米国は中国とのミサイルギャップを解消するためAIM-260 JATMを開発中で、オーストラリアのマールズ国防相は6日「AIM-260 JATMを調達するため7億豪ドルを超える投資を行う」と、豪国防省も「AIM-260 JATMはF/A-18Fに搭載され、その後にF-35AとEA-18Gにも搭載する予定だ」と発表した。
参考:Delivering new advanced missiles for Australia’s Air Force
参考:Australia announces AIM-260 acquisition
PL-16とAIM-260のどちらが優れているのかのみで「どっちが強いのか」と考えても無意味
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は中国の航空戦力に関する報告書の中で「2020年時点のJ-20は技術的に比較的未熟で、2025年後半になると改良され技術的に成熟したJ-20Aが登場し、これをベースにした複座型のJ-20Sも含めて同機の年間生産数は120機、最低でも約13個航空旅団で320機~350機のJ-20、J-20A、J-20Sが運用されている」と言及したが、最も能力向上が著しいのは空対空ミサイルの分野だと警鐘を鳴らしている。

出典:彩云香江
中国空軍が使用しているPL-15はデュアルパルス固体ロケットモーター(Dual-Pulse Rocket Motor)の採用によってAMRAAMを超える射程距離を実現しただけではなく、目標に接近した終末誘導段階で第2パルスに点火して再加速することで、最大9Gの回避機動までしか行えない戦闘機を追尾できるようになり、敵機がミサイルの接近に気づいて回避機動をとっても逃げ切れないノーエスケープゾーンを大きく拡大することに成功した。
米空軍も「PL-15の脅威が本物だ」と認識してAIM-120の射程を上回るAIM-260 JATMの開発を進めており、このプログラムは徹底的な秘密主義の下で進められているため「AIM-260はAIM-120と同寸法」「AIM-120を上回る射程」「AIM-260は空軍と海軍との共同プログラム」「2022年までに初期作戦能力を獲得」ぐらいしか情報がなく、War Zoneは「PL-15が採用したデュアルパルスロケットモーターと同じ手法でAIM-120を上回る射程を確保しているはずだ。誘導装置や弾頭など推進部以外を小型化し、推進剤の容量アップを組み合わせることでAIM-120を上回る射程を確保している」と予想している。

出典:NAVAIR
米海軍は2026会計年度予算案の中で初めてAIM-260調達に3億900万ドル(調達数は不明)を要求、米空軍の高官は2025年10月「まだF-22やF-35への統合問題でAIM-260Aの運用を開始していない」「予定していた初期作戦能力の獲得時期は過ぎてしまったものの計画は順調に進んでいる」「空軍の戦闘機で最初にAIM-260Aを運用するのはF-22だ」と明かし、Naval Newsも2025年11月「オーストラリアへのAIM-260輸出がまもなく承認される」と報じた。
国防総省も3月17日付けの武器売却通知(Transmittal No.26-03)の中で「AIM-260 JATM×最大450発、AIM-260 JATM ITV×最大5基、AIM-260 JATM GTV×最大30基、各種関連費用を含む売却額は31.6億ドル」「AIM-260 JATMはMコードを使用した精密測位技術によって既存の兵器より射程と効果が向上している」「この潜在的な売却の機密区分は最高機密級だ」「この技術が敵対者の手に渡るとシステムの有効性を低下させる対策やより高度な機能を備えたシステムの開発に使用されたりする恐れがある」「オーストラリアは機密技術について米国と同等の保護能力を有していると判断され、AIM-260 JATMの輸出が承認された」と通知。
This morning I announced a more than $700 million investment to acquire Joint Advanced Tactical Missiles for our Air Force.
