米シンクタンクのウイルソン・センターが主催したイベントに登場したアボット元豪首相は「米海軍から退役するロサンゼルス級原潜を1隻か2隻取得したい」と語り注目を集めている。
参考:Australia Could Push To Acquire Retired US Navy Los Angeles Class Nuclear Submarines
アボット元豪首相が主張するロサンゼルス級原潜の調達案は魅力的でも実現には政治的決断が必要
米英と締結した地域安全保障条約(AUKUS)に基づく原潜導入を発表したオーストラリアは今後18ヶ月間の時間を費やし「どんな原潜をどのような手順で何時までに導入するのか」を決定するため、現時点では「原潜を導入」としか分かっていないが、新たな国が「第3ヶ国の支援を受けて原潜を調達する」というプロセスは非常に稀(ブラジルのみ)なため世界中が注目をしており、この話題に触れるオーストラリアの政治的指導者も多い。
アボット元豪首相もその一人で米シンクタンクのウイルソン・センターが主催したイベントで「米海軍から退役するロサンゼルス級原潜を1隻か2隻取得したい」と独自の考えを語り注目を集めている。
アボット元豪首相は「米海軍から退役するロサンゼルス級原潜を1隻か2隻取得し、オーストラリア海軍の指揮下で運用することは可能だろうか?私がもしロンドンにいれば英国に同じような提案をするだろう」と語り、訓練目的で取得するロサンゼルス級原潜は「必要に応じて西太平洋での戦力増強に貢献することもできる」と独自の原潜導入アプローチを披露したが、米メディアのTheDriveはアボット元豪首相の提案は「米国の政治的指導者の決断がなければ実現が難しい」と見ているのが興味深い。
TheDriveは「2015年まで首相を務めたアボット氏はモリソン政権に参加していないが依然として自由党の一員であり、元豪首相という立場で原潜導入に関する発言を行った裏には豪外務・国防省からの非公式の依頼か承認があったはずだ=事実上モリソン政権の意向という意味」と指摘した上で「控えめに言っても興味をそそられる」と言っているが、退役するロサンゼルス級原潜をオーストラリアに移転するには核燃料の補給とオーバーホールが必要で潜水艦自体の寿命延長プログラムも行わなければならず、原潜を第3国に移転するためのルール整備も手つかずの「未知の領域」だと主張。
さらに米海軍の原潜部隊はメンテナンスを受けるため大行列を作っており、ロサンゼルス級原潜53番艦のボイシはメンテナンスを受けるための順番を5年(本来なら2016年にメンテを受ける予定)も待ち続けている有様で「米海軍向けの需要すらタイムリーに処理できていない米造船業界にオーストラリア向けのロサンゼルス級原潜を別途用意しろというのは難しい相談だ」とTheDriveは指摘しているが、戦略上の必要性が現実的な懸念を上回ると米国の政治的指導者が決断すれば「メンテナンスを受けるため大行列に豪州向けの原潜を割り込ませることも可能かもしれない」と言っている。
因みに米海軍は造船企業のドック施設近代化や拡張に資金を投じる計画を進めている米造船業界の処理能力は高まるとの見方もあるが、米議会予算局(CBO)は「今後30年間の大半(CBO曰く30年間中25年間)で米造船業界の処理能力は米海軍の原潜艦隊の規模を超えることはない」と見積もっているので、米海軍から退役するロサンゼルス級原潜なら直ぐに手に入るだろうという発想自体が幻想=つまり原潜の運用を支える産業界の体制は同盟国分の需要までカバーするような構造になっていないという意味だ。
このような見方は米国のディフンスメディアが盛んに発信している内容と一致しており、誰もオーストラリアの原潜導入に反対してはいないものの「米国には豪州が期待しているほど原潜を素早く用意できる能力はない」と警戒している。
まぁ現場を無視した政治的決断があればオーストラリアのロサンゼルス級原潜調達は実現するかもしれないが、それだけ自分たちの原潜メンテナンスが遅れる米海軍は良い顔をしないだろう。
関連記事:最低10年以上の時間が必要、オーストラリアの原潜導入や国内建造が簡単ではない理由
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by Petty Officer 2nd Class Casey Kyhl
裏を返すと民間で造船シェア握ってる国は軍用艦船の建造メンテ能力について、人的物的に潜在的なバッファ抱えてるって解釈も可能なわけで……現状日中韓で世界シェア八割超えだっけ?
