インド太平洋関連

豪陸軍に提案されているリンクス、レッドバックと同じゴム製履帯を使用できると発表

ラインメタル・オーストラリアは評価テストが終了しているにも関わらず「リンクスも実証テストの結果Soucy製のゴム製履帯を装着して運用可能だ」と発表した。

参考:Rheinmetall completes Soucy CRT tests

レッドバックの走行性能がリンクスよりも上回っていたため急遽ゴム製履帯の採用に踏み切った?

豪陸軍の次期歩兵戦闘車に提案されているハンファディフェンスのレッドバック(韓)は軽量で特殊なゴム製履帯(Soucy製)を採用しているため「金属製の履帯に比べて走行中の振動が少なく搭載機器の故障要因が減少し、乗り心地も滑らかなので乗員の疲労度や燃費改善に明らかな差が見受けられる」と現地メディアが評価していたが、ラインメタルが提案していた伝統的な金属製の履帯を採用したリンクス(独)もSoucy製のゴム製履帯を装着して運用可能だと発表した。

出典:Australian Army / CPL Sagi Biderman

これはラインメタル・オーストラリアがリンクスにSoucy製のゴム製履帯を装着して実証テストを行った結果であり、同社は「ゴム製履帯を装着することでリンクスの空中輸送を容易(重量の軽量化に繋がるという意味)にすることができ、ライフサイクル全体を通じて運用・維持コストの削減にも貢献することが出来る」と述べている。

つまりゴム製履帯を採用したことでリンクスに差をつけていたレッドバックだが、ラインメタル側が「リンクスは耐久性に優れる金属製の履帯とゴム製履帯を運用環境に合わせて使い分けることが出来る」と切り口を変更してきたため、金属製の履帯を使用した運用を証明していないレッドバック(韓)のゴム製履帯採用は一転してデメリットに映るようになったという意味だ。

ただリンクスの戦闘重量はレッドバックよりも重い50トン(最大値)に達しているためゴム製履帯で支えきれるのかという疑問も頭によぎるが、実証テストを行った結果「問題ない」と言っているので意外とゴム製履帯の耐久力は高いのかもしれない。

出典:Australian Army レッドバック

まぁリンクスとレッドバックの勝負はプログラムコストの見積もりやオフセットの内容(現地製造に関する計画書など)も加味されるため「提案車輌の性能だけで勝者が決まる」という単純な話でもないが、オーストラリア軍による評価テスト終了後に「ゴム製履帯の採用を強行してアピールしている」という点を考慮すると、レッドバックの走行性能がリンクスよりも上回っていたため急遽ゴム製履帯の採用に踏み切ったとも受け取れる。

因みに豪陸軍の次期歩兵戦闘車プログラムの勝者は来年の第1四半期に発表される予定で、この結果は米陸軍のM2ブラッドレー後継プログラムにも響くと言われているためラインメタルもオーストラリアからの受注を確保するため必死なのだろう。

関連記事:豪陸軍によるリンクスとレッドバックの評価テストが終了、来年の第1四半期に勝者を発表予定

 

※アイキャッチ画像の出典:Rheinmetall MAN / CC BY-SA 4.0 歩兵戦闘車「リンクス KF41」

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    >ただリンクスの戦闘重量はレッドバックよりも重い50トン(最大値)に達している

    今更だが重いなぁ。

    9
      • 匿名係
      • 2021年 11月 18日

      素人意見だけど、IFVって一個分隊/班を輸送してかつ防弾力と敵車両撃破能力を積んでなきゃいけないわけだから、むしろ重量が戦車並みで当たり前な気がするけど。軽くなきゃいけないのは重量バランスの問題なのか?

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        機銃弾や榴弾片から乗員を守らなればいけないが、戦車の主砲に耐える防御力はいらないぞ
        あと重すぎると移動させるに困るのと、履帯が壊れやすくなる

        10
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        初期の各国ドクトリンではIFVに渡河能力が求められてたから軽くする必要があった。
        時代が降るにつれて防御力、生存性に比重が移り重くなっていった。

        10
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        普段使いの問題
        低強度戦闘で使用頻度が高めなIFVはどうしてもMBTと比べて戦時の即応性が求められる
        30t台の場合だと空輸もできるが50tだとそうもいかない
        それに低強度戦闘の場合だと相手が重機関砲陣地を持ってるほうが稀だし防御への要求は小銃を防げる程度にしてるのが多い
        ただまあオーストラリアの使い方の場合は低強度戦闘よりはガチンコの殴り合いに持ってったあとに治安維持にも使う感じだからもうちょい装甲があった方がいいかも

        8
          • 匿名
          • 2021年 11月 19日

          最近は低強度紛争でも高強度な市街戦が行われる場合が多いし、その場合は14.5mmや機関砲の砲身をぶった切った「お手製バケモノ対物ライフル」で火点潰しを行う場合が多いので、相応の装甲が無いとキツいかと
          というか、14.5mm全周対応は昨今の重装甲車ではマストかと

          2
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      リンクスはそもそもモジュール化された戦闘車両で、顧客の要望に応じて
      様々な運用形態に対応出来るのが売りだ
      その中で増加装甲パッケージを装着して最も重防御のマシマシ仕様にすれば
      50トンになるってだけだ
      それでもIFV仕様だと基本戦闘重量は44トンだけどな、砲塔無しのAPCモデル
      なんかはもっと軽い

      9
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    急遽採用したってなっているけどKF41リンクスは登場時からゴム製履帯履いていたはず。

    9
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    レッドパックもベース車のK21の履帯をつけるパフォーマンスが始まるんじゃないか
    レッドバックは42トン、K21は25トンだから履帯が持つかどうかわからないけど

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ゴム製履帯の接地面ってツルツルなんだけど、整地走行では抵抗少なそうだし
    振動もなさそうだけど、不整地でのグリップってどうなんだろう?
    傾斜面で横滑りとかしないんだろうか?

      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      ゴムより金属のほうが表面硬くてツルツルなんですがそれは……

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 18日

        不整地の場合、表面の摩擦力でのグリップより硬さによるツメ立てのグリップの方が重要なのでは?

        4
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ソーシーの既製品を採用するだけなら30t台制限でどうにでもなる
    付加装甲で制限超えるならラバーバンドで実用不能なのはレッドバックも同じ事
    てか最初からパッシブ盛り盛りでなくAPS使って軽量化からの最悪重量化って方向性なのは外観でわかるし豪軍の要求外の仕様にすぎないと思うが

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ゴム履帯に履き替えなんてそりゃ出来るだろとしか…

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      履帯の中の輪転が対応しているかどうかという問題があるからどの金属履帯車両でもゴム履帯に履き替えできるというものでもない

      2
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    豪州国内は乾燥帯の岩石砂漠が中心だし乗り心地に直結する履帯選びは慎重になるよね。この時期になって突然メーカーが「ゴム履帯もOKです!」って言ってくるのは意味合いとしては「装着はできました」「ちょっとなら走れます」程度のニュアンスのような気もしてすごい怖いけど。MBTの金属履帯に履かせるゴムパッド並の寿命しかないことに後で気づいて訴訟沙汰になるんじゃないの?(偏見)

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      ゴム履帯のほうが金属履帯より強度弱くて寿命が短いことなんて当たり前すぎて訴訟沙汰なんかにならんでしょ
      装甲車どころかホバークラフトのゴム足でさえ登場したときから消耗率がデメリットとして言われ続けていたぐらいなのに

      その上でラインメタルは従来の金属履帯を、レッドバックはゴム履帯をはかせていたけどオーストラリアは寿命や耐久性より乗り心地や総重量などを理由にゴム履帯のほうが良いと思っているみたいだから、ラインメタル側も実証データ付きでゴム履帯も装着可能ということを示しただけの話であって

      12
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

     評価テストが終わった後にメーカー側がゴムの履帯もつけられますって言っても意味無いんじゃないかな?

     

    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ゴム履帯といえばM3ハーフトラックが有名(厳密には鋼製ガイドをゴムで挟んだハイブリッド)だけど、ここのコメントにあるように現代でもなかなか難のあるゴム履帯を、10トン未満の車両であるとはいえ当時それも戦時下に供給し続けたんだから、改めてアメリカは凄かったんだなと思い知る。

    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    そもそもオーストラリアって自国にしろ、出かけるにろ、装軌車両が必要なのかね?
    ヘビー級の戦車とかなら装輪車では使えないが、何を求めて、どんな任務をするつもりなんだろうな。

      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      それ世界中の歩兵輸送の装軌採用している国に必要ですかって言ってるようなもんだぞ。オーストラリアがどこにメリット感じてるんだと明確には言えないが、農作業レベルですらタイヤとキャタの差を感じるんだから必要だとは思うがね。

      4
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    ゴムの履帯はコンバインみたいに一体型なのか、ゴムのピースを繋ぎ合わせた物か気になる。

      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      ゴム履帯は基本一体物だと思う。ピース毎だと結局金属棒で繋げる必要出てくるから価格面や重量面で不利になるだろうしね。SOUCYのリペアを見る限りだと完全切断では無く履帯面が部分的に繋がった状態で直しているから完全切断だと直せるのかね。建機辺りだと切れた部分を寄せてワイヤーで繋げるとかするみたいだけど。

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 18日

    日本の次期装軌は金属・ゴムどっちにするんやろうな。両方使えるってのは何気にメリットだよな、火山噴火への備えも含めての金属履帯。都市部でのゲリコマならゴム履帯も有りだし。話はちょっとそれるが、どうですか諸岡さん世界初のゴム製クローラー作ったメーカーとしてブリジストンと再度協力して軍用ゴム製履帯市場狙ってみては。

    今回のSOUCY TRACK SYSTEM見る限り履帯外周と内周の凸部分重なり合うように出来ていてソコが1番厚く凸と凸の間は厚みが無くて強度的にどうかなとは思う。素人考えだと外周と内周の凸部分をずらし1部オーバーラップさせて厚みを増すようにする方が薄い部分に負担掛からないと思うんだけどね。

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 19日

    ゴム製履帯に変えるとどれくらい軽くなるんだろう?

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 19日

      金属履帯の一片が数十kgのダンベルみたいなものだからなぁ

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