Australia will be the first country outside of the US to operate these advanced long-range air-to-air missiles. We’re investing so the Australian Defence… pic.twitter.com/3mht6IvQyy
— Richard Marles (@RichardMarlesMP) August 5, 2026
これでオーストラリアはAIM-260 JATM取得に必要な米議会の輸出審査を完了したことになり、オーストラリアのマールズ国防相は6日「私は豪空軍向けにAIM-260 JATMを調達するため7億豪ドルを超える投資を行うことを発表した。オーストラリアは米国以外でこの先進的な長距離空対空ミサイルを運用する初めての国となる」と発表、豪国防省もプレスリリースの中で「AIM-260 JATMを取得するため約7億3,600万豪ドルを投資する」「対外有償軍事援助を通じて取得するAIM-260 JATMは空軍のF/A-18Fに搭載され、その後にF-35AとEA-18Gにも搭載する予定だ」と明かしている。
米海軍が米空軍よりも先にAIM-260の調達を開始し、AIM-260をテストするF/A-18Eも目撃されているため、最初にAIM-260の統合作業が行われているのはF/A-18F/Eとなり、同機を保有するオーストラリアが同盟国の中で最初にAIM-260を手に入れる格好だが、F-35AへのAIM-260統合作業はBlock4に関連しているため、豪空軍のF-35AがAIM-260を手に入れるためにはBlock4の完成待ち、TR2構成機の場合はTR3へのアップグレードも必要になるためF-35AでAIM-260を使用できるようになるのは相当先の話になるだろう。
Secretive AIM-260 Air-To-Air Missile Finally Breaks Cover
The AIM-260 has been in development for years as a much-needed longer-range successor to the venerable AIM-120 AMRAAM.https://t.co/UKAjSpa7fj
— TWZ (@thewarzonewire) May 15, 2026
ちなみにRUSIは報告書の中で「まもなくPL-16も実戦配備されるだろう。PL-16はPL-15と同等の能力をもつ空対空ミサイルだが、本体の小型化と折りたたみ式のフィンを備えているためJ-20のウェポンベイに6発搭載できる」と報告していたが、中国人民解放軍空軍の内部ブリーフィングで使用されたスライド画像が流出し、PL-16はPL-15を小型化しただけの空対空ミサイルではない可能性が浮上している。
このスライド画像が本物ならPL-16はデュアルパルス固体ロケットモーターではなく可変推力固体ロケットモーター(variable-thrust solid rocket motor)を採用し、発射~巡航~終末機動の間の推力を連続的に調整できるため有効射程(300km超)とノーエスケープゾーンのさらなる拡張が可能になり、Defense Newsも「中国軍のPL-16は米軍のAIM-260と互角に渡り合う可能性があり、その延長された射程と終末段階での再加速能力によって、アジア太平洋地域におけるあらゆる紛争で中国人民解放軍に優位性をもたらす可能性がある」「PL-16はロッキード・マーティンが米軍向けに開発中のAIM-260への回答だ」と報じている。
By the way, we finally got the official confirmation of long-rumored PL16 being in service. It is more compact than PL15 but is able to achieve an even longer range. The photo was taken during a pilots seminar, you can see the difference between flight envelope of PL16 and PL15 pic.twitter.com/rJoTup2hQP
— Little Otter General Soilder (@Liu91mr) July 27, 2025
“この中国製ミサイルは推定200km〜300kmという長大な飛翔距離を誇り、飛行の最終段階で二度目の推力を生み出すデュアルパルスまたは可変推力固体ロケットモーター技術を搭載しているとされる。ロッキード・マーティンのAIM-260も同様に追加の推力を生み出す機能を備え、少なくとも200kmを飛翔すると予想されている。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のマルコム・デイビス氏も「PL-16のスペックであれば大型で動きの遅い航空機を追尾できるだろう」と指摘する”
