インド太平洋関連

なぜ豪州は生産ラインが閉鎖されたF-22A再調達にこだわるのか?

豪メディアは22日、オーストラリアが第5世代戦闘機F-22Aラプターを手に入れられる可能性について再度言及した。

参考:Startling Raptor availability raises the question, please sir, can we have some more?

オーストラリアがF-22Aラプター再生産に拘る理由はF-35の成功体験再現を狙っているからか?

豪メディアは昨年、生産ラインが閉鎖されているF-22Aを再生産する可能性について言及したが今年も同じような趣旨の記事が登場した。そもそもこの話は米議会が空軍に対しF-22の製造ラインの再構築して近代化を施したF-22Aを調達するのにかかる費用の調査を行うよう命じたことが話の根幹になっている。

空軍はF-22の製造ラインの復旧、サプライチェーンの再確立、熟練した生産要員の確保及び再訓練、旧式化したF-22の主要システム再設計などに掛かる費用を70億ドル~120億ドル(約7,600億円~約1兆3,000億円)と試算、近代化されたF-22の製造再開までに約5年程度の準備時間が必要だと議会に報告した。

さらに空軍は新たに製造されたF-22の機体単価(197機調達時)は約2億6,600万ドルでF-22再調達プログラムを実行するには約644億ドル(約7兆円)もの費用が必要になると指摘し、仮に同プログラムを実行すればF-35調達をキャンセルするか、次期戦闘機F-X開発を諦めるかを選択する必要があり米防衛産業にとってプラスにはならないと結論づけた。

出典:Public Domain アラスカのエルメンドルフ空軍基地所属のF-22

しかしオーストラリアは、日本とオーストラリアがF-22再調達プログラムに参加して194機のF-22を調達すれば機体単価を引き下げることが可能で、さらにファイブアイズの主要な同盟国(カナダや英国)にもF-22を輸出すればさらなるコストダウンも可能と言っており、日本は次期戦闘機「NGF(仮称F-3)」の代わりに英国は第6世代戦闘機「テンペスト」の代わりにF-22を調達しろと言う意味だ。

なぜここまでオーストラリアがF-22Aラプターに拘るのか謎だが、一つだけ思い当たるフシがある。

オーストラリアは将来的にF/A-18E/F後継機プログラムが必要なのだが、米国は第6世代戦闘機を輸出することを考えていないため他の方法で第6世代戦闘機を入手しなければならない。

そうなるとオーストラリアを受け入れてくれそうな第6世代戦闘機開発プログラムは英国の「テンペスト」しかないのだが、米国製で固めているオーストラリア空軍のインフラが活かせない問題とテンペスト開発に参加可能な技術力をもつ防衛産業企業がないという問題にぶつかってしまう。

出典:Public Domain

そこで渡りに船なのがF-22の再生産だ。

要するに第6世代戦闘機並にアップグレードされたF-22の再生産を米日豪+αの国で行えば、オーストラリア空軍は既存のインフラを活かせる米国製第6世代戦闘機(相当)を入手でき、オーストラリア企業はF-22サプライチェーン参加することで投資分を回収できると考えているのかもしれない。

このような意図があるのならオーストラリアがF-22Aラプターの調達に拘るのも理解できるが、流石にこれはオーストラリアのエゴが強すぎて実現性は0だろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by 1st Lt. Savanah Bray

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    ラプターの生産ラインが閉鎖される以前の話なら一考の価値有りだったけど今更何を言うって感じ。

    FX選定の最終段階で日米双方が民主党政権だったのがラプター採用の運の尽き。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    流石オーストコリア。
    勝手な理由で日本を巻き込むな、自分一人でやってろと言う感じだな。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    まずうちさぁ、F-3、作るんだけど…買ってかない?

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      F-3の具体的な計画はまだまとまっていないんですよね。
      自衛隊自体が

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      豪州は全然信用できない。
      売ってしまうと、中韓などに技術が流れる可能性が高い。

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      米国で開設さらたNGFの非公式フォーラムに、オーストラリアも入っているよ。
      ちなみに参加国は日米英豪の四か国。

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      F3はコロナ渦の影響で実現の見通しが消えたからムリ

        • 匿名
        • 2020年 5月 25日

        希望を事実として語るのは君の悪い癖だぞ?

