インド太平洋関連

豪海軍とAndurilが無人潜水艦を実用化、Ghost Sharkの量産開始を発表

豪州のマールズ国防相は10日「Ghost Shark=無人潜水艦を数十隻調達する」「2026年1月に1隻目が就役する」と、Andurilも「世界中の海軍は自律性による変革を模索中だが、我々は無人潜水艦構想から生産までを3年未満でやり遂げた」「もうGhost Sharkは量産中だ」と発表した。

参考:Equipping the Royal Australian Navy with next generation autonomous undersea vehicles
参考:Ghost Shark Enters Program of Record — From Prototype to Fleet in Three Years
参考:Australia signs contract with Anduril for Ghost Shark autonomous underwater vehicle

海中戦の将来は決断が遅く、アプローチが煩雑で、必要以上に精巧である必要はない

西側諸国、ロシア、中国では特大の自律型無人水中機=XLUUV(大型の無人潜水艦)実用化に向けて開発を進めており、豪海軍も世界のトレンドに追いつくため2022年にGhost Sharkプログラムを立ち上げ、Andurilと契約を締結して「3年以内=2025年までに3隻のプロトタイプを手に入れる」という野心的なスケジュールを掲げたが、2017年に設立されたばかりの新興企業=Andurilの素早さは伝統的な米防衛企業のものとは完全に別モノだった。

出典:Royal Australian Navy

AndurilはGhost Shark開発に使用するプロトタイプ=Dive-LDを契約締結から半年以内に、2024年4月にはGhost Sharkのプロトタイプを豪海軍に引き渡し、Anduril Australiaも「3年で3隻のGhost Sharkを製造するというスケジュールは非常に野心的だったものの、この計画は予算(1.4億豪ドル)超過もなく予定よりも早く進んでいる」と述べ、豪海軍もリムパック2025にGhost Shark(ハワイまではC-17による輸送)を参加させて開発の順調さをアピールしていたが、豪国防省は10日「17億豪ドルを投資して新たなGhost Sharkを取得する」と発表した。

豪国防省は「今回の契約は今後5年間に取得するGhost Shark、保守、継続的な開発をカバーしている」「新たな投資でAnduril Australiaの雇用(120人)が維持され新たな雇用(150人以上)も創出される」「Ghost Sharkのサプライチェーンに加わっている豪企業は40社を超えている」「今回の投資によってサプライチェーンでも600人の新規雇用が創出されると見込まれる」「Ghost Sharkはステルス性を保ちながら長距離の情報収集、監視、偵察、攻撃作戦を行えるよう設計されいる」「Ghost Sharkは水上艦艇と潜水艦の能力ギャップを補完し海中戦闘能力を大幅に向上させるだろう」と説明。

出典:Anduril

コンロイ国防産業相も「Andurilは予算超過なしに3隻のプロトタイプを予定よりも早く納品した」と順調な開発作業を称賛し、マールズ国防相もシドニーで行われた記者会見で「海軍向けにGhost Sharkを数十隻調達する」「最初の1隻目は2026年1月に就役する」と述べ、Andurilも声明の中で以下のように述べている。

“未だに世界中の海軍は自律性が海中戦にどのような変革をもたらすかを模索中で、断固たる行動に出た海軍はほとんどないが豪海軍は例外だ。大型自律型潜水艦=Ghost Sharkは構想から生産までを3年未満でやり遂げた。彼らはGhost Shark戦力の調達に向けてAnduril Australiaに17億豪ドルの契約を正式に授与した。既にオーストラリアでGhost Sharkの量産は始まっている”

“この大胆な成果はスピードと能力追求のリスクを豪海軍がAndurilと共有すると決断したことで実現し、豪海軍は従来の調達方法に依存せずGhost Sharkの開発に多額の資金を投入してくれた。彼らがここまでリスクを犯す理由も明白だ。オーストラリアの自国海域は長年に渡って中国海軍の直接的な脅威に晒されおり、Ghost Sharkの量産開始は自律的な海洋戦力自体の幕開けを意味し、差し迫った安全保障上の問題に対処する自律型海洋兵器の可能性を示す画期的な機会になるだろう”

