インド太平洋関連

豪州が改良もがみ型フリゲート3隻の建造契約を締結、もがみ覚書にも署名

豪国防省は18日「オーストラリアが汎用フリゲート(もがみ型の能力向上型)3隻の建造契約を締結した」「今回の契約締結に際し、マールズ副首相兼国防相と日本の小泉進次郎防衛相が『もがみ覚書』に署名し、汎用フリゲートの確実な引き渡しと防衛産業協力に関するコミットメントも再確認した」と発表した。

参考:Australia locks in delivery of our first three general purpose frigates

個人的には今回の契約を通じて三菱重工業がオーストラリア側にどのようなオフセットを約束したのかに興味がある

アルバニージー政権は海軍再編に関する分析結果を2024年2月に発表、この報告書は政府に「水上艦戦力を2倍に増やせ」と求めており、具体的にはハンター級フリゲートの取得数を9隻→6隻、アラフラ級哨戒艦の取得数を12隻から6隻に削減し、有人運用も可能な大型無人艦(6隻)と汎用フリゲート(11隻)を取得するよう勧告。アンザック級フリゲートの後継艦を想定した汎用フリゲート取得は「Project Sea 3000」や「GPF Project」と呼ばれており、三菱重工業は2025年8月にフリゲート艦入札の優先交渉者に選ばれた。

豪国営放送のABC NEWSも当時「三菱重工業は100億豪ドルのフリゲート艦建造契約を巡る入札でライバルのTKMSを破って勝利した。ABC NEWSは政府が昨夜、Project Sea 3000の勝者にMEKO A-200ではなくもがみ型を選択したことを確認した。政府はフリゲート艦の能力のみに基づいて決定を下したと主張しているが、日本は両国間の戦略的・防衛的関係の深化を重視し「契約獲得に向けたロビー活動」を行ってきたため、今回の決定は膨大な政治的リソースを投入してきた日本にとって大きな勝利であり、海外での建造経験のない三菱重工業に対する信頼の現れだ」と言及。

リチャード・マールズ副首相兼国防相も本決定について「オーストラリアと日本の関係において非常に重要な出来事だ」「日豪間で締結された防衛産業に関する協定の中で最大のものになる」「日本にとって過去最大の防衛輸出になる」と述べ、ABC NEWSは日本勝利の要因に「日本向けに建造しているフリゲート艦をオーストラリアが先に受け取れること」「この選択を米国が支持したこと」を挙げ、三菱重工業はフリゲート建造契約に関する優先交渉権を獲得し、年内の契約締結に向けてオーストラリア当局との交渉を行うと報じられていた。

出典:Australian Defence Force/Jay Cronan

小泉進次郎防衛相は3月下旬から4月上旬にオーストラリアを訪問し、マールズ副首相兼国防相と会談する予定で、産経新聞は3日「オーストラリアが新型フリゲート艦に選定した海上自衛隊の最新鋭護衛艦=FFM(もがみ型の能力向上型)導入に向けた契約を締結する見通しだ」「契約締結に向けた事務的な作業は3月末までに終了する見込み」と、豪ディフェンスメディア=Defence Connectも9日「日本の報道によれば小泉防衛相が3月下旬にオーストラリアを訪問してマールズ副首相兼国防相と会談し契約に署名する予定だ」と報じていたが、豪国防省は18日「汎用フリゲート3隻の建造契約を締結した」と発表。

“アルバニージー政権はより大規模で強力な水上戦闘艦隊の実現に向けた大きな一歩を踏み出し、オーストラリア初となる汎用フリゲート3隻の建造契約を締結した。三菱重工業によって建造される汎用フリゲートは日本の改良もがみ型フリゲートの設計を採用し、1番艦は2029年にオーストラリア海軍へ引き渡される予定だ。アルバニージー政権は日本政府および防衛産業界と緊密に連携しており、政府が掲げる継続的な海軍艦艇建造の公約に沿ってヘンダーソン防衛特区の統合を条件とし、4番艦以降は西オーストラリア州で建造される予定だ”

