インド太平洋関連

タイとカンボジアの軍事衝突、タ・ムエン・トム寺院地域を巡って戦闘が激化

24日に始まったタイとカンボジアの武力衝突はタ・ムエン・トム寺院地域を中心に激しさを増しており、タイ陸軍は「カンボジア軍が長距離攻撃兵器で都市部の病院や学校を攻撃している」と、カンボジア国防省は「敵がクラスター弾を使用した」と非難しあっている。

参考:Thailand, Cambodia exchange heavy artillery as fighting rages for a second day
参考:Five Thai districts bordering Cambodia deemed unsafe
参考:Thai forces launch major attack on Ta Moan Temple, Cambodian forces stand firm
参考:Ministry of National Defense: Thai army launched attacks on 7 locations using cluster munitions, which are prohibited by international law and is a war crime.
参考:Thai Troops Attempt to Re-Seize Ta Krabei Temple, Cambodian Forces Stand Firm

両国に共通するのは「先に攻撃を仕掛けたのは相手」「自分達は主権を守る範囲で武力を行使しているだけ」「敵は民間人を標的にしている」というお決まりの3原則

24日に始まったタイとカンボジアの武力衝突は激しさを増す一方で、タイ内務省は「国境沿いの4県=スリン県、ウボンラーチャターニー県、シーサケート県、ブリラム県から10万人以上の国民が避難した」と、タイ陸軍は「敵が重火器、野砲、BM-21を使用して継続的に攻撃を続けている」「敵が長距離攻撃兵器で都市部の病院や学校を攻撃して民間人に多数の死傷者が出た」「プレアヴィヒア寺院地区を制圧したという噂はフェィクニュースでタイ軍はカンボジア領に入っていない」と発表。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

さらにタイ陸軍第2管区は「敵が中国製のPHL-81(最大射程40km)を使用し始めたためシーサケート県のフーシン、クンハン、カンタララック、ウボンラーチャターニー県のナムユエン、ナムクンも安全ではなくなった」「カンボジア軍が使用する兵器の射程内に住む国民は直ちに避難すべきだ」と呼びかけ、Bangkok Postも「25日早朝からスリン県とウボンラーチャターニー県で戦闘が発生している」「政府は国境沿いの4県から13万人の国民を避難所に移動させた」「スリンから戦車や装甲車の車列が国境方向に向って移動している」と報じている。

カンボジア国防省も「敵が25日の攻撃にクラスター弾を使用した」「敵が25日にカンボジア領7ヶ所に攻撃を開始した」「敵に占拠されたタ・ムエン・トム寺院地域を24日に完全制圧した」「敵が25日にタ・ムエン・トム寺院地域の奪還を試みたが成功しなかった」と発表。

Khmer Timesも「敵はタ・ムエン・トム寺院に侵入するため重砲と歩兵で激しく攻撃したがカンボジア軍も激しい抵抗で反撃した」「この戦闘に参加している兵士によればカンボジア軍の勇敢な反撃で敵の攻撃を撃退した」と報じており、両国に共通するのは「先に攻撃を仕掛けたのは相手」「自分達は主権を守る範囲で武力を行使しているだけ」「敵は民間人を標的にしている」というお決まりの3原則で、事実かどうかではなく「敵が悪い」というイメージを植え付けるための情報戦なので深く掘り下げても無意味だ。

タイ当局は「少なくとも国境沿いの6つの地域でカンボジア軍との衝突が続いている」と述べているが、交戦に関する報道や報告が集中しているのはタ・ムエン・トム寺院地域で、この寺院を確保するため両軍が激しい戦闘が繰り広げている認識で間違いない。

この武力衝突が全面戦争に発展する可能性は低いものの、タ・ムエン・トム寺院やプレアヴィヒア寺院を巡る戦いは短期間で終わるとは思えず、両軍とも多連装ロケットシステムや大砲を使用して国境地域の敵拠点を攻撃しているため民間人への被害は拡大する一方だ。

因みにタイ陸軍はSNSを活用して情報戦を展開し、その一環としてフェイスニュースを積極的に告発しており、カンボジア軍の情報戦は主要メディアを通じた情報発信に留まっている。

関連記事:タイとカンボジアが軍事衝突、両軍は戦闘機や多連装ロケットシステムを投入
関連記事:タイとカンボジアの国境紛争、両国が国境沿いに戦力を増強して緊張が高まる
関連記事:タイの戦闘機入札でF-16Vが敗れた理由、グリペンのオフセットが強力すぎ
関連記事:フィリピンはFA-50 Block20を12機、タイはグリペンE/Fを12機導入
関連記事:タイの戦闘機導入を巡るスウェーデンと米国の戦い、空軍はGripen取得を推奨
関連記事:タイ空軍のF-16後継機、韓国航空宇宙産業がFA-50Block20を提案
関連記事:タイ空軍はF-35Aの調達を米国に断られ、F-15EXとF-16Vを提示される
関連記事:タイ空軍が米国にF-35A売却を打診、米議会の回答は来年の夏頃になる予定
関連記事:タイ議会がF-35A調達資金を来年度予算から除外、空軍は予算復活を訴える
関連記事:米空軍、タイにF-35Aを運用できるか調査するためチームを派遣
関連記事:ロッキード・マーティン、タイ空軍のF-35A調達話は公式のものではない
関連記事:8,200万ドルなら手が届く、タイ空軍がF-5Eの後継機としてF-35A調達を検討中