“Ghost Sharkは産業面でも重要な教訓をもたらした。豪海軍とAndurilは互いのプロセスに互いの人員を組み込んで真の協働を実現した。端的に言えば進歩を達成するのにシステム全体を刷新する必要はないが、創造的で決断力があるリーダーシップは不可欠で、Ghost Sharkの成功は従来の調達方法=10年単位の計画や予算サイクルに頼らなくても「手頃な価格で高性能な海中戦力を数年で実現できる」と証明している。但し、AndurilもGhost Shark開発において重大なリスクを受け入れている”

“豪海軍と正式契約を交わす数ヶ月前、Andurilは自社資本を投じてUUVのスタートアップ企業=Dive Technologiesを買収した。我々がもつソフトウェアとDive Technologiesの設計が組み合わさることで強力な相乗効果が生まれると信じていたからで、Dive-LDやDive=XLから発展したGhost Shark開発は「緊急性、革新性、連携が集結した時に何が起きるか」を証明している。海中戦の将来は決断が遅く、アプローチが煩雑で、必要以上に精巧である必要はない”

各国で開発が進められるXLUUVの要件はそれぞれ異なり、Ghost Sharkの初期能力も沿岸海域の自律的なパトロールや海域全体の状況認識を拡張するレベルで、まだ水上艦や潜水艦などとの協調範囲も限られていると思われるが、それでも米海軍とボーイングが2017年に開発を開始したXLUUV=Orcaは開発遅延と予算超過を繰り返し、2020年12月予定されていたプロトタイプ1号機の引き渡しは2023年12月、プロトタイプ5隻の引き渡し期限=2025年中も守られるか怪しく「XLUUVの量産化や戦力化」に至っては完全な白紙状態だ。

出典:Anduril

マールズ国防相とAndurilの言及は「豪海軍が世界で初めてXLUUVの量産機を就役させる国になる」と強く示唆しており、豪海軍とAndurilの成功と米海軍とボーイングの失敗は本当に対照的な結果と言える。

因みにオーストラリアは無人化技術(空中、地上、海上、海中の全て)に100億豪ドル=約9,660億円以上、その内43億豪ドル=4,100億円以上を無人航空機分野に、その内19億豪ドル=1,800億円をMQ-28Aに投資済みで、Ghost Sharkへの投資も18.5億豪ドル=1,800億円になり、規模感的にはMQ-28Aと同じになってきた。

関連記事:日豪が安全保障分野の関係を強化、空自がMQ-28Aのテストに参加
関連記事:豪海軍とAndurilがGhost Sharkを公開、開発は予算超過もなく順調
関連記事:XLUUVのプロトタイプを手にいれた豪海軍、圧倒的なスピードで米英仏海軍に追いつく
関連記事:XLUUV開発の遅れを挽回したい豪海軍、3年でプロトタイプ完成を狙う

 

※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force/Kym Smith

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コメント

  • コメント (16)

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    • Ard
    • 2025年 9月 11日

    フリゲート送ったら無人艦、無人機が帰ってくるかもしれないな

    22
      • 他人事では無い
      • 2025年 9月 11日

      マジで、そうして欲しい。
      有人潜水艦にVLSを積むなどという自殺行為をしないで、無人潜水艦にVSLを積んで使い捨てにした方が良い

      9
        • 名無し
        • 2025年 9月 11日

        VLS積んだ無人機なんてものすごい高額だから
        使い捨ては無理でしょ

        29
        • kitty
        • 2025年 9月 11日

        使い捨てなら、浮上発射でもいいわけですが、水中発射と技術的困難度の差はあるのかな。

        3
      • 匿名希望
      • 2025年 9月 11日

      安全保障版わらしべ長者ですな。

      1
    • 名前を入力してください
    • 2025年 9月 11日

    将来、無人潜水艦が海中を跋扈する時代が来るのだろうか?
    もしかすると、既存の海上戦力が意味をなさなくなる日も近い?