        1
        • 匿名
        • 2020年 5月 25日

        願望や妄想を書き込んで恥ずかしくないの?

        3
      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      F-3、作るんだけど買っていかない?!は?日本にそもそも戦闘機を作れる技術があんのかよ(笑)第五世代戦闘機すら作れないのに中国以上に技術力劣ってるぞ、

      1
        • 匿名
        • 2020年 5月 25日

        その作れないと断定する根拠は何?
        まさか「アメリカ製以外は第五世代と認めない!」とか、そういう類か?

        2
        • 匿名
        • 2020年 5月 25日

        釣りならもう少し上手になりましょう。
        本音ならもっと勉強しましょう。

        3
      • 七面鳥
      • 2020年 5月 25日

      F-3はいい案なんだけど。
      オーストコリアはレッドチームに情報売るからなぁ……

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      あ^〜イイっすね^〜

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    部品製造や製造ラインへの関与など一定の発言権を得るには50%未満、30%以上の投資が必要でしょうから、初期で20億ドル以上、プログラム全体で200億ドル以上の投資を求められるでしょうね。
    それだけの投資に見合うのは貴ブログの記事にもあるように英連邦各国やNATOへの輸出が成立することが前提ですが、EUの第六世代機開発が頓挫しない限りありえないでしょう。

    F-35のような生産分担をF-22近代化でも獲得したいのでしょうが、F-16VとF-35で事足りる状況では妄想以外の何者でもないでしょう

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      >一定の発言権を得るには50%未満、30%以上の投資が必要でしょうから

      何を言っているんだ、この人は。

      ちなみに、F-22の時の出資割合は以下のとおり。「決定的」な発言権を持つイギリスでさえ、出資は10%程度だよ。

      Level-I (出資割合10%程度) :要求性能に対し決定的な発言権を持つ – イギリス
      Level-II (出資割合5%程度) :要求性能に対し限定的な発言権を持つ – イタリア、オランダ
      Level-III(出資割合1-2%程度):開発資料に対するアクセス権を持つ – オーストラリア、カナダ、デンマーク、トルコ、ノルウェー

        • 匿名
        • 2020年 5月 25日

        F-35の出資比率の話は存じていますが、決定的な発言権を持つはずのイギリスにもF-35のソースコードは非公開です。

        よって10%の出資ではオーストラリアの望むものは手に入らず、3割くらいは出さないとどうにもならないと判断しています。

        1
          • 匿名
          • 2020年 5月 25日

          3割以上の根拠は何なの?

          • 匿名
          • 2020年 5月 25日

          ここでは、発言権の話をしているのであって、ソースコード開示の話ではないんだけど。

            • 匿名
            • 2020年 5月 26日

            ご指摘の通りイギリスはJSFコンソーシアムへ10%・20億ドルの出資で
            (1) 設計に関わる決定的な発言権
            (2) 開発、生産に関わる下請けの割当権

            の2つを持っています。(2)の件は失念しておりました点をお詫びします。

            ただ、イギリスにはBAeシステムズやF-35Bリフトファンを開発・生産するロールスロイスなど、航空機に実績のある企業が存在しますが、オーストラリアにはイギリスに匹敵する技術を持った航空産業は存在しないため、イギリスと同程度の出資比率では大したウマミは得られないでしょう。

            50%超の出資ではアメリカ側の発言権が少なくなってアメリカのメリットはないですし、日本を引っ張って来られればというオーストラリアの皮算用で50%弱の出資の半分程度を負担すればいいので30%程度としました。

            ただ、アメリカとしてはオーストラリアに全額出資させて、製造はアメリカ国内で実施、一定数のモンキーモデル機体をFMSで購入させる、という足元見まくりの契約にする可能性が高いと思いますが。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    今からでも自分で要素技術の獲得に励めばいいじゃない
    次世代機の更新までに間に合わないかもしれないけどそれは自業自得でしょ?
    他国の技術を勝手にアテにして他国を自分勝手に巻き込むのは朝鮮人の始まりですよ

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      さすがにとうの昔に研究してると思うぞ。
      そして自力では無理と判断したからこそだと思う。
      まあ、F-22も無理筋だとは思うが。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    オーストラリアが拘ってたの、F-22ではなくFB-22では?

