インド太平洋関連

オーストラリアのモリソン首相、ウクライナへの武器支援を発表

オーストラリアのモリソン首相は27日、ウクライナへの支援を強化するため武器を送るよう閣僚に指示したと発表した。

参考:Australia to send weapons to Ukraine, stepping up military aid

NATO加盟国のウクライナ支援強化に歩調を合わせるためオーストラリアも武器支援を表明、正し支援方法はちょっと特殊

ロシアのウクライナ侵攻に対応してオーストラリアは25日、資金援助と非殺傷装備をウクライナに提供すると発表していたが、米国、英国、カナダ、フランス、ポーランドなどがウクライナの要求する全ての武器供給に応じると決定、さらにドイツが従来の立場を変更してウクライナへの武器供与を発表したためオーストラリアも支援内容を強化、モリソン首相はウクライナへ殺傷能力のある武器を送るよう閣僚に指示したと27日に明かした。

出典:Eesan1969 / CC BY-SA 4.0

ただしオーストラリアは国内の武器を直接ウクライナに送るわけではないのが興味深い。

オーストラリアとウクライナは物理的に距離が遠く、航空輸送を行うにしてもウクライナの全域が交戦地域なのでポーランド国境からウクライナに入る陸路が唯一の輸送路になっている。

NATOはウクライナ支援を空路から陸路に切り替えて車輌による補給部隊を組織、加盟国が提供した武器や弾薬などをポーランド国境からウクライナに続々と輸送中で、オーストラリアがウクライナに最も早く武器を送るならNATOの補給部隊に便乗するのがベストだ。

出典:Генеральний штаб ЗСУ NATOの補給部隊

つまりオーストラリアからポーランドに輸送する時間的ロス、NATO加盟国ではないオーストラリアの武器を運んでくれとNATOと交渉したり手続きにかかる無駄な時間を全てパスするため「米国や英国などNATO加盟国が保有する武器を買い上げ『NATO加盟国からの武器供与』という形でウクライナに運んでもらうのが最も早く届く」と判断、オーストラリアは武器を買い上げる資金のみを提供する予定らしい。

実際、オーストラリアは先に発表した非殺傷装備品も「上記の方法でウクライナに輸送しようとしている」と現地メディアが紹介しており、非常に興味深い取り組みだと言えだろう。

関連記事:ドイツがウクライナへの武器供与を発表、対戦車兵器1,000発、スティンガー500発

 

※アイキャッチ画像の出典:Defence of Ukraine

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

英国防省、ロシアは苦境のウクライナ侵攻を隠匿するためSNSを制限前のページ

ウクライナ大統領、ロシアの侵略に立ち向かう外国人部隊の創設を発表次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    対抗を止めれば次の10年を失う、2038年までの原潜保有を豪国防相が約束

    オーストラリアのダットン国防相は「南シナ海で中国に対する対抗を今止めれ…

  2. インド太平洋関連

    インドのBrahMos-II、ロシアのジルコンと同じ性能や特性を備える?

    インドが露企業の支援を受けて開発を進めている極超音速ミサイル「Brah…

  3. インド太平洋関連

    新たに米国制裁を招く恐れがある案件、インドがMiG-35調達に向けて一歩前進

    インドは100機以上の第4.5世代戦闘機「MiG-35」を調達するため…

  4. インド太平洋関連

    今後5年間で約27兆円を投資、韓国が発表した国防中期計画の中身|後編

    韓国国防部は10日、今後5年間の防衛力整備の方針をまとめた「2021〜…

  5. インド太平洋関連

    フィリピン国防省、韓国に海軍向け哨戒艦6隻を5.7億ドルで正式発注

    フィリピン国防省は現代重工業とオフショア巡視船6隻の調達に関する契約を…

  6. インド太平洋関連

    普及が進むUAV、東南アジアの国がイスラエル製無人航空機「ヘルメス900」を導入

    エルビット・システムズは2日、アジアの国と無人航空機「ヘルメス900」…

コメント

    • ナニガシ
    • 2022年 2月 27日

    上手い方法だなあ。
    ヘルメットよりも有効だ。日本から武器はポンコツ憲法のせいで難しいだろうが、資金提供とかできないかな?

    35
      • ぱおーん
      • 2022年 2月 27日

      憲法は武力行使を禁止してるんだから輸出は関係ないでしょ、朝鮮戦争のときは武器輸出してたし

      でも国内議論どころか送ってくれのリクエストすら来ないのがシュール・・

      17
      • 無無
      • 2022年 2月 27日

      湾岸戦争の拠出金という前例があるから不可能ではない、要はやる気
      まだ対岸の火事だの自国第一だからとか、お花畑を語っている連中にうんざりしますね
      この国際化、国際分業の時代にもはや無関係の海外問題なんて無いし、
      情けは他人のためならず、の意味すら理解してない

      14
      • にゃ
      • 2022年 2月 27日

      ハイラックスを・・・中古車でいいからハイラックスをかきあつめて送るのじゃ・・・

      2
    • STIH
    • 2022年 2月 27日

    色々やりようがあるだなと
    日本は同じことがどの程度できるんだろうね。何年か前に韓国への弾薬の融通でもめたことがあったけど、今回はそれとも違うし。
    一応日本だってジャベリンやカールグスタフのようなものはあるから、それぐらいだったら供与できそうだが、第9条で軍備は無いことになってるから、表立った兵器供与は難しいんだろうか。

    19
    • ミリオタの猫
    • 2022年 2月 27日

    確かに、オーストラリアの立場ならそっちの方が合理的で、自分が武器供給するより無駄も無いよな。

    23
    • すえすえ
    • 2022年 2月 27日

    今の情勢を見て思うこと
    なんだかんだ自分の力でなんとか立ち上がろうとしているのを見ると
    助けたくなってくるんですね

    日本や台湾もいざというときはかくあれということかな?

    36
      • 名無しさん
      • 2022年 2月 27日

      ウクライナは冬戦争のフィンランドになれるかと
      以前に書きましたが、そうなってきている様で嬉しい
      国際支援も続々と集まって来ています
      為政者や国民が一丸となって侵略者に対して抵抗の覚悟を見せる姿勢は大切ですね
      自らは血を流さずに、ただ守って下さいでは誰も見向きもしてくれません

      25
    • dai
    • 2022年 2月 27日

    日本もロシアへの制裁だけでなくて、なんか支援できんのかなぁ
    湾岸戦争では金ばかり出して、とか言われたけど

    5
      • A
      • 2022年 2月 27日

      凍結したロシアの資産を勝手にウクライナへまわしちゃうとかね。

      • ぱおーん
      • 2022年 2月 27日

      2022/02/16

      > ウクライナ情勢 外交努力で“1億ドル規模の円借款用意” – NHK

      金を出すどころか「お金貸してあげる」だからねw

      3
      • けい
      • 2022年 2月 27日

      北方領土近辺で実弾演習をするのが効果的かと

      4
    • おわふ
    • 2022年 2月 27日

    人道的援助という名目なら日本も可能じゃないでしょうか?
    食料、燃料を買い上げて送るのは可能じゃないかと

    5
    •  
    • 2022年 2月 27日

    日本もするべきだろう
    今回の件で英国は評判を上げ、ドイツは下げた

    英国に倣い、台湾危機の時には同じ事が出来る様に、
    今から台湾と米国と折衝し、準備をしておくべきだろう

    16
    •   
    • 2022年 2月 27日

    必要なのは別に兵器だけではなかろう
    携行食や避難民への簡易住宅、それこそホッカイロとかでもいいだろう
    やっぱ金だけって伝わり難いから、日本語の入ったカップラーメンとかでもいいからさ、日本も応援してるって事が伝わって少しでも励みになればいい

    12
    • 匿名
    • 2022年 2月 27日

    ジャミングで使い物にならんドローンよりバズーカよこせは草
    ドローン特技兵がやることなくて対戦車特技兵がしかもATGMでなくロケット射撃の技能で重宝されるだなんて誰が想像したか
    大柄で鈍い地雷防護車は容易に発見され真っ先にミサイルの的になり全く使い物にならないだなんて誰が想像したか
    対テロ戦争に特化すると本格戦争ではびっくりするくらい無力になるの怖すぎる

    16
    • 無無
    • 2022年 2月 27日

    そんな次元じゃないよ、この際にロシアを泥沼の戦争で疲弊させとけば後々に西側に利益は大きい
    ロシアは自ら墓穴を掘ってる

    17
      •  
      • 2022年 2月 27日

      ロシアの末路を言ってるだけで、そうしろとはいってないだろ。読解力低すぎ。無理無理すぎ。

      13
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP