インド太平洋関連

米国、無人偵察機「グローバルホーク」を韓国に引渡すも、肝心の情報収集装置は未搭載

これまで5回引渡しが延期されてきた韓国への無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」だが、12月23日に1号機が韓国慶尚南道泗川の空軍基地に到着した。

参考:글로벌호크 한국에… 탄도미사일 발사車 움직임 등 北전역 감시

韓国は輸出許可が下りず信号情報収集装置未搭載でグローバルホークを導入

韓国は2014年にノースロップ・グラマン社製の無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」導入契約を米国政府と結び、2018年後半には1号機の引渡しを受ける予定だったが、韓国向けに製造された機体の電子光学・赤外線センサーの不調や、合成開口レーダーの解像度が上がらない問題を解消するため、これまで5回引渡しが延期されてきたが1年以上遅れてようやく韓国に到着した。

韓国が導入した「RQ-4 グローバルホーク」は、NATOが導入した最新の「Block 40」ではなく、一つ前のバージョンである「Block 30」相当の機体(Block 30i)で、Block 30とBlock 40の違いは性能の高低ではなく、収集する情報の違いだけで機体の飛行性能に大きな違いはないと言われている。

出典:public domain RQ-4 グローバルホーク

Block 30は主に画像撮影や広域の信号情報(SIGINT)収集に特化した機体で、Block 40は「AN/ZPY-2」を搭載し地上や海上の目標の捜索能力が向上、より移動目標の捜索能力が強化された地上・海上監視用途の機体なので、どちらが良いかは運用用途によって異なる。

問題は韓国が導入したBlock 30iに、肝心の信号情報(SIGINT)収集装置が搭載されていないことで、これは輸出許可が下りなかったのが原因だ。

敵の無線通信や電波を収集して発信位置を割り出すための信号情報収集装置が搭載されていないということは、韓国のグローバルホークは電子・光学・赤外線センサーのみによる情報収集しかできないことを意味しており、韓国側もこの問題を解決するため、2020年までに国内技術で信号情報収集装置を開発する方針だと言われていたが、例えこの装置が開発されたところでグローバルホークに統合できるのか未知数だ。

出典:Julian Herzog / CC BY 4.0 ドイツが導入しようとしていたEuroHawk

過去、ドイツが導入しようとしたグローバルホーク(その後キャンセル)には、独自の信号情報(SIGINT)収集装置を組み込むことになっていた。

ただ最も新しい韓国側の情報によれば、米国と韓国は協議の結果、韓国側にグローバルホークを引渡した後に信号情報(SIGINT)収集装置を供給することで合意したらしく、これが事実なら韓国が導入したBlock 30iは性能がフルに発揮できる状態へ修正されるという意味だ。

日本もBlock 30i相当のグローバルホークを導入(2022年)することになっており、信号情報(SIGINT)収集装置が搭載された状態の機体なのかは情報がないためよく分かっていないが、韓国のグローバルホークへ信号情報(SIGINT)収集装置の供給を許可したのなら、日本のグローバルホークには始めから搭載してあるかもしれないが、やはり政府や防衛省が情報を公開(恐らくされることはない・・・)しない限り謎のままだ。

どちらにしても、韓国軍にグローバルホークが導入されたということは、使い方次第では日本を覗くことも可能(米軍の通信衛星を使用するため実際できるかどうかは不明)になるということを覚えておく必要がある。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Nathan Lipscomb

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 25日

    日本を覗く能力は北朝鮮→中国 と流れるのでは?

    これってステルス? 単に無人てだけだよね。
    日本の
    JASDF ‘TACOM’ – 自衛隊用の無人偵察機試験機、硫黄島での初自律飛行、自動着陸に成功
    リンクはその後どうなったのだろうか?

      • 匿名
      • 2019年 12月 26日

      TACOMは「無人機研究システム」という名称で、あくまで「研究」ですし近距離見通し内運用だったので直接的な発展形の開発は無いと思います。あと、事後の事業評価を閲覧すれば研究内容と成果が理解できます。研究成果は今後の無人機開発に活かされるのではないかと。
      事後の事業評価→リンク

    • 匿名
    • 2019年 12月 25日

    現状の南朝鮮にNATOの最新情報機器の提供は無理でしょう?。
    GSOMIAだって、契約更新‥では無い。
    “信頼に足る国“とはとても考えられない。
    大陸の一部の南朝鮮が、“空母“を欲しがる意味も理解不能なんですよねぇ…

    • バ韓国
    • 2019年 12月 25日

    こんな奴等に高価な物渡しても豚に真珠だろ。
    まともに使いも出来ないどころか、勝手に中身開けるわ、共食い整備するわ、技術横流しするわ
    本当信用の欠片もない国

    • 匿名
    • 2019年 12月 25日

    この信号情報収集装置というのはTHAADのレーダーみたいに中国を怒らせる類の機能はないのかしら

    • 匿名
    • 2019年 12月 25日

    収集した情報を、収集したという事を韓国側に知られる事なく本国に送る機能とかつけられてそうだなぁw
    韓国自体が韓国が保有していることになっている機体で監視されているというw

    • 匿名
    • 2019年 12月 26日

    RC-800電子偵察機すら軍事境界線付近でまともに飛ばせなくしてしまった状態なのにRQ-4の導入を中止しないのは、意識的に日本向けなんだろうなと。とはいっても、米軍通信衛星を利用=実質行動監視状態なので、妙な動きがあれば米軍から自衛隊に情報提供されるハズで、供給するシギント装置も意図的に性能ダウンさせるだろうし、日本周辺で拾えた日米の重要な信号情報は米軍がそのままの形では開示しないと思う。

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