    8
    • ハチ公
    • 2025年 9月 11日

    オーストラリアとはこういう無人兵器の開発技術と運用ノウハウを提供してもらい、こちらは潜水艦を含めた艦艇建造の技術とノウハウを全て提供しよう。
    そうしよう。

    9
    • 中村
    • 2025年 9月 11日

     私は居住性を全く考慮する必要性の無い無人艦が水面を浮いている必要性が理解出来ません。潜ってしまえば海面状況も気象も関係なく行動出来ますし、どんなヘタレ潜水艦でも電波的には完全なステルスです。

     シュノーケルとセンサーマストを突き出して「完全ステルスUSV」として使ってしまえば充分に有用に思えるんですが、何で開発に失敗してしまうんでしょう?

     

    5
      • kitty
      • 2025年 9月 11日

      ヒント「ボ」

      7
      • のののの
      • 2025年 9月 11日

      波の影響を受けなくなる深度って波長の半分程度と意外に深いので、
      その深度からマストを突き出すのは現実的ではありません。
      ある程度妥協するにしても 船体が安定している=マストは波の高さをもろに受ける なので
      マストは 維持したい深度+波の高さ(3m位?) は必要になります。
      相当大きなUSVでないと割に合わなそうです。

      7
    • プラネット
    • 2025年 9月 11日

    ウクライナの戦場では、無人機の光ファイバー経由コントロールが実現していますが、水中無人艦では活用できない要因が何かあるのでしょうか。
    もしできるなら、母艦となる潜水艦は海底に無音で着底したまま、水中無人艦を回天のように母艦から発艦させて、海面に浮上して対空・対艦ミサイルを発射して攻撃するという運用が可能になるのではないかと思います。
    それは静粛性に優れた通常型潜水艦を多数保有する我が国にとって、非常に有利な状況だと思うのですが。

    2
      • p-tra
      • 2025年 9月 11日

      うーん、そんなに有効だろうか。
      個人的にはその対艦ミサイルは魚雷と何が違うの?という疑問を感じる。
      魚雷も有線で操作できるし、XLUUVが優れているのは射程?
      そんなに射程が必要ならクソデカい魚雷でも良いのでは
      そもそも魚雷も自爆ドローンの一種?よく解んなくなってきた…

      3
    • 山田さん
    • 2025年 9月 11日

    むしろ水中では活用出来る電磁波がほぼ無いので、完全自立運用か、光ファイバーでの遠隔操作の二択ですね。
    完全自立は攻撃判断が難しいでしょうし、情報収集だけならUUVでなくて良いので、日本も含め近々に実用化されるUUVは全て光ファイバータイプだと思います。

    仰る通り、基礎技術を日本は持ってますし、R8の概算要求に調達費用も含まれてますので、近い内に実用化されると個人的には予想しています。

    11
      • プラネット
      • 2025年 9月 11日

      ご教示ありがとうございます。
      自律運用の無人艦の情報ばかり目にしておりましたので、光ファイバーによるコントロールは困難なのかと思い込んでおりました。知識不足を恥じるばかりです。

      2
    • たむごん
    • 2025年 9月 11日

    タンカー、ばら積み船に格納できるサイズにして。

    水上・水中とわず、近海から大量に湧いてきたら面倒くさいだろうなとは思います。

    ウクライナ戦争の戦訓として、ウクライナ軍が水上ドローンで戦果をあげてましたよね。

    4
    • p-tra
    • 2025年 9月 11日

    通信は衛星経由でやってるのかな、潜水艦と同じで。
    まともなソナーなんて積めないだろうからセンサーはEO/IR
    だけで水上監視くらいしか出来なさそう。
    つまり常に潜望鏡を上げた潜水艦がいるようなもので、従来の
    潜水艦より明確に弱い…けど低コストで人的損失が無い、みたいな
    感じだろうか。
    潜水艦同士の戦闘に役立つ気はあんましないわね。

    3

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