インド太平洋関連

オーストラリア、数ヶ月以内に極超音速ミサイルのプロトタイプ試射を実施

豪メディアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙は1日、オーストラリアは数ヶ月以内に極超音速ミサイルのテストを開始すると報じている。

参考:Australia to begin testing hypersonic missiles within months
参考:Australia Teams Up With U.S. To Get Hypersonic Missiles For Its Super Hornets In Five Years

15年前から研究開発に取り組んでいた極超音速技術をベースに極超音速ミサイルを開発

オーストラリアと米国は30日、空気呼吸式の極超音速に関する技術開発を共同で行う「サザンクロス統合飛行研究実験(Southern Cross Integrated Flight Research Experiment:SCIFiRE)」を発表した。

SCIFiREは空気呼吸式の極超音速技術を手頃なコストで実現するためのプロトタイプ開発と技術検証が目的で、オーストラリアと米国が15年前から研究に取り組んでいた「極超音速国際航空実験(Hypersonic International Flight Research Experimentation:HIFiRE)」を発展させたものだ。

補足:オーストラリアと米国は2007年から2016年までに複数回の極超音速実験を行い、音速の5倍以上の速度域で操縦・管制制御システムに関する大量のデータ収集、スクラムジェットでマッハ8まで加速することにも成功して極超音速飛行に関する基礎技術を確立させた。

豪メディアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙によれば豪米は今後数ヶ月以内にSCIFiREプログラムの下で開発した極超音速ミサイルのプロトタイプ試射を行い、5年~10年以内の実用化を予想している。

オーストラリアは実用化された空中発射型の極超音速ミサイルを空軍のF-35A、F/A-18E/F、EA-18G、P-8A、開発中のUAVロイヤルウィングマンに搭載して運用することを目指しており、陸上や艦艇から発射可能な極超音速ミサイルの開発も検討しているらしいが、F-35Aのウェポンベイに収まるサイズまで極超音速ミサイルを小型するのは難しいだろうとシドニー・モーニング・ヘラルド紙が指摘している。

どちらにしてもオーストラリアは今後10年で長距離攻撃ミサイルや極超音速兵器開発に最大93億豪ドル(約6,900億円)を投資することを決めているため、今回発表されたSCIFiREプログラムと合わせてオーストラリアは極超音速兵器開発の有力プレーヤーに浮上したと言えるだろう。

因みにSCIFiREプログラムの下で開発される極超音速ミサイルのプロトタイプは1,600km離れた目標を攻撃することを目標にしているらしい。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain B-52の翼下に懸架されたX-51

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コメント

    • ソソソナス
    • 2020年 12月 01日

    なんで日本も極超音速ミサイルを開発しないのだろう?

    5
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      2018年8月予算要求が行われ現在開発中ですよ?

      38
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    こっちは出遅れ感否めない
    どの国も、極超音速は戦闘機の爆弾倉に収まらない大きさのようで
    すると搭載機体、射程、ステルスの意味など正解に至るまでの条件が複雑になりそう
    まあ出遅れた分だけ他人様の様子を参考にできるけど

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      JAXAで極超音速旅客機を研究してなかった?
      そこに関わってたところを集めれば、悲観したものではないかと。

      13
        • 匿名
        • 2020年 12月 02日

        そっちの基礎的研究がすぐ防衛に応用段階なのか知らんけど
        間違いなく半年じゃないよね

        1
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    オーストラリアにそんな技術がと思ったら米国と共同開発か。最近開発のアピール合戦してるけど実際のところどうなんだろう?弾道ミサイルの代替か移動目標でも狙えるのか。

    5
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      現状弾道ミサイルと違って条約や法的規制を受けないから迎撃不能な長距離打撃力が欲しかった国は取り敢えず唾付けとこ状態になってるよね

      16
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    これに触発されてインドネシアが周辺国と共同で開発着手しそうな予感…

      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      ネシアの周辺国にそんな相手がいるのか

      2
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        あの国じゃないですか(白目)

        7
          • 匿名
          • 2020年 12月 02日

          また繰り返すのか(笑)
          漫才コンビ再結成

          2
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        第二次大戦以前の因縁でオーストラリアとインドネシアの仲が超悪いということでは?

    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    長射程なら哨戒機でいいような
    P/A-1 くるか

    つか発射機自体をコンテナサイズにモジュール化してほしいわ 対空でも対地でも
    車載 鉄道 艦載

    9
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      日本製の各種対艦ミサイルって1xx㌔㍍以上と詳細は以上で伏せられてるけどとにかく射程が足りてないイメージ

      5
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        「周辺国への配慮」でしょうね。アホクサ…
        「本土に展開した装備で離島を防衛する」なら1000kmは必要なのに。

        17
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        すぐに「侵略がー」って叫ぶ馬鹿メディアに踊らされる馬鹿国民が多かったせいだね。
        戦闘機も輸送機もミサイルも距離や射程が伸びるだけで大騒ぎよ。
        最近はその馬鹿共も減ってきたおかで開発できるようになったけど、いまだに騒いでるメディアが居るのがね・・・

        14
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        とりあえずはよASM-3ER運用開始して欲しい…

        4
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      空中発射だから初期速度を得やすいけれど、地上発射となると巨大化しますからねぇ。
      P/A1はありでもコンテナ積みは難しいのではないですか。

      2
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      海自哨戒機はP-3Cから有事にはASMを搭載しての対艦攻撃任務が想定されてますよ。
      現状では危険極まりない任務になるので搭載ASMの長射程化が図られているわけです。

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    極超音速兵器の攻撃目標は何を想定してるのだろうか?
    核弾頭を使うならともかく通常弾頭では適応が無いように思える

      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      高価なもんだから、それこそ敵の最重要拠点か大型艦船ね
      空母だの司令部を狙い撃ち
      米国はかなり高精度な誘導の見通しがあるようだし

      1
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        本邦の滑空弾も艦船を狙うようですね

        8
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    国土の大きな国は試験場に困らなくてうらやましい。

    13
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    豪州って資源輸出しかない国なので、これからかなり財政が苦しくなってくるはず。
    貯金でしばらく食べるとしても、過去分合わせて8,000億円を超す開発費って回収見込めるんだろうか? 国内と米帝需要で回収可能な見込みんだろうけど、相当な高額商品になりそうな代物。
    売上から米帝の取り分除くわけでもあり分け前の交渉は相当タフになりそうな気がする。

    まあ、世界の軍事費の80%を占める米帝が採用するなら大丈夫ですかね。

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      そこから脱皮してハイテク国家を目指す一環だろ、構造の厚みが経済の安定につながるから。
      最先端のミサイル作るには、それを支える広い産業基盤が無いと無理だから

      6
        • 匿名
        • 2020年 12月 01日

        その基盤がない国で「やるっ」て言うところが恐ろしいところ。
        この国、自動車さえ自国生産あきらめた国ですよ。造船も大したものは作れない。
        この二つは基本的な産業基盤を必要とする代表的なもので、それが作れない国でハイテク国家って無理でしょう。

        1
          • 匿名
          • 2020年 12月 02日

          それどちらも20世紀形の集約産業だよね、
          オーストラリアはもう少し今の考え方をしてると思うよ

            • 匿名
            • 2020年 12月 02日

            それは流石に認識古すぎるでしょう。自動運転を実現できるかどうかってところにいるのはハイテク(この言い回しも古いけど)産業の基盤そのもの、手動運転のレガシーの基盤さえないところでは無茶でしょうに。

            もちろんごく一部だけを突出させることは国家意思として可能だと思いますが、「産業基盤」と言われるとねぇ。

            2
    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 01日

    これが日本の次期戦闘機のウェポンベイに搭載できれば、オーストラリアの次期戦闘機選定の候補に上がったりするのだろうか。いや、ありえないか。

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 01日

      ステルス性を維持できる兵装コンテナは、できないだろうか?

      3
    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    滑空しないの?

    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    地上発射後回しってことはHCMやHVGPのほうが難易度高いのか

    • 匿名
    • 2020年 12月 01日

    日本の対艦ミサイル射程距離は、飛翔高度Lo-Lo-Lo での計測
    ノルウェーなんかは Hi-Hi-Loでの計測
    とかどこかのサイトで観たような
    本当だったら、Hi-Hi-Loだとサイズ的にJSMやNSM以上かも

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