出典:Australian Defence Force/Jay Cronan

“国防省は日本の防衛産業および海上自衛隊と協力し、オーストラリア産業界と労働者の支援を受けながら国内で改良もがみ型フリゲートを維持・運用するための初期能力構築を進めている。改良もがみ型フリゲートは、最大1万海里の航続距離と32セルの垂直発射システム(VLS)を備えている。艦対空ミサイルおよび艦対艦ミサイルを搭載し、92名のオーストラリア海軍将兵が乗艦するほか、同海軍のMH-60Rの運用能力を有する”

“今週発表された2026年統合投資計画において、政府は今後10年間で汎用フリゲートに最大200億豪ドルを投資することを確約した。今回の契約締結に際し、マールズ副首相兼国防相と日本の小泉進次郎防衛相が「もがみ覚書(Mogami Memorandum)」に署名し、オーストラリアの汎用フリゲートの確実な引き渡しと防衛産業協力のさらなる深化という日豪両政府の共通コミットメントを再確認した。今後20年間でヘンダーソン防衛特区における汎用フリゲートの建造を含め、西オーストラリア州の防衛能力に数百億豪ドルが投資され、約1万人規模の高度な熟練雇用が創出・維持される見通しだ”

出典:Australian Defence Force/Jay Cronan

マールズ副首相兼国防相も「改良もがみ型フリゲート導入はオーストラリア国民の安全を守るために必要な能力への投資を重視するアルバニージー政権の姿勢を示すものだ。我々の水上艦隊の重要性は過去数十年間のどの時期よりも高まっている」「これらの汎用フリゲートは、より大規模で強力な水上戦闘艦隊の一部として我が国の海上交通路と北部接近経路の安全確保に寄与することになる」と言及

コンロイ防衛産業相も「これは平時におけるオーストラリア海軍史上最速の調達となる。我々は世界で最も先進的と言っても過言ではない汎用フリゲートを導入するにあたり、日本およびオーストラリアの産業界のパートナーと緊密に連携している」「我々はこれらの公約を迅速に実行に移し、オーストラリア国民の雇用を創出して国内の産業基盤を強化していく」「最初の3隻は日本で建造される」「その後、継続的な艦艇建造とFuture made in Australia(オーストラリアにおける未来の製造業)という政府の公約に沿って国内建造へと移行していく予定だ」と言及した。

豪国防省の話を要約すると「オーストラリアと日本の間で『汎用フリゲート取得のための実務的な建造契約』と『これを後押しする政治的な覚書』が交わされた」という意味になるが、まだ実務的な建造契約=三菱重工業と締結した法的強制力が伴う商業契約の内容については明かされておらず、統合投資計画の中で言及された汎用フリゲートへの投資額は10年間で150億豪ドル~200億豪ドルであり、今回の契約は日本で建造する3隻分をカバーした契約なのだろう。

個人的には今回の契約を通じて三菱重工業がオーストラリア側にどのようなオフセットを約束したのか、150億豪ドル~200億豪ドルの投資に対して何十%(国際的には契約額の50%~100%が一般的)を相殺するのか、その手段が何になるのかについて関心がある。

関連記事:もがみ型フリゲートの豪州輸出、4月上旬までに正式契約を締結する見込み
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※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊

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コメント

  • コメント (12)

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    • イーロンマスク
    • 2026年 4月 18日

    ともかくめでたい🎉
    自分はオーストラリアでの建造が一番の不安要素ではあるが、うまく行くなら良いし、国内での増産から設備増強が進めばもっと良い
    長崎造船所は色々あったけど頑張った甲斐があった

    59
      • ごはん
      • 2026年 4月 18日

      上手く行くか行かないかの問題じゃない、上手く行かなきゃ駄目なんだよ。
      オーストラリアは艦艇の建造分野は不得意だが日本が不得意の無人機分野では文句無しの世界トップクラスの国なんだよ。
      今回の契約は単なる日本初の大型武器輸出じゃない。
      造船と無人兵器、お互いが不得意な分野をカバーしあい日豪の安全保障協力を一層と深める重要な第一歩なんよ。

