems

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コメント

  • コメント (21)

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    • リンゴ
    • 2026年 6月 04日

    なんだかガンダムのニュータイプを人為的に無人機とセンサーで再現しているみたいだな
    人手が少ない国ほど、こういう形での戦力増強を進めて行ければええな

    7
      • ドゥ素人
      • 2026年 6月 04日

      有人機は太平洋戦争の時のパイロットのように、損耗が増えるほど人的レベルが著しく下がりますが、無人機なら新兵も古参と同じ能力か、むしろアップデートされて能力向上しますから良いですよね。

      12
    • せい
    • 2026年 6月 04日

    日本も海があるとは言え、対不審船や小型のUSVに対処するためには光学センサーでの哨戒活動が重要になるし、自前で造れるようにした方がええよな

    26
    • 戦車
    • 2026年 6月 04日

    各国共通しての問題としては衛星コンステレーションの構築が問題になると思うんだけど、英含めた欧州の衛星網ってどうなってましたっけ?

    1
    • ブルーピーコック
    • 2026年 6月 04日

    トルコが今年初めにTB3を売り込んでたし、試験導入してもいいと思うんだが。MQ-9を追加導入しようとしても、今の状況だとイランの補充分やアメリカ軍の追加分で日本にいつ来るか分からんし。

    3
      • ファッツ
      • 2026年 6月 04日

      MQ-9と比べてTBシリーズは航続性無い、電子戦弱い、積載量低い(MQ-9でも物足りないって話なのに)の三重苦だから厳しいでしょ…。日本の場合は解放海空軍とのガチンコ勝負になるからハイエンドの機体じゃ無いと安物買いの銭失いになるかと。自衛隊も人手不足で質を数でカバーする戦法は運用する人も整備する人も足りないし。

      10
        • 特盛
        • 2026年 6月 07日

        TBシリーズが能力不足だとしても、アクンジュやAnkaシリーズは良さそうに見えます。
        あと、記事にあるようにTB-3でもガチンコ勝負以外で役立てる場面はあると思います。

      • せい
      • 2026年 6月 05日

      買うだけ買っとけとは思うね
      別に自衛隊で使わなくても、警察でも消防の山岳救助で使ってもいいんだし
      実際今日本でMQ-9導入したの海保だし、平時でも十二分に活用できる装備だからね
      将来的には国産で作って欲しいけど

      5
    • 58式素人
    • 2026年 6月 04日

    最初の写真は、なんだか、WW2の戦闘爆撃機みたいに見えます。
    戦闘爆撃機を無人化する?ということのようにも思えます。
    WW2のタイフーン/テンペストやP -38/47の役割。
    今なら、A-10やSu-25の役割。
    お安くできると良いのですが。高価だと、無人機でも惜しくなるし。
    また、大きくなりすぎると対空火器の的になりやすいし。
    ウクライナ紛争の始まりの頃、どこかの記事で、UAVの大きさは、
    人の大きさを超えないようにした方が良い、と読んだ記憶があります。

    1
    • 無印
    • 2026年 6月 04日

    日本も、このクラスの無人機を開発しても良いと思うんですけどね
    ドンガラなら作れるかもですが
    問題は機体の数もだけど、搭載する頭脳かな?

    5
      • 七志
      • 2026年 6月 04日

      法律とか政治的アレコレとかが原因に含まれてそう。
      管理人様もよく述べてるけど、本邦ももっと広報戦略に力入れれば良いのになぁ

      10
        • SB
        • 2026年 6月 04日

        それに関してはしょうがないと言うか、軍事に関して世間様にまともに議論できるようになったのがここ10〜15年程前からなので…

        4
        • kitty
        • 2026年 6月 05日

        テラドローン社が自社が関連した迎撃ドローンがウクライナ軍に納入されたんですが、お客様の声(ウクライナ軍の中の人)がプレス資料に出ていて、通販会社のCMかyという作りでした。
        新世代の防衛関連企業だなあと感心した次第。

        1
    • たむごん
    • 2026年 6月 04日

    平時の偵察にも向いてるうえに、実戦にも非常に向いた兵器ですよね。

    日本目線、太平洋戦争の戦訓としてパイロット損耗がありましたが、無人機ならば問題にならないですし。

    FPS・TPSゲーム経験者は、世界に10億以上いるわけですから、(勤務は過酷ですが)本国で適性ある人材を探すのも容易なのかなあと想像しています。

    8
      • たむごん
      • 2026年 6月 04日

      追記です。
      長時間勤務という点では、過酷。

      後方任務、なんなら家から通えて最前線に肉体が行かなくていいという点、こう考えれば過酷ではないかもしれませんね。

      2
        • まめ
        • 2026年 6月 05日

        激戦地から退勤後、すぐ日常ってのもきついらしいですよ。

        2
          • たむごん
          • 2026年 6月 06日

          海外の知らない土地に1人で行ったり、単身赴任・家族帯同を考えれば、地元にいられるのは負担軽減なのかなと思いつつ。

          仰る点のような、難しい面もあるのでしょうね。

    • 思い付きだけど
    • 2026年 6月 04日

    第二次世界大戦のドイツ空軍では最後にMe262が偵察型がありました。航空機がある以上、偵察型は必須でした。
    現在は無人機に割り当てたのですね。

    1
    •  
    • 2026年 6月 04日

    4年前の教訓の再現ですよね
    知識として知っていても体系的に新戦術を導入できている国は殆ど無いのでしょう。少なくとも今日は

    1
    • 中村
    • 2026年 6月 04日

     既に複葉偵察機同士の煉瓦のブツケ合いが始まってますから、滞空型無人機はそんなに長く無いんじゃ無いでしょうか?、何時までも水偵で偵察は出来ませんよ。

     双方共にお互いの排除を任務にするようになれば、飛行性能を追求するしか無く、最終的には無人戦闘機か高速偵察機に収斂進化すると思います。

    13
      • まめ
      • 2026年 6月 05日

      質×量=戦力なので、コスト安く量産性が高さが重要。
      損失の交換比率では消耗型の偵察機でも価値がある。
      迎撃無人機も同じで数で迫られた場合、十分な主の領域が確保出来るのか?
      昨今のミサイル問題は高度過ぎて量産性が低い割に効果の発揮出来る範囲が狭くなる。コストパフォーマンスの問題でもある。
      WWⅡでは機体性能だけでなく迎撃態勢の構築が大きい。全体としてのシステムの適応も重要。

      1

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