“デイビス氏も「この長距離射程において最も重要なのは終末段階での機動性と誘導能力だ」「PL-16は早期警戒管制機、空中給油機、偵察機の撃墜を目的に設計されているため、長距離を飛翔したあとでも撃墜率は極めて高い」「ここから読み取れる中国人民解放軍空軍の戦略は明確だ」「米空軍、米海軍、同盟国軍にとって重要な戦闘支援機=コンバット・イネイブラーを排除すれば、我々は航空戦力を投射できなくなる」「中国側はPL-16を迅速に生産するだろう」「問題は米国がいかに早くJATMを量産体制に乗せられるかどうか」という”
PL16 will incorporate multi pulse, variable thrust with 300km+ range
And the PL15 kill at 180km https://t.co/IsuOZ4tGUQ pic.twitter.com/0QTbbPykX2
— Hûrin (@Hurin92) June 2, 2026
ミサイルの射程距離は「レーダーで検出した目標を最大射程で必ず撃墜できる」と保証するものではなく、ミラージュ2000の操縦経験をもつ元インド空軍のパイロットも「この300km超という数字は理想的な条件下での理論値に過ぎないため実戦での有効性は別問題だ」「視程外戦闘において重要なのはネットワークの強靭性、セキュアなデータリンク、オフボードからの目標指示、電子戦の優位性、先進的なAWACS、空中給油機、そして高脅威環境下でも安定したトラックを維持できるシステムだ」と指摘している。
“メーカーが公表する最大射程は通常、高高度、最適な発射条件、非機動目標といった理想的な試験環境で測定された値で、実戦では大気の抵抗、高度差、速度差、目標の機動、電子妨害、デコイ、先進的なEWシステムによるシーカー捕捉の阻害や中間誘導の妨害、発射母機がミサイルを誘導し続けるか、データをハンドオフできるかといった要因で有効射程が大幅に低下する。真の優位性はネットワーク中心の運用にあり、AWACSや他機のセンサーが目標を探知し、別のステルス機からミサイルを発射させるオフボード・キューイングが可能になれば、発射母機はレーダーを使わず低観測性を維持したまま極めて長距離から攻撃を仕掛けられる”
Usual disclaimers apply. Treat this as an entertainment piece with no sources for now.
But just saying. This was lowkey foretold if you had digged enough 🤷♂️
(I personally hope they integrate this into a multi-pulse architecture since they can complimentary) pic.twitter.com/PYGcbmNYMB
— ✌️🦌 ◂Ⓘ▸ (@stray_helium) June 2, 2026
“PL-16はJ-20のウェポンベイに搭載できる空対空ミサイルを4発から6発に拡張する点は非常に重要で、J-20は低観測性を維持したまま火力密度を高められるのだ。将来の制空権は統合センサー・ネットワークによる共通作戦状況図、耐妨害性を備えたセキュア・データリンク、早期警戒と目標指示を担う生存性の高いAWACSやISTARプラットフォーム、空中給油による戦闘能力の持続性、自軍のネットワーク保護と敵ネットワークの攻撃が可能な先進的EW能力、センサー融合による高信頼のトラックで決定づけられ、敵のネットワークを崩壊させる能力の方がミサイル自体の運動性能を上回る影響力を持つ”
最大射程や有効射程においてPL-16とAIM-260のどちらが優れているのかは不明だが、例えば「PL-16携行のJ-20を操縦する中国人パイロット」と「AIM-260携行のF-35を操縦する米国人パイロット」が大空で手に汗握る戦いを繰り広げるという想像は映画かゲームの世界の話で、現代の空中戦において「ミサイルの射程」「戦闘機のステルス性」「パイロットの腕」はキルチェーンにおける一要素でしかない。

出典:Australian Defence Force/SGT David Gibbs
実際の優位性を大きく左右するのはキルチェーン全体における共有された状況認識力、ネットワークの質と保護、早期警戒と目標指示、統合されたセンサーやネットワークによる高品質な目標の継続的追跡能力、航空戦力に対する航空支援能力、敵のキルチェーン全体を支える上記全ての能力を妨害する能力で、このキルチェーン全体の土台があって初めて「ミサイルの射程」「戦闘機のステルス性」「パイロットの腕」が生きてくるため、PL-16とAIM-260のどちらが優れているのかのみで「どっちが強いのか」と考えても無意味だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force/LACW Annika Smit





















F-35Aのアップグレードが遅れてるのはしんどいなぁ
どんなに良いミサイルを開発しても、使う事が出来ないんじゃ意味がない…
AAMの性能競争は大艦巨砲主義の再現に見える。
対称な兵器の射程向上に向けてバカみたいなコストをかける、
でも意味はあるのかな?