      46
      • nachteule
      • 2026年 4月 19日

       三菱的には現地での生産に関して支援出来る事が幾つかあると思うし以下に示す。

      ・IE(Industrial Engineering)分析をベースとした、作業動作や、現場作業者の位置を計測する技術を組み合わせたプロセス改善技術

      ・拡張現実(AR:Augmented Reality)を用いた作業指示・検査支援

      ・オペレーションズリサーチ・機械学習等を用いた知能化システム(スケジューラ、製造実行システム等)

      ・NEDOによる懸賞金活用型プログラムにおいて2位になった、「製造業の暗黙知の形式知化」に関する提案

       特に最後のは TIG溶接技術を題材に、熟練者と非熟練者の作業差分を自動解析する新アプローチを提案、製造現場における暗黙知の形式知化を実現し、技能継承の効率化や生産性向上に寄与するとかあるので、これが正常に機能すれば国内外問わず潜水艦レベルの溶接に関しても大きく建造に寄与すると思うし、別作業に関しても改善が期待出来る可能性があるんだよね。

      3
    • たむごん
    • 2026年 4月 18日

    オーストラリアさん、これからもよろしくお願いします!
    もがみ型改の輸出実績、日本の防衛産業にとって、素晴らしい門出になりましたね。

    オーストラリアは自動車生産する工場がなくなっており、製造業の雇用が課題の一つなんですよね。
    三菱重工単独だけでも、ものすごく幅広い事業領域を取り扱う超巨大企業ですから、オーストラリアがどういったオフセットを望んでいるのか気になる所です。

    23
      • u
      • 2026年 4月 18日

      オージーが欲しそうなオフセットで軍事技術と言ったら、やっぱりレーダー技術かなぁ
      民生品で三菱重工がオージーに提供するならプラントだろう。オージーの資源でやるとなったら天然ガス化学プラントになるのかね?

      10
        • たむごん
        • 2026年 4月 18日

        ほんと何がいいでしょうかね?産業に厚みがあると、こういう時のメニュー作り強いですね。

        天然ガスのプラントもいいですね、LNGを長期契約できればWin=Winさらに深められるでしょうし。

        10
    • aaa
    • 2026年 4月 18日

    MHI建造分からトマホーク運用能力を持たせるんでしょうか・・・気になります。

    1
      • nachteule
      • 2026年 4月 19日

       運用するなら戦術トマホーク武器管制システム(TTWCS)が必須で契約上は後2基は余る計算だけど、米国からのトマホーク提供期待出来るのかな?

       現状改もがみ型に載せるなら、32セル中の半分は07式で24式12発、ESSM16発位の搭載になるんじゃないかな。トマホークの入り込む余地はない。別に8-16セル追加しないと無理だと思う。

      3
    • hogehoge
    • 2026年 4月 18日

    オーストラリアのCCAやUSVなんかには投資したいな
    西側で一番形になってるし、オフセットでも投資チャンスあるならそこに参画できれば更に利益になる

    4
    • のー
    • 2026年 4月 18日

    オフセットは事実上の値引きですから。
    気になりますね。
    あまり多額だと結局は儲からない。
    最初だから戦略価格的な条件なんでしょうね。

    3
    • 名無し
    • 2026年 4月 18日

    NAVAL NEWSによると当初のプログラム費用から倍増(150-200億豪ドル)し、さらに最初謳われていた極力変更なしという方針から外れ、アメリカとヨーロッパの武器システムを搭載予定とのこと。これがただの武装変更ならいいのだがそうでないなら…。

    2
      • バーナーキング
      • 2026年 4月 19日

      「極力変更なし」は大幅な再設計を要する(特に物理的な)独自仕様を要求しない、という話なのでMk 41に収まるESSMやNSMの統合は最初から想定通りかと。

      5

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