米国は空対空ミサイルの射程距離ギャップを解消するため長射程のAIM-260を開発中で、米海軍は2026年に調達を開始する予定だが、Naval Newsは28日「まもなくAIM-260の初輸出が承認される」と報じ、オーストラリアはAIM-260を手に入れる初同盟国になる見込みだ。
参考:USA Approves First AIM-260A JATM Export to Australia
まだ開発が完全に完了していないAIM-260Aのオーストラリア輸出は異例
ソ連は1980年代にR-33をベースとした長射程空対空ミサイル=R-37の開発を開始し、ソ連崩壊後の1992年にMiG-31に搭載されたR-37が披露され、エリツィン大統領も1994年「R-37が304km先の空中目標を破壊に成功したこと」を祝福したが、R-37の誘導システムには独立したウクライナ製部品が多数使用されていたため「ロシア製部品のみで構成された誘導システムの開発」に着手、経済状況の停滞で開発は遅延したものの2018年にR-37Mの運用検証テストを完了して実戦配備され、この長射程空対空ミサイルはウクライナとの戦いで実戦を経験している。

出典:Andrei Shmatko/CC BY-SA 4.0
R-37Mは価値の高い空中目標=空中給油機、早期警戒管制機、指揮統制機を遠距離攻撃するためのものだが、英国王立防衛安全保障研究所は「ロシアはR-37M(飛行プロファイルによって射程は150km~398kmの間で変動する)を搭載した戦闘機をクリミアやロシア領の上空に飛ばし、ウクライナにおける8つの作戦地域をカバーしている」「この戦術は非常に効果的でR-37Mに狙われると回避するのが難しい」「MiG-31BMとR-37Mの組み合わせは遠距離から低空を飛行する目標と交戦できる」「実際に低空を飛行していたウクライナ空軍のSu-25(2022年7月)やSu-24(2022年10月)が撃墜されている」と報告。
ウクライナ空軍の戦闘機は高高度を高速飛行するMiG-31MBに対して射程、高度、速度の全てが欠けており、R-27でMiG-31MBに対抗すると命中まで目標をレーダーで照射しなければならず、ウクライナ人パイロットも「R-37Mによって友軍機が撃墜された例は多くないものの、MiG-31MBによるR-37Mの発射はパイロットに任務放棄と回避行動を強制する」と述べており、長射程空対空ミサイルは目標に命中するかどうかに関わらず「敵戦闘機の運用を制限できる」と証明した格好だ。

出典:中国航空工業集団
中国もAIM-120の射程を大きく上回るPL-15(推定射程200km)の実用化に成功し、より大型のPL-17やラムジェット推進を採用したPL-21の開発も確認され、米国も「PL-15の脅威が本物だ」と認識して2017年頃から対抗策を検討、米空軍は2019年「Lockheed MartinがAIM-120の射程を上回るAIM-260 JATMを開発中だ」と明かしたが、このプログラムは徹底的な秘密主義の下で進められているため「AIM-260はAIM-120と同寸法」「AIM-120を上回る射程」「AIM-260は空軍と海軍との共同プログラム」「2022年までに初期作戦能力を獲得」ぐらいしか情報がない。
War Zoneは2021年「米空軍はQF-16を使用したAIM-260のテストを2020年に30回以上実施している」「これだけテストしても『AIM-260を搭載した機体』の目撃談や写真が一切出回らないのはAIM-260の外観がAIM-120と似ていて区別がつかないからだろう」「AIM-260はAIM-120の寸法を維持するためPL-15と同じデュアルパルスロケットモーターを採用している可能性が高い」「誘導装置や弾頭など推進部以外の部分を小型することで推進剤の容量も拡張しているはずだ」と指摘していたが、米海軍が2026会計年度予算でAIM-260Aの調達を開始することが判明した。