日本と中国は既に大規模な海軍を保持、って考えると韓国も財政的ハードルさえクリアすれば案外本格的な外洋海軍保有する能力自体は持ってるのかもね、何に使うかはさておいて
冷静に考えると東アジアの国々は海軍充実しすぎて火薬庫にしか見えないわ
国営系企業が大半なのと前々から供給過剰な国内鉄鋼業の大口顧客なので絶対潰れることはない中国造船企業や、潰れかけた財閥系造船会社に公的資金注入するというダンピング行為を公然とやって価格攻勢で受注を稼いでる韓国勢と違って日本の造船はこの10年以上だいぶ厳しいので、特殊造船と軍需以外は全部アジアに取られた欧米と同じ末路を辿る可能性もあるぞ。
まあ中国はともかく、韓国はどこかで無理がたたりそうですが。
WTO的な適否は置いておいたとしても、社会保障が薄いのにいつまでも金を突っ込み続けるのは、後で問題を生みそう。
実際、世界随一のホットスポットでしょう。海戦的にも核戦争的にも、突っ込まれてる軍事費的にも。
>ロサンゼルス級原潜53番艦のボイシはメンテナンスを受けるための順番を5年(本来なら2016年にメンテを受ける予定)も待ち続けている有様
よくこの状況で他国に技術移転しようと思ったな。
発表時は逆に米同盟共用新メンテナンス拠点と最終処分施設を豪の金と土地で稼働できるなら原潜も惜しくはないかと思っていたが、そんな計画性は未だに全く感じさせないAUKUS…
艦齢なんて30年、頑張って40年とかなのに
その8分の1から6分の1にあたる5年も修理の順番待ちという状況なら
やっぱりイギリスの原潜しか現実味感じないな
で、アメリカはイギリスに原潜の技術協力しているから権利的に芋づる式で付いて来る
+他国からの外交的な因縁への対策役
ってか「勿体無い」よね。
日本なら配備数減されるわ(笑
ヴィクトリア級「中古潜はマジおすすめ」
そういえばアレもイギリス製でしたねぇ。
買い取ったカナダは英連邦系と。
…まさかね!オーストラリアが導入するのは原潜だから関係ないよね!
お古でいいなら呉にあるからどうぞ。
ルーピーみたいなもんやろ
現実性皆無
元首相の肩書で注目されるって、ほんとに恐ろしいことだね……
中古の米原潜より、新造の英原潜のほうが、早く入手できるのではないかな。
決断すべきは、米英ではなく、豪だろう。
トレーニング用と割り切って、1~2隻の原潜を発注しておくべきだと思う。
オーストラリアのサブマリナーのハードルって低いのか。しかも原潜に乗せるならより高度な教育が必要になる。現状6隻のコリンズ級で270人必要で将来的には現状の4倍以上は必要になる計算になると思うがどう考えているのかな。海自のサブマリナーが45000人中の5%、現豪海軍の人員14000人のままでいくならサブマリナーだけで約8%(原潜に長けたエリートも含め)になる予定で省力化進めないと人員集められるのかなとは思う。
仮の話で運良く退役するロス級リースして貰えるとしても整備費用はどれ位見ればいいのかな英国だと燃料交換に200億円は確実にかかって、アメリカでオーバーホールに180億円ぐらい。別途で納期短縮が必要そうなオーバーホール費用と搭載兵装まで含めたら安くて1隻400億円ぐらいかね。原潜運用のノウハウを得るためにVLSトマホーク運用出来る艦のリースにオーストラリアがそんなにお金払う気があるのか。それに現状のままの人数で行くならコリンズ級2隻の運用辞めないと1隻のロス級を運用出来ないけど、コリンズ級の改修辞めてリース潜水艦に予算回す流れになりそう。
今のオーストラリアはコリンズ級6隻のうち、3~4隻分の乗員しか確保できていませんけどどうするんでしょうね。
受給を踏まえれば、米原潜ではなく先日の英原潜の豪提供の記事が、説得力があると思います。
米原潜の提供なら米豪協定でよいはずで。AUKUSの賑やかしで英が入る意味はあったでしょうが。
英原潜も原子炉の原型が米国だし、米国は知恵も豊富でしょうから、米英豪の意味がわかります。
発言者は元首相のアボットで、現政権への関わり程度はよくわかんないですが(疎遠でもなさそう)、中は知らずに個人の想像で語ってるんではないでしょうか。
米海軍の造船能力で原子力空母を建造できる会社が東海岸の一社だけになったとかいう記事を以前拝聴しましたが、原子力潜水艦のオーバーホール施設への入港も5年待ち続けるとか改善計画が進んでいるとはいえ不安になってきますね・・・
太平洋戦争中みたいに造船所を西海岸に山ほど作れば良い、といのができないのが今のアメリカの限界だなあ。
最初期の「蒼龍の完成品直輸入」案ならネームシップはとっくに戦力化されていただろう
って米国の報道を見て「うおw」ってなった
そうりゅう型の直輸入って案だけど、今から考えると日本はどうやってオーストラリア向けの潜水艦を建造するつもりだったんだろうね?
毎年1隻づつの建造能力しかないのに
三菱と川崎の造船所で隔年製造してるんだから
空いてる方で作れば良いだけだろ
まさか相互建造だから片方のドックが空いてると思ってる訳じゃないよね?
1年に1隻づつ発注して完成時期をずらすように建造してるからドックが人員が遊んでる訳じゃないんだけど、、、
>>毎年1隻づつの建造能力しかないのに
当時その件がネットで議論になった際には
ドックは現状2か所しかないけど、日本の潜水艦は割と余裕を持ったスケジュールで建造、メンテしてるので
1隻の建造ペースを数か月繰り上げ、メンテを数か月~数年遅らせることで対応可能という話が出ていたな
本当にそうなのかは知らん
作戦遂行できる距離が問題なのだと思う、通常動力艦では仏製でも日製でも要らないのよ.
性能制限運用の訓練かならまだしも実戦ではあれだけ艦歴が長けれバ無理があるのでは?
いっそ、まだ設計段階の台湾と組んで通常型潜水艦でも建造した方が早いのでは?
原子炉総とっかえで負担ていうか時間がとんでもなくかかりそうなのに、
結構適当な発言しますね>アボット氏