      • 匿名
      • 2020年 5月 24日

      真面目な話イスラエルは今でも豪州以上にf22を導入したいと願っているでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    テンペストかNGFを購入でいいのでは?

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    信用も無い奴がF22とB21を売れなどと身の程知らずがアホか
    減価償却の為に日本もF22を買えなどと何様だ

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      ファイブアイズの一つなんだから信用はあるのでは?

      4
    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    あれ、F-111Cの後継はF-35Aで
    F-35Aが遅れたから、繋ぎでFA-18E/Fを購入って流れだったのでは?
    F-35Aを買う予定だっただから無問題では?
    オーストコリアはインドネシア・仮想敵国対策で、欲しいのは戦闘爆撃機なんだから、どっちも変な選択だったんだよね
    マルチロールではあるけど、航続距離+増槽がダメ FA-18E/Fはプアなエンジンだし
    何故に、繋ぎで(あるいはF-11Cの後継としてF-35Aでは無く)F-15Eを買わなかったんだろう? 彼らの要求にドンピシャ。

    1
    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    まだオーストラリアが開発費出してJSFの技術ベースでF-22サイズの機体作った方が安く上がるんじゃあないですかね?

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      LMが日本に提案した際のLMの見積りは、
      70機生産で1機240億円
      140機生産で1機210億円
      そして、高過ぎると日本はLM提案を却下しています。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    獲らぬたぬきの皮算用、とはちょっと違うか。妄想には違いないが。
    そろそろ現実見よう。
    F35売ってもらうか、テンペスト開発に参加するか、今からでも真面目に航空産業を育てるか。
    イギリスだって勝手が違うアメリカ製のF35を運用してるのだから、わがまま言ってないで慣れろ。

    • 匿名
    • 2020年 5月 24日

    こういう事例を見るにつけ、高かろうがなんだろうが国産することに意味があると分かるはず
    国産否定派ってこういうマイナス面には決して目を向けようとしないから困りもの

    • 匿名
    • 2020年 5月 25日

    現実的な案だと思うけどね
    実現性皆無なNGFなんかに無駄金使うよりいつも通りアメリカの機体買った方がマシ
    そもそも日本はコロナ渦でそんな夢物語言ってる余裕無いだろうに

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      そもそもLMが日本に一旦提案して、その後撤回したような案ですから、無理ですね。

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      現実的って…
      オーストラリアにとって都合が良いと言うだけで、アメリカにはデメリットの方が大きい。
      当事者たるアメリカがそう判断していると言うのに、一体どこら辺が現実的なの?

      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      経済が落ち込んでいるからこそ日本国内に金を循環させるべきでは?
      国内経済を犠牲にしてアメリカに金を払うとか愚の骨頂では?

      1
      • 匿名
      • 2020年 5月 25日

      あなたの言う現実はあなたの頭の中にしか存在しないのではありませんか。
      もしそうならあなたは統合失調症の疑いがあります。

    • 匿名
    • 2020年 5月 25日

    コロナ禍を被ってなお余裕のある国ってどこですか
    脳内祖国?(゚∀゚)

    • 匿名
    • 2020年 5月 25日

    日本が対米交渉中に共闘しようって呼びかけなら歓迎したんだろうけど。
    F-22の生産ラインが閉じて、F-35の配備も始まった今になって、そんな事を言われてもな。
    アメリカだけじゃなく、日本としても困惑せざるを得ないだろう。

    • 名無し
    • 2020年 5月 25日

    日本が開発するF-3の輸出仕様をオーストラリアは買いなさい

    • 匿名
    • 2020年 5月 25日

    こいつ五毛党の工作員じゃない?

    • 匿名
    • 2020年 5月 26日

    いや、F/A-18E/F使っとけよ

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    オージーはF-21って改名された戦闘機買うのが堅実だと思うよ
    それかF-15SEか
    オーストラリアはそれより潜水艦で金掛かるから次世代機とか、F-22みたいな金食い虫の戦闘機は無理でしょ

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