インド太平洋関連

インド、日本は数少ない友好国で自衛隊との演習は中国への圧力になる

海上自衛隊とインド海軍がインド洋で親善訓練を実施したが、インド側にとっては今回の訓練は「親善」以上の意味があると現地印メディアが報じている。

参考:‘Need to be close to our friends’: India holds naval exercise with Japan amid stand-off with China

カシミール州ラダックで軍事的対立が高まる中、実施された海上自衛隊とインド海軍の親善訓練

海上自衛隊とインド海軍は27日、インド洋で相互理解や信頼関係の促進を目的に親善訓練を実施した。海上自衛隊からは練習艦「かしま(TV-3508)」と「しまゆき(TV-3513)」が、インド海軍からは駆逐艦「ラーナ(D52)」とコルベット艦「クリッシュ(P63)」が参加して戦術運動や通信訓練を行った。

出典:海上自衛隊 訓練艦しまゆき(TV-3513)

このような両国の訓練は日常的(3年ぶり15回目)に行われているので特に珍しいものではないのだが、インド側は今回の訓練が中国の軍事的対立中に行われたことに注目している。

インド海軍のチャウハン元副提督(中将)は「私達は友人との距離を縮める必要がある」と語り、カシミール州ラダックに陸軍を派遣するだけではなく様々な角度から中国に圧力を加える必要があると指摘、さらに彼は「このような訓練はインド洋に対する中国軍の影響力排除に対する準備が整っていることを中国に気づかせることが出来る」と海上自衛隊とインド海軍が実施した訓練の意味について強調した。

現地印メディアは、日本はドクラム高地危機(2017年に発生した印中軍衝突の危機)の際に「インド支持」を公に表明した数少ない国の1つで、今月15日ギャルワン渓谷で両軍が衝突して双方の兵士に死亡者でた際にも日本はインド軍兵士の犠牲者のみ哀悼の意を表し「中国軍兵士の犠牲者には何も言及していない(※)」と言及して「このような友人の存在がトランプ大統領による調停の申し出でを断った理由の一つだ」と説明している。

※補足:日本が中国軍兵士の犠牲者に言及していないのは中国が公に中国軍兵士の死傷者を認めていないからという理由が大きい

さらに印メディアは、日本は攻撃的な中国との領土紛争に対応する次元でインド海軍が保有している空母に匹敵するヘリコプター搭載空母を「完全に空母」に変更するため改造を行っており、世界でも有数の通常動力式潜水艦と最先端の対潜戦能力と技術を備えていると紹介した。

駐印日本大使館は今回の訓練について「ただの戦術訓練や通信訓練であって具体的なシナリオはない(中国海軍を想定したものではないという意味)」と述べている。

果たして日本側にインド側が思っているような意図があったのかは謎だが、今回の親善訓練はカシミール州ラダックで中国と軍事的な対立を抱えているインドにとっては中国への圧力に丁度よい材料となったようだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    これの意味するところはインドには既に二隻の空母があり、日本もいずも型二隻を改造中、状況次第ではひゅうが型すらF-35Bを搭載する可能性
    つまり中国海軍はこの二国の連合に対して完全な数的劣勢に陥ります。
    近いうちに自衛隊F-35B飛行隊による印空母へのクロスデッキ演習も実施されるでしょう。
    仮に中国海軍がインド洋での戦闘を企図としたとしてもその将来は暗い、ということになります。

    1
      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      さすがにひゅうが型にF-35Bは無理なのでは……

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      はるかインド洋迄出掛けてってクロスデッキですか? 日印共にお互いの海域まで空母が進出するようになるには未だ当分先じゃないですかね。

        • 匿名
        • 2020年 7月 04日

        艦隊直援の為の攻撃型原潜が7~9隻。恒常的な外洋作戦の為に4艦隊編成を5艦隊編成に拡大。
        マラッカ海峡を越えるには、最低でも此の位は欲しい処。
        其の為の予算取得や定数拡大も勿論必要なワケで、確かに当分先の話しですね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    米主導の対中包囲網を破るにはアメとムチで各個撃破狙うしかないのに
    ・尖閣で日本を挑発
    ・豪にサイバー攻撃
    ・台湾を軍事演習で挑発
    ・国境紛争でインド兵を撲殺
    そりゃ被害者同士自然と結束するわけで
    中共の戦狼外交なる外交政策は春秋戦国時代より退化してますね

    3
    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    定期的に行うだけの通常演習でも外交的に利用できるなら利用するがいいと思いますよ。
    ただね・・・日本が包囲網の形成について努力してきた矢先の中国によるこの侵攻は、中国側からのそんなものは無駄だというメッセージに見えるのですよね。
    暴力装置が相手側から暴力装置として認められない限り圧力にはならないわけで、敵基地先制攻撃能力の確保はもちろん、包囲網版NATOのような機構を視野に入れなければならないでしょう。
    中国が常任理事国である限り中国の領土拡張について国連は全く機能しませんから。

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      対日本に限らず、「やりたいようにやる」と言ってる様に読めます。今の中国に棍棒を振るえる国はアメリカしかないし、アメリカは国内問題でモメモメしているわけですから。
      BBCとか見ていると未だ日本にたいしては抑制的に行動しているように見えるんだけどなぁ。違うかなぁ

      • oominoomi
      • 2020年 6月 30日

      今回のは「訓練」で「演習」ではありません。

      「訓練」は、個人や部隊の基本的な能力を高めるのが目的です。
      それに対して「演習」は、作戦計画に沿ったシナリオに基づき、実戦の状況を想定して行われます。
      演習には「仮想敵」が設定されるので、その相手国を刺激しますし、むしろ積極的に示威行為として行われる事もあります。

      中国は日米印によるマラバール「演習」には強く反発しています。
      仮に自衛隊が「暴力装置」として認識されなくても、レーダーやソナーにより収集した情報を同盟国に提供されるだけでも、中国としては非常に嫌なのです。
      何も敵地攻撃能力のような打撃力だけが圧力ではありません。

        • 匿名
        • 2020年 7月 01日

        >今回のは「訓練」で「演習」ではありません。

        そうでしたね。
        何となく「演習」ととらえていました。
        指摘ありがとうございました。

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      「米諜報機関、印中両軍衝突は中国が仕掛けたもので完全に大失敗」

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    インド洋と太平洋で挟んで抑止するのはコンセンサス

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    日米の中国包囲網の参加に関してインドのモディ首相は安倍総理にハッキリと参加しないと言ってるわけですから
    中国への圧力になるとか何を勝手なこと言ってんだって気がします
    都合のいい解釈をするな、show the flag!

      • oominoomi
      • 2020年 6月 29日

      しかし、こんなニュースもあります。

      豪印首脳が防衛協力拡大で合意、対中包囲網

      6月4日、オーストラリアのモリソン首相とインドのモディ首相は、テレビ会議方式の首脳会談を開き、防衛協力の拡大で合意し、共同声明を発表したと複数のメディアが報じた。(中略)今後、共同して日米主導で中国に対応する「自由で開かれたインド太平洋」構想に賛同し、対中けん制の枠組みに加わることになった。(2020年6月9日付ロイター)

      • 匿名
      • 2020年 7月 03日

      それな
      結局「友好国」だなんて日本側の一方的な思い込みなんじゃねーの?

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    中国は覇を唱えるのが早すぎた、と言っても経済が先細りになるのはわかっているし土地バブル崩壊や三共ダム決壊が迫りギリギリのタイミングなのかもしれない。
    この先しばらくすれば三峡ダム崩壊により土地バブルは完全に崩壊するだろう、日米印は敵対しEUやロシアは金がない、いったいどこの国が中国を助けてくれると思っているのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 7月 01日

      三峡ダムってそんなに危ないの?

        • 匿名
        • 2020年 7月 01日

        雨の少ない時期に、月単位で時間を掛け水を貯めてもダム周辺で異常が観測されている為、洪水対策として機能しないと云われていた所に、記録的な豪雨で危険だと言われています。
        更に被害も、中国だけでなく、余波で九州近海も汚染されると言われている程ヤバい代物です。

        • 匿名
        • 2020年 7月 02日

        三峡ダムの状況について、下記に詳しい解説があったので、参考までにどうぞ。

        リンク

        • 匿名
        • 2020年 7月 02日

        教えていただいた方、ありがとうございます。
        今すぐにってわけじゃないようですが怖くなってきますね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    このような日本側の行為が中国を刺激しないか気になります。
    中印緊張悪化の中で一方的にインドの肩を持とうとするのならば、日本側の振る舞いは国際社会から疑念を持たれるでしょう。

      • oominoomi
      • 2020年 6月 29日

      練習艦隊の遠洋航海の途次での親善訓練であり、印メディアが言っているような意味合いはありません。
      辺境で中印陸軍が緊張しているからと言って、中国を刺激する様な実戦的な訓練ではありません。

      日米印の第一線の戦闘艦による本格的な共同演習(マラバール)は、それとは別に行われてます。

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      お仕事とご苦労様です

      2
    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    印中で開戦したら日本ってどうするんだろ
    便乗して参戦とかはないだろうけど
    まさか遺憾の意だけで何もしないのか

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      むしろ非同盟国と敵国の戦争に日本が介入する理由が見当たらないんだが

      • 匿名
      • 2020年 6月 29日

      外交努力()はするだろうけど参戦その他の深入りはしないでしょう
      これはインドと同盟関係でもないアメリカも同じく

    • 匿名
    • 2020年 6月 29日

    三峡ダムが崩壊すると、ダム湖の沈殿物﹙大量の有毒物質を含む﹚により日本近海も汚染されるとの指摘があるので、
    日本のためにも三峡ダム崩壊は食い止めて欲しい。

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      無理です

      • 匿名
      • 2020年 6月 30日

      ダムを含む発電所って開戦すれば
      真っ先に標的と化すよね

        • 匿名
        • 2020年 7月 01日

        そのとばっちりで、九州近海の漁業にも打撃が。

    • 匿名
    • 2020年 6月 30日

    マハン的な戦略をとり、南シナ海をマーレノストロ化した中国が次に狙うのはインド洋。インド洋は中東やアフリカ大陸、スエズまで睨みが利く重要な場所なので牽制をかける為にも非常に有意義だと思う。

    • 匿名
    • 2020年 7月 01日

    インドの風刺動画で、安倍首相がプーチン大統領やトランプ大統領と同格に描かれていたのは、今回の記事と同根なのかな?

    リンク

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