インド太平洋関連

オーストラリア、SM-2IIICとSM-6の取得に約7,000億円を投資すると発表

オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は22日「国益と国民を保護するため海軍向けのSM-2IIICとSM-6の調達に70億豪ドル=46.8億ドル(約7,000億円)を投資する」と発表、具体的な取得数量は明かされていないものの最低でも数百発レベルになるはずだ。

参考:Safeguarding Australians with boost to air and missile defence
参考:Australia announces $7B for SM-2, SM-6 missiles in huge munitions purchase

オーストラリアのSM-2IIICとSM-6の取得規模は最低でも数百発レベルになるはずだ

オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は22日「国益と国民を保護するため海軍向けのSM-2IIICとSM-6の調達に70億豪ドル=46.8億ドルを投資する」「これにより海軍は海上、空中、陸上の目標を長距離から攻撃できるようになり、弾道ミサイルに対する終末段階での迎撃能力も獲得する」と発表、米ディフェンスメディアもオーストラリアの巨額な投資に注目している。

出典:U.S. Navy photo/Released

どれだけのSM-2IIICとSM-6を取得するのかは対外有償軍事援助=FMSを管轄する国務省の承認結果を見るまで分からないが、SM-2IIICはSM-6向けのアクティブシーカー(元々はAMRAAMのアクティブシーカー)を組み込むことで「ミサイルの脅威に対する対処能力が大幅に向上した」と言われており、SM-6BlockIBは終末段階における弾道ミサイルの下層迎撃に加え、陸上や水上の目標を攻撃することにも使用でき、最大到達速度もマッハ5を超える=極超音速域で飛翔するため、目標まで低空を亜音速で飛行するトマホークと異なる攻撃アプローチを水上艦艇に提供してくれる。

米陸軍が再取得を進めている長距離攻撃能力に含まれるMid-Range Capability missile system(中距離ミサイルシステム=Typhon Weapon Systemのこと)もトマホークとSM-6を運用する予定で、トマホークに比べてSM-6は目標到達までの時間が短く「一刻を争う目標の攻撃に適した攻撃手段」といったところだろう。

出典:Photo by Darrell Ames

因みに国務省が2022年10月に承認した日本向けSM-6×32発の推定売却額は関連費用込みで4.5億ドルだったため、1発あたりの取得費用は1,400万ドル(SM-6の単価ではない/取得数量が増えれば1発に上乗せさせる関連費用の額は低下する)になり、SM-2IIICのFMS売却はこれまでに実例がないため取得費用の計算は不可能だが、オーストラリアのSM-2IIICとSM-6の取得規模は最低でも数百発レベルになるはずだ。

追記:米陸軍はTyphon Weapon Systemの海外展開を通じて「システムサイズの関係から運用地域が限られる」という点を問題視し、サイズや重量の小型化を示唆しているが、具体的にどうなのかは今のところ不明だ。

関連記事:豪国防省が200発以上のトマホーク購入を正式発表、ホバート級で運用
関連記事:米陸軍の長距離攻撃能力、タイフォン・システムをフィリピンに一時配備
関連記事:米陸軍のタイフォン・システム、訓練目的で一時的に日本へ移送される可能性
関連記事:米陸軍、2024年にタイフォン・システムをインド太平洋地域に配備予定
関連記事:LM、米陸軍にMK.41を流用したタイフォン・ウェポン・システムを納品
関連記事:米陸軍、トマホークとSM-6を流用してロングレンジウェポン開発に着手

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo/Released

米国防長官が表明した画期的な軍事支援、ウクライナ防衛産業界への直接投資前のページ

急速に向上したウクライナのドローン開発能力、適応を迫られる米企業次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    対日従属した韓国安保!日本が韓国軍のF-35整備を拒否する『屈辱的』な状況を恐れる

    今年の2月、韓国国防部傘下の防衛事業庁が「韓国もF-35の整備国に選ば…

  2. インド太平洋関連

    韓国、主力戦車「K-2」への国産パワーパック採用を事実上断念か

    主力戦車K-2の3次量産を控える韓国では変速機を製造するドイツ企業の横…

  3. インド太平洋関連

    主権の侵害を主張するベトナム、南沙諸島で台湾が潜水艦訓練を実施したことに抗議

    ベトナム政府の報道官は18日、台湾海軍が南沙諸島付近の海域で潜水艦訓練…

  4. インド太平洋関連

    タイ海軍、イスラエルからヘルメス900×7機を1.2億ドルで導入

    タイ海軍は海上監視と戦術的任務の強化・支援のためヘルメス900を導入す…

  5. インド太平洋関連

    米国による露骨な牽制、T-7Aレッドホークに韓国製T-50訓練機の潜在的需要が奪われる?

    韓国メディアは開発中の第4.5世代戦闘機「KFX」開発だけでなく、韓国…

  6. インド太平洋関連

    インドネシア軍がトルコ製UCAVを調達、アジア諸国のAnka導入は3ヶ国目

    カザフスタン軍やマレーシア軍に続きインドネシア軍もトルコ製UCAV「A…

コメント

    • 無印
    • 2024年 10月 22日

    >約7,000億円
    この投資でSM-6生産ラインが増強されたら、日本もSM-6の取得がやりやすくなって良い話、なのかな?

    11
    • ku
    • 2024年 10月 22日

    ミサイルの使用期限ってどれくらいのものなんだろう

    3
    • ななし
    • 2024年 10月 22日

    47億ドルが7000億円とか円安すぎ

    8
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 10月 22日

    SM-6の生産予約枠の奪い合いになるんですかね

    4
    • イーロンマスク
    • 2024年 10月 22日

    オーストラリアは近場に敵国が無いのが幸いですね
    中国からICBMが飛んでくるとしても数が少ないでしょうから数百発もあれば防げるかもしれません

    4
    • hiroさん
    • 2024年 10月 22日

    日本の32発は試射用?

    • 58式素人
    • 2024年 10月 23日

    ”オーストラリアのSM-2IIICとSM-6の取得規模は最低でも数百発レベルになるはずだ。”
    羨ましいと言うべきか、日本は何をしているのだ、と言うべきか。
    同じ?脅威に対して準びを進めているはず、と思うのだけれど、
    ある意味、差をつけられているように見えるのは残念。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP