インド太平洋関連

ボーイング、豪空軍に完成した無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」を納入

ボーイングは今月5日、昨年2月に開発を発表した無人航空機(UAV)「ロイヤル・ウィングマン(忠実なる僚機という意味)」のプロトタイプをオーストラリア空軍に引き渡したと発表した。

参考:Boeing Rolls Out First Loyal Wingman Unmanned Aircraft

発表から1年で完成したボーイングの無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」

この機体は有人航空機と連携して任務を行う戦闘支援無人航空機で、米空軍が開発しているステルス無人戦闘機「XQ-58ヴァルキリー」と競合関係にある。ボーイングによれば同機はAIを搭載して自律的に飛行が可能で戦闘機のような性能と3,700kmの航続距離を備えいるらしい。

さらに長さ2.6mのモジュール式ノーズコーンが本機最大の特徴だといっても過言ではない。

このモジュール式ノーズコーンは簡単に取替えることができ、例えば偵察用カメラやセンサーを搭載したノーズコーンと電子妨害装置を搭載したノーズコーンを用意しておけば、用途に応じて迅速に機能を切り替えることが可能だ。さらにこのノーズコーンの中身は採用国が独自に変更することが可能だと言われているが攻撃用兵器をここに搭載できるのかは不明だ。

因みにオーストラリア空軍は同機のプロトタイプを3機導入して地上試験ののち初飛行を実施する予定だが、時期や場所については非公開とされている。

ボーイングにとって無人航空機「ロイヤル・ウィングマン」は新しく誕生するである戦闘機の随伴機市場を睨んだ製品であり、1機300万ドル(約3.3億円)以下と言われる「XQ-58ヴァルキリー」に対抗するため「低コスト」であることを繰り返し主張しているが、実際のコスト予想については明言を避けている。

出典:public domain XQ-58ヴァルキリー

ただボーイングによれば低コスト実現のため民間機製造で培った高度な製造技術を投入して設計を行い、機体は炭素繊維強化樹脂を使用して複雑なパーツを一体成形することで構成部品を減らしていると低コスト性をアピールしているが、どう考えてもXQ-58ヴァルキリーより複雑なシステム(モジュール式ノーズコーン)を採用しているため価格で対抗するのは難しいはずだ。

そもそも、この分野の無人航空機は損耗することを容認できる低コストが売りなのに、わざわざコストを掛けて多用途性をもたせるが正しいのか管理人的には疑問に感じてしまうところだ。

あくまでも仮の話だが、もしロイヤル・ウィングマンが1機10億円程度だったとしたら有人戦闘機に比べ十分に安価だと思うのだが、1機3.3億円以下になると言われているXQ-58ヴァルキリーの存在がロイヤル・ウィングマンの存在を中途半端なものに追いやってしまうのではないだろうか?

仮にモジュール式ノーズコーンを採用したロイヤル・ウィングマンが1機で3種類の任務に対応できたとしても、同じコストで3機のXQ-58ヴァルキリーが調達出来てしまえばロイヤル・ウィングマンのメリットはデメリットに変化(1機失えば3つの任務を遂行する能力を一変に喪失するという意味)するからだ。

逆を言えば3億~5億円程度のコストに抑えることが出来ればロイヤル・ウィングマンはXQ-58ヴァルキリーに対して優位にたてると言える。

果たして、ボーイングはXQ-58ヴァルキリーに対抗できるだけのコストを実現できるだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    このロイヤルウイングマンに相応の攻撃能力、航続距離、ある程度のステルス性があれば、アタック級とかいう生まれる前から忌み子と化した産廃ドラム缶を作らずに済むかもね

      • 匿名
      • 2020年 5月 05日

      いや、きっと作るよ。

      • 匿名
      • 2020年 5月 05日

      軽爆撃機と考えると上手くいけば巡航ミサイルは不要になるな。

      • 匿名
      • 2020年 5月 05日

      いやこれは戦闘支援無人機の記事だけどアタック級と何の脈絡が?

        • 匿名
        • 2020年 5月 06日

        アタック級は巡航ミサイルによる対地攻撃能力が要求されてるのでコイツで爆撃できりゃアタックでの対地攻撃しなくてもよくなる、って事だと思う。
        つまりアノ金食い虫の欠陥潜水艦に何兆円も注ぎ込むならその資金でコイツを一杯買った方が良い。

        1
          • 匿名
          • 2020年 5月 06日

          いや、対地攻撃プラットホームの手数として潜水艦があれば航空機は要らないというわけではないし、逆に航空機があれば潜水艦はいらないというわけではない事くらい分かりそうなもんだけど

          2
            • 匿名
            • 2020年 5月 06日

            常識的に考えれば当然そうなるがアタック級の迷走ぶりをみれば『別の手段でその機能を代替した方がいいじゃん』てなるのは無理からぬ話。

            1
            • 匿名
            • 2020年 5月 07日

            某潜水艦の攻撃能力はF111の代替なんですよ…
            つまり充分な航空攻撃能力があれば実質不要

            3
    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    顔がくるくる変わるの見てアシュラマン思い出した

    1
    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    XQ-58ヴァルキリーの武装は250kgのJDAMx8発かSDBなので、地上攻撃限定ですね。
    ロイヤル・ウイングマンの武装は不明ですが、AAMやECMに使えるなら使い分けができそうですが、交戦規定を考えると空飛ぶミサイルランチャーで有人機や遠隔操作からの指示なしには攻撃できないでしょうね

    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    なんでプロトタイプが豪空軍?
    米国でテストとかしないの?

    詳しい人教えて

      • 匿名
      • 2020年 5月 06日

      米軍には歯牙にもかけられない性能だからさ…

      • 匿名
      • 2020年 5月 06日

      発注主が豪だから

      1
        • 匿名
        • 2020年 5月 06日

        ああ、そういうことか。F-35と連携するのかね

        けど最新鋭機をいきなり渡すとはアメさんも剛気だ。苦境のボーイングが作ったんだから自国でも試してあげそうなものだけど。

        最初から輸出前提の、最新技術つかってない機体ってことかな

    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    個人的には5GATに頑張ってほしいがあっちは今どうなってるんだ?

    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    ドリムノートが有ればウイングマンはきっと現実になる!

    • 匿名
    • 2020年 5月 06日

    RQ-170 センチネル鹵獲の一件以来
    正規軍相手に無人機は使えないと思ってる。

      • 匿名
      • 2020年 5月 06日

      ありゃ戦闘機不要論者が護衛なしの攻撃機で繰り出して迎撃食らって全滅したようなもんで有人機の援護をつければ済む話なんじゃないかな

    • 匿名
    • 2020年 5月 06日

    単なる「用途切り替え」であれば指摘の通り派生機作って数揃えた方がメリットは多いでしょうけど、
    「ノーズコーンの中身は採用国が独自に変更することが可能」というのが謳い文句通りなら、
    「センサーや電子戦モジュールを作る技術はあるけど無人機は作れない/出遅れてる国」にとっては
    面白いプラットフォームなのではないでしょうか。
    あるいは有人無人問わず独自の戦闘機や巡航ミサイルを開発する際の搭載機器のテストベッドとしても有用でしょう。
    個性的かつ有効で高性能なノーズコーンを開発すれば輸出だって可能かもしれません。

    1
    • 匿名
    • 2020年 5月 06日

    金額面については全面的に同意です。
    概算値でも出てこない限りはヴァルキリーと対比しようがない。

    逆に言うと企業も同じことやってると値下げ競争に巻き込まれる訳で、付加価値勝負に行かざるを得ないというか。米企業が米軍以外と共同開発する例が増えてきそうですね。

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