オーストラリアはクリスマス前までにフリゲート艦入札の勝者を決定する予定で、Breaking Defenseは3日「防衛省は渡航費と宿泊費を負担し、オーストラリア人ジャーナリストを長崎に招待してもがみ型護衛艦の能力をアピールした」「保守的な日本にとっては異例の措置だ」と報じた。
参考:Japan’s government pushes hard to woo Aussies with advanced frigate
ここを突破しないと「艦艇の海外輸出における実績」が手に入らないため、日本の政治力による後押しを期待するしかない
アルバニージー政権は海軍再編に関する分析結果を昨年2月に発表、この報告書は政府に「水上艦戦力を2倍に増やせ」と求めており、具体的にはハンター級フリゲートの取得数を9隻→6隻、アラフラ級哨戒艦の取得数を12隻から6隻に削減し、有人運用も可能な大型無人艦(6隻)と汎用フリゲート(11隻)を取得するよう勧告。
アンザック級フリゲートの後継艦を想定した汎用フリゲート取得は「Project Sea 3000」や「GPF Project」と呼ばれており、最終的候補に残ったのは日本が提案する令和6年度型護衛艦(以降はもがみ型改と表記)とドイツが提案するMEKO A-200で、SEA3000の勝者はクリスマス前に決定され、ABC NEWSの取材に応じた豪シンクタンク=Strategic Analysis Australiaのヘリヤー氏は「今のところキャンベラでは日本が勝者に近いという噂が広がっているものの、まだ競争は混戦模様でドイツが勝利する可能性も否定できない」と指摘している。
Breaking Defenseも3日「もはや日本はフリゲート艦の輸出先としてオーストラリアを確保したいという意図を隠そとしていない」「防衛省は渡航費と宿泊費を負担し、オーストラリア人ジャーナリストを長崎に招待してもがみ型護衛艦の能力をアピールした」「保守的な日本にとっては異例の措置だ」と報じ、日本の熱心な売り込みの様子を以下のように報じている。
㊗護衛艦「たつた」命名式・進水式🎊🚢🍾
本日、三菱重工業株式会社長崎造船所おいて、#もがみ 型 護衛艦「#たつた」の命名式・進水式が執り行われました。
本艦は、奈良県生駒市付近を流れる大和川の支流「竜田川」から名前をいただきました‼#命名式 #進水式 #海上自衛隊 #FFM #11番艦 pic.twitter.com/1ORGvRHnQw— 防衛省 海上自衛隊 (@JMSDF_PAO) July 2, 2025
“このイベントに参加したジャーナリストらは3日間に渡ってもがみ型護衛艦の能力、日豪が緊密な防衛・産業協力を通じて利益を得られるという強い信念、三菱重工業が約40年間に及ぶ運用・保守に完全な支援を提供する意向(プログラムに関する全知的財産権も含む)について説明を受けた。ジャーナリストらはもがみ型護衛艦11番艦の進水式と命名式にも招待され、これに参加した中谷防衛相もジャーナリスト1人づつ名刺を手渡し、売り込みにかける日本政府の意気込みを示した”
“中谷防衛相は招待したジャーナリストらに「オーストラリアがもがみ型護衛艦を購入すればインド太平洋地域の持続可能性と回復力を強化する」と述べ、我々が取材したほぼ全ての政府関係者や業界関係者も「オーストラリアに対するアプローチは日本政府全体の総意だ」「これは第二次大戦以来初めてとなる主要武器システムの輸出にどれだけ準備が整っているか、どれだけオーストラリアに対するアプローチにコミットしているかを示すものだ」と強調した”
“さらに防衛装備庁の西脇長官官房審議官も「三菱重工業は35年間に渡り海自向け艦艇の納期を守ってきた。日本政府も計画全体と全ての契約が円滑に進むことを保証し、オーストラリアの計画に遅延が生じないことを確約する。我々は指定された納期通りに艦艇を納入できることを確実に保証する」と述べ、三菱重工業ももがみ型護衛艦の建造率を年2隻から3隻に増やす予定だ”
ここまで日本政府が「納期遵守」「計画全体のスケジュール保証」「日豪の戦略的関係」を強くアピールするのは、4番艦~11番艦の調達に「現地建造」を求められているからで、この現地建造とは「三菱重工業の人間がオーストラリアでもがみ型護衛艦を建造する」「日本で製造されたものをオーストラリアに持ち込んで組み立てる」という話ではなく、豪造船企業や豪企業に技術移転を行って建造と建造に必要なサプライチェーンを立ち上げ、オーストラリア産業界の発展や雇用に結びつけなければならないためだ。

出典:ThyssenKrupp
海上市場の艦艇輸出において「現地建造」や「技術移転」を求められるのは日常化しており、ヘリヤー氏も「ドイツは海外建造の点で非常に良い成功実績を持っているが、それを同じことを日本は証明できていない。安全保障上の豪日関係が入札に影響を及ぼすかもしれないものの、政府もSEA3000における優先事項が戦略的関係なのか技術的ものなのかを明かしていない。安全保障上の戦略的関係も重要だが良いプラットホームを選択しなければならない。さらにオーストラリアでスケジュール通りに、予算内で建造できるプラットホームかどうかも確認する必要がある」と指摘。
ドイツも日本案の弱点を理解しているため「アンザック級がコスト超過や計画遅延なしで完成した実績」「アンザック級の現地建造において豪産業界の関与は記録的なものだった」と強調し、さらに要求要件に含まれていない「豪海軍採用のSaab製戦闘システムを統合した4番艦~11番艦の建造案」という選択肢を提供し、豪国防省も「ドイツ側の自主的な提案内容」を高く評価しているらしい。

出典:海上自衛隊
日本は武器システムを輸出してこなかったため「顧客が望む他社製システムの統合経験」が皆無で、オーストラリアやドイツが指摘してくる「現地建造」や「技術移転」についても優位性を証明できないため「日本国内での実績」「日本政府の本気度」「安全保障分野における日豪関係」をアピールするしかないのだが、これは海外市場に挑戦するルーキープレーヤーにとって共通課題なので致し方ない。
兎に角、ここを突破しないと「艦艇の海外輸出における実績」が手に入らないため、日本の政治力による後押しを期待するしかないが、もしドイツに敗れても「貴重な経験」を得られため悲観することはない。
関連記事:豪州のフリゲート艦調達を巡る戦い、まだ日本とドイツの競争は混戦模様
関連記事:豪フリゲート入札の勝者は年内決定、ドイツは実績と豪海軍仕様をアピール
関連記事:豪海軍のフリゲート調達、日本は自国よりオーストラリア優先を誓う
関連記事:海外メディア、武器輸出に消極的な日本政府がフリゲート艦の豪輸出に熱心
関連記事:もがみ型の豪輸出、戦略的・技術的パートナーシップが重視されれば日本有利
関連記事:防衛省、もがみ型が豪次期フリゲートに選ばれれば海外移転を認める
関連記事:豪海軍の汎用フリゲート調達、最終候補に生き残ったのはドイツと日本
関連記事:豪フリゲート調達、韓国は現代重工業とHanwha Oceaのワンチームが作れない
関連記事:豪州の汎用フリゲート調達、ドイツ、スペイン、日本、韓国に情報提供を要請
関連記事:日本も豪海軍のフリゲート調達に参戦、もがみ型ベースの艦艇開発を検討
関連記事:豪シンクタンク、もがみ型の取得で海軍再編が上手くいくかもしれない
関連記事:オーストラリア海軍の再編計画、汎用フリゲートの検討候補にもがみ型が浮上
関連記事:豪州が海軍の戦力構造を小型艦中心に変更か、ハンター級が削減の対象に
※アイキャッチ画像の出典:防衛省 海上自衛隊
基本的にオーストラリアの安全保障を担ってる皆さんは税金の無駄遣い
のプロフェッショナルと言っていいレベルの無能だと思っているので、
良いものを提示すれば選択されるだろう、とは全く思ってないわ。
オーストラリアの装備調達の話題ってホント話題だけで何も進まないんだよね。
全てのプロジェクトが全く進まない、AUKUSもダラダラやってんなと思ったら
やっぱり日韓からの調達も考慮するとか言い始めるし。
中国に空母を売っといて中国が最大の脅威だ!とか普通に意味不明だし。
とりあえずこのバカ共には我が国の役に立ってくれとしか思えぬ。
どうせ実戦の時は役に立たないだろうし。
まあそうカッカしなさんな
空母渡したぐらいでそこまで叩かれるなら、天安門事件時に国際的孤立を恐れて共同制裁に反対した日本とか世界の工場として中国を成長させた国だって同じでしょ。
>アンザック級がコスト超過や計画遅延なしで完成した実績
今のドイツには怪しいとは思いますがね。
「顧客が望む他社製システムの統合経験」って海自の装備は基本的に海自が発注した、ほぼ外国製の兵器システム(三菱製の兵装?)を組み込んで納入しているわけで、なんで不安要素に挙げられるのかわからない。
しかし「たつた」はそりゃ最初は川から取ったのは事実だろうけど、帝國海軍の「龍田」から取ったのは明白だろうにすっとぼけ。
三菱重工業に国産や米国以外のシステム統合経験が豊富だとは思えませんし、海自も他のシステムを望んでないし、そもそも海自向けの需要に専念してきたので必要ない能力でしょう。さらに言えば国産のC4Iシステムにどれだけ柔軟性があるのかも未知数で、日本人が日本の技術力を信頼しても、他国は実績や経験を基準に判断するので仕方ないかと。
因みに海外輸出における統合経験とは『フリゲート艦を新造してもこのシステムは退役するフリゲート艦から移植してくれ』とか『フリゲート艦は貴方から買うけどセンサーや搭載する武器は個別に入札するので統合してね』とか『このシステムは自国で開発するのでよろしく』とかのことで、要するに日本の技術力が高いと低いとかの問題ではなく、経験や実績がないので証明されていないというだけの話です。
それは難易度が高そう。
出来上がったシステムを、一旦分離して構築し直す必要があります。
全部、自前で作るのとはまた違う技術が求められますね。
>『フリゲート艦を新造してもこのシステムは退役するフリゲート艦から移植してくれ』とか『フリゲート艦は貴方から買うけどセンサーや搭載する武器は個別に入札するので統合してね』とか『このシステムは自国で開発するのでよろしく』とかのこと
それはたしかに無茶振りだけど、それを無難にこなしてきた国ってあるのかなあ。
統合しろって言ってくるのは良いけど、何が入札されるのか建造時点で決まっていないとか、自国製のシステムは完成見込みとか、どこの国でも頭は抱えそう。
そりゃ不安要素になるでしょうよ、自国製システムで買えなんて世界に対して余程の実績が無いと言っちゃ駄目な奴。米国製システムを弄るとなるなら、インテグレード分の高額費用が発生するけど日本はそこまでして望むか?何でもする韓国なら自国製システムだろうが、海外製システムだろうが、権利的に問題無いならそれらのハイブリッドでも喜んでOKだすでしょうよ。
艦船みたいな複雑な物で構成される兵器では足を削って靴に合わせるみたいなのは通用しない。かと言ってPCみたいに仕様を決め打ちして安価に提供出来ます、お好みの構成にしたいなら高額になりますけど良いですかみたいな事も日本には無理でしょう。
ここでも記事があったけど、初期には日本も「共同開発」や「豪政府が求めてくる装備や機能を追加したもがみ型ベースの艦艇開発」を検討してる、と報じられてたんですよ。
ところがその後「「「豪側の希望」」」で「初期調達分は装備や機能の追加よりも納期を優先」「最初の3隻は完成品輸入」という話になったんです。