 

※アイキャッチ画像の出典:Royal Thai Army

タイとカンボジアが軍事衝突、両軍は戦闘機や多連装ロケットシステムを投入前のページ

米海軍作戦部長、造船産業の能力不足で使用可能な攻撃型原潜の放棄を検討次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    侵入してきた北朝鮮軍のUAVにお手上げの韓国軍、効果的な対応システムがない

    北朝鮮は26日に5機の無人機を韓国北西部の領空に侵入させ、内1機はソウ…

  2. インド太平洋関連

    インド、155mm榴弾砲を4x4HMVに搭載した自走砲「MArG/155-BR」を発表

    印バーラト・フォージの防衛部門は22日、4x4HMVに155mm榴弾砲…

  3. インド太平洋関連

    韓国大統領府の高官が注目発言、次世代潜水艦は原子力推進と断言

    最近どうも韓国が騒がしい。韓国大統領府のキム・ヒョンジョン国家安全保障…

  4. インド太平洋関連

    豪空軍、KC-30Aを使用したF-2との空中給油適合試験が完了したと発表

    豪空軍は空中給油機KC-30Aによる空自F-2との空中給油適合性確認試…

  5. インド太平洋関連

    韓国航空宇宙産業、初飛行を今月末に控えたKF-21の地上滑走を公開

    韓国航空宇宙産業(KAI)は8日、今月末に初飛行を予定しているKF-2…

  6. インド太平洋関連

    イスラエルとシンガポールが狙う東南アジアの対艦ミサイル需要

    15日に開幕したシンガポール・エアショーにイスラエルとシンガポールが共…

コメント

  • コメント (19)

  • トラックバックは利用できません。

    • 幽霊
    • 2025年 7月 25日

    中国にとっては中国から移転する海外企業の移転候補地で紛争が起きるのは有難いでしょうね。

    10
    • たむごん
    • 2025年 7月 25日

    国内政治の不安定化も要因でしょうが、がお互い落し所どうするつもりなのでしょうね?

    空爆は強度が高く、多連装ロケット砲・クラスター弾を使うと面による攻撃で着弾範囲が広がる事になります。
    民間人に被害が広がると、次の火種(大規模全面戦争)に繋がるリスクが上がりますから、早く紛争終結して欲しいですね。

    日本目線で見れば、タイ~カンボジアは日本企業のサプライチェーンに使われていたりしますから、両国の関係悪化が続けばマイナスの影響がでてきます。

    (2025年3月19日 カンボジアのポイペト、タイと連携でグローバルサプライチェーン参画 JETRO)
    (2025/7/25 タイ・カンボジア衝突、日本企業の陸送に打撃 矢崎総業は海上輸送 日経)

    11
    • もへもへ
    • 2025年 7月 25日

    しばらくガス抜きで戦闘続けて、両国民が飽きてきた頃に停戦でしょう。
    心配する必要はないかと。

    互いの軍も新たな予算獲得の格好の口実を得られたし、内心喜んでるのでは?

    6
      • p-tra
      • 2025年 7月 25日

      そんな甘いもんじゃないでしょう…
      国土を寸土たりとも譲るな!と叫ぶナショナリストを制御するのは
      どんな政府にとっても難しい。
      特に軍隊は応援してくれている内は良くっても無能/弱腰と見なされれば
      自分たちの国民そのものに攻撃されることになる、
      例え戦いを避けるために理性的になっているだけだったとしても。
      少なくとも、もし両国の政府が戦うつもりなんて一切なくて国民のガス抜きさえ
      済めばそれで終わりにするつもりだった、と仮定すると
      そんな冷静で理性的な政府の間に何故死者を伴う戦闘が起きるのか?良く分りません。
      うっかり事態をコントロール出来なくなるリスクを考えて、そもそもこんな事態を
      起こさないはずでしょう。

      54
        • 理想はこの翼では届かない
        • 2025年 7月 25日

        第二、第三のウクライナ状態へ…?
        イラン・イスラエルのような空爆で終わらせるのとは違い、陸戦が始まると落とし所の見えない紛争になりやすいのでどうなることやら

        10
    • ななし
    • 2025年 7月 25日

    一番最初の動画の
    >>「カンボジア王国軍」の兵士が国境のタイ軍陣地に向けて発砲した。
    ええ?パンイチでサンダル履きの兵士?
    海水浴場から来たとしか思えん恰好
    認識票も持ってないみたいだし
    ひょっとして「カンボジア王国軍」と自称する民兵組織か武装集団なのか?