出典:NAVAIR
米海軍は2025年2月にAIM-260のレンダリング画像を公開、War Zoneの取材に応じた米空軍は「このレンダリング画像は本物だ」「まだ高解像のレンダリング画像は公開できない」と述べ、米海軍は2026会計年度予算案の中でAIM-260調達に3億900万ドル(調達数は不明)を要求し、逆にAIM-120の調達には5,900万ドル(51発分)しか割り当てられておらず2025年の調達量と比べると1/3以下だ。
米空軍の高官は10月末「まだF-22やF-35への統合問題でAIM-260Aの運用を開始していない」「予定していた初期作戦能力の獲得時期は過ぎてしまったものの計画を順調に進んでいる」「空軍の戦闘機で最初にAIM-260Aを運用するのはF-22だ」と明かしているため、AIM-260Aの統合や運用に関して「米海軍は米空軍よりも先行している」「F/A-18E/FはF-22やF-35よりもAIM-260Aの運用開始に近い位置にある」となり、Naval Newsは28日「オーストラリアへのAIM-260輸出がまもなく承認される」と報じた。

出典:Gen Mark Kelly
“米議会に提出された予備文書によれば国防安全保障協力局は9月にオーストラリアへのAIM-260輸出の可能性について通知された。Naval Newsが閲覧した取引の概要を示す文書にはオーストラリア向けとしてAIM-260A×450発が含まれ、関連費用を含めた契約総額は26億ドル(防衛装備品以外の費用も含めると31億ドル)で、1発あたりの取得コストは約580万ドルになる”
“オーストラリアはAIM-260Aの初期バッチを2033年第3四半期に受領する予定で、この取引について国防安全保障協力局、国務省、議会は特に抵抗していないため今週中に最終承認が行われる見込みだ。まだ開発が完全に完了していないAIM-260Aのオーストラリア輸出は異例なものだが、Naval Newsの取材に応じた米当局者は「FMS承認プロセスの変更や米国と最も近い同盟国との関係性を踏まえればAIM-260Aのオーストラリア輸出は成立する可能性が高い」と明言した”

出典:Australian Defence Force/ACW Nell Bradbury
“IM-260A輸出に関しては複数の国から問い合わせがあるものの具体的な国名は不明だ。基本的にAIM-260Aの輸出判断はケースバイケースだが、AMRAAMの最新バージョン=AIM-120D-3売却を承認されている国はAIM-260A輸出が承認される可能性が高い。但し、オーストラリア向けの承認・納入スケジュールに他の国が追いつくのは難しく、この優先順位はトランプ政権の政策や同盟国が直面している脅威に基づいて判断され、特にインド太平洋地域の同盟国の優先されるだろう”
因みにNaval NewsはAIM-260Aの射程について「AMRAAMを大幅に上回る」「AIM-260Aの最大到達距離は200km~320kmと達すると予想されている」と述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force/SGT David Gibbs





















日本の長距離AAMは手っ取り早く中SAM改/A-SAMの空発型かな
AIM-260がようやく実戦配備に入りそうなのは喜ばしいけど輸出版は一発580万ドルですか…(;・∀・)
アメリカはスパローからAMRAAMにした時に射程の延伸より携行弾数の増加に舵を切って弾体を細くしてしまった。で、相手がスパローと同じ太さで射程を伸ばしてきたと。
当時はステルス化で交戦距離が伸びないと考えたんだろうか?
「AIM-260Aの最大到達距離は200km~320kmと達すると予想されている」と言っても同じアプローチをより太いミサイルでされたら当然上を行かれるわけで、兵器倉の容積を変えられない以上解決出来ないんじゃなかろうか。
いっそのことNSMサイズでAAM作るとか。
AMRAAMの何が良いかってF-16みたいな小型機でも1,2,3,7,8,9の兵器ステーションに6発も積めるんですよね。スパローなら3,7の2発だけ。
例えばより大きく重い射程の長いミサイルを作ったところで相応に装備数は減ってしまい場合によっては母機の機動に制限が掛かります。
でもアウトレンジ出来るなら良いじゃん?と思うかもしれませんがBVR戦闘では、相手がミサイルを撃つと撃たれた側はとっとと逃げるので実は全然命中しません。
この辺はとにかく長距離から撃って優位を取るvs数で柔軟性を取るのドクトリンの違いなのでどちらが良いかは一概には言えませんね。
ただ最近の中国のミサイルの傾向(ロケットモーターで射程より加速優先、フィンを折りたたんで搭載量増加)を見ると、米軍寄りになってるんじゃないかなぁとは思います。
このあたりは航空劣勢を前提としてきたソ連と制空権確保を前提としてきたアメリカのドクトリンの違いで開発が明確に分かれましたね。
中国も生産力と技術の自信でアメリカのに接近したと思います。
まあどちらが良いのかはウクライナ戦争だけで測れないかと。
それまでの長射程ミサイルAIM-54の活躍状態や敵味方識別能力とか中間誘導ミサイル搭載のレーダー性能も全部絡んだ話だから。
その太いミサイルが出来たとして価格や、最大射程よりは戦闘機レベルサイズのノーエスケープゾーンがどれ位なのかの法が重要じゃないの?NSMサイズで作ったとして鈍重で軌道修正が容易でもなく低速な対空ミサイルが出来るなら意味があるのかと思うけど。
ボコボコに言われながらもなんやかんやで実績を残すロシアのR37M
今までで仮想敵の西側軍用機を撃墜したことは一度もないけどな…
対NATOだとレーダーや電子機器の性能差、早期警戒管制機等航空戦力の差で役に立たない可能性も十分にある
米「特別に先にわけてやるから、ちょっと中国機相手に撃ってみろよ」>豪
みたいなw。まあ豪州機が中国機を撃てるような空域には行けないでしょうけど。
F-16/18みたいなレガシー機には簡単にフィッティングできても、F-22/35みたいなのには、膨大なソフト書き直しが入って簡単には使えないのでしょうねえ。
弾道ミサイルにしろ対空ミサイルにしろ中露に負けてねえか?
・AIM-120の日米共同生産の話はどこまで進んだのか?(R8概算要求の資料に「AIM-120の国内製造基盤整備に係る基本検討に着手」(2025.8.18)とあるので進める気はあるのだと思う)
・1月に発注した1200発の1部は国内製造可能なのか?
・記事を見る限り、米軍の今後のAIM-120の追加発注は限定的なのか?(51発の予算要求が今回限りなのか、今後も減少するのか)
・同盟国のAIM-120の追加発注はあるのか?
・日本はいつから、どの規模でAIM-260を導入するのか?(まだF-35への対応が終わってないようだけども、インド・太平洋地域なので、F-35に対応すれば話が進みそう)
AIM-120から260への更新をどうなるかもですね。>日本のライン移設
あとは同レイセオン社のLrewのほうを生産させてくれるのか問題も割と関わってきそう。
あとAIM-260のF-15対応でも変わりそう(JSIでレーダーはデフォルトで対応している可能性はあるとして)
次期中距離空対空が2030年開発完了なんで出来ればF-2/F-15にはそっちを統合したいとこだけどなぁ。
AAM-4互換モードとかでもいいから。
どっちもいつ納品すんだよ。ダメリカーというのがつきまとうのがね・・・。
商品が送られてこないと返金保証したり、送れると割引するAliExpressが良心的に思えてくるレベル。
ごめん、よく分からない。
どっち、って何と何だろう…
F-15とF-2+F-35の改修
なんで戦闘機が改修が全滅してるんだろうな・・・
しかもこれ日本だけでF-16とかもあるし。
F-35どこから湧いて出たんですか…
空軍機でF-22が最初なのはF-35の兵器統合のスケジュールに影響が出るから、でしょうか。
F/A-18E/F、EA-18Gを含めても運用国はアメリカとオーストラリアだけですし、長射程AAMを先行して利用できるのは大きいですね。
2019年予算のAIM-120Dが100万ドル突破しているので、AIM-260をバンバン撃てると言うことはなさそうですが。
あと「AIM-120の射程やNEZを超える領域でのBVR戦闘」という条件なら主翼も機体もセンサーもデカくて双発のF-22の方が圧倒的に上なのでは(機数からは目を逸らしつつ
長射程ミサイルは命中率よりも存在することに意義があるとなれば、今後もミッションキルを狙う戦法で航空機の接近拒否を維持し続けられるように新しい兵器や従来兵器の新しい使い方がますます出てきそうですね。いっそ炸薬無くして弾頭からレーダーを出し続けてビビらせるミサイルなんてのもアリか?