「日本は仕様変更や現地生産に応じる姿勢を見せてない」みたいなこといってる方とかもいたけど根本的に勘違いかと。
まあ本当に日米以外のシステムや装備の統合とか共同開発とか現地生産とかできるのか、スムーズに進められるのか、はまた別問題だし、
そうでなくてもモジュール化されてるカスタム前提のMEKOの方がハードル低いし現地での生産や運用の実績もあるし、で楽な勝負にはならないだろうけど、「日本が輸出に消極的」という常套句は今回は当たらないかと。
…といいたいところだったけど石破だからなぁ…
Twitterで少し有名な現地のジャーナリストは豪海軍の透明性に不満を持っていて、日本との関係や戦略的意義、06FFMの性能そのものには理解があるものの豪海軍が未知の日本製の艦船やシステムを導入し運用上の混乱を招くことを強く懸念してましたね。
立場が逆なら理解できる話なので、日本の真剣さとは別に豪政府と海軍のインテリジェントを鑑みると日本で成功しているからと言ってオーストラリアでも(改)もがみ型が成功するとは限らない…という主張も一定の説得力を持っているのが現状かも。
懸念点を追加すると、参議院選挙が今月あるため、政治が流動化するリスクでしょうか。
日本の国防力強化に、武器輸出は不可欠なため、是非ともチャレンジを続けて欲しいですね。
共産、れいわ、社民(これはもう無いかな)みたいな、よほど尖った政党が力を付けない限り、武器の輸出に力を入れる流れは変わらないと思いますよ
GIGO設立にサインをした政党は結構多かったですから
流れを止めずに、邁進して欲しいですね。
今の内閣が参院選後も続くらしいという段階で政治力に全く期待できない・・・。安全保障的には高市総理だったら良かった
海外掲示板でオーストラリア人の評判を聞くとこんな感じらしい
・MEKO A-200 → 能力的には微妙、リスクは一番低い 能力:☓ リスク:◎
・MEKO A-200の改良型 → 求めるものには最適、ただしリスクが一番高い 能力:◎ リスク:☓
・改もがみ型 → 能力がちょっと過剰、リスクは低い、日本との関係強化になる 能力:◯ リスク:◯
あと個人的に面白かったのは「上司と一緒に飯食いたくないから士官と兵で部屋分けてくれ」って意見
「それをやるとどれだけ人が増えるんだい?」ってツッコミもあったが
この力の入れよう見ると日本側は商売上の理由より安保上の理由の方がかなり強うそうですね
カナダの潜水艦入札に最初から参加しなかったりと入札先の選択と集中を図ってるのかもしれませんが
>4番艦~11番艦の調達に「現地建造」を求められている
>豪造船企業や豪企業に技術移転を行って建造と建造に必要なサプライチェーンを立ち上げ
>オーストラリア産業界の発展や雇用に結びつけなければならない
正直、もうやめて帰りたくなるような条件ですが…。
買い手からの条件は「だいたいこういう無茶なものである」ことを前提とした
輸出用モデルの開発&ビジネスモデルの構築&それらを可能とする組織・人員の育成とノウハウの蓄積
っていうのが必須だなと思えてきます。
「(技術漏洩リスク管理も兼ねて)設計を簡易化し低コスト生産を可能に」
「ハード的にもソフト的にもモジュール化して幅広い要求にも柔軟に対応可能」
自国用の兵器開発と輸出用の兵器開発とでは、根本的に設計思想が違ってくるというわけですかね。
実物より現地貢献の方が大きなウェイトを占めているなら、日本よりドイツ向きでしょうねえ。
逆に考えればもがみ型の製造拠点が海外にもう一つできるわけで、今後の連携を考えても、あるいは将来の輸出も考えても有りだと思いますよ
そもそももがみ型が特別なだけど、日本単独じゃ基本的に自国分しか賄えないわけで
>もしドイツに敗れても「貴重な経験」を得られため悲観することはない
と思うかどうかは株主次第ですね。。。全部企業の持ち出しでしょうから。