エアバスA380製造打ち切りのニュースが報じられていますね。今回は民間機ですがA380の話を少々。
そもそも4発機のメリットって?
そもそも、エアバスA380とはどんな飛行機だったのか?
ジャンボ機と言えばボーイング747でした。この地位を完全に奪うために作られたのがエアバスA380です。では、ボーイング747とは何だったのか?
開発当時の経緯や機体の仕様等は、wikipediaを読めば分かっちゃうので、それ以外の部分で付け加えるなら、4基のエンジンを搭載することで、最短ルートの洋上飛行が可能という点。
現在では4発機はコスパの悪い機体の代名詞のような扱いですが、当時の双発機は、洋上のど真ん中を飛行することが禁止されていました。
これはETOPSという規定によるもので、エンジンを2基しか搭載していない航空機は、2基のエンジンの内、1基が停止しても、緊急着陸が可能な飛行場があるルートだけしか飛行出来ませんでした。もっと分かりやすく言うと、双発機がエンジントラブルで片発飛行状態になった際、片発飛行状態で飛行出来る「緊急飛行時間」が設定してあり、その時間内に緊急着陸ができる飛行場がないルートは、飛んではダメという話。
そのため、当時の4発機(3発機も)には、双発機にない経済性(飛行ルートの最適化)がありました。
しかしエンジンの信頼性の向上と共に、片発飛行状態での緊急飛行時間がどんどん長くなって行き、ETOPS制定前は空港から60分以上離れた飛行が禁じられていましたが、現時点で最大で6時間もの片発飛行が認められています。
結局、双発機が、ETOPSという制限を乗り越え、4発機とほぼ同じルートを飛行できるようになった為、元々経済性に優れていた双発機が完全に4発機のメリットの一つを奪い去ってしまったと言えます。
明暗が別れたエアバスとボーイングの戦略
こうなると双発機に比べ4発機のメリットは、機体の大きさを活かした設備やサービス、そして大量輸送しか生き残る道がありません。
そしてエアバスA380が颯爽と登場します。
双発機が4発機と同じルートを飛べるようになった時代に、なぜ総2階建て4発機なのか?
これにはエアバスの思惑があります。
当時、エアバスは将来の航空輸送の需要がどんどん増え、これに対応する航空機は?エアバスの出した答えは、ハブ・アンド・スポークという戦略。これは各地域の拠点となる空港と空港を大量輸送が可能な大型機で結び、各目的地には拠点となる空港から、中・小型機で輸送するという話。この戦略を実現させるために開発されたのがA380です。
では、もう一方のボーイングは、こう考えていました。「乗客は目的地へ行くのに何度も飛行機を乗り換えずに、直接目的地へ行きたい」と。これがポイント・トゥ・ポイントと呼ばれる戦略。エアバスとは完全に真逆です。この戦略を実行するため、ボーイングは中型双発機の開発に取り組み、その戦略を体現したと言えるのが787です。
結局、どちらが勝ったのか?結論から言えばボーイングの「ポイント・トゥ・ポイント」、中型双発機による経済性、特に旅客需要にあわせて、機体のサイズダウン・アップよる柔軟な運用コストの管理において、中型・小型双発機の方が優秀だったと言えますね。
ボーイング747はしぶとく生産を継続中
上記以外にも、エアバスの誤算は、航空貨物型の受注がまったく取れなかった事。
A380は完全に旅客型だけしか売れませんでした。もっと辛辣な言い方をすればエミレーツ航空しか買ってくれなかったw
もちろん、ルフトハンザドイツ航空や、シンガポール航空、エールフランス、そして全日空も、A380を購入しましたが、その数は僅かです。
A380の総生産(予定)280機程度の内、120機を購入したのがエミレーツ航空です。そのエミレーツ航空がA380の発注分をキャンセル、もしくはエアバスの他の機種への変更を検討しはじめた為、トドメを刺された感じですね。外から見た感じでは・・・

From wikimedia Commons/File:A350_First_Flight_-_Low_pass_02.jpg 03:00, 24 February 2019(UTC) License=CC BY-SA 3.0
ただエアバスも、途中で「ハブ・アンド・スポーク戦略」の失敗に薄々気づいていたので、ほぼ失敗したと言っていい中型双発機A350を大幅に改良したA350XWBを発表しました。A350XWBの発注数だけを見れば800機ほどのバックオーダーを抱えている状況。完全に大勝利です。
経営的には早くA380を終了して、A350XWBに集中したかったはずです。プライド以外の部分では・・・w
ここまで長々と書きましたが、民間機で製造され続けている4発機は、結局ボーイング747だけ(これも既に発注数が虫の息ですが・・・)。
颯爽と登場したA380でしたが、颯爽と去っていきました。本当に残念です。
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