航空戦の目的は要するに空爆することだろ、高度な空中戦をする
より、シンプルなスタンドオフ攻撃にメインを置くべきじゃない?
実際、今の米軍が困っているのは空中戦ではなく、地面をより遠くから
安全に攻撃する能力が不足していることだろう。
相手の方が射程の長い空対空ミサイルを保有していたらスタンドオフ兵器の射程まで接近するのは難しいのでは?
AAMの開発競争は大艦巨砲主義ではなくまさにスタンドオフ攻撃を念頭に置いたものでは?
>発射母機はレーダーを使わず低観測性を維持したまま極めて長距離から攻撃を仕掛けられる
乗せるレーダーがないF-35には朗報だな
だったらもうFA-18でもいいんじゃ、鬼のようにミサイル積めるぞ
デュアルパルスロケットモーターは火薬の配置を工夫して、火薬1に点火→2に点火ってすれば成立するだろうけど可変ロケットモーターってどうやってるんだろ?
一応固体燃料と液体酸素ロケットみたいな可変ロケットはあるけど、多分外気を取り入れたり酸素タンクを持つような構造ではないだろうし
空対空ミサイルの射程が西側より長いってのは旧ソ連からあるドクトリンですからね。それがロシア、中国と受け継がれてるのだと思います。ただ当時からそれだけで航空優勢が
追記:途中で送信してしまいました。
ただ当時からそれだけで航空優勢が決まってたわけではありませんし、どちらかと言うとソ連は西側に比べて航空戦力において劣勢だったからこそ空対空ミサイルの射程に拘ったとも言えます。
そこは中国も同じで戦闘機の保有数、特に第5世代戦闘機の数では圧倒的ですが、アメリカ+同盟国との航空戦力との比較において自信が持てないからこその空対空ミサイルの長射程化なのだと思います。
この辺に中国空軍の弱点があるのでは思います。AWACS、AEW、空中給油機、哨戒機を重点的に狙うのであれば、ネットワーク、戦場における航空戦力の維持、対潜哨戒等にまだ問題があるのでは?
日本はF-35除くと AMRAAM撃てる機体少ないですから、AIM-260の導入なんてずっと先ですよね。
ところでF-15JSIはどこにいったんでしょうね…
願わくばGCAP用に開発してる次期中距離空対空誘導弾はPL-15/16レベルの射程を確保して欲しいです。
AAM-4系列搭載して互換はかるんじゃあないですかねー>AAM-6(仮)
PL-15/PL-16など長射程AAMはキルチェーンを構築するAWACSや空中給油機など空のコンバットイネーブラーの破壊を主目的としているため、
・キルチェーン破壊のためのAAM射程向上
・キルチェーンの高度化、可用性向上のためのローカルネットワークを構成できる第6世代機とCCA
・キルチェーン高価値目標の無人・分散化
という形で対抗要素を構築しつつありますが、現時点ではAAMの長射程化の方が先行していて第6世代機や分散システムの方が後追いになっている状況ですね。
もちろん長射程AAMを活用するには味方のキルチェーンが不可欠なため、長射程AAMだけで優位に立てるわけではないのですが、少なくとも相手のキルチェーン構築を制限できる可能性はあります。
でもって、中国の偵察能力とかネットワーク系の話題ってどうなんだろ?
それだけ長射程兵器作って、そっちに手を抜いてるとは思えないのよね。