    20
      • あばばばば
      • 2025年 7月 26日

      実はポルポト政権下の少年兵の現在があのおっさん説(はたぶんない)

      中国支援の民兵という話を聞いたけど実際はどうなんだか
      (つまりやすいドラムマガジンだとしても)軽機関銃の扱いがあまりにも不慣れだし正規軍ではないと思う

      6
    • プラネット
    • 2025年 7月 25日

    記事にあった動画を見ましたが、カンボジア兵は軍服も着用せず上半身裸で軽機関銃やRPGを撃ちまくって、まともな軍隊ではないさゲリラ兵のような戦いぶりですね。
    多連装ロケット砲は、子供達のいるところ(学校?)のすぐ側から
    発射しているし、こんなところから撃ったらタイ側が反撃してきた時に子供達に被害がでるのは当たり前で、何故こんなことをしているのか理解に苦しみます。
    今回の衝突の経緯も、どちらの主張が正しいのかも私には分かりませんが、少なくとも今回ご紹介いただいた動画を見る限り、私はタイ側の肩を持ちたくなりました。

    16
      • プラネット
      • 2025年 7月 25日

      先のコメントが反映されず、何か誤操作したのかと思い何度かコメントを書いたので、結果的に同一内容のコメントを何度もしてしまいました。

      皆様には見苦しいものをお見せし、申し訳ありませんでした。

      管理人様、可能なら重複してしまったコメントを削除して頂ければと思います。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。

      4
    • うくらいだ
    • 2025年 7月 25日

    タイカンボジア辺りは上半身裸が普通なのか?

    5
    • プラネット
    • 2025年 7月 25日

    記事にあった動画を見ましたが、カンボジア側の兵士は軍服も着用せず上半身裸で軽機関銃やRPGを撃ちまくっていて、まるでゲリラ兵のような戦いぶりです。
    多連装ロケット砲も、子供達のいる場所(学校?)のすぐ側から発射しており、こんな所ではタイ側の反撃を受けた場合に子供達にも被害が出ることは明らかで、その程度の配慮もできないことに唖然としました。
    私には、今回の事態に至った経緯も、どちらが正しいのかも分かりませんが、少なくとも記事の動画を見る限り、タイ側の肩を持ちたくなります。

    1
    • プラネット
    • 2025年 7月 25日

    記事にある動画を見ましたが、カンボジア側の兵士は軍服も着用せず上半身裸で軽機関銃やRPGを打ちまくっており、まともな軍隊ではないゲリラ兵のような戦いぶりです。
    多連装ロケット砲も、子供達のいる場所(学校?)のすぐ側から発射しており、これではタイ側の反撃を受けた時に子供達の被害が出る可能性は高く、そうした配慮もできないことに唖然としました。
    私には、今回の事態に至った経緯も、どちらが正しいのかも分かりませんが、少なくとも記事の動画を見る限りではタイ側の肩を持ちたくなります。

    2
    • Mr.R
    • 2025年 7月 25日

    そしてカンボジアの港には中国海軍の基地がありまして··

    6
    • L
    • 2025年 7月 25日

    そんなたかが観光地目的で戦争しなくても
    とおもったが互いに納得するまで続けるしか無いんだろうな

    3
    • nk
    • 2025年 7月 25日

    調停するとなると中国かベトナムになりそうでしょうか、まだまだ相手国に断固譲らずの国内世論を両国抑えれないでしょうから暫くは様子見になりそうでしょうけどどうなることやら。

    3
      • PAC3
      • 2025年 7月 25日

      ヴェトナムはカンボジアとは犬猿の仲であるので、タイ・カンボジア双方に顔の効く中国が仲裁でしょうね。
      米国とカンボジアは貿易関係の取引も少ないでしょうしトランプが関わる事はおそらくはないでしょうし、
      石破政権がレームダック状態ではありますが、中国には劣るでしょうが日本も仲裁が出来る両国との関係はあるとは思います
      思いたいかな?(弱気

      6
    • ルイ16世
    • 2025年 7月 25日

    カンボジア空軍に戦闘機は無いしウクライナと違い対空ミサイルも無いので流石にまともにやったらタイ空軍のグリペンとF-16の餌食でしょう
    海軍による海上封鎖もある
    陸軍の数も質もタイ軍が上
    カンボジア軍の勝ちは中々難しいのでは?

    19
    • リンゴ
    • 2025年 7月 26日

    この地域は暢気なように見えてかなりエグい所あるから、パンイチ兵も中々ヤバい奴等な感ある

    2
    • a.k
    • 2025年 7月 27日

    ASEANによる調停に続き、トランプ氏も両国首脳と個別の電話会談による停戦協議を持ちかけました。

    どちらの報道でも「両国は停戦には同意した」と言いつつ、カンボジア側は即時停戦を、タイ側はカンボジアによる攻撃中止が停戦条件と、食い違いがありますね。実際カンボジア側からの砲撃は未だに止まっていないようですし。

    なんか状況を色々と見ていると、原因でもあるカンボジア側の前線部隊の暴走と、その部隊のコントロールが不能になっているんじゃないか、という印象があります。
    まあカンボジア側が積極的にニュースを流し続け、それに対してタイ側は報道を出来るだけ押さえている、という面も有るんでしょうけど。

    1

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP